在庫の棚卸し代行を依頼するには|実地棚卸しの費用相場と依頼範囲


この記事のポイント
- ✓棚卸し代行の費用相場を知りたい方向けに
- ✓依頼範囲の決め方や見積もりの内訳
- ✓業者選びの注意点を発注者目線で解説します
「棚卸しを外注したいけれど、費用がいくらかかるのか見当がつかない」。この時期、こういったご相談をよく受けます。棚卸し代行の費用は、依頼する棚卸しの種類(商品棚卸しか固定資産棚卸しか)、点数、現地作業の有無によって大きく変わります。この記事では、実際の相場観と、見積もりで失敗しないための依頼範囲の決め方を整理します。
棚卸し代行の費用相場とはどのくらいか
まず結論から言うと、棚卸し代行の費用は1店舗あたり3万円〜15万円程度が目安です。ただし、これは在庫点数や作業時間によって大きく変動する幅のある数字であり、「これさえ払えば安心」という一律の相場は存在しません。つまり、見積もりを取る前に自社の棚卸し対象を整理しておかないと、業者ごとの見積もりを正しく比較できないということです。
棚卸し代行費用を決める主な要素は次の4つです。
- 在庫点数(SKU数)
- 店舗・倉庫の面積、フロア数
- 作業時間帯(営業中か閉店後か、深夜作業かどうか)
- カウント方式(目視カウントかハンディターミナル・RFIDを使うか)
小規模な小売店(在庫点数1,000点未満)であれば3万円〜6万円程度、中規模の店舗(在庫点数5,000点前後)であれば8万円〜15万円程度が目安になります。倉庫全体の棚卸しや複数拠点をまとめて依頼する場合は、さらに人員数・日数がかかるため、数十万円規模になることも珍しくありません。
これ、知らない人が本当に多いんですが、深夜作業や休日作業を依頼すると、通常料金に対して2割〜3割程度の割増料金が発生する業者がほとんどです。営業時間中に棚卸しをする「オンタイム棚卸し」であれば割増がかからないケースもあるため、コストを抑えたいなら作業時間帯の交渉も選択肢に入れておくべきです。
そもそも棚卸しはなぜ必要なのか
棚卸しが必要とされる理由は大きく2つあります。1つは会計上の理由、もう1つは実務上の理由です。
会計上の理由としては、決算時に在庫の実数を確定させ、正確な売上原価を算出する必要があるからです。帳簿上の在庫数と実際の在庫数にズレがあると、決算書の数字自体が信頼できないものになってしまいます。つまり、棚卸しは単なる「数を数える作業」ではなく、企業の財務諸表の正確性を担保する重要な工程なのです。
実務上の理由としては、欠品や過剰在庫を防ぐという目的があります。帳簿在庫と実在庫の差異(棚卸差異)が大きい場合、盗難や紛失、記帳ミスなどの問題が潜んでいる可能性があります。定期的な棚卸しによってこの差異を早期に発見できれば、原因究明と再発防止につなげることができます。
なお、棚卸しの対象は「販売目的の在庫商品」だけではありません。事業で使用する固定資産(パソコン、機械設備、什器など)も棚卸しの対象になる場合があります。
企業が保有している販売目的ではない資産物品のうち、使用期間1年以上かつ取得価額10万円以上のものが該当します。例としては自社ビル、社用車、機械設備、検査機器、高性能カメラや測量機器、PC、コピー機などがこれに相当します。 出典: smartmat.io
固定資産の棚卸しと商品在庫の棚卸しは、確認する内容も作業の性質もまったく異なります。依頼を検討する際は、どちらの棚卸しを外注したいのかを最初に明確にしておく必要があります。
棚卸し代行に依頼できる業務範囲
棚卸し代行業者に依頼できる業務は、大きく分けて次の3つです。
実地カウント作業
店舗や倉庫に人員を派遣し、実際に商品を1点ずつ数える作業です。ハンディターミナルやバーコードリーダーを使ってカウントする場合と、目視でリストと照合する場合があります。在庫点数が多い店舗ほど、複数人でのカウント作業になり、費用も比例して上がります。
棚卸差異の集計・レポート作成
カウントしたデータを帳簿在庫と突き合わせ、差異を一覧化するレポート作成です。差異が発生した棚・商品をピックアップし、原因調査の材料を提供してくれる業者もあります。単に数字を出すだけでなく、差異の傾向分析まで含めるかどうかで料金は変わってきます。
固定資産の実地確認
固定資産管理台帳に登録されている資産が実際に存在し、適切に使用されているかを1つずつ確認する作業です。
一方で販売目的ではない固定資産の実地棚卸がどういったものかと言うと、固定資産管理台帳に登録されている固定資産が実際に存在し、適切に使用されているかをひとつ一つ確認する作業です。 出典: smartmat.io
現場に赴いて資産の現物を確認する必要があるため、拠点数が多い企業ほど作業日数がかさみます。リース品や貸出品も固定資産として計上されている場合は、これらも確認対象に含める必要があります。
例えば、建設現場で使う土地面積測定計や、プロモーションビデオで使う撮影道具一式などの貸出品が棚卸対象となります。またリース品*1も固定資産として計上されます。貸し出された物品やリース品について実際に現物があり、適切に使われているかを現場に赴き確認しなくてはいけません。 出典: smartmat.io
棚卸し代行を依頼するメリット
カウント精度が上がる
自社スタッフだけで棚卸しを行うと、業務の合間を縫って作業するため集中力が続かず、数え間違いが起こりやすくなります。棚卸し専門の業者は、カウント方法やダブルチェックの体制が確立されているため、精度の高い結果を得られます。
人件費・残業代を抑えられる
自社スタッフで棚卸しをする場合、通常業務を止めて対応するか、閉店後・休日出勤で対応するかのどちらかになります。特に休日出勤や深夜作業になると割増賃金が発生し、想定以上の人件費がかかることがあります。外注すれば、この変動費を事前に見積もりとして確定させられます。
客観的な立場で差異原因を指摘してもらえる
社内のスタッフだけで棚卸しをすると、差異の原因(盗難、記帳ミス、廃棄漏れなど)について、身内をかばう心理が働いてしまうことがあります。第三者である棚卸し代行業者に依頼することで、客観的な視点から差異の傾向を報告してもらえるという利点もあります。
棚卸し代行のデメリットと注意点
一方で、棚卸し代行にはデメリットもあります。正直に申し上げると、費用がかかることが最大のデメリットです。特に頻繁に棚卸しをする業態(飲食店の月次棚卸しなど)では、毎回外注すると年間の費用が積み重なっていきます。
また、外部の人間が店舗や倉庫に立ち入るため、情報管理の面で不安を感じる事業者もいます。この点は、契約時に秘密保持契約(NDA)を締結しているか、個人情報保護に関する認証(プライバシーマークやISMS認証など)を取得しているかを確認することで、ある程度リスクを下げられます。
さらに、業者によってはカウント方式が自社の在庫管理システムと合わず、データの取り込みに追加作業が発生するケースもあります。見積もり段階で「自社の在庫管理システムとの連携方法」を必ず確認しておくべきです。
棚卸し代行業者を選ぶポイント
私自身、行政書士業務のかたわらフリーランス支援の相談を受ける中で、業務委託契約の内容を巡るトラブル相談を数多く見てきました。棚卸し代行の契約でも同じことが言えます。以下の5点を必ず契約前に確認してください。
見積もりの内訳が明確か
「1式いくら」という丸めた見積もりではなく、人件費・交通費・機材費・レポート作成費が項目ごとに分かれているかを確認しましょう。内訳が不明瞭な見積もりは、追加費用が後から発生するリスクが高くなります。
秘密保持契約(NDA)を締結できるか
在庫データや店舗の売上構造は事業上の機密情報です。契約書にNDA条項が含まれているか、または別途NDAを締結できるかを必ず確認してください。
実績と対応業態
小売店、飲食店、倉庫、アパレルなど、業態によって棚卸しの勝手が大きく異なります。自社と同じ業態での実績があるかを確認すると、当日の作業がスムーズに進みやすくなります。
差異発生時のフォロー体制
カウント後に大きな差異が見つかった場合、再カウントに追加費用がかかるのか、無料で対応してもらえるのかを事前に確認しておきましょう。
支払い条件と契約解除の条件
作業完了後何日以内に支払うのか、キャンセル料が発生する条件はどうなっているかも重要です。フリーランス保護新法の施行以降、業務委託契約全般で支払期日の明確化が求められるようになっています。発注者側であっても、契約書に支払期日や検収基準が明記されているかを確認する習慣をつけておくと、後のトラブルを防げます。
棚卸し代行の依頼から実施までの流れ
一般的な棚卸し代行の依頼フローは次のようになります。
- 問い合わせ・ヒアリング: 在庫点数、店舗面積、希望日時を伝える
- 現地調査・見積もり提示: 業者が現地を確認し、正式な見積もりを提示する(電話のみで概算を出す業者もある)
- 契約締結: 業務範囲、料金、NDA、支払い条件を確認して契約
- 棚卸し実施: カウント作業当日。立ち会いが必要かどうかは業者による
- レポート受領: 差異一覧、カウント結果を受け取る
- 差異調査(必要に応じて): 大きな差異があれば原因調査を追加依頼
見積もりから実施まで、繁忙期(3月決算前後など)は2〜4週間程度の余裕を持って依頼するのが望ましいです。決算期直前は依頼が集中し、希望日程で対応してもらえないこともあるため、早めの相談をおすすめします。
代理店経由と直接依頼のコスト差
棚卸し代行の依頼先には、大きく分けて「専門代行会社」「人材派遣会社経由」「フリーランス・個人事業主への直接依頼」の3パターンがあります。
代理店や人材派遣会社を経由する場合、現場作業者への支払いに加えて、仲介会社の手数料が上乗せされます。一般的に人材派遣・業務委託の仲介では20%〜40%程度の中間マージンが発生していると言われており、同じ作業内容でも仲介経由か直接依頼かで総額に差が出やすい構造になっています。
一方、経験豊富な棚卸し専門のフリーランスや個人事業主に直接依頼すれば、この中間マージンが発生しない分、同じ予算でより多くの作業時間を確保できたり、依頼側の総費用を抑えられたりする可能性があります。手数料0%で発注者とフリーランスを直接つなぐマッチングサービスを使えば、仲介会社を介さずに実務経験のある人材へ直接依頼することができます。
もちろん、直接依頼にはデメリットもあります。仲介会社が間に入らない分、契約書の作成やトラブル発生時の対応をある程度自分で行う必要があります。この点は、契約書のひな型を用意しているマッチングサービスを使うことで、負担をかなり軽減できます。
依頼範囲を決める際に確認すべきこと
棚卸し代行を依頼する際、最も多い失敗が「依頼範囲の認識違い」です。私が実際に外注を依頼した経験でも、最初の見積もり比較で苦労したことがあります。A社は「カウント作業のみ」の料金、B社は「カウント+差異レポート作成」込みの料金で提示してきたため、単純に金額だけを見比べると安く見えたA社のほうが、追加費用込みで考えるとB社より高くつくという状況になりました。つまり、見積もりの金額だけで比較するのではなく、「その金額に何が含まれているか」を1つずつ照らし合わせる必要があるということです。
依頼範囲を決める際は、次の項目を業者に明確に伝えましょう。
- カウント対象の在庫点数・カテゴリ
- カウント方式(目視/ハンディターミナル/RFID)
- 差異レポートの粒度(合計差異のみか、商品ごとの内訳まで必要か)
- 作業時間帯(営業中/閉店後/深夜/休日)
- 立ち会いの要否
- データ納品形式(Excel、CSV、自社システム連携の有無)
これらを最初に整理した紙を用意してから複数社に見積もり依頼を出すと、比較検討がぐっとしやすくなります。
独自データ考察|発注者が知っておきたい外注の実態
長く在宅ワーク・業務委託の市場を見てきた立場から言えば、棚卸しのような定型的かつ専門性の求められる業務ほど、「一度きりの発注」ではなく「継続的な関係」を築いたほうが結果的にコストが下がる傾向があります。棚卸しは季節や決算のタイミングで繰り返し発生する業務であるため、毎回一から業者を探して見積もりを取り直すよりも、信頼できる担当者と継続的に付き合うほうが、現場の在庫レイアウトや商品特性を把握してもらえている分、作業がスムーズに進みやすくなるからです。
また、運営者として見てきた限りでは、継続して長く選ばれ続けるフリーランスや個人事業主ほど、単発の作業品質だけでなく「この人に任せておけば安心」という関係づくりに時間をかけている傾向があります。棚卸しのような数字の正確性が問われる業務であればなおさら、単発の価格の安さだけで選ぶのではなく、継続依頼を前提とした信頼関係を築ける相手を選ぶことが、長期的なコスト最適化につながります。
中間マージンが発生しない直接取引の構造は、発注者にとっては同じ予算でより多くの作業時間や頻度を確保できるという利点があり、受注する側にとっては仲介手数料が引かれない分、手取りが厚くなるという利点があります。この双方にとってのメリットは、単に「安い・高い」という金額の話ではなく、限られた予算をお互いにとって無駄なく使えるという構造そのものの違いです。棚卸し業務のような繰り返し発生するコストほど、この構造の差が積み重なって効いてきます。
法人・個人事業主を問わず、業務委託契約を結ぶ際は、支払い条件・検収基準・秘密保持義務を書面で明確にしておくことが重要です。フリーランス保護新法の施行以降、業務委託契約における書面交付義務や支払期日の規定が強化されています。契約前に一度、経済産業省や中小企業庁が公開している業務委託契約に関する情報を確認しておくと安心です。
外注を検討する際は、フリーランスへの業務依頼に関する知見をまとめたAIコンサル・業務活用支援のお仕事のガイドも参考になります。業務効率化や外部人材活用の考え方を整理する際のヒントになるはずです。また、経理・事務系のバックオフィス業務を外注する際に役立つ職種相場はソフトウェア作成者の年収・単価相場のようなデータベースページでも確認できます。棚卸し代行と合わせて事務作業のアウトソーシングを検討している場合は、アプリケーション開発のお仕事のガイドで在庫管理システムの構築・連携を依頼できる人材像を把握しておくのも一つの手です。
なお、棚卸し代行のような業務委託契約では、契約書の内容次第でトラブルの発生リスクが大きく変わります。契約実務に不安がある場合は、行政書士の開業ガイド【2026年版】|費用・集客・年収のリアルで紹介しているような専門家への相談も選択肢に入れておくとよいでしょう。事業規模の拡大に伴って外注する業務範囲が広がってきた場合は、フリーランスの法人成り完全ガイド2026|手続き・費用・最適なタイミングや法人化 マイクロ法人設立の完全ガイド!メリット・費用・注意点も、経理体制を整理する際の参考になります。
棚卸し代行の費用は、依頼範囲を明確にし、複数社で内訳を比較することで適正な金額感がつかめます。安さだけで選ぶのではなく、継続的に任せられる相手かどうかという視点を持つことが、長期的なコスト最適化につながります。
よくある質問
Q. 棚卸し代行の費用は1店舗あたりどのくらいが目安ですか?
在庫点数によって異なりますが、小規模店舗で3万円〜6万円、中規模店舗で8万円〜15万円程度が目安です。深夜・休日作業は割増料金が発生する場合があります。
Q. 棚卸し代行にはどこまでの業務を依頼できますか?
実地カウント作業、棚卸差異の集計・レポート作成、固定資産の実地確認などが依頼できます。業者によって対応範囲が異なるため、見積もり時に確認が必要です。
Q. 代理店経由と直接依頼で費用に差は出ますか?
代理店や人材派遣会社を経由すると中間マージンが上乗せされる場合があります。実務経験のあるフリーランスへ直接依頼すれば、中間マージンが発生しない分コストを抑えられる可能性があります。
Q. 棚卸し代行業者を選ぶ際に確認すべきポイントは何ですか?
見積もりの内訳の明確さ、秘密保持契約の有無、同業態での実績、差異発生時のフォロー体制、支払い条件を必ず確認しましょう。
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この記事について
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監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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