未経験から訪問診療のクリニックで働く|受け入れている募集と、慣れるまで

長谷川 奈津
長谷川 奈津
未経験から訪問診療のクリニックで働く|受け入れている募集と、慣れるまで

この記事のポイント

  • 訪問診療のクリニックに未経験から入る道を
  • 在宅経験のない看護師と
  • 医療資格のない診療アシスタント・医療事務に分けて整理しました

先日、病棟で働いている看護師さんから、こんな相談を受けました。「訪問診療のクリニックの求人に『未経験歓迎』と書いてあったので応募しようと思うんです。でも、在宅の経験がまったくない私が行って、本当についていけるんでしょうか」。

結論から言うと、訪問診療のクリニックは、未経験の人を受け入れている職場が少なくありません。ただし、「未経験」という言葉には、実は2つの意味が混ざっています。そこを読み違えると、入ってから「思っていた未経験と違った」ということになりかねません。

これ、知らない人が本当に多いんです。

この記事では、訪問診療のクリニックがどんな未経験者を、どんな職種で受け入れているのかを整理します。そのうえで、入職してから慣れるまでの流れ、つまずきやすい場面、そして契約の前に書面で確かめておきたいことまでお伝えします。

「未経験」には2種類ある:求人票の言葉を正しく読む

訪問診療のクリニックの求人票で「未経験歓迎」と書かれているとき、それが指しているのは、次のどちらかです。

1つ目は、「訪問診療は未経験でよい」という意味です。つまり、看護師や医師の資格と、病院やクリニックでの臨床経験はあることが前提で、在宅医療の現場に出た経験がなくてもかまわない、ということです。看護師の求人では、この意味で使われていることがほとんどです。

2つ目は、「医療の仕事そのものが未経験でよい」という意味です。これは、診療アシスタント(運転や訪問先での補助を担う職種)や、医療事務の求人でよく見かけます。資格がなくても応募でき、入職してから仕事を覚えていく形です。

この2つは、求人票の上ではどちらも「未経験歓迎」と一言で書かれてしまいます。だからこそ、応募資格の欄を必ずセットで読んでください。

・「看護師免許」「臨床経験3年以上」と書かれていれば、1つ目の意味です ・「普通自動車免許(AT限定可)」「資格不問」と書かれていれば、2つ目の意味です

私のところに来る相談でも、「医療の資格がないけれど、訪問診療のクリニックで未経験歓迎と書いてあった」と思って応募したら、実は看護師向けの募集だった、というケースがありました。応募する前に気づければ時間を無駄にせずに済みます。

もう1つ、看護師の求人で注意したいのが、「未経験歓迎」の範囲です。訪問診療の経験は問わなくても、臨床経験の年数は求められていることが多いです。一般的には3年から5年程度の臨床経験を条件にしているクリニックが目立ちます。

なぜかというと、訪問診療の現場では、病棟のようにすぐ近くに先輩や他の医師がいないからです。患者さんのお宅で急に状態が変わったとき、その場にいる医師と看護師で判断しなければなりません。基本的な処置や急変時の対応が身についていることが、在宅に出るための前提になるんですね。

つまり、「訪問診療が未経験でも大丈夫」というのは、「看護師としての基礎があれば、在宅のやり方は入ってから覚えられる」という意味だと読むのが正確です。

訪問診療のクリニックが未経験者を受け入れる理由

では、なぜ訪問診療のクリニックは、未経験の人を受け入れているのでしょうか。

いちばん大きな理由は、在宅医療に取り組むクリニックが増える一方で、在宅医療の経験者が足りていないことです。高齢の方が増え、住み慣れた家で療養したいという希望も増えています。国も在宅医療を進める方向で制度を整えてきました。その結果、訪問診療を始めるクリニックは増えていますが、「すでに在宅の経験がある人」だけを探していては、人が集まりません。

そこで、未経験の人を受け入れ、入職してから育てる仕組みを整えるクリニックが出てきています。

実際の求人を見ると、その姿勢がよく分かります。次の文章は医師向けの募集ですが、クリニック全体として未経験の人をどう迎えようとしているのかが読み取れます。

2025年12月開業の在宅療養支援診療所です。定期訪問診療(1日8〜13件)を担っていただける先生を募集します。オンコールを対応頂ける場合、追加で手当を支給します。クラウド電子カルテとAI音声文字起こしを導入しており、診察記録は訪問先でほぼ完結。検査オーダーや文書作成も定型化を進め、診療に集中できる環境づくりに力を入れています。緩和医療指導医のもと、在宅緩和ケアの経験をしっかり積んでいただけます。在宅医療が初めての先生も、院長との同行訪問から無理なく始められます。週半日・週1日から、曜日もご相談に応じます。見学のみのご連絡も歓迎です。 出典: jmadbk.med.or.jp

この募集文から読み取れるポイントは、3つあります。

1つ目は、「同行訪問から始められる」と書かれていることです。つまり、いきなり1人で患者さんのお宅に行かせるのではなく、慣れた人と一緒に回りながら覚えていく流れが用意されている、ということです。

2つ目は、記録や文書作成を「定型化」していることです。訪問診療では、診察そのものより、その前後の書類や連絡の仕事が多くなります。そこを仕組みで軽くしているクリニックは、未経験の人でも仕事を覚えやすくなります。

3つ目は、「見学のみ歓迎」と書かれていることです。自分たちの働き方を外に見せる準備ができているクリニックは、それだけ受け入れの体制も整っていることが多いです。

医師の募集でもこうした工夫が書かれているということは、同じクリニックで働く看護師や事務の受け入れにも、似た考え方が反映されていることが多い、と考えてよいでしょう。医師の働き方や給与の相場は、医師の年収・単価相場で、勤務形態ごとの傾向がまとめられています。一緒に働く医師の働き方を知っておくと、クリニックの体制も読みやすくなります。

看護師で訪問診療が未経験の場合に受け入れている募集

ここからは、職種ごとに、どんな募集が未経験の人を受け入れているのかを見ていきます。まずは看護師です。

訪問診療が未経験の看護師を受け入れている募集には、いくつかの特徴があります。

同行期間が明記されている

「最初の1か月は先輩看護師と同行します」「独り立ちまで3か月程度」のように、同行の期間が書かれている募集は、受け入れの流れが決まっていると考えられます。反対に、「未経験歓迎」とだけ書かれていて、教え方について何も触れていない募集は、面接で詳しく確認したほうがよいです。

看護師が複数在籍している

看護師が1人しかいないクリニックに未経験で入ると、困ったときに相談できる相手が医師しかいません。看護師が複数いるクリニックなら、在宅での看護のやり方を、同じ立場の先輩から教わることができます。

オンコールが最初は免除される

未経験の看護師を受け入れているクリニックでは、入職してしばらくはオンコールの当番に入らず、慣れてから少しずつ加わる形をとっているところがあります。「オンコールは入職3か月後から」のように書かれていれば、段階を踏んで任せる方針だと読めます。

病棟や外来の経験を評価している

「急性期病棟の経験を活かせます」「外来での経験がある方歓迎」といった書き方をしている募集は、臨床の経験を在宅に持ち込んでほしいという意図があります。未経験でも、それまでの経験がきちんと評価される職場です。

給与については、訪問診療のクリニックで働く常勤の看護師は、地域やクリニックの規模によって差がありますが、年収400万円から550万円ほどが1つの目安になります。夜勤がないぶん、病棟で夜勤手当をもらっていた方は、月の手取りが下がることもあります。オンコール手当や、呼び出しがあったときの手当がどう支払われるかで、実際の収入はかなり変わります。

看護師全体の給与の水準は、看護師の年収・単価相場に、年代や働き方ごとの傾向がまとまっています。今の給与と比べる土台として役立ちます。

医療の資格がない未経験者が入れる職種:診療アシスタントと医療事務

次に、医療の資格がない人が、訪問診療のクリニックに入る道です。

診療アシスタント

診療アシスタントは、医師と一緒に訪問に回り、車の運転、訪問先での物品の準備、電子カルテの入力補助、ご家族への次回の訪問日の連絡などを担う職種です。クリニックによっては「ドライバー」「診療補助」「訪問アシスタント」と呼ばれています。

応募の条件は、普通自動車免許だけ、というところが多いです。医療の資格は求められません。ただし、医療行為はできないので、採血や処置といった看護師の仕事は担いません。ここは、法律で医療職にしか認められていない行為があるためです。つまり、「医師のすぐ隣で働くけれど、医療行為そのものには手を出さない」立場です。

未経験の人が診療アシスタントに入ると、最初は運転と物品の準備から覚え、慣れてくると電子カルテの入力補助や、訪問先との日程の調整を任されるようになります。

医療事務

医療事務は、クリニックに残って、電話の対応、訪問の予約の調整、レセプト(診療報酬の請求)、書類の管理を担います。

訪問診療のレセプトは、外来の診療とは算定のルールが違う部分が多く、医療事務の経験者でも慣れるまでに時間がかかると言われます。つまり、外来の医療事務の経験があっても、訪問診療のレセプトは「ほぼ未経験」から覚え直すことになるんです。逆に言えば、まったくの未経験の人でも、経験者との差がそれほど大きくならない分野だとも言えます。

未経験から医療事務を目指す人は、資格を持っていると、応募のときに基礎知識があることを示しやすくなります。医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)の資格ガイドには、試験の内容や、医療事務の仕事での生かし方がまとめられています。

私が以前、相談に乗った方の中に、介護の現場から訪問診療のクリニックの診療アシスタントに移った方がいました。介護の現場で高齢の方やご家族と接してきた経験が、訪問先での声かけにそのまま生きた、と話していました。医療の資格がなくても、それまでの経験が評価される場面は意外と多いんです。介護職の給与や働き方の傾向は、介護職員の年収・単価相場にまとまっているので、今の仕事と比べるときの参考になります。

給与の目安としては、診療アシスタントの時給が1,200円から1,600円ほど、常勤の医療事務の月給が18万円から24万円ほどが多く見られます。地域によって差があるので、あくまで目安として見てください。

入職してから慣れるまでの流れ:最初の1か月、3か月、半年

未経験で訪問診療のクリニックに入ったとき、慣れるまでにどれくらいかかるのか。ここは、多くの人がいちばん不安に感じるところです。

クリニックごとに違いはありますが、看護師の場合、おおまかには次のような流れになることが多いです。

最初の1か月:同行して「1日の流れ」をつかむ

最初の1か月は、先輩の看護師や医師に同行しながら、訪問診療の1日の流れを覚えます。朝のミーティング、物品の準備、訪問ルートの確認、訪問先での診察の補助、帰院後の記録と連絡。この一連の流れを、まずは見て覚える時期です。

この時期にやっておきたいのは、患者さんのお宅ごとの「決まりごと」をメモしておくことです。駐車の場所、鍵の扱い、ご家族が在宅かどうか、玄関で靴を脱ぐ位置まで。病棟では意識しなかった細かな情報が、訪問診療では1件ごとに違います。

3か月まで:処置と連絡を任され始める

1か月を過ぎると、処置の一部や、訪問看護ステーションやケアマネジャーとの連絡を任されるようになります。この時期は、「医師の診療が在宅で回るように、周りを整える」という訪問診療の看護師の役割が、少しずつ実感できるようになります。

同時に、ここがいちばんしんどい時期でもあります。病棟でのやり方と、在宅でのやり方の違いに戸惑うことが増えるからです。

半年まで:オンコールに加わり、独り立ちする

3か月から6か月ほどで、オンコールの当番に加わり、担当の患者さんを持って独り立ちしていく流れが多いです。ここまで来ると、「次に何が起きそうか」を予想して動けるようになってきます。

医療事務や診療アシスタントの場合は、日々の流れには1か月から2か月ほどで慣れる人が多いです。ただ、医療事務のレセプトは月に1回の作業なので、1年を通して一通り経験するまでは、毎月新しい疑問が出てきます。焦らなくて大丈夫です。

※慣れるまでの期間は、クリニックの規模、担当する患者さんの状態、同行の体制によって大きく変わります。ここに書いた期間は目安としてとらえ、入職前に「独り立ちまでの流れ」を具体的に聞いておくことをおすすめします。

未経験者がつまずきやすい場面と、その乗り越え方

訪問診療のクリニックに未経験で入った人が、つまずきやすい場面はだいたい決まっています。事前に知っておけば、心の準備ができます。

物品が足りないことに、訪問先で気づく

病棟なら、足りないものは取りに行けます。でも、訪問先ではそれができません。処置の予定を前日に確認し、予備も含めて持っていく習慣がつくまでは、何度か冷や汗をかくことになります。チェックリストを自分用に作っておくと、この失敗はかなり減らせます。

ご家族との距離感に迷う

訪問診療では、患者さんご本人だけでなく、ご家族と長く関わります。介護の疲れを打ち明けられたり、治療方針への不満を聞かされたりすることもあります。どこまで話を聞いて、どこから医師やケアマネジャーにつなぐのか。この線引きは、経験を重ねて身につけていくものです。迷ったら1人で抱えず、その日のうちにチームに共有することが大切です。

帰院後の書類が終わらない

訪問看護ステーションへの指示書、ケアマネジャーへの報告書、介護保険の主治医意見書。書類の種類が多く、最初はどれが何のための書類なのか分からなくなります。最初のうちは、先輩が作った書類をお手本にさせてもらうのがいちばんの近道です。

車での移動に疲れる

1日のうち2時間から3時間を車の中で過ごすことも珍しくありません。車酔いしやすい方や、長時間の運転に慣れていない方にとっては、意外な負担になります。

ここで、1つだけ注意しておきたいことがあります。訪問のあいだの移動の時間は、仕事の時間として扱われるのが原則です。訪問介護の分野では、事業所から利用者のお宅へ、あるいはお宅からお宅への移動の時間は、使用者の指揮監督のもとにあれば労働時間にあたるという考え方が、厚生労働省から示されています。つまり、「移動は休憩のようなもの」として扱われるものではありません。

私が以前受けた相談で、訪問の合間の移動時間を休憩時間として計算され、実際には昼休みがほとんど取れていなかった、というケースがありました。こうした扱いに疑問を感じたら、まずは勤務先に確認し、それでも解決しない場合は労働基準監督署に相談することができます。

※実際にどの時間が労働時間にあたるかは、個別の事情によって判断が分かれます。争いになりそうな場合は、弁護士や社会保険労務士に相談してください。

個人宅中心と施設中心、未経験ならどちらから入るか

訪問診療のクリニックは、大きく分けると、個人のお宅を中心に回るところと、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの施設を中心に回るところがあります。未経験で入るとき、この違いは慣れやすさに直結します。

施設中心のクリニック

施設では、同じ建物に住む複数の患者さんを、1回の訪問でまとめて診ます。1つの施設で10人から20人ほどを診ることもあります。施設には看護師や介護職員がいるので、患者さんの普段の様子は施設の職員から聞き取れます。

未経験の人にとっては、毎回同じ施設に通うので、場所や手順を覚えやすいという利点があります。一方で、1日に診る人数が多く、たくさんの情報を正確にさばく力が求められます。

個人宅中心のクリニック

個人のお宅では、1件ごとに20分から30分ほどかけて、ご本人とご家族に向き合います。駐車の場所や鍵の扱いなど、お宅ごとの決まりごとが多く、覚えることが増えます。ご家族の介護の悩みを受け止める場面も多くなります。

未経験の人にとっては、最初の負担は大きくなりがちです。そのかわり、1人の患者さんの暮らしに深く関わる、在宅医療らしい経験を早くから積むことができます。

どちらが良いということではありません。つまり、「覚えやすさ」を優先するなら施設中心、「在宅らしい関わり」を優先するなら個人宅中心、という選び方ができます。求人票に個人宅と施設の割合が書かれていなければ、面接で「1日の訪問のうち、個人宅と施設はどれくらいの割合ですか」と聞いてみてください。この質問への答えで、入職後の1日の姿がかなり具体的に見えてきます。

契約の前に確かめたいこと:労働条件通知書で見る5つの項目

未経験で入る人ほど、「採用してもらえるだけでありがたい」と思って、契約の中身を確かめずにサインしてしまいがちです。でも、訪問診療のクリニックは、一般的な病棟や外来とは違う働き方をするので、書面で確かめておきたいことがいくつもあります。

使用者は、労働者を雇うときに、賃金や労働時間などの労働条件をはっきり示さなければならないと、労働基準法で定められています。つまり、口約束ではなく書面で受け取る権利が、働く側にはあるんです。2024年4月からは、就業する場所や業務が将来どう変わりうるかという「変更の範囲」も、明示しなければならない事項に加わりました。

訪問診療のクリニックで契約する前に、次の5つは必ず確かめてください。

1. 就業場所と、その変更の範囲

訪問診療では、患者さんのお宅や施設が仕事の場所になります。訪問エリアがどこまでなのか、グループの別のクリニックに異動する可能性があるのか。ここは、通勤や移動の負担に直結します。

2. オンコールの有無と、手当の支払い方

オンコールの当番がいつから始まるのか、月に何回くらいなのか。待機しているだけの手当と、実際に呼び出されたときの手当が、それぞれいくらなのかを確かめましょう。

※待機中にどこまで自由に過ごせるかによって、その時間が労働時間にあたるかどうかの判断が変わることがあります。自宅での待機でも、すぐに出動しなければならない拘束が強い場合は、争いになることがあります。

3. 試用期間の長さと、その間の条件

試用期間中は給与が低めに設定されていることがあります。期間と、その間の給与を確かめましょう。なお、試用期間中であっても、合理的な理由のない解雇が認められるわけではありません。これ、誤解している人が本当に多いんです。

4. 車の扱いと、事故のときの取り決め

社用車を使うのか、自分の車を使うのか。自分の車を使う場合、ガソリン代や駐車場代、任意保険はどうなるのか。業務中の事故について、クリニックがどんな保険に入っているのかも確かめておきたい点です。

5. 同行期間と教育の内容

「独り立ちまで同行します」という説明が、口頭だけで終わっていないか。可能であれば、入職後の教育の流れを文書でもらえるか、相談してみてください。

こうした確認をすることで、採用が不利になるのではと心配する人もいます。でも、きちんとした職場ほど、こうした質問に丁寧に答えてくれます。答えを濁すような職場なら、入る前にそれが分かってよかった、と考えてよいのです。

未経験で応募するときの準備と、面接で伝えること

最後に、未経験で応募するときに、何を準備しておくとよいかをお話しします。

見学を申し込む

訪問診療のクリニックは、中の様子が外から見えにくい職場です。可能であれば、半日だけでも同行見学をさせてもらってください。車の中の空気、医師と看護師のやり取り、ご家族との会話の雰囲気が肌で分かります。「見学歓迎」と書かれている募集を優先して探すのも、1つの方法です。

これまでの経験を「在宅で使える形」に言い換える

未経験でも、それまでの経験は必ずどこかで生きます。

・病棟の経験がある看護師なら、急変時の対応や、状態の変化に早く気づく力 ・外来の経験がある看護師なら、限られた時間で患者さんの話を聞き取る力 ・介護の経験がある人なら、高齢の方やご家族への声かけの力 ・事務の経験がある人なら、電話の対応や書類の管理の正確さ

面接では、「訪問診療は未経験ですが、〇〇の経験を、訪問先での△△に活かしたい」と具体的に伝えると、採用する側も入職後の姿を想像しやすくなります。

なぜ在宅なのかを、自分の言葉で話せるようにしておく

「病棟の夜勤がつらいから」という理由だけでは、面接で説得力が弱くなります。もちろん、それが本音でもかまいません。そのうえで、「患者さんの暮らしの場で関わりたい」「最期まで家で過ごしたいという希望を支えたい」といった、在宅医療を選ぶ理由を、自分の経験と結びつけて話せるようにしておきましょう。

自分の経験をどう言葉にすればよいか迷ったときは、キャリアの専門家に相談するのも1つの方法です。働き方や転職の悩みを相談できる仕事については、職場・転職・キャリア相談のお仕事で、どんな相談に乗ってもらえるのかがまとめられています。また、キャリアコンサルタントの資格ガイドには、キャリア相談の専門職がどんな役割を持っているのかが紹介されています。

在宅医療の働き方を見てきた立場から

20年この市場を見てきた立場から言えば、未経験から新しい職場に入って長く続く人には、共通していることがあります。それは、「分からないことを、分からないと早めに言える」ことです。

訪問診療のクリニックは、少人数で回っている職場が多く、1人が抱え込んだ小さな疑問が、あとで大きなトラブルにつながりやすい環境です。未経験で入った人が、遠慮して質問を控え、1人で調べて間違ったやり方を覚えてしまう。これは、どの職場でも見かける光景ですが、訪問診療では特に影響が大きくなります。

反対に、最初の数か月は「質問する人」になると決めて入った人ほど、半年後には周りから頼られる存在になっていることが多いです。

もう1つ、運営者として見てきた限りでは、看護の資格や医療の現場の経験を持つ人の働き方は、ここ数年で大きく広がっています。訪問診療のクリニックで在宅の経験を積んだあと、訪問看護に進む人、地域の連携を担う相談員になる人、そして臨床の経験を活かして、時間を区切った在宅の仕事を並行して受ける人もいます。看護師の資格を活かせる在宅の仕事にどんな種類があるのかは、看護師におすすめの在宅ワーク5選|臨床経験を活かす副業【2026年版】で、仕事の種類と始め方が紹介されています。

未経験であることは、弱みではありません。在宅医療の現場は、まだ多くの人が経験を積んでいる途中の分野です。書面で条件を確かめ、分からないことは早めに聞く。この2つを守れば、未経験からでも十分に力を発揮していけます。

法律はあなたの味方です。安心して、次の一歩を踏み出してください。

よくある質問

Q. 訪問診療の経験がない看護師でも、クリニックに採用されますか?

採用されるケースは多くあります。ただし、訪問診療は未経験でよくても、臨床経験3年から5年程度を条件にしているクリニックが目立ちます。在宅では近くに先輩や他の医師がいないため、基本的な処置や急変時の対応が身についていることが前提になるからです。同行期間が明記された募集を選ぶと安心です。

Q. 医療の資格がなくても、訪問診療のクリニックで働けますか?

働けます。診療アシスタントは、普通自動車免許だけを条件にしている募集が多く、運転や物品の準備、電子カルテの入力補助を担います。医療事務も未経験から入れる募集があります。ただし、採血や処置などの医療行為は資格を持つ医療職にしか認められていないため、担当しません。

Q. 未経験で訪問診療のクリニックに入った場合、慣れるまでどれくらいかかりますか?

看護師の場合、最初の1か月は同行して1日の流れを覚え、3か月ほどで処置や連絡を任され、3か月から6か月でオンコールに加わって独り立ちする流れが多いです。医療事務や診療アシスタントは1か月から2か月で日々の流れに慣れる人が多いものの、クリニックの体制で差があります。

Q. 訪問診療のクリニックと契約する前に、何を確認すればよいですか?

労働条件通知書で、就業場所とその変更の範囲、オンコールの有無と手当、試用期間の長さと条件、車の扱いと事故のときの取り決め、同行期間と教育の内容を確かめてください。使用者には労働条件を明示する義務があり、口約束ではなく書面で受け取ることができます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年8月26日最終更新:2026年9月15日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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