訪問入浴の人間関係|狭い職場での距離の取り方


この記事のポイント
- ✓3人で1台の車に乗り朝から夕方まで一緒に動くため
- ✓施設より濃くなりがちです
- ✓看護師と介護職員の間で起きやすいすれ違い
「仕事内容は好きなんです。でも、同じチームの人と朝から晩まで一緒なのがしんどくて」
訪問入浴で働く方から、このご相談を本当によくいただきます。
訪問入浴は、3人で1台の車に乗り、何軒ものお宅を一緒に回る仕事です。施設のように、嫌なことがあったら別のフロアに行く、休憩室で違う人と話す、ということができません。職場そのものが、車1台分の広さしかないんですね。
だから、人間関係の悩みが生まれやすいのは、あなたの性格のせいではありません。職場の形がそうさせているのです。
大丈夫ですよ。この記事では、訪問入浴の人間関係がなぜ濃くなりやすいのか、どんなすれ違いが起きやすいのかを整理したうえで、狭い職場で自分を守りながら働くための距離の取り方をお伝えします。
訪問入浴の人間関係が「濃く」なりやすい理由
まず、訪問入浴という職場の形を、人間関係の目線から見てみましょう。
3人で1台、朝から夕方まで
介護保険の訪問入浴介護では、原則として介護職員2人と看護職員1人の3人で1軒のお宅に伺います。このチームは、1台の入浴車に乗って、朝の出発から夕方の帰所まで、同じメンバーで動くのが基本です。
1日の訪問件数は事業所によって違いますが、4件から6件程度が一つの目安です。お宅とお宅の間の移動、昼休み、帰所後の片付けまで含めると、1日のうち7時間から8時間を、同じ2人と過ごすことになります。
車内という、逃げ場のない空間
特に人間関係に影響するのが、移動中の車内です。運転席と助手席、後ろの席。手を伸ばせば届く距離に、いつも誰かがいます。
施設で働く場合、気まずいことがあっても、それぞれの持ち場に分かれて仕事をしているうちに、気持ちが落ち着いてきます。訪問入浴では、現場で少し言い合いになったあと、そのまま同じ車に乗って次のお宅へ向かいます。気持ちを切り替える時間と場所が、ほとんどないのです。
3人という人数の難しさ
3人という人数にも、特有の難しさがあります。2人なら向き合うしかありませんし、5人以上なら自然にいくつかの輪ができます。3人の場合は、2人の会話が盛り上がると、残りの1人が取り残されやすくなります。
心理学では、人は集団の中で自分が外されていると感じると、実際の体の痛みに近い反応が起きることが知られています。つまり、「2人が話していて、自分だけ入れない」という感覚がつらいのは、気のせいではない、ということです。
小規模な事業所では、職場全体が狭い
訪問入浴の事業所は、入浴車が1台から数台の小規模なところも多くあります。この場合、チームの外にも職場の人間関係がほとんどありません。チームのメンバー、看護師、管理者。それで職場の全員、ということもあります。
相性の合わない人がいたとき、その人を避けて働くことが難しい。これが、訪問入浴の人間関係の土台にある構造です。
訪問入浴でよくある人間関係の悩み
では、実際にどんな悩みが多いのでしょうか。私のところに寄せられるご相談や、現場の方から聞く話の中から、よくあるものを挙げてみます。
看護師と介護職員の間の、見えない線
1つ目は、看護師と介護職員の関係です。訪問入浴では、入浴してよいかどうかを看護師が判断します。この役割の違いが、「看護師の言うことには逆らえない」「介護職員の意見を聞いてもらえない」という感覚につながることがあります。
逆に、看護師の側からは「判断の責任は全部自分にかかっているのに、介護職員は分かってくれない」という声も聞きます。どちらかが悪いのではなく、責任の重さの違いが、すれ違いを生んでいるのです。
先輩のやり方と、自分のやり方
2つ目は、手順の違いです。浴槽の置き方、ホースのつなぎ方、洗髪の順番。訪問入浴の手順は事業所で決まっていても、細かいところは先輩ごとにやり方が違います。
チームが日によって変わる事業所では、「昨日の先輩にはこう教わったのに、今日の先輩には違うと言われた」ということが起きます。こういう相談、とても多いんです。
仕事量の偏り
3つ目は、仕事量の偏りです。運転を担当する人は、運転に加えて浴槽の搬入や湯温の管理も担当するので、体を使う場面が多くなります。記録を書く人、ご家族と話す人、片付けをする人。役割がはっきり決まっていないと、「いつも自分ばかり重いものを運んでいる」という不満がたまりやすくなります。
車内での会話と沈黙
4つ目は、車内での過ごし方です。ずっと話しかけてくる人がいて疲れる。逆に、誰も話さない沈黙が気まずい。仕事の愚痴や、利用者さんのうわさ話が続いて居心地が悪い。車内の空気は、1日の疲れ方を大きく左右します。
相性の合わないメンバーとの固定
5つ目は、相性の合わない人とチームが固定されてしまうことです。小規模な事業所ほど、チームの組み替えが難しく、合わない人と毎日一緒に動くことになります。
長く働く人と、新しく入った人の間
6つ目は、在籍の長い職員と、新しく入った職員の間の距離です。訪問入浴は、同じメンバーで長く続いている事業所も多く、長く働く人どうしの間には、言葉にしなくても通じる段取りや、昔からの冗談があります。
新しく入った人にとっては、その輪に入れない感覚が、孤立感につながりやすくなります。一方、長く働く人の側も、「新人に何度も同じことを説明するのが負担」「自分たちのやり方を変えられたくない」と感じていることがあります。
悩みの根っこは同じ
こうして並べてみると、6つの悩みはばらばらに見えますが、根っこは共通しています。狭い空間で長い時間を一緒に過ごすのに、役割や段取り、気持ちを言葉にする機会が少ない、ということです。だからこそ、次の章から紹介する「言葉にする工夫」と「距離を取る工夫」が効いてきます。
看護師と介護職員の間で、すれ違いが起きる場面
6つの悩みの中でも、特にご相談が多い看護師と介護職員の関係について、もう少し詳しく見てみましょう。すれ違いが起きやすい場面は、だいたい決まっています。
入浴を中止するとき
看護師が健康チェックの結果から「今日は入浴を控えて、清拭にしましょう」と判断したとき、介護職員の側では「せっかく浴槽を運んだのに」「利用者さんは入りたがっているのに」と感じることがあります。
このとき、看護師が理由を説明しないまま中止を伝えると、介護職員は判断を押しつけられたように感じます。看護師の側からすれば、利用者さんの前で細かい数値の話をするわけにもいかず、簡潔に伝えるしかない場面もあります。
入浴中の体調の変化
入浴中に顔色が悪くなった、息が荒くなったといった変化があったとき、看護師は即座に指示を出します。「上げて」「お湯を止めて」。短く、強い言葉になるのは、利用者さんを守るためです。
ところが、あとから振り返ると、指示された側は「怒鳴られた」「きつく言われた」と感じていることがあります。緊急の場面の言葉の強さが、そのまま人間関係のしこりとして残ってしまうのです。
記録と報告の中身
記録や報告の書き方でも、すれ違いが起きます。看護師は皮膚の状態や数値の変化を重視し、介護職員は利用者さんの表情や言葉、ご家族の様子を大切にします。どちらも必要な情報なのですが、「そんなことは書かなくていい」「大事なことが抜けている」と、互いのやり方を否定し合ってしまうことがあります。
すれ違いを小さくするために
すれ違いを小さくするために、私がおすすめしているのは、「緊急の場面が終わったら、ひと言だけ振り返る」ことです。
たとえば看護師の立場なら、次の移動中に「さっきは急に強く言ってごめんね。血圧が急に下がったから、早く上げたかったの」と伝える。介護職員の立場なら、「さっきの判断、どこを見て決めたのか教えてもらえますか。次から自分でも気づけるようになりたくて」と聞いてみる。
これだけで、同じ出来事が「きつく言われた嫌な記憶」から「一緒に利用者さんを守った経験」に変わります。
看護師の側にある孤独
介護職員の立場から見ると見えにくいのが、看護師の孤独です。訪問入浴の現場では、看護師はチームの中にたった1人の医療職です。病院なら医師やほかの看護師にすぐ相談できる場面でも、訪問先ではその場で自分が判断しなければなりません。
入浴を続けて体調が悪化したら、自分の責任になる。中止すれば、利用者さんやご家族、チームの2人をがっかりさせる。この板挟みの中で、看護師が口数少なく、表情が硬くなるのは、ある意味で自然なことです。介護職員の側が「判断、いつもありがとうございます」とひと言添えるだけで、看護師の肩の力が抜けることもあります。
車内と昼休みで、自分を守る距離の取り方
訪問入浴の人間関係で、いちばん工夫のしがいがあるのが、車内と昼休みの過ごし方です。ここでの距離の取り方を身につけると、1日の疲れ方が大きく変わります。
距離の取り方は「冷たさ」ではない
まずお伝えしたいのは、距離を取ることは、相手を嫌うことでも、冷たくすることでもない、ということです。
心理学では、人と人の間には、自分と相手の気持ちや責任を分ける「境界線」があると考えます。境界線があいまいになると、相手の機嫌が自分の気分を左右したり、相手の問題を自分が背負い込んだりして、疲れてしまいます。つまり、適度な距離は、長く一緒に働くための工夫なのです。
車内での小さな工夫
車内で自分を守るための、具体的な工夫をいくつか挙げます。
・次のお宅の記録を見返す時間を、移動中の「自分の作業」として持つ ・話が長く続いて疲れたときは、「ちょっと次の家の段取りを考えますね」と一言添えて、窓の外を見る ・うわさ話や愚痴には、同意も否定もせず、「そうなんですね」と受け止めるだけにする ・沈黙が気まずいときは、天気や道路の混み具合など、誰も傷つかない話題を1つだけ出す
特に、うわさ話への対応は大切です。3人の職場では、誰かの悪口に加わると、次は自分が話題にされるのではという不安が生まれます。受け止めるけれど、乗らない。この姿勢を続けていると、自然に「この人の前ではうわさ話をしない」という空気ができていきます。
昼休みに「1人の時間」を作る
昼休みも同じメンバーで過ごすことが多いのが、訪問入浴の特徴です。事業所に戻る場合も、車内で休む場合も、1人になる時間がなかなか取れません。
こういうときは、数分だけでも1人の時間を作ってください。飲み物を買いに行く、車の外に出て少し歩く、トイレのついでに深呼吸をする。ほんの数分でも、ほかの人の気配から離れると、自律神経が落ち着き、午後の気持ちの余裕が変わります。
「1人でいたいと思うのは、協調性がないのでは」と心配する方もいます。そんなことはありません。1人の時間で気持ちを整えられる人ほど、チームの中で穏やかにいられるのです。
私が相談で聞いた話
以前、訪問入浴で働いて1年ほどの方が、「昼休みもずっと先輩の話を聞いていて、休んだ気がしない」と相談に来られました。先輩のことは嫌いではないし、断ったら関係が悪くなりそうで、何も言えなかったそうです。
一緒に考えて、その方は「お昼を食べたら、10分だけ車の外で電話をしてきますね」と伝えることにしました。実際に家族に電話をかける日もあれば、ただ散歩をする日もあったそうです。
数週間後、「先輩も実は1人になりたかったみたいで、今はお互いに少し離れて休んでいます」と教えてくれました。距離を取りたいと思っているのは、自分だけではないことも多いのです。
現場で揉めないための、声かけの言葉
人間関係のすれ違いの多くは、言葉の選び方で小さくできます。訪問入浴の現場で使いやすい声かけを、場面ごとに紹介します。
始める前の確認
訪問の前に、段取りを言葉にして確認すると、「言った、言わない」「そうじゃない」というすれ違いが減ります。
・「今日は私が浴槽を運んで、ホースは〇〇さんにお願いしてもいいですか」 ・「この家は階段があるので、先に浴槽を下ろしますね」 ・「前回、背中に赤みがあったと記録にあったので、洗うときに気をつけます」
役割を先に口に出しておくと、仕事量の偏りにも気づきやすくなります。
手順が違うと感じたとき
先輩のやり方が、ほかの先輩に教わったやり方と違うとき、「〇〇さんにはこう教わりました」と伝えると、比べられたと感じて相手が身構えることがあります。
おすすめは、「私はこう覚えていたんですが、この家ではこちらのやり方のほうがいいですか」と、家ごとの違いとして聞く方法です。相手を否定せず、自分の覚え方も伝えられます。事業所としての正しい手順が分からなくなったときは、あとで管理者に確認しましょう。
困っていることを伝えるとき
不満を伝えるときは、「あなたは」ではなく「私は」を主語にする伝え方が役に立ちます。心理学ではアイ・メッセージと呼ばれる方法です。
・「いつも私ばかり運ばされている」ではなく、「最近腰が少しつらくて、浴槽を運ぶのを交代してもらえると助かります」 ・「話が長くて疲れる」ではなく、「移動中に次の家の記録を見ておきたいので、少し静かにしていてもいいですか」
主語を自分にすると、相手を責める響きが消え、相手も応じやすくなります。
利用者さんの前では指摘しない
もう1つ大切なのが、利用者さんやご家族の前で、仲間の手順の誤りを指摘しないことです。入浴中に「そうじゃない」「違うでしょう」と言われると、言われた職員は恥ずかしさで固まり、利用者さんも不安になります。
安全に関わることでその場で止める必要があるときは、「お湯を少し止めますね」「一度ここで持ち直しましょう」と、利用者さんへの声かけの形で伝えます。細かい手順の話は、車に戻ってから2人で確認すれば十分です。自分がされて嫌なことを、相手にもしない。これが狭い職場を守る基本です。
終わったあとのひと言
1日の終わりに、「今日もありがとうございました」「〇〇さんが声をかけてくれたので、移乗が楽でした」と、具体的にひと言伝える習慣も大切です。小さな感謝の言葉は、翌日のチームの空気を柔らかくしてくれます。
利用者さんやご家族との距離
訪問入浴の人間関係は、チームの中だけではありません。利用者さんやご家族との距離の取り方も、働く人の心を守るうえで大切です。
入浴という、特別な場面
訪問入浴は、自分の入浴場面を見られてしまうことで、羞恥心(恥ずかしいと感じること)を伴います。訪問介護のスタッフとは言っても他人であるため、サービスの利用が結果としてストレスになることがあります。 出典: wrappon.com
入浴は、利用者さんにとって体を人に預ける、とても繊細な時間です。そのため、利用者さんが緊張から不機嫌になったり、きつい言葉をかけてきたりすることもあります。
こうしたとき、「自分が嫌われている」と受け取らないでください。恥ずかしさや不安が、言葉の強さとして表れているだけのことが多いのです。タオルでしっかり体を覆う、声をかけてから触れる、職員同士の雑談を控える。こうした配慮を続けるうちに、少しずつ表情が和らいでいきます。
ご家族の要望との付き合い方
ご家族からは、「もう少し長くお湯につからせてほしい」「この石けんを使ってほしい」など、さまざまな要望をいただきます。できることには応えたいですが、看護師の判断や事業所の決まりで応えられないこともあります。
その場で1人で判断せず、「看護師と相談しますね」「事業所に確認してお返事します」と、チームや事業所につなぐことが、自分を守ることにもなります。
近づきすぎないための線
同じお宅に長く通っていると、ご家族と親しくなり、個人的な連絡先を聞かれたり、お礼の品を渡されそうになったりすることがあります。多くの事業所では、個人的なやり取りや金品の受け取りを禁止しています。断るのは心苦しいものですが、「事業所の決まりなんです。お気持ちだけいただきますね」と伝えれば大丈夫です。
線を引くことは、ご家族との関係を壊すことではありません。むしろ、特定の職員だけが近くなりすぎると、ほかの職員が同じ対応を求められて困る、ということも起きます。
利用者さんとの別れ
訪問入浴では、長く通った利用者さんが入院したり、亡くなったりすることがあります。毎週会っていた方との別れは、思っている以上に心に残ります。悲しみを感じるのは、真剣に関わってきた証拠です。チームで思い出を話す時間を持つことも、気持ちの整理につながります。
相性が合わないときに、事業所の中でできること
工夫をしても、どうしても相性が合わない人はいます。そんなとき、我慢を続けるか辞めるかの2つしかないと思い込まないでください。事業所の中でできることがあります。
管理者に相談する
まずは、管理者や責任者に相談することです。チームの組み合わせを決めているのは管理者なので、組み替えができるかどうかを判断できるのも管理者です。
相談するときは、相手の悪口ではなく、「業務の中で困っていること」として伝えるのがポイントです。「移乗のときの声かけのタイミングが合わず、危ないと感じる場面がある」「役割の分担があいまいで、搬入が偏っている」。業務の問題として伝えると、管理者も対応を考えやすくなります。
事実を記録しておく
言葉がきつい、無視される、仕事を押しつけられる、といったことが続いている場合は、日付と出来事、言われた言葉をメモしておきましょう。記憶だけで話すと、「気のせいでは」と受け取られてしまうことがあります。
ハラスメントの相談窓口
職場でのパワーハラスメントについて、事業主には相談窓口の設置などの防止措置をとることが法律で義務づけられています。2022年4月からは、中小企業にもこの義務が適用されています。事業所に相談窓口があるか、就業規則や掲示物で確認してください。
利用者さんやご家族からのハラスメントについては、厚生労働省が介護現場のハラスメント対策のマニュアルを公表しており、事業所として組織で対応することが求められています。また、2025年には、顧客などからの著しい迷惑行為、いわゆるカスタマーハラスメントへの対策を事業主に義務づける法律の改正も成立しました。
事業所の中で解決が難しいときは、都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談することもできます。
職場を変えるという選択
それでも状況が変わらないときは、職場を変えることも、自分を守るための正当な選択です。訪問入浴は事業所ごとにチームの組み方や規模が大きく違うので、職場を変えると人間関係の形そのものが変わることがあります。
人間関係で疲れた心を、1日の中で整える
最後に、人間関係で心が疲れてしまったときの、日々の整え方をお伝えします。訪問入浴は体を使う仕事なので、体の疲れと心の疲れが重なりやすいのです。
疲れのサインに気づく
まず、自分の疲れのサインを知っておきましょう。
・朝、事業所に向かう途中で気持ちが重くなる ・チームの特定の人の声を聞くだけで、体がこわばる ・休みの日にも、職場のやり取りを何度も思い出してしまう ・寝つきが悪い、夜中に目が覚める日が続く
これらが2週間以上続くときは、心がかなり無理をしているサインです。
帰り道で「切り替えの儀式」を持つ
訪問入浴の仕事は、帰所して片付けが終わるまで、ずっと人と一緒です。だからこそ、帰り道に自分なりの切り替えの儀式を持つと効果があります。好きな音楽を1曲聞く、いつもと違う道を少し歩く、家に着く前に深呼吸を3回する。儀式というと大げさですが、「ここから先は仕事の時間ではない」と体に教える合図になります。
出来事と気持ちを書き出す
職場のやり取りが頭から離れないときは、紙に書き出してみてください。「何があったか」「そのとき自分はどう感じたか」「本当はどうしてほしかったか」の3つを分けて書くだけで、気持ちが少し整理されます。書いたものは、管理者に相談するときの記録にもなります。
専門の相談先を使う
気持ちの落ち込みが続くときは、1人で抱え込まないでください。事業所によっては、外部の相談窓口や、ストレスチェックの結果をもとにした面談の仕組みがあります。厚生労働省の働く人のメンタルヘルスの相談窓口や、医療機関の受診も選択肢です。相談することは弱さではなく、長く働くための大切な行動です。
人間関係の良い訪問入浴の職場を見極めるには
これから訪問入浴で働く方、職場を変えようと考えている方のために、応募の段階で人間関係を見極めるポイントをまとめます。
チームの組み方を聞く
面接で「チームは固定ですか、日によって変わりますか」と聞いてみてください。固定なら相性の影響が大きく、組み替えがあれば相性の問題は薄まる代わりに、段取りの確認が毎回必要になります。どちらが合うかは、人によって違います。
見学で見ておきたいこと
可能であれば、帰所後の時間帯に事業所を見学させてもらいましょう。片付けの時間の職員同士の会話、看護師と介護職員のやり取り、管理者への話しかけ方。1日の終わりの空気には、その職場の人間関係がよく表れます。
面接で聞いてみたい質問
人間関係は、面接で直接聞きにくいテーマです。それでも、次のような聞き方なら、角を立てずに実態に近づけます。
・「新しく入った方は、最初どなたと一緒に回ることが多いですか」 ・「チームで意見が分かれたときは、どのように決めていますか」 ・「看護師さんと介護職員さんで、1日の振り返りをする時間はありますか」 ・「最近入った方は、どのくらい続けていらっしゃいますか」
答えの中身だけでなく、答えるときの管理者の表情や言葉の選び方にも注目してください。職員のことを具体的な名前やエピソードで語れる管理者は、チームの様子をよく見ていることが多いものです。
職員の定着を確かめる
厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、事業所ごとの従業者の人数や経験年数、前年度の採用者数と退職者数などを確認できます。経験年数の長い職員が多い事業所は、人間関係も含めて働き続けやすい環境がある可能性があります。
収入と働き方の相場も押さえる
人間関係に悩んで職場を移るとき、収入が大きく下がってしまうと、それが新しいストレスになります。介護職員の平均的な年収や時給の水準をまとめた介護職員の年収・単価相場で相場を確認しておくと、条件を比べるときに冷静に判断しやすくなります。
運営者として見てきたこと
在宅で働く人の市場を長く見てきた立場から言えば、少人数で長く一緒に働けているチームには共通点があります。それは、仲が良いことより、「困ったことを困ったと言える」ことを大切にしている点です。訪問入浴のような狭い職場では、仲の良さは日によって揺れますが、困りごとを言葉にできる関係は、一度できると簡単には崩れません。
人間関係の悩みは、1人で抱えていると、どんどん大きく感じられるものです。職場の悩みや働き方の迷いを、専門的に聞いて整理する相談者がいます。そうした相談の専門職の資格の内容をまとめたキャリアコンサルタントを読むと、どんなことを相談でき、どんな支援を受けられるのかが分かります。
訪問入浴の人間関係が濃くなりやすいのは、職場の形のせいです。だからこそ、距離の取り方、言葉の選び方、相談の仕方という「工夫」で、ずいぶん楽になります。無理に仲良くしなくていい。困ったら言葉にしていい。あなたは一人じゃありません。
よくある質問
Q. 訪問入浴の人間関係は、施設の介護より大変ですか?
大変かどうかは人によりますが、濃くなりやすいのは確かです。3人で1台の車に乗り、朝から夕方まで同じメンバーで動くため、施設のように持ち場を分けて気持ちを切り替えることが難しい職場です。一方で、チームが固定されると互いの体調や癖を理解しやすく、信頼関係ができれば働きやすいという面もあります。
Q. 車内で話し続ける先輩に疲れたときは、どうすればいいですか?
相手を否定せずに、自分の作業を理由に少し距離を取るのがおすすめです。「次の家の記録を見ておきますね」「段取りを考えますね」とひと言添えて、記録を見返したり窓の外を見たりすると角が立ちません。昼休みに数分だけ車の外に出るなど、1人になる時間を作ると、疲れ方がずいぶん変わります。
Q. 看護師と意見が合わないときは、どう伝えればいいですか?
入浴可否の判断は看護師の役割なので、判断そのものに反論するより、理由を聞く形がおすすめです。移動中などに「さっきの判断、どこを見て決めたのか教えてもらえますか」と尋ねると、学ぶ姿勢として受け取ってもらいやすくなります。業務上の危険を感じる場合は、事実をメモして管理者に相談してください。
Q. チームのメンバーと相性が合わないとき、辞める前にできることはありますか?
まず管理者に、相手の悪口ではなく業務上の困りごととして相談し、チームの組み替えができないか確認しましょう。言葉がきついなどの出来事が続く場合は、日付と内容を記録しておきます。事業所にはパワーハラスメントの相談窓口の設置が義務づけられており、解決が難しい場合は労働局の総合労働相談コーナーにも相談できます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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