ハンドメイド作品の「売上No.1」表記は大丈夫か|個人販売者と景表法 2026

長谷川 奈津
長谷川 奈津
ハンドメイド作品の「売上No.1」表記は大丈夫か|個人販売者と景表法 2026

この記事のポイント

  • ハンドメイド No.1表記は個人販売者にも景品表示法が適用されるのか
  • 摘発事例までを行政書士が解説します

先日、minneで刺繍アクセサリーを販売している方からこんな相談を受けました。「商品説明に『刺繍アクセサリー部門売上No.1』と書きたいのですが、法律的に大丈夫でしょうか」と。結論から言うと、これは合理的な根拠がなければ景品表示法違反になり得る、非常にリスクの高い表現です。ハンドメイド No.1表記を検討している個人販売者の方は、まず「自分にも法律が適用されるのか」を正しく理解する必要があります。つまり、悪気がなくても「なんとなく売れている気がするから」で書いてしまうと、後から取り返しのつかないトラブルに発展する可能性があるということです。

ハンドメイド市場における「No.1」表記の広がりと背景

minne、Creema、BASE、メルカリShopsといったプラットフォームの普及によって、個人がハンドメイド作品を販売するハードルは大きく下がりました。総務省の統計でも副業・兼業を行う人の増加傾向が示されており、空き時間に手作り雑貨やアクセサリーを販売する人は年々増えています。市場が拡大するにつれて、商品を目立たせたいという心理から「〇〇部門No.1」「口コミ評価No.1」といったキャッチコピーを使いたくなる販売者が増えているのも事実です。

しかし、この「No.1」という言葉は、消費者に強い訴求力を持つ一方で、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)において最も摘発リスクの高い表現のひとつとされています。企業の広告担当者であれば法務部門がチェックする体制がありますが、個人のハンドメイド作家にはそうした仕組みがありません。だからこそ、知らないまま違反してしまうケースが後を絶たないのです。この記事では、ハンドメイド No.1表記を検討している方に向けて、法的リスクの正体と、安全に商品の魅力を伝える方法を具体的に解説します。

No.1表示とは何か、なぜ規制対象になるのか

No.1表示の定義と種類

No.1表示とは、商品やサービスについて「売上No.1」「満足度No.1」「口コミ数No.1」のように、何らかの指標において最も優れている、または最も選ばれているという内容を示す表示のことです。消費者庁の分類では、大きく分けて「売上・シェアNo.1」「満足度・評価No.1」「専門家推奨No.1」の3系統があるとされています。ハンドメイド作品の販売シーンでは、特に「〇〇カテゴリ売上No.1」「リピート率No.1」といった表現が使われやすい傾向にあります。

なぜ景品表示法で問題になるのか

景品表示法は、商品やサービスの内容・取引条件について、実際よりも著しく優良または有利であると消費者に誤認させる表示を禁止しています。No.1表示は「他のすべての競合よりも優れている」という非常に強い主張であるため、その裏付けとなる合理的な根拠がなければ、簡単に「優良誤認表示」または「有利誤認表示」に該当してしまいます。

商品やサービスの内容の優良性や取引条件の有利性を示すはずのNo.1表示が、合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合には、実際のものまたは競争事業者のものよりも著しく優良または有利であると一般消費者に誤認され、優良誤認表示または有利誤認表示として景品表示法上問題となり得ます。 出典: businesslawyers.jp

つまり、「なんとなく売れている感じがする」「お客様から褒められることが多い」といった主観的な印象だけでは、No.1表示の根拠にはなりません。これ、知らない人が本当に多いんです。「事実に近ければセーフ」という感覚で使ってしまう方が多いのですが、景品表示法が問うのは事実かどうかではなく「客観的で合理的な根拠があるかどうか」という点です。

個人のハンドメイド作家にも景品表示法は適用されるのか

「事業者」に該当するかがポイント

ここが多くのハンドメイド作家が誤解しているポイントです。景品表示法は「事業者」による表示を規制対象としていますが、この「事業者」には法人だけでなく、反復継続して収入を得る目的で販売活動を行う個人も含まれます。副業でminneやCreemaに出店し、継続的に売上を得ている場合、その時点で法律上は「事業者」として扱われる可能性が高いということです。

「趣味の延長だから関係ない」という考え方は、残念ながら通用しません。月に数点しか売れていない小規模な出店であっても、営利目的で反復継続的に販売している以上、景品表示法の適用対象になり得ます。※このケースで実際に措置命令の対象になるかどうかは個別の事情によるため、不安がある場合は最寄りの消費生活センターや弁護士、行政書士に相談することを強くおすすめします。

プラットフォーム利用規約との二重リスク

さらに注意したいのは、法律だけでなくプラットフォームの利用規約でも根拠のない優良表示が禁止されているケースが多いという点です。minneやCreemaの規約には、誇大広告や事実と異なる表示を禁止する条項が設けられています。景品表示法違反に該当しなくても、規約違反として出品停止やアカウント停止の措置を受ける可能性があるため、二重の意味で慎重な表現が求められます。

適切なNo.1表示とするための3つの要件

消費者庁のガイドラインでは、No.1表示が適法と認められるためにおおむね次の3つの要件を満たす必要があるとされています。

調査の客観性

まず、調査自体が対象商品を提供する事業者から独立した、客観的な方法で実施されている必要があります。自分自身で「自分の作品が一番良い」とアンケートを作成して集計するような方法は、客観性を欠くため根拠として認められません。

調査対象の適切性

次に、調査対象となる消費者が、実際にその商品を利用したことがある人でなければなりません。利用経験のない人にイメージだけで回答してもらったアンケート結果は、根拠として不十分とされます。

上記bについては、たとえば、「顧客満足度No.1」との表示は、顧客が対象商品等に満足したかどうかを数値化するものであるところ、少なくとも、対象商品等を実際に利用したことがある者でなければ、その商品等に満足したかどうかを適切に判断することはできないと考えられます。そのため、No.1表示の対象商品等を利用したことがない者を調査対象者とした場合の調査結果や、利用経験の有無を確認することなく調査対象者を選定した場合の調査結果では、合理的な根拠とは認められない可能性があります。 出典: businesslawyers.jp

表示内容と調査結果の整合性

最後に、表示している内容が、実際の調査結果と正確に対応している必要があります。たとえば「〇〇カテゴリで満足度1位」という調査結果であるにもかかわらず、単に「満足度No.1」とだけ表示すると、対象範囲を偽って伝えることになり問題視されます。カテゴリ、期間、対象地域などの条件を省略せず明記することが重要です。

消費者庁の実態調査からみる摘発の実態

景品表示法における違反リスクは、決して抽象的な話ではありません。消費者庁は令和6年9月にNo.1表示に関する実態調査報告書を公表しており、No.1表示が措置命令の主要な対象になっていることが明らかになっています。

No.1表示が優良誤認表示または有利誤認表示に当たる場合、広告を行った事業者は、消費者庁長官から措置命令や課徴金納付命令を受ける可能性があります。このほか、故意に優良誤認表示や有利誤認表示を行ったときは、100万円以下の罰金に処するという直罰規定があります(景品表示法48条)。 令和5(2023)年度に消費者庁により措置命令が行われた合計44件のうち13件がNo.1表示に関する事件であり、消費者庁の関心の高さがうかがわれます。 出典: businesslawyers.jp

この数字が示す通り、措置命令全体の約30%がNo.1表示関連というのは非常に高い割合です。もちろん摘発事例の大半は大企業の広告ですが、これは「消費者庁がNo.1表示という表現形式そのものに強い注意を払っている」ことの証拠でもあります。個人のハンドメイド作家であっても、SNSで話題になったりメディアに取り上げられたりすれば、その表示内容がチェックされる可能性はゼロではありません。

先日、あるアクセサリー作家さんから聞いた話です。人気インスタグラマーに紹介されたことをきっかけに一時的に注文が殺到し、その勢いで商品説明に「即完売の人気No.1アクセサリー」と書き加えたところ、後日フォロワーから「根拠は何ですか」と指摘のコメントがついてしまったそうです。幸い法的措置には至りませんでしたが、信頼を大きく損なう結果になりました。SNS時代は、行政の摘発よりも先に、消費者自身が根拠を問いただすケースが増えています。

ハンドメイド作家が注意すべき具体的な表現パターン

「売上No.1」「販売数No.1」の落とし穴

自分のショップ内で最も売れている商品を「売上No.1」と表現するだけであれば、その範囲を明確にしていれば問題になりにくいケースが多いとされています。しかし「(サイト名を明記せず)No.1」「業界No.1」のように、範囲を曖昧にしたまま強い表現を使うと、消費者は「市場全体で1位」と誤認しやすく、優良誤認表示のリスクが高まります。

「口コミ評価No.1」「リピート率No.1」の落とし穴

口コミ件数やリピート率についても同様です。自店舗内のレビュー件数を根拠に「口コミNo.1」と書く場合、比較対象や集計期間を明示しなければ、消費者はカテゴリ全体での1位だと受け取ってしまいます。特にリピート率は算出方法によって数値が大きく変わるため、算出根拠を明確にできない限り使用は避けたほうが安全です。

SNS投稿の何気ない一言にも注意

商品ページだけでなく、Instagram・X(旧Twitter)の投稿文にも同じ規制が及びます。「おかげさまで人気No.1になりました」といった感謝の言葉として書いた一文も、法律上は表示の一部とみなされます。ポイントは「販売用の広告として発信しているかどうか」であり、投稿の目的が販促であれば私的な独り言のつもりでも規制の対象になり得るという点は覚えておいてください。

No.1表記を使わずに商品の魅力を伝えるポイント

無料でできる代替アピールの方法

根拠のあるNo.1表示を用意するのが難しい個人販売者にとって、現実的な選択肢は「事実をそのまま具体的に伝える」ことです。たとえば「累計販売300点突破」「開店から3年間販売継続中」「レビュー評価4.8(50件中)」といった、検証可能な具体的事実は根拠不要で表示できます。これらはNo.1という強い主張をせずとも、十分に信頼感を与えられる表現です。

写真や動画で制作工程を見せる、素材へのこだわりを丁寧に説明する、購入者の声をそのまま(許可を得たうえで)掲載するといった方法も、無料でできる有効なアピール手段です。No.1という言葉に頼らなくても、丁寧な情報開示のほうが結果的に購入者の信頼を得やすいというのが、多くの成功しているハンドメイド作家に共通する傾向です。

年収・収益面から見た信頼構築の重要性

ハンドメイド販売を副業として続けている方の年収・収入相場は、活動時間や販路によって幅がありますが、月数千円程度の小規模な収入から、専業化して年収300万円を超える方まで様々です。継続的に収益を伸ばしている作家に共通するのは、誇張表現に頼るのではなく、リピーターとの信頼関係を地道に積み上げている点です。根拠のないNo.1表示で一時的に注目を集めても、後から指摘を受ければブランドイメージの毀損につながり、長期的な収益にはマイナスに働きます。

信頼を積み重ねる過程では、価格や品質を客観的な事実として提示し続ける姿勢そのものが最大のマーケティングになります。「法律はあなたの味方です」とよく口にしますが、これは規制を守ることが単なる義務ではなく、結果的に長く売れ続ける仕組みづくりに直結するという意味でもあります。

運営者の視点から見るハンドメイド販売の信頼構築

フリーランス・在宅ワーク市場を長年見てきた立場から言えば、単発の派手な表現で一時的に注目を集める販売者よりも、地道に情報開示を続けて信頼を積み上げる販売者のほうが、結果的に長く安定した収益を得ている傾向があります。「この人から買うと安心できる」という関係性を作れる作家ほど、価格競争に巻き込まれにくく、リピーターの比率も高くなります。

もうひとつ、運営者として見てきた実感として伝えたいのは、仲介手数料の構造が販売者の手取りに与える影響の大きさです。多くの委託・仲介プラットフォームでは手数料が販売額の10%前後発生しますが、手数料0%で直接取引ができる仕組みを利用すれば、同じ販売価格でも手元に残る金額はより厚くなります。これは発注者にとっても同じ予算でより多くを依頼できるという意味で、双方にメリットのある構造です。誇張表現に頼らずとも、こうした取引条件の透明性そのものが、価格以上の説得力を持つ場面は少なくありません。

独自データ考察|副業としてのハンドメイド販売と関連分野の広がり

ハンドメイド販売を副業として始める人の多くは、並行してECサイト運営や関連スキルの習得にも関心を持つ傾向があります。実際にハンドメイド販売EC副業 やり方ガイド|初心者から成功するコツと注意点では、minneやCreema以外の販路としてBASEなど自前のECサイトを構築する方法と、その際の注意点を詳しく解説しています。表示ルールの観点からも、自前のECサイトであれば商品説明の自由度は上がりますが、その分だけ景品表示法への配慮もより自己責任で行う必要が出てきます。

またハンドメイド販売と組み合わせやすい副業として、デジタルコンテンツ販売への関心も高まっています。Notionテンプレート販売で副業収入|月1万〜10万円を稼ぐ方法【2026年版】では、在庫を抱えずに販売できるデジタル商品のビジネスモデルを紹介しており、ハンドメイド作品の販売と並行した収入の分散先として検討する作家も増えています。表示上のリスクという観点では、デジタル商品であっても「販売数No.1」のような表現には同じ規制が及ぶため、注意点は共通しています。

そもそもminne・Creemaといった主要プラットフォームでの販売の基本を押さえたい方は、ハンドメイド販売の副業|minne・Creemaで月5万円稼ぐコツも参考にしてください。出品の基本設計から価格設定の考え方まで扱っており、No.1表示に頼らない商品ページの作り方を検討する土台になります。

ハンドメイド作家の中には、法務・契約分野の知識を深めて自分自身のリスク管理力を高めたいという方もいます。そうした方向けに、著述業やライティングに関連する年収・単価の相場観を知りたい場合は著述家,記者,編集者の年収・単価相場が参考になりますし、商品説明文の質を高めたい場合は資格面からビジネス文書検定の取得を検討する作家も一定数存在します。表示文言の正確性は、法律知識だけでなく文章力によっても支えられる部分が大きいためです。

さらに、ハンドメイド販売と並行してITスキルを身につけ、ECサイトの構築や運用を内製化したいと考える方には、アプリケーション開発のお仕事ソフトウェア作成者の年収・単価相場といった情報も、将来的な事業拡大の選択肢として参考になるはずです。ハンドメイド販売は単体の副業として完結させることもできますが、周辺スキルを組み合わせることで収益構造を安定させている作家も少なくありません。

景品表示法は、事業規模の大小にかかわらず適用される法律です。個人のハンドメイド作家であっても、根拠のない「No.1」表示には慎重であるべきですし、逆に言えば、根拠のある正確な情報発信さえ続けていれば、法律を恐れる必要はまったくありません。表示のルールを正しく理解することは、購入者との信頼関係を長期的に守るための最初の一歩です。

よくある質問

Q. ハンドメイド作品に「人気No.1」と書いたら必ず違法になりますか?

必ずしも違法とは限りませんが、客観的な調査に基づく合理的な根拠がなければ優良誤認表示に該当するリスクが高い表現です。範囲や期間を明示できない場合は使用を避けるのが安全です。

Q. 趣味程度の小規模な出店でも景品表示法の対象になりますか?

営利目的で反復継続的に販売している場合は個人でも「事業者」に該当し得ます。出品数や売上規模だけで適用外とは判断できないため、慎重な表現を心がけてください。

Q. No.1表示を使わずに商品の魅力を伝える方法はありますか?

累計販売数、継続年数、実際のレビュー評価件数など、検証可能な具体的事実を提示する方法が有効です。誇張表現に頼らない情報開示のほうが長期的な信頼につながります。

Q. すでに根拠のないNo.1表記を使ってしまった場合はどうすればいいですか?

まずは該当表示を削除・修正し、以後は根拠のある表現に切り替えることが基本です。悪質性や規模によっては措置命令の対象になり得るため、不安がある場合は消費生活センターや弁護士、行政書士に早めに相談してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年3月15日最終更新:2026年8月28日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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