正社員とバイトの掛け持ちで週40時間を超えたら|残業の扱いと手続きの整理


この記事のポイント
- ✓正社員がバイトを掛け持ちして週40時間以上働くとどうなるのかを整理しました
- ✓割増賃金を負担するのはどちらの会社か
- ✓社会保険と雇用保険の扱い
結論から書きます。正社員がバイトを掛け持ちして週40時間以上働くこと自体は、法律で禁止されていません。ただし、本業がフルタイム勤務の場合、副業側で働いた時間は原則として最初の1時間目から法定時間外労働になり、25%以上の割増賃金の対象になります。ここが、アルバイト同士の掛け持ちとの決定的な違いです。
この構造を知らずに「週40時間を超えたら違法らしい」とだけ聞いて不安になっている人がとても多い。実際には違法になるのは会社側の手続き不備であって、働く本人が罰せられる話ではありません。とはいえ、副業先が割増賃金の支払いを嫌がって採用を渋る、就業規則の許可を取らずに始めて後からもめる、といった実害は普通に起こります。この記事では、労働時間の通算がどう働くのか、割増賃金は誰が払うのか、就業規則と社会保険と住民税をどう処理するのかを、手続きの順番どおりに整理します。
正社員のフルタイム勤務は、その時点で週40時間の枠を使い切っている
まず前提の確認です。労働基準法が定める法定労働時間は1日8時間、週40時間。これを超えて働かせる場合、会社は労使協定(いわゆる36協定)を結んで労働基準監督署に届け出たうえで、割増賃金を支払う義務を負います。
ここで重要なのは、この40時間という枠が「会社ごと」ではなく「働く人ごと」に付いてくる点です。労働基準法第38条第1項は、労働時間は事業場を異にする場合においても通算すると定めています。事業場を異にするとは、同じ会社の別支店だけでなく、別会社で働く場合も含むというのが行政解釈です。つまり、A社で働いた時間とB社で働いた時間は合算して1人分の労働時間として数えます。
本業がフルタイムなら副業の1時間目から時間外になる
正社員として週5日、1日8時間勤務している人は、この時点で週の枠40時間を使い切っています。そこにバイトを重ねると、副業先で働いた分は最初の1分から法定時間外労働に該当します。
たとえば平日の勤務後に週3日、3時間ずつコンビニでバイトをすると、週の合計は49時間。超過分の9時間すべてが割増賃金の対象になります。バイト先の時給が1,200円なら、支払われるべき単価は1,500円です。
ここがアルバイト同士の掛け持ちと違うところです。バイト同士なら、A店で週20時間、B店で週15時間といった配分なら通算しても40時間以内に収まり、割増は発生しません。正社員の副業は、そもそも余白がゼロの状態から始まる。この非対称を理解しておかないと、面接で「週40時間の話ってどうなってますか」と聞かれたときに答えられません。
1日8時間の枠も同時に見る必要がある
見落としがちですが、通算は週だけでなく1日単位でも行われます。本業で8時間働いた日にバイトを2時間入れれば、その日の労働時間は10時間。1日8時間を超えた2時間が時間外です。週の合計がまだ40時間に達していない週の前半でも、日単位で超えていれば割増の対象になります。
さらに深夜帯(22時から翌5時)にかかると深夜割増25%が上乗せされます。時間外と深夜が重なれば合計50%増し。本業終わりの夜バイトは、この二重の割増が乗る典型パターンです。
労働時間の通算ルールを実務レベルで整理する
条文だけ読んでも実務は動きません。誰が何を把握して、どちらが割増賃金を払うのか。ここが読者が一番知りたい部分だと思います。
通算されるもの、されないもの
通算の対象になるのは、労働基準法上の労働者として雇用契約を結んで働く時間です。雇用契約であれば、正社員、契約社員、パート、アルバイト、派遣、日雇い、スポットワークアプリ経由の単発バイトも、すべて通算されます。
一方で、次の働き方は労働時間の通算対象外です。
- 業務委託契約(請負契約、準委任契約)に基づく仕事
- 個人事業主としての事業所得を得る活動
- 会社役員としての業務
- 農業や漁業などの家業
- 資産運用や不動産賃貸などの投資活動
ここは実務上とても大きな分かれ目です。同じ「副業で月5万円」でも、雇用契約のバイトなら割増賃金と就業時間管理の話が全部ついてくる。業務委託でライティングやデータ入力を受けるなら、労働時間の通算という論点自体が発生しません。後半でこの選択肢を詳しく扱います。
割増賃金を払うのは原則「後から契約した側」
読者の多くが引っかかるのがこの点です。行政解釈では、時間的に後から労働契約を締結した使用者が、通算して法定労働時間を超える部分について割増賃金を支払う義務を負うとされています。
つまり、正社員として先に働いている人が後からバイトを始めた場合、割増賃金の支払い義務はバイト先にあります。本業の会社が副業分の残業代を負担するわけではありません。これは副業先にとってはコスト増を意味します。実際、求人票に「Wワークの方は応相談」と書かれていても、面接で本業の勤務時間を聞かれた瞬間にトーンが変わるケースは珍しくない。正直なところ、割増賃金を払う前提でシフトを組める中小の事業者はそう多くありません。
ただし、契約の順序だけで機械的に決まるわけではなく、所定労働時間を超えて働かせた側が負担する場面もあります。たとえばバイト先の所定シフトが週10時間で固定されているのに、本業側が突発的な残業を命じた結果として通算超過が発生した場合、その超過を発生させた本業側が負担するという整理です。実務では「誰の指示で枠を超えたか」で判断されると考えてください。
副業をしている事実を届け出る意味
労働時間を通算するには、副業先が本業の勤務時間を知っている必要があります。制度上、使用者は労働者からの申告によって他社での労働時間を把握することになっています。逆に言えば、本人が申告しなければ副業先は通算のしようがない。
ここで「申告しなければ割増賃金なしで働けるのか」という疑問が出ます。実際、こうした悩みは検索でもよく見かけます。
バイト掛け持ち週40時間以上は企業に申告しなければ、40時間以上働いても大丈夫なのでしょうか? 例えばA社で7時間B社で3時間、計10時間働いたとしたら、A社またはB社が割増賃金を払わなくてはいけないですよね。当然企業としては「そんな割増賃金を払いたくない」というのが本音で、「掛け持ちしても、うちと合わせて40時間超えないでね」と思いますよね。しかし、自分としては割増賃金は貰わなくてもよく、... 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
気持ちはわかります。割増賃金を辞退すればシフトに入りやすくなるのでは、という発想です。ただ、これは通りません。割増賃金は労働者が放棄できる性質の権利ではなく、支払わなかった会社側が労働基準法違反に問われます。本人が「いりません」と言っても会社の義務は消えない。むしろ、申告せずに働いて後から発覚すると、副業先が是正勧告を受けたうえで遡って支払いを求められ、あなたのシフト自体が消えるという結末になりやすい。
黙って働くメリットは、短期的なシフトの取りやすさだけです。長期で見ると割に合いません。
管理モデルという簡便な仕組み
厚生労働省は副業の労働時間管理を簡便にするため、管理モデルという方式を示しています。本業側の労働時間と副業側の労働時間の上限をあらかじめ設定し、その範囲内であれば、それぞれの会社が自社の労働時間だけを見て割増賃金を計算すればよいという枠組みです。副業側は自社の労働時間すべてを時間外として扱い、割増賃金を支払います。
企業が副業を正面から認めている場合はこの方式が採られることがあります。制度の詳細や様式は厚生労働省の資料で公開されているので、勤務先の人事に確認するときに「管理モデルを使っていますか」と聞けると話が早い。
厚生労働省は副業や兼業の促進に関するガイドラインを繰り返し改定しており、企業が副業を認める方向での環境整備が進んでいます。とはいえ、現場の運用が追いついているかは会社によってばらつきが大きいのが実態です。
週40時間超えの割増賃金シミュレーション
数字で見たほうが早いので、代表的な3パターンで計算します。いずれも本業は正社員、週5日、1日8時間勤務(週40時間)を前提とします。
パターン1 平日夜に週3日、3時間ずつ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本業 | 週40時間 |
| 副業 | 週9時間(3時間×3日) |
| 通算 | 週49時間 |
| 時間外 | 9時間すべて |
| 基本時給 | 1,200円 |
| 割増後時給 | 1,500円 |
| 副業の週収 | 13,500円 |
18時に本業が終わり、19時から22時までのシフトなら深夜割増はかかりません。月4週で計算すると副業収入は54,000円程度。割増がなければ43,200円ですから、差は月10,800円です。
パターン2 土日だけ、1日6時間ずつ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本業 | 週40時間 |
| 副業 | 週12時間(6時間×2日) |
| 通算 | 週52時間 |
| 時間外 | 12時間すべて |
| 基本時給 | 1,100円 |
| 割増後時給 | 1,375円 |
| 副業の週収 | 16,500円 |
土日は本業が休みなので1日8時間の枠は超えませんが、週の枠を本業で使い切っているため全時間が時間外です。この「休日に働いているのに全部が残業扱い」という感覚のズレが、正社員の副業で一番わかりにくい部分だと思います。
パターン3 深夜帯にかかる場合
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本業 | 週40時間 |
| 副業 | 週10時間(うち深夜4時間) |
| 基本時給 | 1,300円 |
| 時間外のみの時給 | 1,625円 |
| 時間外+深夜の時給 | 1,950円 |
| 副業の週収 | 17,550円 |
22時を跨ぐシフトでは、深夜帯の25%が時間外の25%に加算されて50%増しになります。時給換算では魅力的に見えますが、翌朝の本業に響くので体力面の代償が大きい。深夜シフトを常態化させて本業のパフォーマンスが落ち、結果として評価が下がるという話は、この市場を見ていると定期的に耳にします。
就業規則の許可制という、法律より先に来る壁
法律上の整理より先に立ちはだかるのが、勤務先の就業規則です。ここを飛ばして始めてしまう人が本当に多い。
副業禁止規定はどこまで有効か
まず原則として、就業時間外は労働者の私的な時間であり、会社が全面的に副業を禁止することには合理性がないと考えられています。裁判例でも、副業を理由とする懲戒処分は、業務への具体的な支障が認められない限り無効と判断される傾向があります。
ただし、次のような場合は制限が正当と認められます。
- 本業の業務に具体的な支障が生じている(遅刻、居眠り、欠勤の増加)
- 競業に該当し、会社の利益を害するおそれがある
- 会社の秘密が漏洩するおそれがある
- 会社の名誉や信用を損なう行為に該当する
「禁止規定があるから絶対にできない」でも「規定は無効だから無視していい」でもありません。実務では、届出制や許可制に緩和されている会社が増えています。まず自社の就業規則を確認するのが最初の一歩です。
申請書に何を書けばいいか
許可制の会社で申請するとき、記載を求められるのは概ね次の項目です。
- 副業先の名称と事業内容
- 契約形態(雇用契約か業務委託か)
- 従事する業務の内容
- 勤務日と勤務時間、週あたりの合計時間
- 契約期間
- 競業に当たらないことの確認
正社員の掛け持ちで審査の焦点になるのは、ほぼ確実に週あたりの合計時間です。ここで週15時間や週20時間と書くと、本業への支障を理由に差し戻されやすい。現実的な線としては、週10時間以内、かつ本業の繁忙期は休止できる契約であることを明示すると通りやすくなります。
私が編集の仕事を受け始めた頃、当時勤めていた会社に副業の申請を出したときも、指摘されたのは報酬額ではなく「締切が本業の月末進行と重なりませんか」という一点でした。会社が気にしているのは金額ではなく、本業のパフォーマンスに影響が出るかどうかです。ここを先回りして書いておくと、審査はかなりスムーズになります。
許可が下りやすい副業、下りにくい副業
下りやすいのは、勤務時間が固定でなく、本業と時間帯が完全に分離していて、競業に当たらないもの。在宅で完結する業務委託の仕事は、この3条件を満たしやすい傾向があります。
下りにくいのは、シフト固定で融通が利かない接客業、深夜勤務が前提の仕事、同業他社での勤務、そして労働時間が長時間に及ぶもの。特に同業での勤務は、競業避止義務との関係でほぼ通りません。
社会保険と雇用保険は「本業のみ」が原則
保険の扱いは、正社員の掛け持ちとアルバイト同士の掛け持ちで最も差が出る部分です。
健康保険と厚生年金
正社員として本業で社会保険に加入している人がバイトを始めた場合、バイト先で新たに社会保険に加入する必要が生じるのは、バイト先でも加入要件を満たしたときだけです。加入要件は、週の所定労働時間が正社員の4分の3以上であること、または短時間労働者の要件(週20時間以上、月額賃金88,000円以上、2か月を超える雇用見込み、学生でないこと、および勤務先の企業規模要件)を満たすことです。
正社員が本業の傍らでバイトをする場合、副業先で週20時間を超えるシフトを組むのは現実的でないため、通常はこの要件に達しません。つまり社会保険は本業のみで完結します。
例外的に副業先でも要件を満たした場合は、二以上事業所勤務届を年金事務所に提出し、両方の報酬を合算して保険料を計算したうえで、各事業所が報酬額に応じて按分負担します。この手続きが発生すると、副業先の給与担当にも通知が届くため、勤務先に副業が知られることになります。詳しい手続きは日本年金機構の案内で確認できます。
似た悩みは古くからあります。
アルバイトの掛け持ちで両方とも週20時間以上 46時間以上働いています。双方ともWワークOK の会社ですが社会保険は片方だけしか加入しておらず 両方に社会保険加入しなければいけないのでしょうか? 両方に入らないとダメなら、どちらかを20時間以内にしょうかと思います。また、週40時間以上の労働は問題ありなんですか?罰則があるとかないとか? 残業手当とか深夜割り増し賃金とかの手当ては付いています...
正社員が本業を持っている場合、この論点はほぼ発生しません。副業側を週20時間未満に収めておけば、保険関係は本業一本のままです。
雇用保険は主たる賃金を受ける側のみ
雇用保険は、複数の事業所で働いていても、原則として生計を維持するのに必要な主たる賃金を受ける1つの事業所でのみ加入します。正社員が本業で加入しているなら、副業のバイト先で重ねて加入することはありません。
65歳以上の人については複数の事業所の労働時間を合算して加入できる制度がありますが、現役世代の掛け持ちでは対象外です。
労災は両方で適用され、給付は合算される
労災保険は雇用形態を問わず全労働者が対象で、副業先での勤務中の事故も労災の対象になります。さらに、複数の事業所で働く人の給付基礎日額は、すべての勤務先の賃金を合算して算定される仕組みになっています。副業中のけがで本業も休むことになった場合、補償が副業先の低い賃金だけで計算されるという不合理は解消されています。
なお、本業からバイト先への移動中の事故も通勤災害として扱われます。この点は掛け持ちをする人が知っておくべき数少ない「有利な制度」です。
住民税と確定申告の扱い
金額の話より手続きの話のほうが厄介です。
20万円ルールの正しい理解
給与所得者で、副業の所得が年間20万円以下なら確定申告は不要、という理解が広まっています。ただしこれは所得税の話であって、しかも掛け持ちバイトには当てはまりません。
副業がバイト(給与所得)の場合、2か所以上から給与を受け取っていて、本業以外の給与収入が年間20万円を超えると確定申告が必要です。さらに、年末調整は本業の1か所でしか受けられないため、副業先では源泉徴収が乙欄で行われ、税額が高めに引かれています。確定申告をしないと払い過ぎたままになるケースもあります。
そして重要なのは、所得税の申告が不要でも住民税の申告は必要という点です。金額にかかわらず、副業収入がある人は市区町村への住民税申告義務が残ります。詳細は国税庁のタックスアンサーで確認するのが確実です。
普通徴収は選べるのか
住民税を自分で納付する普通徴収に切り替えれば会社に知られない、という話がよく出ます。確定申告書の第二表には住民税に関する事項の欄があり、給与所得以外の所得に係る住民税の徴収方法として「自分で納付」を選べます。
ただし、この選択が使えるのは給与所得以外の所得についてです。副業がバイト(給与所得)である場合、原則として本業の給与と合算されて特別徴収になります。自治体によって運用に幅はありますが、給与所得の副業を普通徴収に分離するのは基本的にできないと考えたほうが安全です。
一方、業務委託で得た報酬は雑所得または事業所得になるため、普通徴収を選択できます。副業の形態選択が、住民税の経路にまで影響するということです。
副業が本業に知られる経路
隠すことを推奨する趣旨ではありませんが、実際にどこから伝わるのかは知っておく価値があります。
- 住民税の特別徴収額の変化。本業の給与額に対して住民税が不自然に多いと、経理が気づく可能性がある
- 社会保険の二以上事業所勤務届。副業先でも加入要件を満たした場合に必ず通知が行く
- 副業先が労働時間の通算のために本業に照会する。管理モデルを採る場合に発生し得る
- SNSでの投稿や、同僚や取引先からの目撃情報
- 副業先で労働基準監督署の調査が入り、通算の実態が確認される
このうち、正社員の掛け持ちで最も現実的なのは1つ目と5つ目です。ただ、そもそも許可を取っていれば全部が非リスクになります。20年この市場を見てきた立場から言えば、隠す前提で始めた副業は長続きしません。時間の制約が読めないまま続けると、どこかで本業か副業のどちらかに穴が空きます。
身体と時間のコストを正面から見る
週49時間や週52時間という数字は、紙の上ではただの数字です。ただ、これは月に換算すると36時間から48時間の追加労働を意味します。本業でも月20時間の残業があれば、実質的な総労働時間は過労死ラインと言われる月80時間の残業に迫ります。
法律上、時間外労働の上限規制(月45時間、年360時間)は事業場単位で適用され、副業分は通算されないという整理になっています。つまり制度上は歯止めがない。ここを自分で管理できるかどうかが、掛け持ちを続けられるかどうかの分岐点です。
私自身、編集の仕事を始めた最初の半年、平日夜と土日を全部詰め込んだ時期がありました。収入は増えましたが、3か月目に本業の企画会議で完全に頭が回らなくなり、明らかに質の低い提案をして黙り込んだことがあります。あのとき学んだのは、時給で買える時間には限界があり、限界を超えると本業側の評価という形で高い利息を払うことになるということでした。
時間の切り売りから抜けるという選択肢
ここまで読んで、正社員の掛け持ちバイトが構造的に不利なことは伝わったと思います。整理すると次の通りです。
- 副業側の労働時間はすべて時間外扱いになり、副業先がコストを嫌がる
- 就業規則の許可を取るハードルが時間の長さで上がる
- 住民税を普通徴収に分離できず、会社に伝わりやすい
- 労働時間の上限が自分で管理するしかなく、健康リスクを負う
そして最大の問題は、時給制である限り収入が投下時間に完全比例することです。週10時間が限界なら、収入の上限もそこで決まります。
業務委託は労働時間の通算対象外になる
これに対して、業務委託契約で仕事を受ける場合、労働時間の通算という論点自体が消えます。雇用契約ではないため、法定労働時間の枠にも、割増賃金の計算にも、雇用保険や社会保険の加入要件にも関係しません。就業規則上の申請でも「業務委託、成果物単位、稼働は自己裁量」と書けるため、本業への支障を懸念されにくい。
在宅でできる業務委託の代表例は次のような分野です。
- ライティング、編集、校正
- データ入力、資料作成、リサーチ
- Webデザイン、バナー制作、動画編集
- プログラミング、システム保守
- オンライン事務、カスタマーサポート
単価感を知るには職種別の相場データを見るのが早い。たとえば文章仕事なら、記事執筆や編集の報酬水準をまとめた著述家,記者,編集者の年収・単価相場が参考になります。開発系の仕事に関心があるなら、言語や経験年数ごとの単価レンジを整理したソフトウェア作成者の年収・単価相場を見ると、時給換算でバイトを大きく上回る領域があることがわかります。
仕事の内容そのものを掴みたい場合は、業務範囲や求められるスキルを職種別にまとめたアプリケーション開発のお仕事や、生成AIの導入支援という比較的新しい領域を扱うAIコンサル・業務活用支援のお仕事が具体的です。マーケティングやセキュリティを含む横断的な領域についてはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事にまとまっています。
業務委託でも注意すべき偽装請負
ただし、契約書のタイトルが業務委託でも、実態が雇用に近ければ労働者と判断されます。判断要素は、指揮命令を受けているか、勤務時間や場所が指定されているか、代替性があるか、報酬が時間に対して支払われているかなど。
シフトを指定され、決まった時間に決まった場所で作業し、上長の指示に従って働く形なら、契約書の名称にかかわらず雇用契約と評価される可能性が高い。この場合は労働時間が通算されます。「業務委託にすれば通算されない」という理由だけで形式を選ぶのは危険です。実態として自分の裁量で進められる仕事かどうかを見てください。
スキルの証明が単価を決める
業務委託は時給ではないため、単価は「何ができるか」で決まります。実績がない段階では低い単価から始まるのが普通で、そこを短期間で抜けるには資格や成果物という客観的な証拠が効きます。
事務系の在宅ワークなら、文書作成の基礎を証明できるビジネス文書検定が発注側に伝わりやすい。インフラやネットワーク系の仕事を狙うなら、保守運用の案件で評価されやすいCCNA(シスコ技術者認定)のような資格が入口になります。
独自データから見た、掛け持ちの現実的な着地点
在宅ワークの仲介を長く運営してきた立場から見ると、正社員の副業には共通した推移があります。最初は時給の高いバイトから入る人が多い。理由は単純で、始めるまでの手間が最も少ないからです。ところが半年から1年で、その多くが業務委託にシフトしていきます。
理由は収入の絶対額ではありません。稼働の予測可能性です。バイトはシフトが固定されるため、本業の繁忙期と衝突したときに調整が効かない。一方、成果物単位の仕事は納期さえ守れば時間配分を自分で決められます。本業が忙しい週は受注を絞り、余裕のある週にまとめて処理するという運用ができる。この柔軟性が、掛け持ちを続けられるかどうかを分けています。
もう1つ、運営者として見てきた限りでは、長く続く人ほど「単発の作業をこなす」から「この人に任せると楽だと思われる関係を作る」に軸足を移しています。同じ発注者から継続的に依頼が来る状態になると、営業にかかる時間が消え、実質的な時間単価が跳ね上がる。最初の3か月で稼いだ額より、6か月後に指名で仕事が来るかどうかのほうが結果に効いてきます。
そして、額面と手取りの話をしておきます。仲介手数料が乗る取引では、発注者が支払った金額の一部が中間で削られます。手数料0%の直接取引では、同じ予算で発注者はより多くの量を頼めるし、受け手は同じ作業量で手取りが厚くなる。この差は1件では小さく見えても、継続案件では効いてきます。運営していて実感するのは、直接つながった関係のほうが単価交渉も条件変更もスムーズで、結果として双方が長く続けられるということです。掛け持ちで使える時間が限られている正社員にとって、1時間あたりの手取りが厚いことは、そのまま睡眠時間の確保につながります。
進め方としては、まず本業と競合しない領域で小さく始めるのが定石です。学生向けにまとめた記事ではありますが、在宅ワークの入口となる職種と始め方を整理した大学生におすすめの副業15選|バイトより稼げる在宅ワークランキング【2026年版】は、時給バイトと在宅ワークの比較という観点で正社員にも使えます。クラウドソーシングでの立ち上がり方については、現実的な金額感と手順を書いた大学生がクラウドソーシングでバイト代わりに稼ぐ方法|月3万円の現実と、スキルの積み上げ方に焦点を当てた大学生がクラウドソーシングで稼ぐ方法|バイトよりも将来に役立つスキルが身につくが参考になります。
最後に、掛け持ちを始める前に踏むべき手順をもう一度並べます。就業規則の確認、副業の形態決定(雇用か業務委託か)、勤務先への申請、副業先への本業勤務時間の申告、住民税の徴収方法の確認、そして週あたり稼働時間の上限設定。この6つを最初に済ませておけば、週40時間を超えることに怯える必要はなくなります。怖いのは超えること自体ではなく、超えているのに誰も把握していない状態です。
よくある質問
Q. 正社員がバイトを掛け持ちして週40時間を超えると違法になりますか?
働く本人が罰せられることはありません。違法になり得るのは、通算して法定時間を超えた分の割増賃金を支払わなかった会社側です。本業がフルタイムなら副業側の労働時間は全て時間外扱いになるため、副業先が25%以上の割増賃金を支払う義務を負います。本人は勤務時間を正しく申告しておけば問題ありません。
Q. 割増賃金は本業と副業のどちらが払うのですか?
原則として、時間的に後から労働契約を結んだ側です。正社員として先に働いている人が後からバイトを始めた場合、支払い義務はバイト先にあります。ただし本業の突発残業が原因で超過が生じた場合など、超過を発生させた側が負担する整理になる場面もあります。
Q. 副業をしていることを申告しないまま働くとどうなりますか?
副業先は労働時間を通算できないため、結果的に割増賃金の未払いが生じます。後から発覚すると副業先が是正を求められ、遡って支払いが発生し、シフト自体が打ち切られることが多いです。割増賃金は本人が放棄できる権利ではないので、辞退を申し出ても会社の義務は消えません。
Q. 労働時間の通算を避ける方法はありますか?
業務委託契約で仕事を受ける場合、労働基準法上の労働時間には該当しないため通算されません。在宅のライティングやデータ入力、デザイン、開発などが該当します。ただし勤務時間や場所を指定され指揮命令を受ける実態があると雇用と判断され通算対象になるため、自分の裁量で進められる仕事かを確認してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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