電子帳簿保存法 個人事業主 対応 2026|個人事業主が最低限やるべき対応

長谷川 奈津
長谷川 奈津
電子帳簿保存法 個人事業主 対応 2026|個人事業主が最低限やるべき対応

この記事のポイント

  • 電子帳簿保存法に個人事業主はどう対応すべきか
  • 2024年からの電子取引データ保存義務化を踏まえ
  • 無料を含むツールの選び方

先日、あるフリーランスのWebデザイナーさんから相談を受けました。「クライアントから請求書も領収書も全部PDFやメールで届くんですけど、これって紙に印刷して保管しておけば大丈夫ですよね?」と。結論から言うと、それはもうNGです。2024年1月以降、メールやWebでやり取りした請求書・領収書などの「電子取引データ」は、原則として電子データのまま保存しなければならないルールに変わりました。これ、知らない人が本当に多いんです。「うちは小さな個人事業だから関係ない」と思っている方ほど危ないので、この記事で「電子帳簿保存法 個人事業主 対応」として最低限やるべきことを、法律の条文を噛み砕きながら整理していきます。

「難しそう」「会計ソフトを入れないと違反になるの?」という不安もよく聞きます。でも安心してください。つまり、お金をかけずに対応する道もちゃんと残されています。法律はあなたを縛るためではなく、ルールさえ守れば自由に商売できるようにするためのものです。この記事を読み終わる頃には、自分が何をすればいいのか、いつまでに何を準備すればいいのかがはっきりするはずです。

電子帳簿保存法とは何か:個人事業主が知っておくべき全体像

電子帳簿保存法(略して「電帳法」と呼ばれます)は、税務関係の帳簿や書類を「電子データで保存してよい」と認めるための法律です。もともと帳簿や領収書は紙で7年間保管するのが原則でした。それを「一定の要件を満たせば電子データで保存していいですよ」と定めたのがこの法律の出発点です。つまり、本来は事業者にとって「ありがたい緩和ルール」だったわけです。

ところが、何度かの改正を経て、2024年1月からは一部が「義務」に変わりました。具体的には、メールやインターネットを通じて受け取った(あるいは送った)取引書類、いわゆる「電子取引データ」については、紙に印刷して保管するのではなく、電子データのまま保存することが必須になったのです。ここが最大のポイントで、個人事業主だからといって例外にはなりません。年間の売上規模に関係なく、電子で取引した記録がある事業者は全員が対象です。

電帳法は大きく分けて3つの区分から成り立っています。これを最初に押さえておくと、後の話がぐっと理解しやすくなります。

電子帳簿保存法は、取引書類の請求書などを紙ではなく電子データとして保存することを認可する法律です。電子帳簿保存法はこれまでも何度か改正されていますが、2024年1月に施行される改正法から、電子取引のデータは、電子データとして保存することが義務化されます。法改正に基づいた対応が求められる企業や個人事業主の方の中には、不安を感じる方もいるのではないでしょうか。

3つの区分:電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データ保存

電帳法の中身を理解するには、3つの区分を分けて考える必要があります。これらは「やってもいい(任意)」のものと「やらなければならない(義務)」のものが混在しているので、混同すると不要に怖がってしまいます。

1つ目は「電子帳簿等保存」です。これは、自分が会計ソフトなどで作成した仕訳帳・総勘定元帳・請求書の控えなどを、電子データのまま保存することを認める区分です。これは任意です。つまり、紙に印刷して保管してもいいし、データで保存してもいい。どちらでも構いません。

2つ目は「スキャナ保存」です。これは、紙で受け取った領収書やレシートをスキャナやスマホで読み取って画像データとして保存する区分です。これも任意です。やらなくても罰せられません。ただし、これをきちんと運用すれば紙の原本を処分できるので、書類の山に埋もれずに済むメリットがあります。

3つ目が「電子取引データ保存」です。これだけが義務です。メール添付のPDF請求書、ネット通販の購入履歴、クラウド請求サービスで発行・受領した書類など、最初から電子でやり取りしたものが該当します。個人事業主が最低限対応すべきなのは、この3つ目だけと言っても過言ではありません。これ、知らない人が本当に多いんです。「電帳法対応=会計ソフト導入が必須」と思い込んでいる方が多いのですが、実は義務の範囲はかなり限定的なんです。

なぜ2024年に義務化されたのか:背景にある社会的な流れ

「なぜわざわざ電子データで保存させるの?」という疑問はもっともです。背景には、取引のデジタル化と税務の透明性確保という2つの大きな流れがあります。請求書や領収書がメールやWebで完結するようになり、紙のやり取りはどんどん減っています。にもかかわらず保存だけ紙に戻すのは非効率ですし、紙に印刷する過程で改ざんや差し替えが起きるリスクもあります。

国としては、電子データのまま保存させたうえで「いつ・誰と・いくらの取引をしたか」を後から正確に確認できる状態を求めています。つまり、税務調査を効率化し、不正な経費計上や売上隠しを防ぐ狙いがあるわけです。この流れはインボイス制度の導入とも連動しています。2023年10月のインボイス制度開始で多くの個人事業主が課税事業者になり、適格請求書を電子で発行・受領するケースが急増しました。電子取引データの保存義務は、こうしたデジタル化の総仕上げという位置づけなのです。

個人事業主への影響:何が変わり、何をしなければならないのか

ここからが本題です。「電子帳簿保存法 個人事業主 対応」と検索する方が一番知りたいのは、「結局、自分は何をすればいいの?」という一点だと思います。先に結論を言うと、最低限やるべきことは「電子で受け取った(送った)書類を、ルールに沿った形で電子データのまま保存する」、これだけです。順番に見ていきましょう。

あなたの取引は「電子取引」に該当するか

まず自分の取引を棚卸ししてください。次のようなものは、すべて電子取引に該当します。メールに添付されたPDFの請求書・領収書・見積書。クラウドの請求サービスやマッチングサイト上で発行・受領した書類。ネット通販(Amazon、楽天など)で買った備品の領収書や購入明細。クレジットカードの利用明細をWebで受け取っている場合。アプリ決済やQRコード決済の取引履歴。これらはもう紙に印刷して捨てるだけ、という対応では不十分です。

逆に、紙でもらった領収書をそのまま紙で保管するのは今まで通りで問題ありません。電帳法が義務化したのは「もともと電子だったもの」だけです。つまり、コンビニでもらった紙のレシートを紙のまま保管するのは合法ですし、それをわざわざデータ化する義務もありません。ここを誤解して「全部スキャンしないといけない」と慌てる方が多いのですが、それは不要です。

筆者が法務相談を受けていて痛感するのは、フリーランスや小規模事業者ほど取引の大半が電子化している、という現実です。在宅ワークでクラウドソーシング経由の案件をこなしている方なら、契約書も請求書も報酬の支払い通知も、ほぼ100%が電子データでしょう。だからこそ、規模が小さくても電子取引データ保存の影響を強く受けるのです。

電子取引データを保存する際の3つの要件

電子データはただ保存すればいいわけではなく、3つの要件を満たす必要があります。これが電帳法対応の核心です。

1つ目は「真実性の確保」。データが改ざんされていないことを担保する仕組みです。具体的には、(ア)タイムスタンプを付与する、(イ)訂正・削除の履歴が残るシステムを使う、(ウ)「正当な理由がない訂正・削除を防止する事務処理規程」を定めて運用する、のいずれかを選びます。多くの個人事業主にとって現実的なのは(ウ)です。これは要するに「勝手にデータを書き換えないというルールを文書で決めておく」だけで、お金がかかりません。国税庁が事務処理規程のサンプル(ひな型)を公開しているので、それをダウンロードして自分の名前や事業名を入れれば完成します。

2つ目は「可視性の確保」。保存したデータをすぐに見られる状態にしておくことです。パソコン、ディスプレイ、プリンタ、操作マニュアルなどを備え、画面や紙にすぐ出力できるようにしておきます。今どきパソコンを持っていない事業者はほぼいないので、これはほとんどの方がクリアしています。

3つ目は「検索性の確保」。後から特定の取引データを探し出せるようにしておくことです。原則として「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目で検索できる状態が求められます。ただし、ここに重要な救済措置があります。前々年(2年前)の売上高が5,000万円以下の事業者は、税務調査の際にデータをダウンロードして提示できるなら、検索機能そのものは不要とされています。つまり、多くの個人事業主は厳密な検索システムを用意しなくてもいい、ということです。

例えば、前々年の売上高が5,000万円以下の個人事業主であれば、「電子帳簿保存法に対応したシステムを導入し、要件を満たす方法でデータを保存する」「事務処理規程を定め、要件を満たさず、単純に電子データを保存し、印刷した書類を取引先や日にち別に整理して保管する」といった対応が考えられます。

売上規模による対応の違い:あなたはどのパターンか

要件を整理すると、自分の売上規模によって現実的な対応が変わってきます。これを表にまとめると次の通りです。

前々年の売上高 検索機能 現実的な対応
5,000万円以下 不要(ダウンロード提示で対応可) 事務処理規程+ファイル名整理、または会計ソフト
5,000万円超〜 必要(3項目で検索可能に) 検索要件を満たす会計ソフト・システムの利用

在宅ワークや副業から始めたばかりの個人事業主の多くは、前者(5,000万円以下)に当てはまります。この場合、お金をかけずに対応する道がしっかり用意されています。次の章で、その「無料でできる対応」と「ツールを使う対応」の両方を具体的に解説します。

個人事業主が最低限やるべき対応:無料の方法と有料ツールの選び方

ここが一番知りたいところだと思います。電帳法への対応方法は、大きく分けて2通りあります。「お金をかけずに自力で対応する方法」と「会計ソフトなどのツールを使う方法」です。それぞれメリットとデメリットがあるので、自分の取引量や手間のかけ方で選んでください。

無料で対応する方法:事務処理規程+ファイル名ルール

まず、お金を一切かけずに対応する方法です。前々年の売上が5,000万円以下の個人事業主なら、この方法で法的に問題なく対応できます。手順は次の3ステップです。

ステップ1は「事務処理規程を作る」こと。国税庁のサイトから「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」のひな型(Wordファイル)をダウンロードします。自分の氏名・屋号・施行日を記入すれば完成です。所要時間は15分程度。これで「真実性の確保」の要件をクリアできます。

ステップ2は「保存用のフォルダを決める」こと。パソコンやクラウドストレージ(Googleドライブ、Dropboxなど)に、電子取引データを保存する専用フォルダを作ります。年度ごと、あるいは取引先ごとにフォルダを分けておくと後で探しやすくなります。

ステップ3は「ファイル名にルールを付ける」こと。これが検索性をカバーする工夫です。例えば「20260622_株式会社サンプル_50000.pdf」のように「日付_取引先_金額」の形式でファイル名を統一します。こうしておけば、5,000万円以下で検索機能が不要な事業者でも、いざ税務調査が来たときに目的のデータをすぐ提示できます。ただし注意してほしいのは、このファイル名ルールは「義務」ではなく「あると便利な実務上の工夫」だという点です。あくまで原本のデータを改変せずに保存することが本質です。

この無料の方法のメリットは、当然ながらコストがゼロであること。デメリットは、ファイル名を手作業で付ける手間がかかること、取引量が増えると管理が煩雑になることです。月の電子取引が数件〜数十件程度なら十分回りますが、それ以上になると次のツール導入を検討したほうがいいでしょう。

会計ソフト・対応ツールを使う方法とその選び方

取引量が多い方や、確定申告までまとめて効率化したい方には、電帳法対応の会計ソフトがおすすめです。クラウド会計ソフトの多くは、電子取引データの取り込み・保存・検索機能を標準で備えており、要件を自動的に満たせます。代表的なものにfreee会計マネーフォワード クラウドがあります。

ツールを選ぶときのポイントは4つあります。1つ目は「JIIMA認証の有無」。これは公益社団法人日本文書情報マネジメント協会が、電帳法の要件を満たしていると認証したソフトに与えるマークです。認証があれば要件適合の心配が要りません。2つ目は「料金体系」。個人事業主向けプランは月額1,000円前後から、年額1万円程度のものが主流です。3つ目は「確定申告まで対応しているか」。電帳法対応だけでなく、青色申告決算書やe-Taxへの連携までできると一気に楽になります。4つ目は「銀行口座・カードの自動連携」。取引データが自動で取り込まれれば、ファイル名を手で付ける手間がなくなります。

なお、「無料の電帳法対応ツール」を探している方も多いと思います。請求書発行・受領に特化した無料サービスや、クラウドストレージを使った無料の保存方法も存在します。ただし、無料ツールは検索機能や訂正・削除履歴の機能が限定的なことが多いので、前述の「事務処理規程」と組み合わせて使うのが安全です。完全無料で要件を満たしたいなら、前章の「事務処理規程+ファイル名ルール」が最も確実です。

スキャナ保存は「やらなくていい」と割り切る判断

ツールの話をすると「紙の領収書もスキャンしないといけないの?」と必ず聞かれます。答えはノーです。スキャナ保存はあくまで任意なので、対応する義務はありません。紙でもらったものは紙のまま7年保管すればよく、わざわざスキャンする必要はないのです。

ただし、紙の書類が大量にあって保管場所に困っている、あるいは在宅ワークでデスク周りを電子化したい、という方にはスキャナ保存にもメリットがあります。スマホで撮影してクラウドに上げるだけで原本を処分できるからです。ここは「義務だからやる」のではなく「自分の業務が楽になるならやる」という基準で判断してください。最低限の対応としては、スキャナ保存は後回しで構いません。

確定申告と電帳法:青色申告・白色申告での実務対応

電帳法の対応は、確定申告と切り離せません。むしろ、日々の取引データ保存をきちんとやっておくことが、確定申告をスムーズに終わらせる近道になります。ここでは申告方法ごとの注意点を整理します。

青色申告の場合:65万円控除と電子保存の関係

青色申告には、最大65万円の特別控除という大きなメリットがあります。ただし、この65万円控除を受けるには「複式簿記による記帳」と「e-Taxによる電子申告、または電子帳簿保存」のいずれかが条件になっています。つまり、紙の申告書を提出するだけでは控除額が55万円に下がってしまいます。

ここで電帳法の「電子帳簿等保存」が関わってきます。会計ソフトで作成した帳簿を一定の要件を満たして電子保存し、税務署に届け出れば、e-Taxを使わなくても65万円控除の要件を満たせる場合があります。ただ、実務的にはe-Taxで電子申告するほうがシンプルなので、多くの方はe-Tax経由で65万円控除を受けています。いずれにせよ、青色申告で最大限の控除を取りたいなら、会計ソフトで帳簿を電子的に整えておくのが合理的です。

注意したいのは、ここでいう「電子帳簿等保存」(任意)と、義務である「電子取引データ保存」は別物だという点です。65万円控除のために帳簿を電子保存するかどうかは任意ですが、電子取引データの保存は控除と関係なく全員に義務がある、と覚えておいてください。混同しやすいので、ここは特に丁寧に区別してほしいところです。

白色申告の場合:それでも電子取引データ保存は必須

「自分は白色申告だから関係ないだろう」と思っている方がいますが、これは誤解です。白色申告であっても、電子取引データ保存の義務は同じように発生します。電帳法の電子取引データ保存は、申告方法(青色・白色)や売上規模に関係なく、すべての事業者に課されるルールだからです。

白色申告の方も、メールで受け取った請求書や、ネットで買った備品の領収書データは、電子のまま保存しなければなりません。前述の「事務処理規程+ファイル名ルール」で対応すれば、白色申告のままでも法的に問題ありません。むしろこの機会に、電子データの整理を習慣づけて、いずれ青色申告に切り替える準備をしておくのも一つの考え方です。青色申告に切り替えれば控除という具体的なメリットが得られます。

確定申告ソフトを使えば簿記の知識がなくても対応できる

確定申告そのものに苦手意識がある方も多いと思います。実は、近年の確定申告ソフトは、簿記や会計の専門知識がなくても申告書を作れるように設計されています。銀行口座やクレジットカードを連携させれば取引が自動で取り込まれ、画面の質問に答えていくだけで青色申告決算書や確定申告書が完成します。そして、この過程で電子取引データの保存も同時に済ませられるのが大きな利点です。

つまり、確定申告ソフトを1本導入するだけで「電帳法対応」と「確定申告」の両方を一気に片付けられるわけです。在宅ワークやフリーランスで本業の作業時間を確保したい方にとって、経理に費やす時間を削減できるのは大きな価値があります。費用対効果で考えると、月1,000円前後のソフト代は、確定申告にかかる手間と精神的負担を考えれば十分にペイすると言えるでしょう。

違反した場合のリスクと、よくある誤解

「もし対応しなかったらどうなるの?」という不安についても、正確に知っておきましょう。過度に怖がる必要はありませんが、軽視していいわけでもありません。

罰則と税務上のリスク

電子取引データを適切に保存していない場合、まず青色申告の承認が取り消されるリスクがあります。青色申告の承認が取り消されると、65万円控除や赤字の繰越などの優遇措置が使えなくなります。これは金額的に大きな打撃です。

さらに、保存していない取引が「経費として認められない」と判断される可能性もあります。領収書のデータが残っていなければ、その支出を経費に計上した根拠が示せないからです。また、意図的な隠蔽や改ざんがあったと判断されれば、重加算税という重いペナルティが加算されることもあります。重加算税は通常の追徴課税に上乗せされる罰則的な税で、その割合は35%から40%にのぼります。

ただし、これは「悪質なケース」の話です。うっかり保存方法が要件を満たしていなかった、といった程度であれば、税務調査の現場で直ちに重い罰則が科されるわけではありません。とはいえ、青色申告の取り消しは現実的に起こり得るので、「最低限の対応はしておく」のが賢明です。詳しい制度の解説は国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトで確認できます。

よくある誤解と、その正しい理解

法務相談でよく出てくる誤解を、ここでまとめて解いておきます。1つ目の誤解は「紙に印刷して保管すればいい」というもの。これは2024年からNGです。電子で受け取ったものは電子のまま保存が原則です。

2つ目の誤解は「会計ソフトを買わないと違反になる」というもの。これも誤りです。前述の通り、事務処理規程とファイル名ルールで無料対応が可能です。ソフトはあくまで「楽にするための選択肢」であって、必須ではありません。

3つ目の誤解は「小規模だから免除される」というもの。電子取引データ保存に売上規模による免除はありません。あるのは「検索機能の免除(5,000万円以下)」だけです。データを保存すること自体は全員の義務です。

4つ目の誤解は「全部スキャンしないといけない」というもの。紙のものは紙のままで問題ありません。スキャナ保存は任意です。これらの誤解を解くだけで、「何をすればいいか」がだいぶクリアになるはずです。法律は正しく理解すれば、決して怖いものではありません。

実際にあったトラブル事例から学ぶ

私が相談を受けた中で印象に残っているケースを、匿名化してお伝えします。あるフリーランスのライターさんが、確定申告の直前になって「クラウド請求サービスを解約していたため、過去の請求書データが見られなくなっていた」という事態に陥りました。サービスを解約するとデータも消える仕様だったのです。これ、本当に見落としがちなんです。

このケースの教訓は、「クラウドサービス上に置きっぱなしにせず、自分の手元にもダウンロードして保存しておく」ことの重要性です。サービス側のサーバーだけに依存していると、解約・サービス終了・障害などでデータを失うリスクがあります。電帳法の対応をきっかけに、電子取引データは自分の管理下にあるストレージに必ずバックアップする習慣をつけてください。※なお、税務調査や具体的な保存方法の妥当性について不安がある場合は、税理士に相談することをおすすめします。

在宅ワーク・フリーランス市場における電帳法対応の位置づけ

最後に、客観的なデータと市場動向の視点から、電帳法対応の意味を考えてみます。電帳法対応は単なる「義務だから仕方なくやる作業」ではなく、フリーランスとして長く活動するための基盤づくりでもあります。

経理を効率化することが本業の時間を生む

在宅ワークやフリーランスにとって、最も貴重な資源は「自分の作業時間」です。経理や事務作業に時間を取られるほど、本業で稼働できる時間が減ります。電帳法対応をきっかけに会計ソフトを導入し、取引データの保存・帳簿付け・確定申告を半自動化すれば、年間で数十時間規模の事務作業を削減できる可能性があります。

特に、複数のクライアントから業務を受託している方は、請求書や報酬通知の数も多くなります。これを手作業で管理するのは現実的ではありません。在宅で複数案件を回す働き方をしている方は、専門スキルを活かした分野で活躍する道があります。例えばAIコンサル・業務活用支援のお仕事のように、業務効率化の知見そのものが価値になる仕事も増えています。経理を効率化して捻出した時間を、こうした単価の高い専門業務に振り向けるのが理想です。

また、システムやツールの導入・運用を支援する仕事も需要が拡大しています。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事では、企業のデジタル化を支援する案件が紹介されており、自身の電帳法対応で得た知見を仕事に転用することも可能です。アプリやシステムを作る側に回りたい方はアプリケーション開発のお仕事も選択肢になります。

専門職の単価相場と、必要なスキルの広がり

経理・会計の電子化が進むと、それを支える人材の需要も変わります。例えば、会計ソフトや業務システムを開発するエンジニアの市場価値は高く、ソフトウェア作成者の年収・単価相場を見ると、専門スキルを持つ人材が高い単価で評価されていることがわかります。電帳法のような制度変更は、こうしたシステム開発需要を押し上げる要因にもなります。

一方で、制度や実務をわかりやすく解説するライティングの需要も伸びています。著述家,記者,編集者の年収・単価相場のデータが示す通り、専門知識を文章で伝えられる人材も安定した需要があります。電帳法やインボイス制度のような新しいルールは、わかりやすい解説コンテンツへのニーズを生み続けています。

スキルアップの観点では、ビジネス文書の正確な作成力も土台になります。ビジネス文書検定で扱うような文書作成の基礎は、事務処理規程の整備や取引先とのやり取りでも役立ちます。IT寄りのキャリアを目指すならCCNA(シスコ技術者認定)のようなネットワーク系の資格が、システム関連の仕事の入り口になります。

資金繰り・決済の電子化とセットで考える

電帳法対応は、お金まわりの電子化という大きな流れの一部です。取引データを電子で管理する習慣がつくと、資金繰りや決済の見直しにもつながります。例えば、急な資金需要に対応する手段として【手数料0.5%〜】格安ファクタリング会社ランキング|個人事業主もOKでは、売掛金を早期に現金化する方法が個人事業主向けに整理されています。

店舗運営も並行している方なら、決済手段の選択も重要です。店舗・個人事業主向けキャッシュレス決済導入コスト比較|手数料・入金サイクルでは、決済手数料や入金サイクルの違いが比較されており、キャッシュレス決済の取引データは電帳法対応とも直結します。さらに事業拡大で融資を検討するなら、【完全版】融資に通る事業計画書の書き方|3つの重要ポイントとテンプレートが、電子化された正確な帳簿を武器にした資金調達の参考になります。きちんと整った電子帳簿は、融資審査でも信頼性の証明として働きます。

マクロで見る:制度対応は「守り」と「攻め」の両面を持つ

電帳法対応を「面倒な守りのコスト」とだけ捉えるのはもったいないと、私は考えています。確かに最低限の対応は義務です。しかし、その過程で取引データを電子的に整理し、会計ソフトで可視化することは、自分の事業の数字を正確に把握する「攻めの経営」にもつながります。

どの取引先からの売上が伸びているか、どの月に支出が集中するか、利益率はどう推移しているか。電子化された帳簿は、こうした分析を一瞬で可能にします。在宅ワークやフリーランスは一人で経営判断を下す立場ですから、自分の数字を正確に握っていることは大きな強みになります。電帳法対応は、その第一歩なのです。法律はあなたを縛るためのものではなく、正しく付き合えばあなたの事業を守り、成長させる味方になります。最低限の対応から始めて、少しずつ経理の電子化を進めていきましょう。

よくある質問

Q. 個人事業主は会計ソフトを買わないと電子帳簿保存法に違反になりますか?

いいえ、必須ではありません。前々年の売上が5,000万円以下なら、国税庁配布の事務処理規程ひな型を整え、電子データを「日付_取引先_金額」のファイル名で専用フォルダに保存すれば無料で対応できます。会計ソフトは手間を減らす選択肢で、義務ではありません。

Q. 紙でもらった領収書もすべてスキャンして電子保存する必要がありますか?

いいえ、その必要はありません。義務化されたのは「最初から電子でやり取りしたデータ」の電子保存だけです。紙の領収書は紙のまま7年保管すれば問題ありません。紙をスキャンして保存する「スキャナ保存」はあくまで任意で、対応しなくても罰せられません。

Q. 白色申告でも電子帳簿保存法への対応は必要ですか?

はい、必要です。電子取引データの保存義務は青色・白色や売上規模に関係なく、すべての事業者が対象です。白色申告でもメール添付の請求書やネット購入の領収書データは電子のまま保存します。事務処理規程とファイル名ルールで無料対応できます。

Q. 電子帳簿保存法に対応しないと、どんな罰則がありますか?

青色申告の承認取り消しにより65万円控除などが使えなくなるリスクがあります。保存のない取引は経費として認められない可能性もあります。意図的な改ざんは重加算税(35〜40%)の対象です。ただしうっかりミスで即重罰となるわけではなく、最低限の保存を続けることが大切です。

長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津

行政書士・元企業法務

企業法務で年間200件以上のフリーランス契約を処理した経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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