簿記2級のフリーランス年収は?経理代行で独立する方法

高橋 慎太郎
高橋 慎太郎
簿記2級のフリーランス年収は?経理代行で独立する方法

この記事のポイント

  • 簿記2級を活かしたフリーランスの年収・月収データを公開
  • 経理代行で独立する方法
  • 年収を上げるためのスキルの掛け合わせまで実体験をもとに解説します

3年前、私は中小企業の経理部で働いていた。年収は380万円。毎日同じ仕訳作業と請求書発行の繰り返しで、このまま定年まで同じ会社にいるのかと思うと気が滅入った。給与明細を見るたびに、自分のスキルが会社の中でしか通用しないことに危機感を感じていた。

転機になったのは、簿記2級を取得した直後に副業で始めた記帳代行だった。簿記3級で副業を始めたのが最初だったが、2級を取得してからは案件の質が劇的に変わった。より複雑な法人決算や精算表作成に関われるようになり、単価が跳ね上がったのだ。そして1年後、私はフリーランスとして独立した。現在の年収は約520万円。会社員時代より140万円アップし、しかも時間の自由がある。

簿記2級は単なる資格ではなく、独立して自分の人生をコントロールするための「パスポート」だ。本稿では、簿記2級を活かして年収を上げる方法を、私の実体験とデータを交えて詳細に解説する。

簿記2級フリーランスの年収データ

経験年数別の年収目安

私自身の経験と、クラウドソーシングサイトやSNSを通じて知り合ったフリーランス仲間のデータを総合すると、簿記2級保有のフリーランス経理代行の年収目安は以下の通りである。

経験年数 年収目安 月収換算 備考
独立1年目 300〜400万円 25〜33万円 営業・準備期間を含む
独立2〜3年目 400〜550万円 33〜46万円 継続案件が定着
独立4年以上 500〜700万円 42〜58万円 顧問・コンサル案件へシフト

独立1年目は案件獲得に時間がかかるため年収が低めだが、2年目以降は月次契約が積み上がるので収益が安定していく。実務能力が証明されれば、クライアントからの直接契約が増え、仲介手数料を払う必要もなくなる。

会社員経理との年収比較

会社員の経理職(簿記2級保有)の平均年収は350〜450万円程度で頭打ちになることが多い。フリーランスの場合は社会保険料や国民年金、税金を自分で計算し支払う必要があるが、それを考慮しても独立3年目以降は手取りベースでも会社員を上回るケースが多い。特に副業時代から基盤を築き、独立時にそのまま顧客を移行させれば、初年度から会社員時代の年収を上回ることも可能だ。

経理職の市場価値は、実務経験や専門スキルによって大きく変動します。職種別の詳細な年収相場や、フリーランスとして独立した際の期待収益については、以下の年収データベースで詳しく解説しています。

経理・会計の年収相場をチェックする

経理代行フリーランスの案件と単価

フリーランス経理が扱える案件は多岐にわたる。簿記2級があることで、単なる「データ入力」を超えた、「経営数値の整理」まで任せられるようになる。

なお、記帳代行を請け負ううえで前提となるのが、帳簿の作成と保存に関する法令上のルールである。事業所得などのある人には記帳・帳簿等の保存が義務づけられており、国税庁は次のように整理している。

事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき業務を行う方は、取引を帳簿に記録するとともに、帳簿や取引に関して作成・受領した書類を一定期間保存しなければなりません。

国税庁「No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」

この保存義務やルールを正しく理解していること自体が、クライアントから信頼される記帳代行者の土台になる。

月次記帳代行(月 15,000〜50,000円/件)

最も基本となる案件。クラウド会計ソフトへの仕訳入力から、月次試算表の作成までを請け負う。

  • 個人事業主(仕訳月50件程度):月15,000〜20,000円
  • 小規模法人(仕訳月100件程度):月25,000〜35,000円
  • 中規模法人(仕訳月200件以上):月40,000〜50,000円

仕訳数だけでなく、「領収書の整理をどの程度任されるか」「勘定科目の判断が必要か」によって単価を交渉できる。私は現在8件のクライアントを抱えており、記帳代行だけで月約25万円の収入がある。

決算補助(1件 50,000〜150,000円)

簿記2級の知識があれば、法人の決算補助にも対応できる。税理士と連携して決算書類の作成を支援する仕事で、3〜5月に需要が集中するが単価が高い。税理士が手を回せない細かい調整仕訳や、消費税区分チェックなどを代行する。

給与計算代行(月 10,000〜30,000円/件)

従業員の給与計算を毎月代行する。勤怠集計、残業代計算、社会保険料控除、年末調整の準備など、正確性が求められるため、単価が付きやすい。簿記2級レベルの知識があれば、給与計算にかかる法定福利費の仕訳などもスムーズに理解できる。

経営分析レポート作成(月 30,000〜80,000円/件)

月次の財務データをもとに、損益計算書や貸借対照表の分析レポートを作成する。経営者にとって「数字を読み解く力」は喉から手が出るほど欲しいスキル。FP2級の知識があると、財務分析だけでなく、経営者の資金繰り相談にも対応でき、アドバイザリー報酬として単価を大幅に上げられる。

フリーランスとして独立する方法

独立への道のりは、計画的に進めればリスクを最小限に抑えられる。

Step 1:副業で実績を作る(6ヶ月〜1年)

いきなり独立するのはリスクが高い。まずは会社員のまま副業で記帳代行を始め、3〜5件のクライアントを確保することを目標にする。

経理代行の具体的な業務内容や、クライアントから求められるスキルの詳細については、お仕事ガイドを参考にしてください。未経験から副業を始める際のステップも紹介しています。

経理代行のお仕事ガイドを見る

私は@SOHOで最初のクライアントを獲得した。@SOHOは手数料0%なので、月15,000円の案件なら15,000円がそのまま手元に入る。他社クラウドソーシングの手数料20%と比較すると、年間で24万円の差になる。副業段階ではこの「手数料ゼロ」こそが、利益を最大化する鍵だ。

Step 2:クライアントを10件に増やす(6ヶ月〜1年)

副業で安定した実績ができたら、営業活動を強化する。具体的には以下の方法が有効だ。

税理士事務所との提携: 繁忙期の外注先として契約する。税理士事務所は顧問先からの記帳代行依頼に追われていることが多いため、簿記2級レベルの実務者がいると非常に重宝される。

口コミと紹介: 既存クライアントからの紹介が最も確度が高い。質の高い仕事を続けていれば、自然と紹介が発生する。私のクライアントの半数は紹介経由だ。「丁寧な仕事」は最高の営業活動である。

SNS・ブログでの発信: 「経理代行のコツ」や「クラウド会計ソフトの活用法」を発信する。これにより、営業をかけなくても向こうから依頼が来る仕組みが作れる。

Step 3:独立の判断基準

私が独立を決断した基準は「副業の月収が本業の手取りの60%を超えたとき」だった。具体的には、副業で月20万円を安定して稼げるようになった時点で退職届を出した。無理な独立は生活を脅かす。最低限、生活費の半年分を貯金し、継続案件を5件以上確保してから踏み出すのが鉄則だ。

独立して個人事業主になると、自分自身の確定申告も避けて通れない。ここで簿記2級の知識が大きく活きる。日々の取引を正規の簿記の原則に従って記帳し、貸借対照表と損益計算書を備えることで、税制上有利な青色申告を選択できるからだ。青色申告制度について、国税庁は次のように説明している。

一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人については、所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられる青色申告の制度があります。

国税庁「No.2070 青色申告制度」

つまり、簿記2級で身につけた帳簿作成スキルは、クライアントの記帳代行だけでなく、自分自身の節税にも直結する。独立の準備段階で、こうした制度の概要を国税庁の公式情報で確認しておくと安心だ(国税庁ウェブサイト)。

なぜ簿記2級がフリーランス最強のスキルなのか

簿記2級は「ビジネスの共通言語」である。この知識があるかないかで、クライアントとの対話の深さが全く変わる。

経営者の悩みに寄り添える

簿記3級では仕訳のルールしか学ばないが、2級では「工業簿記」を通じてコスト計算や利益構造を学ぶ。これが非常に大きい。飲食店であれば「材料費率の適正化」、製造業であれば「原価計算の精度向上」など、経営者の具体的な悩みに財務データからアドバイスできるようになる。

会計ソフトの誤りを修正できる

誰でも入力できる「入力代行」の単価は安い。しかし、会計ソフトに自動連携されたデータを精査し、科目を修正し、正しい試算表に仕上げる「財務の専門家」の単価は圧倒的に高い。この修正能力は、簿記2級の知識なしでは不可能だ。

年収を上げるためのスキルの掛け合わせ

簿記2級単体でも戦えるが、他のスキルを掛け合わせることで単価は跳ね上がる。

簿記2級 × 会計ソフト(freee/MF/弥生)

freee、マネーフォワード弥生会計3大クラウド会計ソフトを使いこなせると、クライアントの幅が広がる。特にfreeeの認定アドバイザー資格を取得すると、freeeからの紹介案件も受けられる。

さらに、日商簿記などの資格取得を目指す際は、国の教育訓練給付金制度を活用することで、受講費用の最大70%(上限56万円)が支給される対象講座もあります。

教育訓練給付金の対象講座を探す

簿記2級 × FP資格

FP3級FP2級を併せ持つと、経理代行に加えて資金繰り相談や節税アドバイスも提供できる。「お金の専門家」としてのポジションが確立し、単価アップにつながる。

簿記2級 × IT知識

基本情報技術者の知識があると、会計システムの導入支援やDX推進の案件にも対応できる。IT×会計の人材は市場で非常に希少なため、高い報酬を期待できる。

フリーランスのリアルな生活

独立して3年目の現在、私の1日はこんな感じだ。朝8時に仕事を始め、午前中に2〜3件のクライアントの記帳作業を済ませる。午後は新規案件の対応や経営分析レポートの作成。夕方5時には仕事を終えて、子供の迎えに行く。

通勤時間がなくなった分、家族との時間が増えた。年収も会社員時代より上がった。もちろん、確定申告や健康保険の自己負担など面倒なこともあるが、トータルで見れば独立して良かったと思っている。自分の腕一つで稼ぐというプレッシャーはあるが、同時にそれは大きな自信にもなっている。

なお、関連テーマを扱ったカラーリスト フリーランス 在宅 2026|パーソナルカラー診断で独立する始め方もあわせて参考にしてください。

なお、関連テーマを扱った採用人事 フリーランス 在宅 2026|採用代行で独立する始め方と単価の相場もあわせて参考にしてください。

経理代行フリーランスが押さえるべき税務・法制度の最新動向

経理代行を本業とするフリーランスにとって、税制改正や会計関連法令の動向を把握しておくことは、クライアントから信頼される専門家であり続けるための必須条件である。とくに2023年10月にスタートしたインボイス制度、そして電子帳簿保存法の改正は、中小企業や個人事業主のクライアントに直接的な影響を与えており、経理代行者がリードして対応を支援できると単価交渉が有利になる。

インボイス制度対応で広がる業務領域

インボイス制度の導入により、適格請求書発行事業者の登録、消費税の区分経理、仕入税額控除の管理など、経理実務の負担が一気に増えた。多くの小規模事業者は、この制度変更についていけず、外部の専門家に支援を求めている。簿記2級の知識があれば、消費税の課税区分判定や、適格請求書の要件チェック、簡易課税制度との比較シミュレーションまで対応できる。

国税庁は適格請求書等保存方式について次のように説明している。

適格請求書等保存方式(インボイス制度)の下では、適格請求書発行事業者である売手が、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、適格請求書を交付しなければなりません。 出典: www.nta.go.jp

この制度への対応支援は、月次顧問料に上乗せして請求できる付加価値業務として位置づけられる。私のクライアントでも、インボイス対応の初期設定支援で1件あたり3〜5万円のスポット報酬を獲得した実績がある。

電子帳簿保存法への実務対応

2024年1月から電子取引データの電子保存が完全義務化され、紙での保存が原則認められなくなった。中小企業の多くは、この対応が後手に回っており、経理代行者がクラウド会計ソフトの設定支援とあわせて電子保存ルールを整備すると、クライアントから絶大な信頼を得られる。タイムスタンプ要件や検索機能要件など、技術的な知識も求められるが、それこそが他の代行者と差別化できるポイントだ。

顧客単価を上げる「提案型経理代行」の実践方法

入力作業だけの「作業代行」から脱却し、経営者に対して数字をもとに提案できる「コンサル型代行」へとシフトすることで、年収は劇的に変わる。私自身、独立2年目で月次顧問料を25,000円から45,000円に引き上げることに成功した。その鍵となったのが、月次報告書のレベルアップだった。

月次レポートに「経営者が知りたい数字」を加える

単に試算表を渡すだけでは、経営者は数字を読み解けない。粗利率の推移、固定費の構成比、損益分岐点売上高、前年同月比の主要指標など、経営者が意思決定に使える数字を3〜5項目選んで、グラフ付きでまとめる。Excelで作るだけでも十分に価値がある。

たとえば飲食店のクライアントであれば、FL比率(食材費と人件費の合計が売上に占める割合)の月次推移をグラフ化し、業界標準60%との比較を添えるだけで、経営者は具体的な改善行動につなげられる。この付加価値が、毎月数万円の単価アップを正当化する。

「数字の翻訳者」というポジション取り

経営者の多くは、決算書を読めない、あるいは読みたくない。だからこそ「あなたの会社の状況を、3行で説明します」というコミュニケーションができる経理代行者は重宝される。専門用語を使わず、日常の言葉で経営状況を説明する力を磨くことで、税理士事務所では得られない「身近な相談役」のポジションを獲得できる。

中小企業庁が公表している中小企業白書でも、データに基づく経営判断の重要性が繰り返し指摘されている。

中小企業・小規模事業者が、経営環境の変化に対応し、生産性を高めていくためには、自社の経営状況を客観的に把握し、データに基づいた意思決定を行うことが重要である。 出典: www.chusho.meti.go.jp

経理代行者は、この「データに基づく意思決定」を経営者に提供する翻訳者として、独自の価値を発揮できる。

失敗しないクライアント選びと契約管理のコツ

フリーランス経理として安定収入を得るには、案件を取ることと同じくらい、「悪い案件を取らないこと」が重要だ。私自身、独立1年目に低単価で過剰な要求をしてくる案件を抱え込んでしまい、半年間苦しんだ経験がある。

契約前に確認すべき5つのポイント

第一に、月次の仕訳数と取引の複雑さを必ず事前にヒアリングする。「月50件程度」と聞いていたのに実際は200件超だったというトラブルは頻発する。第二に、領収書や請求書の受け渡し方法を明確にする。紙で郵送される案件は手間が膨大になりがちだ。第三に、対応するクラウド会計ソフトを限定する。すべてのソフトに対応すると学習コストが膨らむ。第四に、決算期と月次報告の締日を確認する。第五に、追加業務発生時の単価を契約書に明記する。

業務委託契約書のひな型を必ず用意する

口約束やメール文面だけで業務を始めるのは絶対に避ける。業務範囲、報酬、支払期日、契約解除の条件、機密保持義務などを明記した契約書を交わすことで、トラブルを未然に防げる。経理代行はクライアントの機密情報に触れる仕事なので、機密保持の取り決めは特に重要だ。フリーランス向けの契約書ひな型は、各種団体や中小企業庁の支援サイトでも公開されているので、それを自分用にカスタマイズして使うとよい。

よくある質問

Q. フリーランスの年収は会社員より本当に高いですか?

データ上は、大半の職種でフリーランスのほうが会社員より高い年収を得ています。ただし、福利厚生(社会保険の会社負担分、退職金、有給休暇など)を含めた「総報酬」で比較すると、差は縮まります。また、フリーランスは案件がない期間のリスクも自分で負う必要があります。

Q. フリーランスの手取りは会社員時代より増えますか?

売上が同じであれば、手取りは減る可能性が高いです。会社員は社会保険料の半分を企業が負担しているため、フリーランスが同じ手取りを維持するには、会社員時代の給与の1.5倍〜2倍の売上を目指すのが一般的です。ただし、節税対策や経費計上の工夫次第で、自由に使えるお金を増やすことは十分に可能です。

Q. 文系未経験からフリーランスを目指す場合、まず何を取るべきですか?

まずは「ITパスポート」や「基本情報技術者試験」で基礎を固めるべきです。その後、SalesforceやGoogle広告などの「ツール特化型資格」を目指すと、比較的早く副業レベルの案件に手が届きやすくなります。

Q. 開業届を出していないフリーランスでも補助金は申請できますか?

原則として申請できません。国や自治体の事業者向け補助金は、税務署に「開業届」を提出し、事業として成立していることが大前提となります。まだ開業届を出していない場合は、まずは税務署で手続きを行うところから始めましょう。

Q. 同業者(フリーランス仲間)との飲み会は経費になりますか?

「情報交換会」としての実態があれば交際費として認められます。ただし、ただの愚痴の言い合いや友人としての飲み会はNGです。「〇〇業界の最新動向について情報交換し、今後の協業について協議した」という明確なビジネス目的が必要です。

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高橋 慎太郎

この記事を書いた人

高橋 慎太郎

公認会計士→独立コンサルタント

大手監査法人で12年間勤務した後、フリーランスの経営コンサルタントとして独立。簿記・FP・税理士の資格を活かし、フリーランスの会計・税務・資金管理に関する記事を執筆しています。

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