Webデザイン研修 助成金

久世 誠一郎
久世 誠一郎
Webデザイン研修 助成金

社内のWebデザイン内製化やDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する上で、避けて通れないのが「教育コスト」の問題です。そこで活用したいのが、厚生労働省が提供する「人材開発支援助成金」です。

この助成金は、社員に専門的な外部研修を受けさせる際、その受講料や研修中の賃金の一部を国がサポートしてくれる制度です。特に近年は「リスキリング(学び直し)」への支援が強化されており、Webデザイン研修は非常に高い助成率が設定されています。

我が国におけるIT人材の不足感は年々高まっており、2030年には最大で約79万人が不足すると試算されています。企業のDX推進を加速させるためには、既存の従業員のスキルアップ(リスキリング)が急務です。

Webデザイン研修で活用できる主な助成コース

Webデザイン研修でよく使われるのは、以下の2つのコースです。

コース名 主な活用シーン 経費助成(受講料など) 賃金助成(1時間あたり)
事業展開等リスキリング支援コース 自社で新たにECサイトを立ち上げる、Web制作事業を始めるなど、新規事業・販路開拓のためのWebデザイン研修 経費の75% 960円
高度デジタル人材訓練(人への投資促進コース内) 現在の業務をより高度化するため(自社サイトの内製化など)の専門的なUI/UXデザイン研修 経費の60%(※要件クリアで75%) 760円(※要件クリアで960円)

労働生産性の向上を目的とした企業の事業展開(新分野進出など)において、デジタル化に対応した専門的な知識や技能の習得(リスキリング)を支援するため、訓練経費や賃金の一部を助成しています。

— 出典: 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内」

※上記は2026年の想定に基づく概要です。年度により要件や助成率が変動するため、最新のパンフレットを必ずご確認ください。

例えば、受講料30万円・期間100時間の「UI/UXデザイナー実践コース」に、事務職の社員1名を通わせたとします。 「事業展開等リスキリング支援コース」が適用された場合、受講料の75%(22.5万円)と、賃金助成(100時間×960円=9.6万円)が支給され、合計で32.1万円の助成が受けられます。つまり、実質的には会社の負担ゼロ(あるいはプラス)で、社員に専門的なデザインスキルを身につけさせることができるのです。

助成金が使える「Webデザイン研修」の選び方

助成金をもらうためには、世の中にあるどのデザインスクールでも良いというわけではありません。国が定める「要件」をクリアした研修機関を選ぶ必要があります。詳細は厚生労働省の公式ページで確認できます。

助成金申請に必須の「3つの要件」

人材開発支援助成金の対象となる研修は、原則として以下の条件を満たしていなければなりません。

  1. 研修時間が「10時間以上」であること: 数時間の単発セミナーは対象外です。
  2. 事業と関連性があること: そのWebデザインスキルが、自社の業務や今後の事業展開にどう役立つのか、関連性が明確である必要があります(趣味の延長ではダメです)。
  3. 修了証明や受講履歴が出せること: 「受講した」という客観的な証拠(学習ログや修了証)を労働局へ提出できるスクールでなければなりません。

失敗しない!デザインスクールの選び方

私がコンサルしている企業でも、「社員にデザインソフトの使い方を習わせたが、実務で全くデザインが作れなかった」という失敗談をよく聞きます。以下のポイントをチェックしてスクールを選んでください。

  • 「ツールの使い方」だけで終わっていないか: PhotoshopやFigmaの操作方法を覚えるだけの研修は意味がありません。実際に自社サイトのバナーを作ったり、ランディングページ(LP)をデザインしたりする「実践的なアウトプット(課題制作)」がカリキュラムに含まれているかを確認してください。
  • 「助成金対応カリキュラム」を持っているか: 助成金の申請には「どんな内容を何時間学ぶか」という詳細なカリキュラム表の提出が必要です。最初から「人材開発支援助成金対応」と謳っており、労働局に提出する書類一式をサポートしてくれるスクールを選ぶと、経営者様や人事担当者様の手間が劇的に省けます。

助成金申請から受給までの5ステップ(絶対ルール)

厚生労働省の助成金は、申請手続きが厳格です。順番を一つでも間違えると、「研修は受けたのに助成金が1円ももらえない」という悲惨な事態になります。以下のステップを必ず守ってください。

ステップ1:自社の労務環境をクリーンにする

助成金をもらうための大前提として、「労働法規を守っている会社」であることが求められます。 未払い残業代はないか、就業規則が最新の法律に対応しているか、タイムカード(出勤簿)と賃金台帳に矛盾はないか。これらを労働局に厳しくチェックされます。申請前に、顧問の社会保険労務士(社労士)に依頼して、自社の労務環境をクリーンにしておくことがすべての出発点です。

ステップ2:Webデザイン研修機関とカリキュラムの決定

自社の要件に合ったWebデザインスクールを選び、対象となる社員と受講期間を決定します。「いつから開始するか」の日程感が非常に重要になります。

ステップ3:【最重要】研修開始の1ヶ月前までに「計画届」を提出

ここが最大の落とし穴です。 必ず「研修が始まる1ヶ月前まで」に、管轄の労働局へ「職業訓練計画届」を提出し、受理されていなければなりません。 経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」など、他の省庁の施策と混同しないよう注意が必要です。「すでにスクールに申し込んでお金も払ってしまった。今から申請しよう」は絶対に不可能です。

「まず国に計画を出し、OKをもらってから研修をスタートする」というルールを徹底してください。

ステップ4:Webデザイン研修の受講と証拠の保管

計画通りに研修を受講させます。受講期間中は、対象社員の「出勤簿(研修を受けていた日の記録)」や、スクールへの「支払い領収書」、そして「受講修了証明書(または学習ログ)」を厳重に保管しておいてください。

ステップ5:【研修終了後】2ヶ月以内に「支給申請」

研修がすべて終了した日の翌日から起算して2ヶ月以内に、労働局へ「支給申請書」とステップ4で集めた証拠書類一式を提出します。 最近では、gBizIDを活用したオンライン申請も推奨されています。労働局での審査(数ヶ月かかる場合があります)を経て、問題がなければ「支給決定通知書」が届き、会社の口座に助成金が振り込まれます。

Webデザイン研修の助成金活用における「よくある失敗」

最後に、私が人材育成の現場で見てきた「やってはいけない」失敗例を共有します。

失敗1:研修後に「デザインを作る実務」を与えない

助成金を使って数ヶ月のデザイン研修を受けさせた後、現場に戻ってきた社員に対して「じゃあ、今まで通り事務の仕事に戻ってね。手が空いた時にバナーでも作って」とするケースです。 これでは絶対にスキルは定着しません。学んだ知識は使わなければ一瞬で忘れます。研修終了後すぐに、「来週までに新商品のLPのデザイン案を出して」など、学んだ知識をアウトプットできる「実務」と「責任」を用意しておくことが、人材育成を成功させる最大の鍵です。

「結局、人なんですよ」と私がよく申し上げるのは、研修後のフォローと機会提供こそが定着の要だからです。

失敗2:助成金の書類作成を社内で抱え込む

人材開発支援助成金の申請書類は非常に煩雑です。これを、多忙な社長自身や、普段の業務で手一杯の人事担当者がやろうとすると、ほぼ確実に書類の不備で差し戻しになります。 厚労省の助成金申請の代行は社会保険労務士の独占業務です。「少しでも費用を浮かせよう」と自社で抱え込んで数百万円の助成金をもらい損ねるリスクを考えれば、申請手続きはプロ(社労士)に任せ、皆さんは「新しく育ったデザイナーにどんな仕事を任せるか」という本業の事業戦略に集中することを強くお勧めします。

よくある質問(FAQ)

Webデザイン研修の助成金について、経営者様からよく聞かれる質問をまとめました。

Q1. eラーニング(動画視聴)のみのWebデザイン研修でも助成金の対象になりますか?

対象になるコース(定額制訓練など)もありますが、要件が厳格です。「ただ動画を見ているだけ」ではなく、システム上で「誰が、いつ、何時間学習したか」という受講履歴が明確に管理・出力できるLMS(学習管理システム)であることが必須条件です。研修機関を選ぶ際に必ず「助成金申請に必要な受講ログが出力できるか」を確認してください。

Q2. 研修の費用を、会社ではなく社員個人のクレジットカードで立て替え払いしても良いですか?

絶対に避けてください。助成金の対象となるのは「事業主(会社)が負担した経費」です。社員個人が立て替え払いをした形跡があると、「会社が費用を負担していない(=個人の自己啓発である)」と見なされ、不支給となるリスクが非常に高いです。スクールへの支払いは、必ず「会社の銀行口座」からの振り込みで行ってください。

Q3. 社長や役員(取締役)がWebデザイン研修を受ける場合も助成対象になりますか?

対象になりません。人材開発支援助成金は「雇用保険の被保険者(労働者)」に対する職業訓練を支援する制度です。雇用保険に加入していない代表取締役や役員、あるいは個人事業主本人が受講した場合は、助成の対象外となりますのでご注意ください。

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  • 助成金申請のプロ(社会保険労務士): 人材開発支援助成金の申請実績が豊富で、面倒な労務チェックから職業訓練計画届の作成・提出までを伴走支援できる頼れる社労士が見つかります。詳細は全国社会保険労務士会連合会のサイトでも確認いただけます。
  • 実務直結型のWebデザイン研修講師: 単なるツールの使い方にとどまらず、「自社のWebサイトをどう改善するか」といった実務に即したカスタマイズ研修を提供できる、実戦経験豊富なデザイナーや講師を探すことができます。
  • 費用対効果の高いマッチング: 予算や自社のレベルに合わせて、必要な時に必要なだけ、最適な専門家を手間なく探すことが可能です。

また、中小企業の支援施策についてはミラサポplusなどのポータルサイトも非常に参考になります。

Webデザインの内製化は、単なる外注費の削減にとどまらず、自社のスピード感と表現力を飛躍的に高める戦略です。面倒な手続きやカリキュラム選定はプロの力を借りて、あなたは「自社の魅力をどう伝えるか」という経営戦略を描くことに集中しませんか?

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久世 誠一郎

この記事を書いた人

久世 誠一郎

元人材コンサル・中小企業支援歴25年

大手人材会社でコンサルティング部門を率いた後、中小企業の業務改善・外注戦略の支援に転身。発注者目線でのクラウドソーシング活用術を発信しています。

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