AWS研修を助成金で実施!IT企業向け人材開発支援助成金の使い方

藤本 拓也
藤本 拓也
AWS研修を助成金で実施!IT企業向け人材開発支援助成金の使い方

この記事のポイント

  • 高額なAWS研修やクラウド研修の費用は「人材開発支援助成金」を活用することで大幅に削減できます
  • 申請条件や受給額のシミュレーション
  • 具体的な手続きの流れまで

企業のDX化やクラウド移行が急速に進む中、エンジニアのAWSスキル育成はIT企業にとって急務の課題です。しかし、本格的なAWS研修を外部機関に依頼すると高額な費用がかかるため、導入をためらっている経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。

実は、国が提供する「人材開発支援助成金」を正しく活用すれば、AWS研修にかかる費用の大部分をカバーすることが可能です。本記事では、IT企業がAWS研修を助成金で実施するための具体的な条件、受給額のシミュレーション、そして申請の流れまでを詳しく解説します。

AWS研修に使える「人材開発支援助成金」とは?

人材開発支援助成金とは、企業が自社の従業員に対して職務に関連する専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練を実施した際に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を国が助成する制度です。

特に近年、IT企業がオンプレミス環境からクラウド環境(AWS、Google CloudMicrosoft Azureなど)への事業展開を図るケースにおいて、この助成金が非常に強力なサポートとなります。AWS研修を導入する場合、主に「事業展開等リスキリング支援コース」や「人材育成支援コース」が活用されます。

人材開発支援助成金は、雇用保険の被保険者に対して、職務に関連した専門的な知識および技能の習得を目的とした職業訓練を実施した事業主等に対して、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。

— 出典: 厚生労働省「人材開発支援助成金」

事業展開等リスキリング支援コースは、新規事業の立ち上げや既存事業のDX化に伴い、新たなスキルが必要となる従業員に対して訓練を行う場合に適用されます。このコースの最大の魅力は、助成率の高さです。中小企業の場合、経費助成率はなんと75%に達し、さらに訓練中の賃金助成として1人1時間あたり960円が支給されます。

高度なITスキルを身につけるためのAWS研修は、受講料が1人あたり10万円〜30万円を超えることも珍しくありません。しかし、この助成金を活用することで、実質的な企業の負担を3分の1以下に抑えることが可能になります。資金力が限られている中小規模のSIerやSES企業にとって、この制度は組織の技術力を底上げするための最強のカードと言えるでしょう。

助成対象となるAWS研修・クラウド研修の条件

人材開発支援助成金を受給するためには、どのようなAWS研修でもよいというわけではありません。厚生労働省が定める一定の要件を満たすカリキュラムを組む必要があります。ここでは、助成対象として認められるための主な条件を整理します。

第一に、訓練時間が10時間以上のOFF-JT(Off the Job Training:職場外での座学や実習)である必要があります。社内の先輩社員が実務の中で教えるOJT(On the Job Training)は対象外となります。そのため、外部の専門的なITスクールや研修機関が提供するカリキュラムを受講させるか、外部から専門の講師を招いて社内で研修を実施する形式をとらなければなりません。

第二に、研修内容が企業の「事業展開」や「DX推進」に直結していることを事業計画書などで論理的に説明できる必要があります。「なんとなく将来役立ちそうだからAWSを学ばせる」という曖昧な理由では審査に通りません。「現在オンプレミスのインフラ構築事業をメインとしているが、今後3年でAWSを活用したクラウドインテグレーション事業を全体の売上の30%まで引き上げるため、既存のインフラエンジニアにAWSのアーキテクチャ設計スキルを習得させる」といった、具体的かつ説得力のある事業目的が求められます。

第三に、受講対象者が雇用保険の被保険者である正規雇用の従業員であることが基本となります。有期雇用の契約社員やパートタイム労働者の場合は、別のコース(特定訓練コースなど)やキャリアアップ助成金の対象となる場合がありますが、要件が異なるため事前に社会保険労務士などの専門家に確認することを強くおすすめします。

また、eラーニング形式のAWS研修であっても、一定の管理体制(受講履歴のログ取得、テストによる理解度確認など)が整っているものであれば助成対象として認められるケースが増えています。完全リモートワークを採用しているIT企業でも導入しやすい環境が整いつつあります。

AWS研修で受け取れる助成金額のシミュレーション

具体的にどれくらいの金額が助成されるのか、架空のIT企業(中小企業)を例にしてシミュレーションしてみましょう。

【シミュレーションの前提条件】 ・企業規模:中小企業(IT・情報通信業の場合、資本金3億円以下または従業員数300人以下) ・活用コース:人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース) ・受講者数:5名(既存のインフラエンジニア) ・研修内容:外部機関の「AWS認定ソリューションアーキテクト - アソシエイト取得対策・実践構築コース」 ・研修期間:合計40時間(1日8時間 × 5日間) ・受講料(経費):1人あたり200,000円(5名合計で1,000,000円

この条件で申請を行った場合、助成金は「経費助成」と「賃金助成」の2つに分けて計算されます。

1. 経費助成の計算 中小企業の事業展開等リスキリング支援コースの経費助成率は75%です。 1,000,000円 × 75% = 750,000円

2. 賃金助成の計算 研修を受講している時間(業務から離れている時間)に対して、1人1時間あたり960円が支給されます。 960円 × 40時間 × 5名 = 192,000円

助成金の合計受給額 750,000円 + 192,000円 = 942,000円

もともと企業が負担すべきであった研修経費1,000,000円に対して、942,000円が国から助成されるため、実質的な企業の持ち出しはわずか58,000円となります。1人あたりに換算すると、約1万円強の負担で本格的なAWS実践研修を40時間も受けさせることができる計算になります。

このシミュレーションからわかるように、助成金を活用するかしないかで、人材育成にかかるコストパフォーマンスは劇的に変わります。企業が成長を続けるためには、この制度を使わない手はありません。

助成金を使ってAWS研修を実施する流れと具体的な手順

人材開発支援助成金を活用してAWS研修を実施するためには、厳密なスケジュール管理と書類作成が必要です。手続きの順序を間違えると、要件を満たしていても助成金が一切受け取れなくなるため注意してください。

ステップ1:事業展開等実施計画および職業訓練実施計画の作成・提出 研修を開始する日の1ヶ月前までに、管轄の労働局またはハローワークに「訓練実施計画届」などの必要書類を提出しなければなりません。この際、なぜ自社にAWS研修が必要なのかという事業展開の計画書や、研修機関のカリキュラム詳細、見積書などを添付します。申請期限(1ヶ月前)を1日でも過ぎると受理されないため、余裕を持ったスケジュール調整が必要です。

ステップ2:労働局による計画の確認・受理 提出した書類が労働局で審査され、要件を満たしていると確認されれば受理されます。計画が受理される前に研修を開始したり、受講料を研修機関に支払ったりしてしまうと助成対象外となるリスクがあるため、必ず受理の連絡を待ってから行動に移してください。

ステップ3:AWS研修の実施 計画通りにAWS研修を実施します。この期間中、受講者が確実に研修に出席したことを証明するための「出勤簿(またはタイムカード)」や、研修機関が発行する「受講証明書」などをしっかり保管しておく必要があります。賃金助成を受けるためには、研修受講日も通常の勤務日と同様に給与を支払っている実績(賃金台帳)が必要です。

ステップ4:受講料の支払い 研修機関に対して受講料を支払います。支払いは必ず会社の銀行口座からの銀行振込で行い、振込手数料を含めた支払いの証拠となる「振込明細書」や「領収書」を保管します。現金払いは、資金の流れが不透明とみなされ審査が難航する原因になるため避けるべきです。詳しくは中小企業庁の補助金ポータルサイトなどで、適切な資金管理の方法を確認することをおすすめします。

ステップ5:支給申請手続き 研修が終了した日の翌日から起算して2ヶ月以内に、支給申請書とともに必要書類(賃金台帳、出勤簿、受講証明書、振込明細書など)を労働局へ提出します。この期限も非常に厳格です。

ステップ6:審査および助成金の受給 労働局での審査を経て、問題がなければ支給決定通知書が届き、指定した会社の銀行口座に助成金が振り込まれます。審査には通常3〜6ヶ月程度の時間がかかるため、研修費用は一時的に自社で立て替える形になる点に留意して資金繰りの計画を立てておきましょう。

IT企業がAWS研修を導入するメリット(私の現場体験談)

ここで少し、私の体験談をお話しさせてください。私はITコンサルタントとして、これまで多くの中小SIer企業のクラウドシフト支援に関わってきました。

ある地方のシステム開発会社では、長年オンプレミスのサーバー保守やレガシーなシステムの運用案件をメインの収益源としていました。しかし、クライアント企業のクラウド移行が進むにつれ、既存の案件単価は年々下落し、利益率が15%を割り込む厳しい状況に陥っていました。

そこで経営陣に提案したのが、人材開発支援助成金を活用した「全社的なAWSエンジニアへのリスキリング」です。当時の同社にはAWSの専門知識を持つエンジニアはゼロでしたが、助成金を使って外部の専門スクールと法人契約を結び、約半年間かけてインフラエンジニア10名にAWS実践研修を受講させました。

結果として、10名中8名が「AWS認定ソリューションアーキテクト - アソシエイト」を取得し、さらにそのうち3名はより上位のプロフェッショナル資格まで到達しました。技術力が可視化されたことで、クラウドネイティブな新規開発案件やAWS環境へのマイグレーション案件を直請けで受注できるようになり、1人月あたりの単価は従来の60万円から100万円以上へと大幅に跳ね上がりました。

@SOHOのお仕事ガイドによると、インフラエンジニアやバックエンドエンジニアがAWSスキルを習得することで、月額単価が10万円〜20万円ほど跳ね上がるケースが多数報告されています。

エンジニア自身も、最先端のクラウド技術に触れることでモチベーションが劇的に向上し、離職率も低下しました。初期投資の研修費用は数百万円かかりましたが、その大半が助成金で補填されたため、経営的なリスクを最小限に抑えながら高収益体質への転換を実現できたのです。

申請時の注意点と審査落ちを防ぐためのポイント

人材開発支援助成金は非常に魅力的な制度ですが、厚生労働省の管轄する助成金であるため、労働関係法令の遵守が厳格に求められます。審査落ちを防ぐための重要なポイントをいくつか挙げます。

まず大前提として、会社が「労働保険(労災保険・雇用保険)」に適切に加入し、保険料を滞納していないことが必須です。また、過去6ヶ月以内に会社都合での解雇を行っていないこと(解雇要件)も重要な条件となります。

さらに、残業代の未払いや違法な長時間労働など、労働基準法に違反する運用がないかどうかも厳しくチェックされます。出勤簿と賃金台帳の整合性が取れていない(例:研修時間に該当する部分の給与が支払われていない、時間外労働の計算が間違っているなど)と、助成金の不支給だけでなく、労基署の監査に発展するリスクもあります。

申請書類の不備もよくある失敗パターンです。研修機関が発行するカリキュラム表に「AWSの何について、何時間学ぶのか」が具体的に記載されていなかったり、経費の振込明細書に別の支払いが合算されていて研修費用単体の証明ができなかったりすると、修正を求められ申請期限に間に合わなくなることがあります。

社内に助成金申請のノウハウがない場合は、無理に自社だけで完結させようとせず、IT分野の助成金に強い社会保険労務士に申請代行を依頼するのも一つの賢い選択です。代行手数料はかかりますが、確実に助成金を受け取るための保険としては十分に価値があります。日本社会保険労務士会連合会などで、専門家を探すことも可能です。

AWS研修を成功させるための外部研修機関の選び方

助成金の審査を通すことばかりに気を取られ、肝心の「AWSスキルの習得」が疎かになっては本末転倒です。助成金対象コースを提供しているITスクールや研修機関は数多くありますが、以下のポイントに注意して選定しましょう。

1. 実機を使ったハンズオン演習の割合 AWSは座学で知識を暗記するだけでは実務で使えません。実際にAWSのマネジメントコンソールを操作し、EC2インスタンスの立ち上げやVPCのネットワーク構築、RDSの連携などを手を動かして学ぶ「ハンズオン演習」がカリキュラムの50%以上を占める実践的なコースを選んでください。

2. 講師の現役エンジニア経験 教科書通りの内容しか教えられない専任講師ではなく、実際に現場でAWSの設計・構築案件を回している現役エンジニアが講師を務める研修機関が理想です。実務でよく遭遇するトラブルシューティングや、コスト最適化のベストプラクティスなど、生きた知識を吸収できます。

3. 助成金申請のサポート体制 ITスクール側が人材開発支援助成金の制度に精通しており、申請に必要な「カリキュラム表」や「受講証明書」などの書類を迅速かつ正確に発行してくれるかどうかも重要な判断基準です。企業向けの助成金サポート実績が豊富な研修機関を選ぶと、手続きの負担が大きく軽減されます。

AWSの技術を組織に定着させることで、最終的には自社のエンジニアがフリーランス並みの高い専門性と市場価値を持つようになります。将来的に彼らが独立し、パートナーとして協業するような関係性を築ければ、企業のビジネスネットワークはさらに強固なものになるでしょう。その際、フリーランスとしての独立を支援するプラットフォームの存在も重要になります。

@SOHOのようなクラウドソーシングプラットフォームであれば、手数料0%報酬の100%を受け取れるため、高いAWSスキルを持つエンジニアが正当な対価を得ながら企業とダイレクトに取引する環境が整っています。

よくある質問

Q. 社長や役員(取締役)がWebデザイン研修を受ける場合も助成対象になりますか?

対象になりません。人材開発支援助成金は「雇用保険の被保険者(労働者)」に対する職業訓練を支援する制度です。雇用保険に加入していない代表取締役や役員、あるいは個人事業主本人が受講した場合は、助成の対象外となりますのでご注意ください。

Q. 社長や役員がPython研修を受ける場合も対象になりますか?

対象になりません。人材開発支援助成金は「雇用保険の被保険者(労働者)」に対する職業訓練を支援する制度です。雇用保険に加入していない代表取締役や役員、個人事業主本人が受講した場合は助成対象外となりますのでご注意ください。

Q. eラーニング(動画視聴)のみのWebデザイン研修でも助成金の対象になりますか?

対象になるコース(定額制訓練など)もありますが、要件が厳格です。「ただ動画を見ているだけ」ではなく、システム上で「誰が、いつ、何時間学習したか」という受講履歴が明確に管理・出力できるLMS(学習管理システム)であることが必須条件です。研修機関を選ぶ際に必ず「助成金申請に必要な受講ログが出力できるか」を確認してください。

Q. 定額制(サブスク)のeラーニングなら、どんなサービスでも対象ですか?

すべてが対象になるわけではありません。対象となるには、「受講履歴(誰が、いつ、どの講座を、何時間学習したか)」がシステム上で明確に管理・出力できるサービスである必要があります。また、助成金の申請時にその受講履歴の提出が求められます。サービスを選定する際は、ベンダーに「人材開発支援助成金の要件を満たす受講管理機能があるか」を必ず確認してください。

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藤本 拓也

この記事を書いた人

藤本 拓也

フリーランスWebマーケター

大手広告代理店でWebマーケティングを10年間担当した後、フリーランスに転身。SEO・SNS・広告運用を得意とし、大阪から東京の案件もリモートで対応。マーケティング・営業系の記事を執筆しています。

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