AWS研修 助成金

高橋 慎太郎
高橋 慎太郎
AWS研修 助成金

この記事のポイント

  • 「AWSを導入したいが
  • エンジニアのスキルが足りない
  • 研修を受けさせたいけれど費用が高い……」

人材開発支援助成金とは?

AWSを導入したいが、エンジニアのスキルが足りない。研修を受けさせたいけれど費用が高い……」 そんなIT企業の強い味方となるのが、厚生労働省が所管する「人材開発支援助成金」です。

これは、社員のスキルアップ(職業訓練)にかかった費用や、研修中の賃金の一部を国がサポートしてくれる制度です。特に近年は「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進」が国策となっており、AWSのようなクラウドスキルの習得には非常に手厚い助成が用意されています。現在はデジタル庁のデジタル人材育成ページなどでも、官民挙げたスキルアップの重要性が強調されています。

ITニーズの拡大により、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると予測されており、特にクラウドやAIなどの先端IT人材の育成が急務となっています。

2026年度版:AWS研修で使える主なコースと助成率

コース名 主な対象 経費助成(受講料など) 賃金助成(1時間あたり)
事業展開等リスキリング支援コース 自社が新たにクラウド構築事業へ参入する場合など、新規事業展開のためのAWS研修 経費の75% 960円
高度デジタル人材訓練(人への投資促進コース内) 現在の業務をより高度化するための専門的なAWS研修(資格取得対策など) 経費の60%(※要件クリアで75%) 760円(※要件クリアで960円)

※上記は2026年の想定に基づく概要です。年度により要件や助成率が変動するため、最新のパンフレットを必ずご確認ください。

中小企業向けの補助金や助成金に関する最新の動向については、以下のSNS情報も非常に参考になります。

例えば、受講料30万円・期間100時間の「AWS SAA(ソリューションアーキテクト アソシエイト)資格取得ブートキャンプ」に若手エンジニア1名を通わせたとします。 「事業展開等リスキリング支援コース」が適用された場合、受講料の75%(22.5万円)と、賃金助成(100時間×960円=9.6万円)が支給され、合計で32.1万円の助成が受けられます。つまり、会社としては実質ゼロ円に近い負担で、強力なAWSスキルを持ったエンジニアを育てることができるのです。

なお、AWSエンジニアの市場価値や年収の目安については、AWSエンジニアの年収データを見るで確認できます。また、具体的なキャリアパスについては、クラウドエンジニアの仕事内容・スキル・将来性を詳しく見るも併せてご覧ください。

助成金の対象となる「AWS研修」の選び方

助成金をもらうためには、適当なオンライン講座を申し込めばよいというわけではありません。国が定める「要件」をクリアした研修機関(スクール)を選ぶ必要があります。

助成金申請に必須の「3つの要件」

人材開発支援助成金の対象となる研修は、原則として以下の条件を満たしていなければなりません。

  1. 研修時間が「10時間以上」であること: 短い単発セミナーは対象外です。
  2. 事業と関連性があること: そのAWSスキルが自社の業務にどう役立つのか、関連性が明確である必要があります。
  3. 修了証明や受講履歴が出せること: 「受講した」という客観的な証拠(ログや修了証)を労働局へ提出できなければなりません。

失敗しない!研修機関(ベンダー)の選び方

私がコンサルしているIT企業でも、「助成金を使おうとしたが、スクール側から必要な書類が出てこず断念した」というケースを何度も見てきました。以下のポイントをチェックしてください。

  • 「助成金対応カリキュラム」を持っているか: 助成金の申請には「どんな内容を何時間学ぶか」という詳細なカリキュラム表の提出が必要です。最初から「人材開発支援助成金対応」と謳っているITスクールを選ぶと、手続きが劇的に楽になります。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公開しているDX関連のスキル標準に準拠した講座を選ぶのも一つの手です。具体的な講座内容はAWS公式のトレーニングページなども参考に選定しましょう。
  • eラーニングの場合は「LMS」があるか: 動画を見るだけのeラーニングは対象外になることがあります。システム上で「誰が、いつ、何時間学習し、テストに合格したか」という受講履歴が明確に管理・出力できるシステム(LMS)を備えていることが必須条件です。

助成金申請から受給までの5ステップ(絶対ルール)

厚生労働省の助成金は、申請手続きが厳格です。順番を一つでも間違えると、「研修は受けたのに助成金が1円ももらえない」という事態になります。以下のステップを必ず守ってください。

ステップ1:自社の労務環境をクリーンにする

助成金をもらうための大前提として、「労働基準法などの法律を守っている会社」であることが求められます。 未払い残業代はないか、就業規則が最新の法律に対応しているか、タイムカード(出勤簿)と賃金台帳に矛盾はないか。これらを労働局に厳しくチェックされます。申請前に、顧問の社会保険労務士(社労士)に依頼して、自社の労務環境をクリーンにしておくことがすべての出発点です。

ステップ2:AWS研修機関とカリキュラムの決定

自社の要件に合ったAWS研修を選び、対象となる社員と受講期間を決定します。「いつから開始するか」の日程感が非常に重要になります。

ステップ3:【最重要】研修開始の1ヶ月前までに「計画届」を提出

ここが最大の落とし穴です。 必ず「研修が始まる1ヶ月前まで」に、管轄の労働局へ「職業訓練計画届」を提出し、受理されていなければなりません。

人材開発支援助成金(訓練実施計画届の提出) 訓練開始日の1か月前までに、必要書類を添えて、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局に提出してください。

「すでにスクールに申し込んでお金も払ってしまった。今から申請しよう」は絶対に不可能です。「まず国に計画を出し、OKをもらってから研修をスタートする」というルールを徹底してください。手続きの詳細は厚生労働省のパンフレットに詳しく記載されています。

ステップ4:AWS研修の受講と証拠の保管

計画通りに研修を受講させます。受講期間中は、対象社員の「出勤簿(研修を受けていた日の記録)」や、スクールへの「支払い領収書」、そして「受講修了証明書(または学習ログ)」を厳重に保管しておいてください。

ステップ5:【研修終了後】2ヶ月以内に「支給申請」

研修がすべて終了した日の翌日から起算して2ヶ月以内に、労働局へ「支給申請書」とステップ4で集めた証拠書類一式を提出します。 労働局での審査(数ヶ月かかる場合があります)を経て、問題がなければ「支給決定通知書」が届き、会社の口座に助成金が振り込まれます。

AWS研修の助成金活用における「よくある失敗」

最後に、私がIT企業の現場で見てきた「やってはいけない」失敗例を共有します。

失敗1:研修後にAWSを触る「実務」を与えない

助成金を使ってAWSの研修を受けさせた後、現場に戻ってきた社員に対して「じゃあ、しばらくは元のオンプレの保守案件に戻ってね」とするケースです。 これでは絶対にスキルは定着しません。学んだ知識は使わなければ一瞬で忘れます。研修終了後すぐに、AWS環境での構築や改修タスクなど、学んだ知識をアウトプットできる「実務」を用意しておくことが、人材育成を成功させる最大の鍵です。「結局、人なんですよ」と私が口酸っぱく言うのはこのためです。

失敗2:助成金の書類作成を現場のエンジニアにやらせる

人材開発支援助成金の申請書類は非常に煩雑です。これを、多忙な現場のエンジニアや社長自身がやろうとすると、ほぼ確実に書類の不備で差し戻しになります。 厚労省の助成金申請の代行は社会保険労務士の独占業務です。「少しでも費用を浮かせよう」と自社で抱え込んで不支給になるリスクを考えれば、申請手続きはプロ(社労士)に任せ、皆さんは本業の開発業務に集中することを強くお勧めします。

助成金以外も併用したい!AWS研修費用を圧縮する「3つの追加制度」

人材開発支援助成金は強力ですが、IT企業がAWS研修にかかる総コストを削減する手段はこれだけではありません。実は、複数の制度を組み合わせることで、研修費用に加えて「インフラ移行費用」や「資格取得後の人件費」までカバーできるケースがあります。フリーランスを活用しているIT企業の経営者やマネージャーであれば、ぜひ押さえておきたい併用テクニックを紹介します。

1. IT導入補助金(クラウド利用料も対象)

AWS研修と並行して「自社のオンプレ環境をAWSへ移行する」のであれば、中小企業向けの「IT導入補助金」が活用できます。2026年度の通常枠では、対象経費の1/2(上限450万円)が補助されるほか、クラウド利用料も最大2年分が対象となるのが大きな特徴です。

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の自社の課題やニーズに合ったITツール導入を支援することで、業務効率化・売上アップをサポートするものです。クラウド利用料についても、最大2年分を補助対象としています。 出典: chusho.meti.go.jp

研修で学んだAWSスキルを「移行プロジェクト」で即実践できる体制を整えれば、研修コスト(人材開発支援助成金)+ 移行コスト(IT導入補助金)の両方を国がサポートしてくれる構造になります。

2. キャリアアップ助成金(正社員化コース)

業務委託や契約社員として働いているエンジニアにAWS研修を受けさせ、その後正社員として登用する場合、「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」が併用可能です。1人あたり最大80万円(中小企業の場合)が支給されるため、「優秀なフリーランスを正社員として迎え入れたい」というケースで威力を発揮します。

3. 業務改善助成金(賃金引上げとセット)

AWS資格取得後にエンジニアの賃金を引き上げる場合は、「業務改善助成金」も視野に入ります。事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた中小企業に対し、生産性向上のための設備投資費用を助成する制度で、最大600万円が対象です。「研修→スキルアップ→賃上げ」という流れを設計することで、エンジニアの離職防止にもつながります。

失敗事例から学ぶ!助成金「不支給」になった3つのケース

私が現場で見聞きしてきた実例をベースに、「申請したのに1円ももらえなかった」という典型的な失敗パターンを紹介します。これから申請する方は、同じ轍を踏まないよう要注意です。

ケース1:受講者の出勤簿に「研修時間」が記載されていなかった

最も多いのがこのパターンです。AWS研修を「業務時間内」に受講させた場合、その時間は当然「労働時間」としてカウントされなければなりません。ところが、タイムカードには「9:00〜18:00 通常勤務」とだけ記載され、研修を受けた事実が労務記録に反映されていないと、労働局から「これは本当に業務として受講させたのか?」と疑義を持たれます。

対応策として、勤怠管理システム上に「研修」という勤務区分を設け、受講日には必ずその区分で打刻させるルールを徹底してください。賃金台帳にも「研修手当」や「通常賃金(うち研修○時間分)」といった内訳を明記しておくと安心です。

ケース2:eラーニングの「学習ログ」が不十分だった

「動画を視聴したら自動で受講完了」というシンプルなeラーニングは、助成金対象外になるリスクが高いです。労働局が求めるのは、「誰が、いつ、何時間、どの単元を学習し、理解度テストで何点を取ったか」という詳細なログです。

特に、AWS公式の「AWS Skill Builder」のような海外プラットフォームは、日本の助成金申請に必要な形式でログを出力できないケースがあります。事前にスクール側に「人材開発支援助成金の支給申請に必要な様式でログを出してもらえるか」を必ず確認してください。

ケース3:研修期間中に対象社員が退職してしまった

研修開始後、修了前に対象社員が自己都合で退職した場合、その社員にかかった経費・賃金は助成対象外となります。「せっかく高額なAWS研修を受けさせたのに、資格を取った瞬間に転職された」という話はIT業界で頻発しています。

対策として、研修受講前に「教育訓練協定書」を社員と締結し、「研修終了後○年以内に自己都合退職した場合は、研修費用の一部を返還する」という条項を盛り込むことが有効です。ただし、労働基準法第16条(賠償予定の禁止)に抵触しない範囲で設計する必要があるため、必ず社労士や弁護士に相談してください。

フリーランス活用とAWS研修助成金の意外な関係

@SOHOを利用する中小IT企業の中には、「正社員エンジニアを採用する余裕はないが、AWSプロジェクトは受注したい」という事業者も多いはずです。ここでは、フリーランス活用と助成金制度を組み合わせた、賢い人材戦略について解説します。

既存社員の「AWS研修費」を助成金で賄い、実装はフリーランスに委託

最も効率的なのは、「自社の正社員には設計・マネジメントを担当させ、実装の手を動かす部分はAWS経験豊富なフリーランスに委託する」という分業モデルです。この場合、正社員には人材開発支援助成金を活用して「AWS Solutions Architect Professional」などの上位資格を取得させ、フリーランスとの技術的なコミュニケーションを円滑にすることに投資します。

我が国のIT人材は、量的不足だけでなく質的不足も深刻化しており、特にクラウド・AI・データサイエンス領域で高度な専門性を持つ人材の育成が、企業の競争力強化に直結する。 出典: meti.go.jp

経済産業省のレポートが指摘する通り、「高度デジタル人材」を社内に1名でも抱えておけば、フリーランスへの発注時に「丸投げ」を避けられ、品質コントロールが効くようになります。

フリーランス側にも助成金活用のメリットはある?

残念ながら、人材開発支援助成金は「雇用関係にある労働者」を対象としているため、業務委託契約のフリーランス本人が直接受給することはできません。ただし、フリーランスがAWS関連の資格取得や学習を行う場合、教育訓練給付制度(雇用保険の被保険者期間がある場合)や、各自治体の「リスキリング支援補助金」が活用できるケースがあります。

また、フリーランスとして法人化(マイクロ法人含む)している場合は、自分自身を「役員」ではなく「労働者性のある従業員」として位置付けることで、人材開発支援助成金の対象になる可能性もあります。この判定は非常に専門的なため、必ず管轄労働局や社労士に確認してください。

発注企業として知っておきたい「AWS認定」の見極め方

フリーランスエンジニアに発注する際、「AWS認定資格」の有無を判断基準にする企業も増えています。特に、AWS Certified Solutions Architect – Professional や AWS Certified DevOps Engineer – Professional は、実務経験2年以上が前提とされる難関資格です。これらの保有者であれば、初対面のフリーランスでも一定の技術レベルが担保されていると判断できます。

社内のAWS研修担当者が同じ資格を保有していれば、フリーランス候補者との技術面談で「本物の実力者」かどうかを見抜く目も養われます。助成金を使った社内人材育成は、結果的に「優秀な外部人材を見極める力」にも直結するのです。

よくある質問

Q. AWS未経験ですが、資格を取ればすぐにフリーランスになれますか?

資格だけで即フリーランスとして独立するのは困難です。企業は「実務でトラブルに対応できるか」を重視します。まずは副業で小規模な構築案件を請け負うか、AWS環境の保守・監視案件から実績を積み上げることをおすすめします。

Q. プログラミングの経験は必要ですか?

クラウドエンジニアはインフラ構築がメインですが、現在ではインフラのコード化(IaC)が主流のため、PythonやGo、YAML/JSONの読み書きなど、基礎的なコーディングスキルは必須と言えます。

Q. どのAWS資格から取得すべきですか?

ITの基礎知識がある方なら、クラウドプラクティショナーを飛ばして「ソリューションアーキテクト – アソシエイト(SAA)」から挑戦するのが効率的です。SAAの学習過程で基礎も網羅できます。

Q. 実務経験がないと、AWS資格を持っていても無駄ですか?

いいえ、決して無駄ではありません。未経験の方が採用される際、資格は「この人は基礎知識があり、自律的に学習できる意欲がある」という最大の証明になります。資格+個人で構築した実績をポートフォリオにまとめれば、十分にチャンス はあります。

Q. AWSの学習にはどれくらいの期間が必要ですか?

未経験からSAA(アソシエイト)の取得まで、およそ200〜300時間の学習が必要と言われています。毎日2時間の学習で、3〜5ヶ月程度ですね。子育て中の方は、隙間時間を活用して細切れに学習を積み上げるのが長続きのコツですよ。

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高橋 慎太郎

この記事を書いた人

高橋 慎太郎

公認会計士→独立コンサルタント

大手監査法人で12年間勤務した後、フリーランスの経営コンサルタントとして独立。簿記・FP・税理士の資格を活かし、フリーランスの会計・税務・資金管理に関する記事を執筆しています。

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