動画広告・ショート動画での薬機法対応|ナレーションとテロップの注意点 2026


この記事のポイント
- ✓動画広告 薬機法の基本ルールとNG表現を
- ✓ナレーション・テロップ別に整理
- ✓アパレル・コスメEC運営の現場から見た違反リスクの回避法と制作フローを解説する2026年版ガイド
動画広告の制作を任されたとき、真っ先に頭をよぎるのが「このナレーション、薬機法的に大丈夫だろうか」という不安だと思います。特にコスメやサプリメント、健康食品を扱うブランドの案件では、テロップ一行の言い回しひとつで広告が差し止められるリスクがあります。この記事では、動画広告・ショート動画における薬機法の基本ルールから、ナレーションとテロップそれぞれで注意すべき具体的な表現、そして制作フローに落とし込むためのチェック体制まで、EC運営の現場で実際に確認してきた内容をもとにまとめます。
動画広告と薬機法を取り巻く市場の現状
TikTok、Instagramリール、YouTubeショートといった短尺動画プラットフォームの広告出稿は、ここ数年で急速に拡大しています。総務省の情報通信白書でもSNS動画広告市場の成長が継続的に指摘されており、静止画バナーよりも動画広告のほうがクリック率・エンゲージメント率ともに高い傾向が報告されています。特に化粧品・健康食品・美容機器といったジャンルは動画との相性がよく、Before/Afterの変化を見せる形式の広告が急増しました。
その一方で、動画広告は静止画よりも薬機法違反が発生しやすい媒体でもあります。理由はシンプルで、ナレーション・テロップ・BGM・出演者の表情・演出的なビフォーアフター映像など、情報を伝える経路が多いためです。静止画のキャッチコピー1行だけをチェックすればよかった時代と違い、動画では台本、テロップ原稿、編集後の完成尺、すべてを別々に確認する必要があります。実際に、YouTube上で薬機法に抵触する広告動画が大量に削除された事例も報道されており、プラットフォーム側の審査も年々厳しくなっています。
薬機法違反による行政指導・課徴金納付命令の件数は、コロナ禍以降の健康志向の高まりと歩調を合わせるように増加傾向にあります。EC事業者にとって、動画広告のコンプライアンス対応は「知らなかった」では済まされない経営リスクになりつつあります。
薬機法の基本ルールをおさらいする
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)は、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器の品質と安全性を確保するための法律です。動画広告に関わる立場からすると、特に重要なのは「効能効果の標榜制限」と「広告該当性の判断基準」の2点です。
広告に該当する3要件
行政解釈では、以下の3つをすべて満たすものが薬機法上の「広告」に該当するとされています。
- 顧客を誘引する意図が明確であること
- 特定の医薬品等の商品名が明らかにされていること
- 一般人が認知できる状態であること
動画広告はこの3要件をほぼ確実に満たします。SNS上で不特定多数に配信され、商品名を明示し、購入を誘導する構成になっているためです。「これは広告ではなく情報提供コンテンツです」という言い訳は、動画広告の文脈ではほぼ通用しません。
はじめに、動画広告を制作する際に気をつけなければならない、薬機法の基本的なルールと、動画広告の現状をお伝えします。 出典: archaic.co.jp
規制対象になる商材
規制の強さは商材のカテゴリによって段階が異なります。医薬品は最も規制が厳しく、効能効果の標榜には承認された範囲でしか表現できません。医薬部外品はやや緩和されますが、それでも承認範囲を超えた表現は禁止です。化粧品はさらに表現の幅が狭く、「シミが消える」「毛穴がなくなる」のような断定的な効果表現は原則NGとされています。健康食品・サプリメントに至っては、そもそも医薬品的な効能効果を標榜すること自体が薬機法違反になり得ます。「痩せる」「病気が治る」といった表現は、食品にとって最も危険な表現です。
アパレルブランドのEC運営支援をしていると、コスメラインやインナーケア系のサプリメントを併売しているクライアントに出会うことがあります。アパレル本体の商品説明では自由に書けていた表現の感覚のまま、コスメやサプリのテロップ原稿を作ってしまうと、簡単に薬機法に触れてしまいます。ここは業種をまたいで仕事をする人ほど油断しやすいポイントだと感じています。
動画広告・ショート動画でよくある薬機法違反の具体例
動画広告の薬機法違反は、パターン化できるほど典型例が決まっています。ここでは特に頻出するNG表現を、媒体の要素ごとに分けて解説します。
ナレーションで注意すべき表現
ナレーションは耳で聞くため、視聴者の印象に強く残ります。同時に「言った言わない」の証拠が音声データとして残るため、薬機法上のリスクも高い要素です。典型的なNGパターンは次の通りです。
- 「使った瞬間にシミが消える」のような即効性・確実性を断定する表現
- 「これで病気が治ります」のような医薬品的な効能効果の標榜
- 「〇〇の症状が改善する」のような、化粧品・食品が医薬品的な効果を持つと誤認させる表現
- 「絶対に痩せる」「必ず効果が出る」のような、効果を保証する断定表現
ナレーション原稿は口語調で書かれることが多く、書き言葉よりも「言い切り」が強くなりがちです。台本の時点では気づかなかった表現が、実際にナレーターが声で読み上げると急に断定的に聞こえるケースもあるため、収録後の完成音声を必ず文字起こしして再チェックする工程を挟むことをおすすめします。
テロップ・字幕で注意すべき表現
テロップは視覚情報として残るため、あとから証拠として最も確認しやすい要素です。行政指導の際にもスクリーンショットで指摘されやすい部分になります。
- 「94%が効果を実感」のような、根拠の薄い体験者アンケート数値の強調表示
- ビフォーアフター画像に添える「肌質が変わった」といった断定的なキャプション
- 医師・専門家風の人物が登場するシーンでの「医学的に証明済み」といった権威づけ表現
- 「今だけ」「残りわずか」といった煽り文言と組み合わさった効能訴求
数字を使った訴求は特に注意が必要です。94%のような具体的な数字は説得力がある分、根拠となる調査方法や対象人数を明示しないまま使うと、景品表示法上の優良誤認表示にも該当しかねません。薬機法と景品表示法はセットで確認するのが実務上の鉄則です。
ビフォーアフター画像・体験談の扱い
ショート動画で最も広告効果が高いとされる演出が、使用前後の変化を見せるビフォーアフターです。しかし化粧品・健康食品の広告では、このビフォーアフター表現そのものが厳しく制限されています。個人の体験談として「私は3日で変わりました」と紹介する形式であっても、それが不特定多数に効果を保証するかのような印象を与える場合、行政の指導対象になり得ます。編集で照明やフィルターを変えて肌を実際より綺麗に見せる加工も、誇大広告と判断されるリスクがあります。
動画広告は強力なマーケティング手法ですが、薬機法違反をすると、広告の配信停止や罰則の対象になる可能性があります。 出典: archaic.co.jp
違反しない動画広告を作るためのポイント
ここまで見てきたNG表現を踏まえて、実際の制作フローにどう落とし込むかがEC担当者にとっての本題です。ポイントは大きく3つに整理できます。
制作前のチェック体制を先に決める
動画広告は台本作成、撮影、編集、テロップ入れ、公開前の最終確認という複数の工程を経ます。薬機法チェックを「公開直前の最終チェック」だけに頼ると、台本レベルの問題が編集後に発覚して撮り直しになるコストが発生します。理想は台本段階・撮影後の粗編集段階・テロップ確定後の3段階でチェックポイントを設けることです。特にテロップは編集者が現場判断で追加してしまうことがあるため、テロップ確定後の最終チェックを省略しないことが重要です。
表現の言い換え辞典を社内で共有する
薬機法対応で最も実務的に効くのは、NG表現とOK表現を対にした言い換え辞典を作っておくことです。例えば「シミが消える」は「うるおいのある肌印象へ」、「痩せる」は「引き締まった印象をサポート」といった具合に、効果を断定せず「印象」「サポート」といった言葉に置き換えるのが基本パターンです。この辞典を台本作成者・ナレーター・編集者全員が参照できる状態にしておくと、チェック工程の負荷が大きく下がります。
薬機法チェックツール・広告審査サービスの活用
近年はAIを使った薬機法表現チェックツールも増えてきました。テキストを入力すると、NGワードの可能性がある箇所をハイライトしてくれるサービスです。ただしこうしたツールはあくまで一次スクリーニングであり、最終判断は薬事の知識を持つ人間か、必要に応じて薬事法対応の専門家・弁護士に確認するのが安全です。特に医薬部外品や化粧品の効能効果の範囲は、業界団体が公表している「効能効果一覧」に沿って確認する必要があり、ツールだけで完結させるのはリスクがあります。
違反した場合のリスクと課徴金制度
薬機法違反が発覚した場合のリスクは、単なる「広告の取り下げ」だけにとどまりません。段階的に見ていきます。
まず初期段階では、プラットフォーム側の自動審査・目視審査によって広告そのものが配信停止になります。SNS広告は出稿前審査があるため、NG表現を含む動画は公開前に弾かれることが多いですが、審査をすり抜けて配信された後に第三者からの通報で停止されるケースもあります。
行政からの指導が入った場合は、都道府県の薬務主管課や厚生労働省から改善指導・行政指導が行われます。改善が見られない、あるいは悪質性が高いと判断された場合は、課徴金納付命令の対象になります。課徴金制度は2021年の薬機法改正で導入された比較的新しい制度で、対象商品の売上額に一定率を乗じた金額の納付が命じられます。中小のEC事業者にとって、この課徴金は経営に直結するインパクトがあります。
さらに悪質なケースでは、行政処分にとどまらず刑事罰の対象になることもあります。薬機法違反の広告は、事業者本人だけでなく、広告制作を受託したフリーランス・制作会社にも責任が及ぶ可能性がある点は見落とされがちです。「クライアントの指示通りに作っただけ」という言い分は、法的な免責にはならないケースが多いため、受託側であっても表現のリスクは自分ごととして確認する姿勢が求められます。
SNS・ショート動画特有の注意点
TikTok、Instagramリール、YouTubeショートはそれぞれ広告ポリシーが異なり、薬機法とは別にプラットフォーム独自の審査基準も存在します。例えば健康・美容カテゴリの広告は、多くのプラットフォームで追加の審査ステップが設けられており、通常の広告より審査に時間がかかる傾向があります。
ショート動画特有のリスクとして、UGC(ユーザー生成コンテンツ)風の演出があります。「これは広告ではなく一般ユーザーの投稿です」という体裁を取っていても、企業が対価を払って制作・配信している場合は広告として扱われ、薬機法の対象になります。インフルエンサーに商品を提供してレビュー動画を作ってもらう形式(いわゆるPR案件)でも同様です。インフルエンサー本人が薬機法の知識を持っていないケースは多く、依頼側が事前にNG表現リストを共有しておかないと、本人の善意の感想がそのまま薬機法違反表現になってしまうことがあります。
またショート動画は編集の自由度が高く、テロップのタイミングやフォントサイズによって、同じ文言でも「強調されているかどうか」の印象が変わります。行政の判断でも、文言そのものだけでなく、テロップの強調のされ方や画面全体の構成が総合的に判断材料になるとされています。台本の文字面だけをチェックして安心せず、完成した動画を実際に音声付きで通しで見て確認する工程を必ず入れるべきです。
動画広告制作の仕事事情と在宅ワーク市場から見えること
薬機法対応が必要な動画広告制作は、台本作成・ナレーション・編集・法務チェックと工程が多く、フリーランスや在宅ワーカーが分業で関わる機会が多い分野です。実際に、動画広告のテロップ原稿や台本執筆を専門にする案件は、コピーライティングやマーケティング分野の求人で扱われることが多く、コンプライアンス知識を持つ書き手の需要は年々高まっています。関連する仕事の探し方として、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事では広告運用やマーケティング系の業務委託案件の探し方がまとまっており、動画広告の企画・運用に関わりたい人の入り口として参考になります。
台本やテロップの文章を書く仕事に興味がある人にとっては、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で、コピーライティング系の職種の相場観を把握しておくと、案件の単価交渉がしやすくなります。薬機法の知識を持つライターは、知識がないライターよりも修正の往復が少なく、クライアントから継続依頼を受けやすい傾向があります。
薬機法チェックツールや広告審査サポートのシステムを自作・改修したいという相談も現場では出てきます。こうした業務系のツール開発やAIを使った表現チェックの仕組み作りに関心がある人は、アプリケーション開発のお仕事やソフトウェア作成者の年収・単価相場で、開発系の業務委託案件の実情を確認しておくと、EC事業者側からの技術系の相談にも対応しやすくなります。
薬機法をはじめとする各種法規制への対応は、EC事業者にとって経営課題そのものでもあります。表現チェックの体制づくりだけでなく、事業全体のリスクマネジメントとして相談したいという声も多く、中小企業診断士のような経営コンサルティング系の資格は、EC事業者の相談相手として重宝される場面があります。介護・福祉業界のように国の補助金制度が整備されている分野もあり、例えば介護・福祉事業所のDX化2026|IT導入補助金で介護記録を完全デジタル化のように、業種ごとに使える公的支援制度を把握しておくことは、EC事業者の資金計画を考えるうえでも参考になる視点です。同様に送迎バス安全装置の設置補助金2026|介護施設の義務化対応と申請手順や介護タクシー開業ガイド2026|助成金と補助金で開業費用を1/3にする方法のような業界特化の補助金情報は、直接の業種は違っても「制度変更に事業者がどう対応してきたか」という事例として、薬機法対応のような規制対応の実務を考えるヒントになります。
在宅ワーク・フリーランス市場を長く見てきた立場から言えば、薬機法対応がしっかりできる制作者は、単に法律に詳しいだけでなく、クライアントの表現したい魅力を法律の範囲内で最大限に伝える言い換え力を持っている人が多いという印象があります。NG表現を機械的に弾くだけなら誰でもできますが、「シミが消える」を「うるおいのある肌印象へ」と言い換えて、それでも訴求力を落とさない文章を書けるかどうかが、継続的に仕事を任される人とそうでない人の分かれ目になっています。
運営者としてこの市場を見てきた限りでは、長く続く制作者ほど、単発の納品作業ではなく「この人にチェックを任せておけば安心」という信頼関係の構築に時間を使っています。薬機法対応のようなリスク管理の仕事は、成果物の見栄えだけでは評価されにくい分、継続的な信頼こそが単価の高い仕事につながる分野です。中間マージンが乗らない直接契約の形であれば、同じ予算でもクライアント側はより深く相談でき、受注する側は手数料0%の分だけ手取りが厚くなります。この双方が得をする構造は、薬機法対応のように専門知識と信頼の積み重ねが評価される仕事ほど、恩恵が大きく出る傾向があると感じています。
コスメラインを併売するアパレルブランドの案件を担当していたとき、私自身、テロップ原稿の最終チェックを甘くしてしまい、公開直前に「毛穴が目立たなくなる」という表現を指摘されて差し戻しになった経験があります。アパレル商品の説明文の感覚のまま書いてしまったのが原因で、その日以降は化粧品・健康食品関連の案件だけは必ずダブルチェックのフローを挟むようにしています。法律の知識は一度身につけて終わりではなく、案件ごとに商材のカテゴリを確認し直す癖をつけることが、結局いちばんの事故防止策だと実感しています。
動画広告の薬機法対応は、表現のルールを覚えるだけの静的な知識ではなく、プラットフォームの審査基準や課徴金制度の運用実態も含めて、継続的にアップデートし続ける必要がある領域です。台本・ナレーション・テロップの3点を、それぞれ別の工程でチェックする体制を作っておくことが、遠回りに見えて最も確実な事故防止策になります。
よくある質問
Q. 動画広告で薬機法違反になりやすい表現にはどんな共通点がありますか?
効果や効能を断定的に言い切る表現、根拠の薄い数値を強調する表現、ビフォーアフターで変化を保証するような演出に共通点があります。ナレーションとテロップの両方で確認する必要があります。
Q. 薬機法チェックツールを使えば専門家の確認は不要ですか?
不要にはなりません。ツールは一次スクリーニングとして有効ですが、化粧品・健康食品の効能効果の範囲判断は専門知識が必要なため、最終確認は薬事知識のある人が行うのが安全です。
Q. インフルエンサーへのPR案件でも薬機法は適用されますか?
適用されます。企業が対価を払って制作・配信を依頼している場合、UGC風の投稿であっても広告として扱われるため、依頼側がNG表現リストを事前に共有しておく必要があります。
Q. 薬機法対応に強い制作者は、他の制作者と何が違いますか?
NG表現を機械的に避けるだけでなく、法律の範囲内で商品の魅力を伝える言い換え力を持っている点が違います。継続的に依頼される制作者ほど、この言い換えの引き出しを多く持っています。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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