小規模企業共済は最強の節税対策?退職金を作るメリット【2026年版】

織田 莉子
織田 莉子
小規模企業共済は最強の節税対策?退職金を作るメリット【2026年版】

この記事のポイント

  • フリーランスには退職金がない……そんな常識を覆す国の制度「小規模企業共済」
  • 掛金が全額所得控除になる驚異の節税効果から
  • 将来の受け取り時の税制優遇まで

「会社員ならもらえるはずの数千万円の退職金。フリーランスの私は、将来どうやって生活していけばいいの?」

会計事務所で働いていた頃、利益が出始めたフリーランスの方から必ず受ける相談がこれでした。売上が順調に上がり、手元の通帳残高が増えていっても、心のどこかにある将来への不安がどうしても消えない。なぜなら、自分を一生守ってくれる「組織」も、自動的に積み上がっていく「退職金制度」も、フリーランスという働き方には存在しないからです。

日本の年金制度において、自営業者・フリーランスが加入する国民年金(第1号被保険者)の受給額は、40年間欠かさず満額で納付したとしても月額約6万8,000円程度(2024年度当初時点)にとどまります。この金額だけで、老後の住居費、食費、水道光熱費、さらに増加するであろう医療費や介護費をすべて賄うのは、どんなに節約しても現実的に不可能です。世間を騒がせた、いわゆる「老後2,000万円問題」は、あくまで厚生年金を受け取れる会社員をモデルにした試算にすぎません。すべてを自己責任で乗り切らなければならないフリーランスにとっては、これは「老後4,000万円5,000万円問題」と言い換えても決して過言ではないのです。

さらに、物価上昇(インフレ)のリスクも無視できません。仮に毎年2%の物価上昇が続けば、今の100万円の価値は20年後には実質的に約67万円にまで目減りしてしまいます。現金をただ銀行口座に置いておくだけでは、資産は確実に減っていく時代に突入しているのです。

結論から申し上げます。もしあなたが一定の利益を出しているにもかかわらず、まだ「小規模企業共済」に加入していないのだとしたら、あなたは毎年、豪華な海外旅行に行けるくらいの現金を文字通りドブに捨て続けています。それも、ただ自分のために「貯金」をするだけで、国が公認する形で合法的に税金を減らせる、この上ないチャンスを自ら手放しているのです。

2026年、インボイス制度の完全定着や社会保険料の負担増、そして物価高騰など、フリーランスを取り巻く環境はかつてないほど厳しさを増しています。その過酷なサバイバルゲームの中で、数ある節税策の中でも「最強」の名を欲しいままにする小規模企業共済。その圧倒的なメリットと、知らないと本当に怖い落とし穴、そして変化の激しい現代を生き抜くための賢い運用術を徹底解説します。


1. 【節税のカラクリ】貯金するだけで税金が安くなる魔法

普通の貯金(銀行預金)は、いくら頑張って100万円、あるいは500万円預けたとしても、あなたの税金は1円も安くなりません。むしろ、現在の超低金利下でわずかにつくスズメの涙ほどの利息に対してすら、約20%(国税・地方税合わせて20.315%)の税金がきっちりと引かれるだけです。

しかし、小規模企業共済への積み立ては、「支払った掛金の全額がその年の所得から差し引ける(全額所得控除)」という、日本の税制において極めて強力な法的保護を受けています。これは国が「小規模な事業者の退職金作りを国を挙げて応援する」という目的で作られた制度だからです。

具体的シミュレーション(年収別・年間節税額)

日本の所得税は「累進課税制度」を採用しており、所得が高くなればなるほど税率も5%から最大45%まで段階的に上がっていきます。さらに、そこに一律10%の住民税が加わります。掛金を上限である月額7万円(年間84万円)に設定した場合、所得税と住民税を合わせた節税額は以下のようになります。

課税される所得金額 所得税・住民税の合計税率 年間の節税額 20年間の合計節税額
300万円 20% 16万8,000円 336万円
600万円 30% 25万2,000円 504万円
1,000万円 43% 36万1,200円 722万4,000円
2,000万円 50% 42万0,000円 840万円

※ 復興特別所得税は考慮せず、概算での計算となります。また、各種控除により実際の税額は変動します。

この表が示す事実は衝撃的です。所得税の税率は累進課税のため、稼げば稼ぐほど節税効率が飛躍的に上がります。年収600万円クラスの人が上限の84万円まで積み立てれば、年間25万円以上の現金が手元に残る計算です。さらに見落とされがちですが、所得が下がることで「国民健康保険料」の算定基準も下がるため、実際の経済的メリットは表の金額以上に大きくなります。国民健康保険料は自治体にもよりますが所得の約10%程度かかることが多いため、実質的なリターンはさらに跳ね上がります。

これを投資の視点で年利換算すると、30%から40%の利回りで確実に運用しているのと同じ効果をもたらします。どんなに優秀なプロの投資家でも、毎年確実に30%のリターンを出せる金融商品なんて世界中どこを探しても絶対にありません。しかし、フリーランスなら「小規模企業共済に加入する」というハンコを1つ押すだけで、国のお墨付きでこれが実現するのです。

なぜ「経費」ではなく「控除」なのか?

ここで独立したての初心者が非常に混同しやすいポイントを解説しておきましょう。小規模企業共済は、仕事の「経費」ではありません。

  • 経費: 売上をあげるために直接使ったお金のこと(仕事用のPC代、事務所の家賃、クライアントとの打ち合わせの通信費や交際費など)。これを使うと手元の現金は実際に減り、結果として利益が減ります。
  • 所得控除: 利益(所得)が確定した後に、「あなたの個人的な事情を考慮して、税金の計算のベースとなる金額から特別に差し引いていいですよ」と認められた特権のこと。

つまり、自分のポケット(普段使っている個人口座)から、自分への未来の仕送り(共済の専用口座)へと単にお金を移動させているだけで、あなたの純資産は1円も減っていないにもかかわらず、国が「あ、将来のために自分で退職金を積み立てているんですね。素晴らしい。では、その分には税金をかけませんよ」と言ってくれているのです。手元の現金を浪費することなく税金を減らせる、これが「最強」と言われる最大の理由です。


2. 【出口の優遇】もらう時も「税制の壁」で守られる

節税効果は、お金を「積み立てる時(入口)」だけではありません。むしろ、本当の威力を発揮するのは、将来あなたが事業をやめてお金を受け取る「共済金受取時(出口)」です。国はここにも、特別な優遇を用意しています。これを「出口戦略」と呼びます。

通常、銀行の利息や株式投資で得た利益を受け取るときは、その利益に対して一律で約20%の税金が容赦なくかかります。しかし、小規模企業共済は受け取り方によって、驚くほど税金が安くなるように設計されています。

① 「退職所得」として一括受取(最もおすすめ)

将来、あなたがフリーランスを引退し、廃業した時に一括でお金を受け取ると、税法上「退職金(退職所得)」として扱われます。退職金は、長年の功労を労い、その後の老後の生活を支えるための大切なお金であるため、日本の税制の中で「最も優遇されている所得」と言っても過言ではありません。以下の計算式を見てください。

(受取額 - 退職所得控除額) × 1/2 = 課税対象額

この「退職所得控除」という非課税枠が非常に大きく設定されています。 加入期間が20年以下の場合は「40万円 × 加入年数」が無条件で引かれます。そして、加入期間が20年を超える場合はさらに優遇され、「70万円 × (加入年数 - 20年) + 800万円」という莫大な金額が控除されます。

例:30歳から60歳までの30年間加入し、約2,520万円を積み立てて一括で受け取った場合

  • 退職所得控除の計算: 800万円70万円 × (30年20年) = 1,500万円
  • 課税対象額の計算: (2,520万円1,500万円) × 1/2510万円

2,520万円という大金を受け取っているにもかかわらず、税金計算の対象になるのはわずか510万円分だけです。しかも、ここからさらに所得税の低い税率が適用されます。実質的な手取り額は2,450万円を超え、税負担は全体から見れば数パーセントという奇跡的な低さに抑えられます。もしこれを通常の事業所得として受け取っていたら、半分近くを税金で持っていかれていたでしょう。

② 「公的年金等控除」として分割受取

「一度に大金をもらうと無駄遣いしてしまいそうで怖い」という方は、公的年金と同じように毎年少しずつ分割して受け取ることも可能です。この場合も「公的年金等控除」という別の優遇枠が適用され、65歳以上であれば年間110万円65歳未満なら年間60万円)までは完全に非課税枠内に収めることができます。

さらに高度なテクニックとして、自分のライフスタイルや他の収入状況に合わせて「一部を一括で受け取り、残りを分割で受け取る(併用)」という選択も可能です。退職所得控除と公的年金等控除の両方の非課税枠をフルに使い倒すことができるのも、小規模企業共済の柔軟で強力なメリットです。


3. 知っておくべき「3つのデメリット・注意点」

ここまで小規模企業共済の素晴らしいメリットばかりを強調してきましたが、物事には必ず裏の顔があります。加入前に絶対に知っておくべき、そして理解しておかないと大怪我をする可能性のある3つのデメリットと注意点を解説します。

① インフレ(物価上昇)リスクへの弱さ

小規模企業共済は、株式や投資信託のように市場の成長に合わせて資産が大きく増えるわけではありません。運用は国(中小機構)が安全な債券等を中心に行っているため、元本は強力に守られますが、利回り(付加共済金)は非常に保守的です。 もし日本で年間3%のインフレが継続した場合、あなたが積み立てた現金の額面は減らなくても、そのお金で買えるモノの量(実質的な購買力)は年々目減りしていきます。税金が安くなるメリットは絶大ですが、資産そのものを大きく「増やす」ためのツールではないことを理解し、後述するiDeCoやNISAなど、インフレに強い投資資産と組み合わせて保有することが重要です。

② 所得が低い時期は「資金ロック」のデメリットだけが残る

「全額所得控除」というメリットは、裏を返せば「そもそも納めるべき所得税が発生していない人には意味がない」ということです。 例えば、事業を始めたばかりで経費や青色申告特別控除(最大65万円)を引いた後の課税所得が100万円に満たないような場合、適用される所得税率は最低の5%です。この状態で無理をして年間数十万円を積み立てても、戻ってくる税金はわずか数万円にすぎません。それよりも、手元の現金を事業の広告費や新しいスキルの学習費に投資した方が、将来のリターンは圧倒的に大きくなります。

③ 「廃業」の定義の厳格さ

出口戦略で説明した強力な「退職所得」の優遇を受けるためには、単に「お金が必要になったから解約する」のではなく、税務署に廃業届を出して「事業を完全にやめる(廃業)」か、「65歳以上になり、180ヶ月以上掛け金を納付した上で老齢給付として受け取る」などの厳しい条件を満たす必要があります。ただの自己都合による任意解約では、税制上の優遇が受けられないばかりか、一時所得として課税される可能性があります。


4. 私の失敗談:無理な「満額設定」で資金ショートした2年目

デメリットに関連して、ここで私自身の非常に苦い失敗体験をお話ししましょう。 会計事務所に入る前、私も「フリーランスの節税といえばこれだ!」と勢いだけでこの共済に飛びつきました。独立初年度、運良く大きな案件に恵まれて売上が急増した私は、「とにかく一円でも多く税金を減らしたい!」という一心で、最初から一切の迷いなく掛金を上限の月額7万円に設定しました。当時は毎月の手取りが十分にあったため、「月7万円の積み立てなんて余裕だ」と完全に自分の実力を過信していたのです。

ところが2年目の夏、悪夢が訪れます。メインクライアントの社内体制変更により予算が大幅削減され、私の売上は前年の半分以下に激減しました。さらに悪いことは重なるもので、仕事に必須の高額なPCが突然クラッシュし(買い替え費用30万円)、追い打ちをかけるようにサーバーの移行トラブルで外注費(15万円)が発生。さらに前年の高い売上をベースに計算された予定納税と健康保険料の請求書が容赦なくポストに投函され、手元の現金(キャッシュ)が急激に底をつき始めました。

通帳の残高が10万円を切った時、私はパニックに陥り、小規模企業共済の「恐ろしさ」を身をもって実感しました。 小規模企業共済は、原則として「廃業するまで引き出せない」お金です。銀行の普通預金のように、ATMにキャッシュカードを入れて「生活費が足りないからちょっと10万円引き出そう」ということが絶対にできないのです。

任意解約の「20年の壁」

「もうダメだ、共済を解約して積み立てたお金を取り戻そう」と泣く泣く解約手続きのパンフレットを読み返した私は、そこでさらなる絶望を味わいました。 小規模企業共済には、加入期間が**20年240ヶ月)未満で自己都合の「任意解約」をすると、受け取れる額がこれまで支払った積立合計額を下回る(元本割れする)**という、極めて厳しいペナルティのルールが存在していたのです。

加入期間(任意解約時のペナルティ) 受取額の目安(積立合計額に対して)
12ヶ月未満 0%(完全に掛け捨てになり、1円も戻ってこない)
12ヶ月以上240ヶ月未満 80%99%(加入期間が長くなるにつれて徐々に上昇するが、20年までは100%に届かない)
240ヶ月20年)以上 100%(元本保証)〜120%程度(運用実績である付加共済金が上乗せされる)

※ 注意:これはあくまで「任意解約」の場合です。「廃業」や加入者の「死亡」による正当な解約の場合は、6ヶ月以上の加入さえあれば100%以上の金額が確実に戻ってきます。

「節税は、キャッシュフロー(手元の現金)の確実な余裕があってこそ成り立つ高度なゲームだ」。 当時の私は、目の前に提示された「年間30万円の税金が安くなる」という甘い数字だけに目を奪われ、事業の継続性や突発的なトラブルへの備えを完全に軽視していました。 悩みに悩んだ結果、私は元本割れでの解約を思いとどまりました。その代わり、後述する制度を利用して掛金を月額**1,000円(最低額)**まで極限まで減額することで、なんとかその急場を凌ぎ切ったのです。事業が安定していない段階での無理な「満額設定」は、状況が変わった時に自分の首を真綿のように締め付けることになりかねません。最低でも生活費と事業の固定費の6ヶ月分、できれば1年分の現金を確保してから満額に挑むのが鉄則です。


5. 2026年版:賢いフリーランスの「小規模企業共済」運用術

数々の失敗と数え切れないほどのクライアントへのアドバイスを経て導き出した、@SOHOの節税ガイドでも強く推奨されている「失敗しないためのプロの使いこなし術」は以下の3点です。これを知っているか知らないかで、安心感は天と地ほど変わります。

① 掛金を「蛇口」のように柔軟に変更する

小規模企業共済の隠れた最大の強みは、月額1,000円から7万円の範囲内で、500円単位という細かさでいつでも自由に変更できる点です。

  • 景気が良く、利益が大きく出ている時期: 遠慮なく上限の7万円へ設定し、節税効果を最大化する。
  • 高額な機材購入や、引越し、オフィスの移転がある時期: 手元の現金を確保するため、一時的に最低額の1,000円へ減額する。
  • 年末(12月)になって「今年は予想以上に利益が出すぎた!」と判明した時: 奥の手として、翌年分の掛金12ヶ月分をまとめて「前納」することで、一気に最大84万円の追加所得控除を獲得する。

現在ではオンラインでの手続きも整備されているため、わざわざ平日の昼間に銀行の窓口に行かなくても、スマートフォンやPCから簡単に掛金の増減額の手続きが可能です。「一度決めたら最後まで変えられない」という思い込みは今すぐ捨てて、事業の波に合わせて柔軟にコントロールしましょう。

② 「契約者貸付制度」を「自分専用ATM」として活用する

どうしても今すぐ現金が必要になった時、実は共済を解約しなくても、ノーリスクでお金を工面する裏技的な方法があります。それが「契約者貸付制度」です。 これまで自分が積み立ててきたお金の範囲内(掛金合計の約7割から9割)であれば、無担保・無保証、そして消費者金融などとは比較にならないほど驚くべき低金利で融資を受けることができます。

  • 金利: 年1.5%程度(一般貸付の場合。2024年現在。市場金利により変動あり)
  • 審査: なし(借りる相手は国ですが、担保は「自分が積み立てたお金」そのものだからです)
  • スピード: 商工中金の窓口に行けば即日、郵送での手続きでも数日〜1週間程度で指定口座に入金されます。

社会的信用が低く、銀行の事業融資の審査に通るのが極めて難しいフリーランスにとって、審査なし・即日で数十万〜数百万単位のお金を借りられる仕組みは、最強の「セーフティネット」そのものです。自身の病気やケガによる一時的な休業、大口クライアントからの急な入金遅延への備えとして、これほど心強い味方は他に存在しません。クレジットカードのキャッシング(金利15%18%)に手を出す前に、まずはこの制度を使いましょう。

③ 「付加共済金」という名の利息を狙う

小規模企業共済には、確実に約束された「基本共済金」とは別に、国の運用実績に応じてボーナス的に上乗せされる「付加共済金」という仕組みがあります。 超低金利時代と言われる昨今ではありますが、長期間加入していると、節税メリットとはまったく別に、数パーセントの利息相当分が少しずつですが確実に積み上がっていきます。長期で加入し、20年という壁を越えた時に解約すれば、元本を大きく上回るリターンが確定します。銀行の定期預金金利が0.002%といった時代において、確実な節税と元本保証に加えてプラスアルファの利息がつく金融商品は非常に貴重です。


6. 【徹底比較】iDeCo(イデコ) vs 小規模企業共済

フリーランスの節税手段として、雑誌やネット記事で必ず比較対象になるのが「個人型確定拠出年金」、通称iDeCo(イデコ)です。「結局、どっちをやればいいの?」という永遠の質問への答えを、わかりやすく整理しました。

比較項目 小規模企業共済 iDeCo(自営業者である第1号被保険者の場合)
月額上限 最大70,000円 最大68,000円(※国民年金基金等と合算した枠)
所得控除の威力 掛金の全額が所得控除 掛金の全額が所得控除
いざという時の貸付 あり(超低利・無審査の契約者貸付制度) なし(担保にして借りることも絶対に不可能)
受取時期・引き出し いつでも解約可(ただし20年未満の任意解約は元本割れペナルティ) 原則として**60歳になるまで何があっても絶対に引き出せない**
運用の内容とリスク 国(中小機構)が運用。元本保証に近い安定運用 自分で投資信託などの商品を選ぶ。元本割れのリスク(自己責任)がある一方、大きく増える可能性もある
手数料等のコスト 加入時・維持費ともに無料(掛金のみ) 加入時に約2,800円、毎月最低171円600円程度の手数料が発生し続ける

初心者はまず「小規模企業共済」を絶対的に優先すべき

私の結論は明確です。フリーランスとして独立し、所得がある程度(課税所得300万円以上)安定して出ているなら、迷わずまずは小規模企業共済の枠から埋めていくべきです。 その最大の理由は「資金の流動性(いざという時に借りられる、あるいは解約できる)」と「確実性(元本が大きく減るリスクがない)」です。iDeCoの最大のネックは、一度お金を入れると60歳になるまで、自分の病気だろうが事業の倒産危機だろうが、何があっても1円も取り戻せないという「強烈な資金ロック」にあります。将来の住宅購入、結婚、出産、あるいは急な不況への対応力という「生き残るための体力」を総合的に考えると、小規模企業共済の方が圧倒的にバランスが良く、フリーランスの不安定な生き方に適しているのです。

最強の節税コンボ:余裕が出たら「併用」する

もちろん、事業が軌道に乗り、生活防衛資金も十分に確保でき、毎月のキャッシュフローに十分な余裕があるなら、「両方の併用」がまさに最強の布陣となります。 両方を上限まで併用した場合、年間で小規模企業共済84万円 + iDeCo81.6万円 = **合計約165万円**もの莫大な所得控除枠を確保できます。年収800万円のフリーランスがこれを実行した場合、年間で50万円以上の税金と健康保険料を合法的に削減しつつ、老後の資産を猛スピードで構築することが可能です。


7. 小規模企業共済の具体的な加入手順と必要書類

「よし、今すぐ始めよう!」と思っても、お役所的な手続きが面倒に感じて後回しにしてしまう人が非常に多いのが実情です。しかし、一度設定してしまえばあとは自動で落ちるだけです。スムーズに加入を完了させるための具体的なステップをまとめました。

ステップ1:準備するものを揃える

手続きに行く前に、以下の5つのアイテムを手元に準備してください。

  1. 現金(初回掛金): 最初の1ヶ月分(あるいは数ヶ月分)は現金で支払うことも、口座振替を指定することも可能です。
  2. 確定申告書の控え: 前年分のコピーが必要です。税務署の受付印があるもの、あるいはe-Taxの場合は受信通知(メール詳細)を印刷したものを必ず添付してください。これが「事業を行っている証拠」になります。
  3. 開業届の控え: 独立したばかりで、まだ一度も確定申告をしていない場合は、税務署の印鑑が押された開業届の控えが確定申告書の代わりになります。
  4. 銀行印・通帳: 毎月の掛金の振替口座として登録するために必要です。
  5. マイナンバーカード(または通知カード+身分証): 確実な本人確認のために必須です。

ステップ2:どこで申し込めるかを確認する

申し込み窓口は主に以下の3つのルートがあります。

  • 銀行の窓口(金融機関): 普段事業用として使っているメガバンクや地方銀行、信用金庫の窓口に行き、「小規模企業共済の加入手続きをしたい」と伝えれば、担当者が書類を用意してくれます。
  • 商工会議所・商工会: 地域の中小企業やフリーランスを支える公的な組織なので、加入相談に非常に親切に、かつ詳しく乗ってくれます。近所に商工会議所がある場合は、こちらが最も安心でおすすめです。
  • オンライン申請(Web): 運営主体である中小機構のWebサイトから、マイナンバーカードとスマートフォン(NFC読み取り対応)を利用してオンライン申請も可能になりました。平日に窓口に行けない忙しい方に最適です。

⚠️ 金融機関選びの超重要注意点

口座振替の指定先として、楽天銀行、PayPay銀行、住信SBIネット銀行などの「一部のネット専用銀行」は、システムの都合上、引き落とし口座として指定できないケースが多々あります。個人事業主としてのメインバンクをネット銀行にしている場合は、共済の引き落とし専用として、メガバンク(三菱UFJ、三井住友、みずほ)、あるいは地方銀行、ゆうちょ銀行の口座を一つ用意しておくのが最も確実でスムーズです。

手続きが無事に完了すると、約1ヶ月後に自宅に「共済手帳」という立派な手帳と、毎年の確定申告で必要になる「掛金払込証明書」が送られてきます。この証明書は11月頃に届くため、絶対に紛失しないように厳重に保管してください。


まとめ:未来の自分に、最高の「仕送り」をしよう

フリーランスとして、誰の命令も受けず、自分の腕一本で自由に生きるための対価は、「すべては自己責任である」という名の重圧です。会社員のように分厚い社会保険や退職金制度で守られていない分、私たちは自分自身の知恵と行動で、強固な「守り」を構築しなければなりません。

しかし、悲観することはありません。国がこれほどまでに強力な、そしてフリーランスにとって圧倒的に有利な仕組みをちゃんと用意してくれているのです。ルールを知り、これを使わない手は絶対にありません。小規模企業共済は、単なる目先の「節税ツール」にとどまりません。通帳の中に「絶対に奪われない、未来の自分のためのお金」が積み上がっていくのを見ることは、あなたが誇りを持ってフリーランスという生き方を長く続けるための「強靭な精神的支柱」になってくれます。

今日、あなたが決断して月額1万円でも、いや最低額の1,000円からでも積立を始めれば、10年後、そして20年後のあなたは、今のあなたのその小さな決断に感謝してもしきれないはずです。まずは@SOHOの「節税ガイド」を活用して、今の自分の所得ならいくら税金が安くなるか、正確なシミュレーションをすることから始めてみてください。

真の自由には、確実な備えが必要です。その第一歩を、後回しにせず、今日ここから力強く踏み出しましょう。


よくある質問

Q. 掛金の全額が所得控除になると、具体的にどのくらい節税になりますか?

課税される所得金額によって異なりますが、例えば課税所得が400万円の人が月額7万円(年間84万円)を掛けた場合、所得税と住民税を合わせて年間で約25万円程度の節税効果が見込めます。

Q. 小規模企業共済は途中で掛金の金額を変更できますか?

はい、可能です。月額1,000円から70,000円の範囲内で、500円単位で増額や減額の手続きができます。資金繰りが苦しい時は解約するのではなく、最低額の1,000円に減額して継続することをおすすめします。

Q. 小規模企業共済とiDeCo、両方加入してもデメリットはないですか?

基本的にはメリットが上回りますが、注意点は「出口」です。両方を同じ年に「一時金」として受け取ると、退職所得控除の計算上で合算されてしまい、税負担が増える場合があります。受け取り時期を5年以上空けるなどの工夫が必要です。また、どちらも原則として長期間資金が拘束されるため、直近で使う予定のある教育資金や住宅購入資金まで回してしまわないよう注意してください。

Q. 小規模企業共済とiDeCoはどちらを優先すべきですか?

まずは小規模企業共済を優先することをおすすめします。理由は、iDeCoが60歳まで引き出せないのに対し、小規模企業共済は廃業時に受け取れる柔軟性があるからです。フリーランスとしての収入が安定してきたら、iDeCoも追加するのが理想的です。

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織田 莉子

この記事を書いた人

織田 莉子

FP2級・フリーランス経理サポーター

会計事務所で10年間の実務経験を経て独立。フリーランスの確定申告・節税・資金管理を専門に、お金にまつわる記事を執筆しています。

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