在宅ワーク 印紙税 必要 2026|業務委託契約書に収入印紙がいるケース

前田 壮一
前田 壮一
在宅ワーク 印紙税 必要 2026|業務委託契約書に収入印紙がいるケース

この記事のポイント

  • 在宅ワークやフリーランスとして仕事を受けるようになると
  • ある日とつぜん「業務委託契約書に収入印紙を貼ってください」と取引先から言われて戸惑う人は少なくありません
  • 印紙税は普段の生活ではほとんど意識しない税金なので

在宅ワークやフリーランスとして仕事を受けるようになると、ある日とつぜん「業務委託契約書に収入印紙を貼ってください」と取引先から言われて戸惑う人は少なくありません。印紙税は普段の生活ではほとんど意識しない税金なので、いくら貼ればいいのか、そもそも貼る必要があるのか、自分が負担すべきなのか、判断に迷うのは当然です。

2026年現在、多くのビジネスシーンでDX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、電子契約が主流になりつつあります。しかし、依然として不動産業界や歴史のある大手企業、あるいは地域密着型の企業などでは紙の契約書が活用されており、印紙税の知識はフリーランスにとって「必須の教養」といえます。この記事では、在宅ワークで結ぶ契約書に印紙税が必要になるケースと不要なケースを、実務の流れに沿って整理します。読み終えるころには、目の前の契約書に印紙がいるのかどうかを自分で見分けられるようになっているはずです。

印紙税とは何か、なぜ契約書に必要になるのか

印紙税は、一定の文書を作成したときに課される税金です。対象になる文書は法律で「課税文書」として定められており、契約書や領収書、手形などが含まれます。普段の買い物では意識しませんが、5万円以上の領収書に収入印紙が貼られているのを見たことがある人も多いでしょう。あれが印紙税の代表的な例です。

なぜ「文書」に税金がかかるのか。その理由は、大きな経済的利益を生む取引が行われる際、それを証明する書面が作成されることに着目し、その書面に裏付けられた「経済的負担力」に対して課税するという考え方にあります。つまり、重要な取引ができるほどのお金があるのなら、少しは税金を納めてくださいね、という性質のものです。

印紙税は、日常生活において作成される文書のうち、印紙税法で定められた「課税文書」に対して課される税金です。課税文書に該当するかどうかは、文書の名称(タイトル)ではなく、その文書に記載されている内容に基づいて判断されます。 出典: 国税庁

在宅ワークで関係してくるのは、おもに「契約書」としての課税文書です。取引先と継続的に仕事をするとき、業務委託契約書や請負契約書を交わすことがあります。このとき、契約の内容によっては印紙税の対象になり、契約書に収入印紙を貼って消印をする義務が生じます。

ここで重要なのは、印紙税が課されるのは「文書」に対してであって、「取引」そのものに対してではないという点です。つまり、同じ内容の合意でも、紙の契約書を作れば課税対象になり得る一方で、電子契約で完結させれば課税されないという違いが生まれます。この性質を理解しておくと、後ほど説明する節税の考え方がすっと頭に入ります。国税庁の公式サイト( https://www.nta.go.jp/ )でも、課税文書の定義や範囲について詳しく解説されており、実務上で迷った際の拠り所となります。

課税文書になるかどうかは「号」で決まる

印紙税法では、課税対象となる文書を第1号文書から第20号文書まで分類しています。在宅ワーカーが関わる可能性が高いのは、次の3つです。

第1に、第2号文書は「請負に関する契約書」です。Webサイト制作、システム開発、ロゴデザイン、記事執筆、動画編集など、成果物を納品して報酬を受け取る仕事の多くがここに該当します。在宅ワークの契約書で印紙税が問題になる場面の大半は、この第2号文書です。

第2に、第7号文書は「継続的取引の基本となる契約書」です。特定の相手と継続して取引するための基本契約書がこれにあたります。契約期間が3カ月を超え、かつ更新の定めがあるなど一定の要件を満たす場合に該当します。単発の契約ではなく、長い付き合いを前提とした契約で登場します。

第3に、第17号文書は「金銭または有価証券の受取書」、いわゆる領収書です。報酬を現金で受け取ったときや、クレジットカード決済の控えとして発行する場合に作成することがあります。2024年以降のキャッシュレス化の進展により、紙の領収書を発行する機会は減っていますが、現金取引がある場合は5万円以上で印紙が必要になります。

自分が結ぶ契約書がどの号に当たるのかを見極めることが、印紙税の要否を判断する出発点になります。これを間違えると、必要のない印紙を貼ってしまったり、逆に不足してペナルティを受けたりする原因になります。

在宅ワークの契約書で印紙税が必要になるケース

ここからは具体的に、どんな契約書に印紙が必要になるのかを見ていきます。判断の軸は「契約の種類」と「契約金額」の2つです。特に在宅ワークでは、一見すると請負には見えない業務でも、法律上は請負と判断されるケースが多いため注意が必要です。

請負契約(第2号文書)に該当するケース

在宅ワークで最も多いのが、成果物の完成を約束して報酬を受け取る請負型の契約です。これは「結果」に対して責任を負う契約形態であり、たとえば次のような仕事は請負契約とみなされやすく、紙の契約書を作れば印紙税の対象になります。

  • Webサイトやランディングページの制作(デザインからコーディングまで)
  • スマートフォンアプリや独自のシステム、ツールの開発
  • ロゴ、バナー、名刺、チラシなどの各種グラフィックデザイン制作
  • 特定のテーマに基づいた記事やコピーのライティング(納品物の完成が条件)
  • YouTube動画や広告動画の編集・制作
  • ゲームや出版物向けのイラスト、キャラクターの制作
  • 翻訳業務(翻訳済みの原稿を納品する場合)

これらは「○○を完成させて納品する」という成果に対して報酬が支払われるため、請負契約として整理されます。契約書のタイトルが「業務委託契約書」となっていても、中身が請負であれば第2号文書として扱われる点に注意が必要です。印紙税は書面のタイトルではなく実質的な内容で判断されます。

たとえば、システム開発において「仕様書通りの機能を実装して納品する」という内容は請負ですが、「開発チームの一員として月間140時間稼働する」という内容は後述する準委任契約に近い扱いになります。この境界線は実務上非常に重要です。

契約金額によって税額が変わる

第2号文書の印紙税額は、契約書に記載された契約金額によって段階的に決まります。金額が大きくなるほど税額も上がる仕組みです。在宅ワークで実際に登場しやすい金額帯を中心に、税額を表にまとめます。

記載された契約金額 印紙税額(第2号文書)
1万円未満 非課税
1万円以上 100万円以下 200円
100万円超 200万円以下 400円
200万円超 300万円以下 1,000円
300万円超 500万円以下 2,000円
500万円超 1,000万円以下 1万円
契約金額の記載がないもの 200円

たとえば30万円のサイト制作を請け負う契約書なら、印紙税は200円です。120万円の開発案件なら400円になります。在宅ワークの単発案件では200円で済むことが多く、金額としてはそれほど大きくありません。しかし、年間に何十件も紙の契約を結ぶ場合は累積の負担が無視できなくなります。金額の多寡にかかわらず、貼り忘れは税法違反となるため、常に契約金額を確認する癖をつけましょう。

なお、契約金額に消費税が含まれている場合、その扱いによって税額が変わることがあります。これについては後述する「つまずきやすいポイント」で詳しく解説します。

継続的な取引の基本契約(第7号文書)に該当するケース

特定の取引先と長期的に仕事をするとき、個別の発注ごとに細かい条件を書くのではなく、共通のルールを定めた「基本契約書」を最初に交わすことがあります。この基本契約書が一定の要件を満たすと、第7号文書として扱われます。

第7号文書の印紙税額は、契約金額にかかわらず一律4,000円です。第2号文書の最低200円と比べるとかなり高く感じられるはずです。継続案件で「まずは基本契約書を結びましょう」と提案されたときは、それが第7号文書に当たるかどうかを慎重に確認しておくと、想定外の出費を避けられます。

第7号文書に該当する主な要件は以下の通りです。

  1. 営業者の間で交わされる契約であること(個人事業主でも「営業者」に含まれます)
  2. 2回以上の取引を継続的に行うことを前提としていること
  3. 契約期間が3カ月を超える、または更新の定めがあること
  4. 売買、請負、寄託、委任(準委任)のうち特定の取引に関する共通事項を定めていること

たとえば、デザイン制作を毎月1回、1年間にわたって受託するための「業務委託基本契約書」を作成する場合、これは第7号文書に該当し、4,000円の印紙が必要になります。ただし、契約期間が2カ月以内で更新の定めがない場合などは、第7号文書には当たらないため、内容に応じた他の号(請負なら第2号)で判断します。

業務委託契約そのものの基礎知識や、どのような案件が請負に該当するのかを確認したい人は、案件一覧から実際の募集内容をチェックしてみると、どのような成果物が求められるのかが具体的にイメージでき、印紙税の判断にも役立ちます。

在宅ワークで印紙税が不要になるケース

印紙が必要なケースを押さえたら、次は「貼らなくてよい」ケースを正確に知っておきましょう。ここを誤解すると、必要のない印紙を貼って損をしたり、逆に貼るべき場面で貼り忘れたりします。節税という観点からも、非課税の条件を理解しておくことは非常に有利です。

委任・準委任契約は原則として課税されない

請負契約と並んで在宅ワークでよく使われるのが、委任契約や準委任契約です。これは「成果物の完成」ではなく「業務の遂行そのもの」に対して報酬を支払う契約形態です。善管注意義務(善良な管理者の注意をもって業務を行う義務)は負いますが、結果が出なかったからといって即座に報酬がゼロになるわけではありません。

たとえば次のような働き方は、委任・準委任型に整理されることが多いです。

  • 月額制でのオンライン秘書、事務代行業務
  • 継続的なコンサルティング、アドバイス、カウンセリング業務
  • カスタマーサポートのチャット・電話代行
  • SNSアカウントの運用代行(投稿作業やコメント返しなど、運用そのものが目的の場合)
  • 定期的なデータ入力やリサーチ業務
  • プロジェクトマネジメント支援

委任・準委任契約は印紙税法上の課税文書に列挙されていないため、原則として印紙を貼る必要がありません。同じ「業務委託契約書」というタイトルであっても、その実態が「事務作業を代行する(準委任)」のか、「完成した成果物を納品する(請負)」のかによって、200円〜4,000円の印紙代がかかるか、0円で済むかが決まるのです。

ただし、契約書のなかに請負の要素(例:月額制だが、月1回のレポート作成を「成果物」として定義し、その完成を義務付けるなど)が混在している場合は、課税文書とみなされるリスクがあります。判断に迷う場合は、中小企業庁( https://www.chusho.meti.go.jp/ )などの支援サイトで契約の実務ガイドラインを参照するのも一つの手です。

電子契約には印紙税がかからない

2026年現在の在宅ワークにおいて、最も効果的な印紙税対策が「電子契約」の活用です。印紙税は「紙の文書」を作成したときに課される税金です。現在の法律では、電子メールやクラウド上の電子署名サービスで締結される契約は「文書の作成」には当たらないと解釈されています。

国税庁も、注文請書を電子メールで送信し、紙の現物を交付しない場合には課税文書を作成したことにはならない、という見解を公式に示しています。

注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考えられる。 出典: 国税庁

この解釈により、クラウドサインやマネーフォワード( https://biz.moneyforward.com/ )などの電子契約サービスを使って締結した契約書は、内容が請負(第2号文書)や基本契約(第7号文書)であっても、印紙税を貼る必要がありません。

在宅ワークのように相手と物理的に離れて働くスタイルでは、紙の郵送自体が時間とコスト(封筒代、切手代)を要します。電子契約を導入することで、印紙税の負担をゼロにしつつ、事務作業を大幅に効率化できるという二重、三重のメリットがあります。取引先が古い体質の企業でない限り、「電子契約でお願いできますか」と提案することで、双方のコスト削減につながるでしょう。

1万円未満の契約は非課税

第2号文書(請負契約書)については、契約金額が1万円未満であれば非課税です。小規模なバナー制作を1枚5,000円で請け負う場合など、少額の単発案件でわざわざ紙の契約書を交わす際も、金額が1万円に満たなければ印紙を貼る必要はありません。

ただし、注意点があります。「今回のバナー制作 5,000円」と「次回のチラシ修正 6,000円」を一つの契約書にまとめた場合、合計金額が11,000円となり、1万円を超えるため200円の印紙が必要になります。また、金額の記載がない場合も、基本的には200円の課税対象となる点に注意してください。

印紙税は誰が負担するのか

在宅ワーカー、特に駆け出しのフリーランスが最も悩むのが、「印紙代は自分が払うのか、それとも取引先が払うのか」という実務的な問題です。

印紙税法上、課税文書の作成者が納税義務を負います。契約書のように、2者が合意の証として1通ずつ保管するために2通(正本・副本など)作る場合は、それぞれの文書を「作成」した人が納税義務を負うのが原則です。つまり、2通作成して双方が署名捺印する場合、双方が1通ずつ(自分の手元に残る分、または相手に送る分として)印紙を負担するのが、法律上の平等な考え方になります。

しかし、これはあくまで法律が定める「納税の義務者」の話であり、実態としての費用の持ち分は「当事者間の合意」に委ねられています。実務では以下のようなパターンが見られます。

  1. 双方が1通分ずつ負担する 最も一般的な形式です。お互いに1通ずつ契約書を保有し、自分の保有分に印紙を貼ります。
  2. 発注側(クライアント)が全額負担する 大手企業が発注者の場合、事務作業の簡略化のためにクライアント側で印紙を用意してくれることがあります。
  3. 受注側(フリーランス)が全額負担する 受注の条件として、あるいは契約書の作成をこちらに一任された場合に、費用を負担することがあります。

在宅ワーカーとして推奨される対応は、契約締結の前に負担についてさらっと確認しておくことです。契約書の末尾あたりに「印紙税の費用は甲・乙が等分に負担する」といった条項があるかをチェックし、記載がなければ「印紙代はこちらで1通分用意すればよろしいでしょうか?」とメール等で一言添えるだけで、プロらしい気遣いと知識をアピールできます。

もし印紙代の負担が重いと感じるほど高額(4,000円など)になる場合は、事前にその分を見込んだ見積もりを出すか、やはり電子契約への切り替えを打診するのが賢明です。自分の手取りを守るための交渉も、自営業者には不可欠なスキルです。最新の相場観を知りたい場合は、年収データベースなどで同じ職種の報酬水準を確認し、経費負担が妥当かどうかを判断する基準にしてみてください。

印紙を貼り忘れたらどうなるのか

印紙税を「たかが数百円のシールだから、貼らなくてもバレないだろう」と考えるのは非常に危険です。印紙税の貼り忘れは立派な「脱税」とみなされ、厳しいペナルティが課せられます。

もし、税務署の調査などで課税文書への印紙貼り忘れ(納付漏れ)が発覚した場合、本来納めるべき印紙税額の「3倍」に相当する金額が「過怠税」として徴収されます。 具体的には、

  • 本来の印紙代:200円
  • 過怠税(2倍分):400円
  • 合計:600円 となります。金額が大きくなればなるほど、この「3倍」という数字は重くのしかかります。

ただし、税務署から指摘を受ける前に、自分から「間違えて貼り忘れていました」と自主的に申し出た場合には、過怠税は「1.1倍」に軽減されます。もし過去の契約書を見返して貼り忘れを見つけたら、黙っているよりも正直に相談する方が経済的損失を抑えられる可能性が高いです。

また、「印紙を貼ったけれど、消印(割り印)を忘れていた」というケースも処罰の対象になります。この場合、印紙そのものは貼ってあるため、印紙の額面と同額(200円なら200円)の過怠税が追加で課されます。つまり、実質2倍の負担になります。 消印は、印紙の再利用を防ぐために行われる重要な手続きです。印鑑を持っていない場合は、ボールペンなどで氏名や屋号を署名することでも消印として認められますが、単に斜線を引いただけでは消印と認められない場合があるため注意しましょう。

なお、印紙税を納めていないからといって、その契約書自体の法的効力が失われることはありません。契約は成立していますが、税法上のペナルティを受ける、という二階建ての構造になっています。クライアント側に税務調査が入った際に自分の貼り忘れが発覚し、クライアントにまで迷惑(過怠税の連帯納付義務など)をかけてしまうと、今後の取引に深刻な影響が出ることは言うまでもありません。

印紙税を払いすぎたときの還付

逆に、本来は不要だったのに印紙を貼ってしまった、あるいは金額を間違えて多く貼ってしまったという「貼りすぎ」のミスも起こり得ます。例えば、準委任契約(非課税)なのに請負契約(課税)だと勘違いして4,000円の印紙を貼ってしまった場合などです。

このようなミスに気づいた場合、税務署で所定の手続きを行うことで、払いすぎた税金を返してもらう(還付を受ける)ことができます。

還付を受けるための手順は以下の通りです。

  1. 申請書類の準備:「印紙税過誤納確認申請書」を国税庁のサイトからダウンロードして記入します。
  2. 証拠書類の持参:間違えて印紙を貼ってしまった契約書などの現物をそのまま税務署へ持っていきます。
  3. 確認と還付:税務署での確認が終わると、後日指定の口座に還付金が振り込まれます。

注意点として、契約書から印紙を無理やり剥がしてしまうと、還付が受けられなくなることがあります。間違えて貼ってしまった場合でも、そのままの状態で税務署に持ち込むのが鉄則です。また、還付が受けられるのは作成日から5年以内と決まっています。

在宅ワークを始めたばかりの頃は、不安から「念のため」と多めに貼ってしまうこともあるかもしれませんが、こうした救済措置があることを知っておけば、万が一の際も落ち着いて対処できます。e-Tax( https://www.e-tax.nta.go.jp/ )などのオンラインサービスでは直接の還付手続きは完結しませんが、申請書の作成をサポートする情報が掲載されています。

確定申告との関係も押さえておく

印紙税は、フリーランスや個人事業主としての「確定申告」にも深く関わってきます。

事業に関連して支払った収入印紙代は、全額「租税公課」という勘定科目で経費に計上できます。200円や400円といった少額であっても、積み重なれば年間で数千円、数万円の経費となり、所得税や住民税の節税につながります。

経費として認められるためには、以下のものをしっかりと保管しておく必要があります。

  • 郵便局やコンビニで収入印紙を購入した際のレシート・領収書
  • (レシートがない場合)印紙を貼った契約書のコピー

特に在宅ワーカーは、自宅で作業をするためのパソコン代や通信費だけでなく、こうした「契約に伴う公的なコスト」も忘れずに計上することが大切です。帳簿への記載例としては、「摘要:業務委託契約書用印紙代、金額:200円」といった具合にシンプルで構いません。

また、青色申告を行っている場合は、こうした細かい経費の積み重ねが、最大65万円の青色申告特別控除を受けるための「正確な帳簿」としての信頼性を高めます。確定申告の準備については、資格ガイド一覧などで会計関係の知識を補完しておくことも、将来的なキャリアアップや管理能力の向上に役立ちます。税務は複雑に見えますが、一つひとつの仕組みを理解して習慣化すれば、決して難しいものではありません。

つまずきやすいポイントと回避のコツ

印紙税の実務において、在宅ワーカーが特につまずきやすい「落とし穴」と、それを賢く回避するためのコツをまとめます。

消費税の記載方法で印紙代が変わる

最も多い盲点が、契約金額と消費税の関係です。印紙税の判定基準となる「契約金額」は、消費税の扱いによって以下のように変わります。

  • 例:契約金額が110,000円(うち消費税10,000円)と明記されている場合 この場合、契約金額は「100,000円」として扱われます。10万円超〜100万円以下の区分となり、印紙税は200円です。
  • 例:契約金額が110,000円(税込)とのみ記載されている場合 消費税額がいくらであるかが具体的に計算できない(または明記されていない)場合、契約金額は「110,000円」として扱われます。

一見するとどちらも200円の印紙で済みそうですが、これが「100万円」や「1,000万円」の境界線上にいる場合、消費税を分けて書くか書かないかで、印紙税のランクが一つ変わってしまうことがあるのです。契約書を作成する際は、必ず「本体価格●●円、消費税●●円」と分けて記載するようにしましょう。

「おぼえ書き」や「変更契約書」にも注意

当初の契約内容を少しだけ変更するための「おぼえ書き」や「変更契約書」であっても、その内容が「重要な事項(契約金額や期間など)」の変更を含む場合は、再び印紙が必要になることがあります。 たとえば、制作料金を20万円から25万円に増額する内容のおぼえ書きを作成する場合、その差額ではなく、改めて契約金額に応じた印紙(この場合は200円)が必要になります。

判断に迷った時の最強の回避術

「これは第2号か? それとも準委任か?」と悩み、ネットで調べても確信が持てないときは、以下の2つの方法を強くお勧めします。

  1. 「電子メールでの合意」または「電子契約」にする 前述の通り、電子データであれば印紙税の悩み自体が消滅します。「今回はメールでの合意のみで進めさせていただいてもよろしいでしょうか?」と確認するのが最もスマートな回避策です。
  2. 税務署の「電話相談センター」を利用する 国税庁の電話相談センターでは、匿名で印紙税の要否について相談に乗ってくれます。専門の担当者が丁寧に「その契約内容はどの号に当たるか」を教えてくれるため、自己流で判断するよりも100倍確実です。

これらを意識するだけで、印紙税にまつわる不安や無駄な出費を劇的に減らすことができます。

これから在宅ワークを広げていく人へ

印紙税は、一見すると地味で面倒な手続きに思えるかもしれません。しかし、契約を正しく結び、納税義務を適切に果たすことは、あなたがプロの在宅ワーカーとして社会的に信頼されるための第一歩です。

取引先から「印紙をお願いします」と言われた際に、「あ、請負契約(第2号文書)だから200円ですね。消印もしておきます」と即座に返答できれば、相手は「この人はビジネス実務をよく理解しているな」と安心し、それが次の案件や単価アップの相談につながることもあります。逆に、何も知らずに貼り忘れて相手に指摘されると、スキルの高さに関わらず「基本的な事務能力に欠ける」という印象を持たれかねません。

在宅ワークの世界は自由である反面、自分を守るためのルールも自分で学んでいかなければなりません。契約や税金の知識は、あなたという事業体を支える強固なインフラになります。

これからさらに案件を拡大し、より高単価な仕事に挑戦したいと考えている方は、教育訓練給付金の対象講座などを活用して、法務や会計、マネジメントなどの専門知識を体系的に学ぶことも検討してみてください。技術的なスキルだけでなく、こうした「バックオフィス的な知識」を併せ持つことで、あなたは数多くのフリーランスの中から「選ばれる存在」へと成長していけるはずです。

印紙税の判断ができるようになった今のあなたは、もう契約書を前にして戸惑う必要はありません。自信を持って、新しい仕事のチャンスを掴み取ってください。

公的機関・関連参考情報

本記事の内容に関連する公的機関や信頼できる情報源は以下の通りです。最新情報は公式サイトで確認してください。

よくある質問

Q. 電子契約なら収入印紙は不要ですか?

はい、不要です。印紙税は「紙の文書」に対して課される税金であるため、PDFでの送付やクラウドサイン等の電子契約サービスを利用した場合は、契約金額にかかわらず印紙を貼る必要はありません。在宅ワークにおいてコストを抑える最も有効な手段といえます。ただし、電子契約で合意した後に、バックアップ等の目的で別途紙の契約書を作成・交付した場合には、その紙の文書に印紙が必要となる点に注意しましょう。

Q. 業務委託契約書の印紙代はいくらですか?

契約金額によって異なります。一般的な「第2号文書(請負に関する契約書)」の場合、契約金額が1万円超100万円以下なら200円、100万円超200万円以下なら400円と上がります。また、金額の記載がない場合や、契約期間の更新など継続的な取引(第7号文書)とみなされる場合は一律4,000円となるケースもあります。契約内容が「請負」か「委任」かによっても税額が変わるため、事前に契約書の性質を正しく判断することが重要です。

Q. 印紙代は発注者と受注者のどちらが負担すべきですか?

法律上は「契約書の作成者が共同して連帯して納める」とされており、実務上は「各自が保管する契約書1通分ずつの印紙代をそれぞれ負担する」のが一般的です。取引先から全額負担を求められた場合は、事前の交渉で折半や相手方負担にすることも可能です。トラブルを避けるためにも、契約締結前の段階で、印紙代の負担割合や郵送費用の取り扱いについて双方で合意形成をしておくと、その後の取引もスムーズに進みます。

Q. 貼った収入印紙の代金は経費になりますか?

はい、確定申告の際に「租税公課」という勘定科目で必要経費として計上できます。印紙そのものは郵便局やコンビニで購入できますが、購入時の領収書は必ず保管しておきましょう。在宅ワーカーにとって、印紙代は積もり積もれば大きな出費となります。事業に関連する支出として忘れずに帳簿に記録し、所得税の負担を軽減させましょう。なお、貼り間違えて剥がした印紙などは税務署で還付を受けられる場合もあるので、捨てずに取っておくことが大切です。

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この記事を書いた人

前田 壮一

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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