業務委託 月額固定 単価|月20万円契約の業務範囲と上限稼働の決め方

長谷川 奈津
長谷川 奈津
業務委託 月額固定 単価|月20万円契約の業務範囲と上限稼働の決め方

この記事のポイント

  • 業務委託の月額固定契約で多い「月20万円」設定
  • 業務範囲・上限稼働時間の決め方
  • 偽装フリーランスにならない条件

先日、あるWebデザイナーさんから相談を受けました。「クライアントと月額固定20万円で業務委託契約を結んだのに、気づいたら毎日8時間ぎっしり拘束されていて、まるで社員みたいになっている」と。これ、知らない人が本当に多いんです。月額固定の業務委託は、一歩間違えると偽装フリーランスとして労働基準法違反になりかねない、非常にデリケートな契約形態です。

「業務委託 月額固定」と検索する方の多くは、これから月額制で受注しようとしているフリーランス、または逆に発注側として月額制で発注しようとしている事業者だと思います。結論から言うと、月額固定の業務委託は適法に運用できますが、業務範囲・上限稼働時間・指揮命令の有無を契約書で明確にしておかないと、後で大きなトラブルになります。本記事では、月20万円契約を具体例にしながら、業務委託の月額固定報酬の決め方・上限稼働の引き方・2024年施行のフリーランス保護新法のポイントまで、行政書士の視点で噛み砕いて解説します。法律はあなたの味方です。仕組みを正しく知って、自分のビジネスを守りましょう。

月額固定の業務委託が増えている市場背景

まず、月額固定型の業務委託がここ数年で急増している背景を整理しておきます。従来の業務委託は「Webサイト1本いくら」「記事1本いくら」といった成果物単位の支払いが主流でした。ところが、SaaS運用代行、SNSマーケティング、Web広告運用、バックオフィス代行、エンジニアの稼働シェアなど、「継続的に一定の業務を任せる」モデルが市場で一般化し、月額固定報酬の業務委託が選ばれるケースが大きく増えています。

中小企業庁の中小企業白書でも、業務委託やフリーランス活用を「外部人材活用」の柱として位置づける記述が年々増えています。経済産業省(https://www.meti.go.jp/)の各種調査でも、フリーランス人口は推計1,500万人前後とされ、その多くが何らかの形で月額契約・継続契約を持っているという統計があります。発注側にとっては「正社員を雇うほどではないがコア業務を任せたい」、受注側にとっては「毎月の売上の柱を作りたい」という双方のニーズが合致した結果、月額固定契約が広がっているわけです。

月額固定報酬の典型的なレンジは、業務内容にもよりますが、副業レベルで月5万円〜10万円、専業フリーランスの主力契約で月20万円〜50万円、フルコミットに近い高単価契約で月60万円〜100万円超といった分布になっています。中でも「月20万円前後」は、副業から専業に移行する人、複数社と並行契約する人にとって、もっとも相談件数が多い価格帯です。だからこそ、この価格帯のリアルな業務範囲と稼働上限の決め方を、本記事で丁寧に押さえていきます。

業務委託の月額固定報酬は違法ではないのか

最初に多くの方が抱く疑問が「月額固定で払うって、それ実質給料じゃないの?違法じゃないの?」というものです。結論から言うと、月額固定報酬の業務委託は原則として違法ではありません。ただし、契約の実態によっては「偽装フリーランス」と判断され、労働基準法違反になるリスクがあります。

この点を、行政書士の専門家がはっきり書いているので引用します。

しかし、受託者が個人事業者・フリーランスである場合、業務委託契約における固定報酬、特に月額固定の報酬は、外形上は雇用契約・労働契約の月給(賃金)と変わりません。

つまり、毎月決まった日に決まった金額が振り込まれるという外形は、給与とまったく同じに見えるということです。だからこそ、契約書の作りこみと実際の業務の進め方が重要になります。

偽装フリーランスと判断される典型パターン

労働基準監督署や裁判所が「これは実質的に労働契約だ」と判断する典型パターンは、おおむね次の5つです。

  1. 発注者から具体的な業務指示を細かく受けている(出社時間・退社時間・休憩時間を指定される)
  2. 業務遂行の場所や時間が発注者側で固定されている(在宅NGで出社必須等)
  3. 他社からの仕事を受けることを禁止されている(専属義務がある)
  4. 業務に使う道具・PC・ソフトウェアを発注者が支給している
  5. 報酬の計算が時給ベースで、欠勤時に控除される

これらが複数該当すると、契約書のタイトルが「業務委託契約」となっていても、実態は労働契約だと判断される可能性が高くなります。労働契約と認定されると、発注側は社会保険料・残業代・有給休暇を遡って支払う義務が生じ、場合によっては労働基準法違反で送検されるケースもあります。

適法な月額固定契約にするための条件

逆に、月額固定でも適法に運用するためには、次の条件を満たしておくことが重要です。

第一に、「成果」と「報酬」が紐づいていること。例えば「月20万円で、SNS投稿の制作・運用・月次レポート提出を行う」のように、何をやれば月20万円なのかを契約書に書いておきます。時給ではなく、業務範囲に対する対価という構造にすることが大切です。

第二に、「指揮命令関係がない」こと。具体的にいつ作業するか、どこで作業するか、どんな手順でやるかは受託者が自由に決められる、という建て付けにしておきます。発注者ができるのは、納期・品質基準・成果物の指定までです。

第三に、「他社の仕事を禁止しない」こと。専属義務を契約書に書くと、それだけで雇用色が強くなります。競合他社のみNGとする程度に留めるのが無難です。

第四に、「報酬を欠勤控除しない」こと。風邪を引いて1日休んだから日割りで控除、というのは雇用契約の発想です。業務委託では、月内に契約上の成果を出していれば、何日働いたかは問われません。

これらをすべて満たしていれば、月額固定でも適法な業務委託として運用できます。なお、ケースによっては微妙な判断が必要になるので、こうした疑問が出た場合は弁護士または社会保険労務士に相談してください。

月20万円契約の妥当な業務範囲

次に、本記事のメインテーマである「月20万円契約の業務範囲」について、具体的に考えていきます。月20万円という金額は、副業フリーランスの主力契約、または専業フリーランスのサブ契約として、もっとも相談件数が多い価格帯です。

月20万円の時間単価換算

まず、月20万円を時間単価に換算してみましょう。

月稼働時間 時間単価換算 想定される働き方
20時間 10,000円 専門スキル提供型(コンサル、デザイン、開発)
40時間 5,000円 専門業務型(Web運用、編集、ライティング)
60時間 約3,300円 一般業務型(バックオフィス、SNS運用)
80時間 2,500円 量産型業務(記事制作、データ入力支援)
100時間 2,000円 フルコミット型(要注意ライン)
160時間 1,250円 偽装フリーランス疑い濃厚

月160時間(週40時間×4週)まで稼働させて月20万円という契約は、時間単価で1,250円です。これは東京都の最低賃金(2025年10月時点で1,163円)と大差ない水準で、しかも社会保険料や経費は自己負担です。これでは事実上の雇用契約と変わらず、偽装フリーランスと判断されるリスクが非常に高くなります。

健全な月20万円契約のラインとしては、月稼働40時間〜80時間程度に上限を設けるのが現実的です。時間単価で2,500円〜5,000円。これくらいの水準であれば、専門スキルへの対価として説明がつきますし、業務委託として自然な金額バランスになります。

月20万円で引き受けられる業務範囲の具体例

それでは、月稼働40〜80時間で月20万円というレンジで、実際にどんな業務を引き受けるのが現実的でしょうか。職種別に整理してみます。

SNS運用代行の場合 月20万円であれば、1〜2アカウントの運用が妥当です。具体的には、月8〜12本程度の投稿企画・制作・投稿、コメントへの一次対応、月次レポート1本。これで月稼働40〜60時間に収まります。「複数アカウントを毎日3投稿」のような契約は、量的に月20万円のレンジを超えています。

Webサイト保守運用の場合 月20万円であれば、CMSの更新作業、簡単な改修、月次のアクセスレポート、軽微なバグ対応までが範囲です。大規模なリニューアルや新規ページ大量追加は別途見積もりとするのが標準的です。月稼働40〜60時間程度。

Web広告運用代行の場合 月20万円であれば、媒体2〜3つまで、広告予算月100万円程度までの運用が目安です。週次ミーティング1回、月次レポート1本、クリエイティブ修正の提案・実装まで含めて月稼働40〜60時間。広告予算が大きくなる、あるいはクリエイティブ制作を内製で大量に行う場合は、別途加算する設計が一般的です。

Webライティングの場合 月20万円であれば、文字単価2円換算で月10万字、3円換算で月6.6万字。記事本数でいうと、3,000字×30本程度が標準的なラインです。これに編集・校正・構成案作成まで含めると月稼働80時間前後になります。

バックオフィス代行・カスタマーサポートの場合 月20万円で、メール対応・問い合わせ管理・データ入力サポート・月次レポート程度。稼働は月40〜60時間が標準的なラインです。「毎日リアルタイム対応」「即レス必須」となると、もはや業務委託ではなく雇用契約の領域です。

月額固定契約で必ず決めておくべき6つの項目

月額固定の業務委託契約で、トラブルを防ぐために絶対に決めておくべき項目があります。私の事務所で実際に相談を受けるケースのほとんどが、これらが曖昧だったことが原因です。

1. 業務範囲の明確化

「SNS運用を任せます」だけでは曖昧すぎます。次のように具体化してください。

項目
対象アカウント X(旧Twitter)公式アカウント1つ
投稿数 月10本(テキスト投稿8本、画像投稿2本)
企画 月初に翌月分の投稿カレンダーを作成・共有
レポート 月次レポートを翌月5営業日以内に提出
含まれないもの アカウント新規開設、広告運用、コメント常時監視

特に「含まれないもの」を明記しておくことが重要です。これがないと、後から「これもやってくれるよね?」と業務範囲が際限なく広がっていきます。

2. 上限稼働時間の設定

業務範囲だけでなく、上限稼働時間も契約書に書いておきます。例えば「月稼働60時間を上限とし、これを超える業務発生時は別途協議の上、追加報酬を定める」といった条項です。これがないと、月100時間働いても同じ20万円という事態になりかねません。

上限超過時の単価も、契約書に書いておくと安心です。例えば「上限を超過する稼働は1時間あたり5,000円で算定する」のように。

3. 報酬支払いサイトと支払い方法

支払いサイトは「月末締め翌月末払い」「月末締め翌々月末払い」など、業界によって慣行があります。重要なのは、2024年11月施行のフリーランス保護新法で「発注者は受領日から60日以内に報酬を支払う義務」が明記されたことです。

このため、月額固定報酬の業務委託契約は、契約内容や月額固定報酬の性質・金額によっては、雇用契約・労働契約とみなされ、労働基準法違反となる可能性もあります。

つまり、月末締め翌々月末払いだと60日を超える可能性があるので注意が必要です。実務的には「月末締め翌月末払い」が最も安全な設計です。

4. 契約期間と更新・解除条件

月額固定契約は、契約期間と更新・解除条件で揉めるケースが非常に多いです。最低限決めておくべきは次の3点です。

ひとつ目、初回契約期間。3ヶ月、6ヶ月、1年のいずれかが標準です。短すぎると安定しない、長すぎると合わないときに抜けられないので、半年契約からスタートして合えば自動更新、という設計が無難です。

ふたつ目、自動更新条項。「契約満了の30日前までに、いずれかの当事者から書面で更新拒絶の意思表示がない場合、同一条件で1年間自動更新する」といった条項を入れます。

みっつ目、中途解約条項。「両当事者は1ヶ月前の書面通知により、いつでも本契約を解約できる」のような中途解約条項を入れておきます。これがないと、契約期間中は途中解約できず、合わない関係を続けることになります。

5. 知的財産権の帰属

成果物の著作権・商標権・特許権などの知的財産権が、受託者と発注者のどちらに帰属するかを明記しておきます。一般的な業務委託では「報酬全額の支払いを条件として、発注者に譲渡する」とすることが多いですが、ノウハウを含む部分やテンプレートの部分などは受託者に留保する、という細かい設計もできます。

特に重要なのが、著作者人格権の不行使特約です。著作権は譲渡できますが、著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権など)は譲渡できません。代わりに「受託者は著作者人格権を行使しない」という特約を入れておくのが実務的な対応です。

6. 秘密保持義務(NDA)

月額契約は継続的な関係になるため、業務の中で発注者の機密情報に触れる機会が必ず出てきます。秘密保持義務(NDA、エヌディーエー)の条項を契約書本体に組み込むか、別途NDA契約書を取り交わしておきます。

フリーランス保護新法で変わったこと

2024年11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称フリーランス保護新法が施行されました。これ、まだ知らないフリーランスが本当に多いんです。月額固定の業務委託契約に関わる方は必ず知っておくべき内容なので、ポイントを整理します。

法律の対象

この法律が適用されるのは、「特定受託事業者」、つまり従業員を雇用していない個人事業主や1人法人です。発注者側は、従業員を雇用している事業者すべてが対象になります。つまり、相手が大企業だろうとスタートアップだろうと、従業員がいる限りこの法律が適用されます。

発注者に課される7つの義務

発注者に課される主な義務は次の7つです。

  1. 書面または電磁的方法による取引条件の明示義務:業務内容・報酬額・支払期日・成果物の知的財産権の取扱いなどを、必ず書面または電磁的方法で示す
  2. 報酬支払期日の設定義務:原則、成果物の受領日から60日以内に支払う
  3. 受領拒否の禁止:契約した業務の成果物を、正当な理由なく受領拒否してはいけない
  4. 報酬減額の禁止:契約した報酬を、正当な理由なく減額してはいけない
  5. 返品の禁止:受領後に正当な理由なく返品してはいけない
  6. 買いたたきの禁止:通常の対価より著しく低い報酬を強要してはいけない
  7. 募集情報の正確な表示義務:求人広告に虚偽・誇大な内容を載せてはいけない

これに加えて、6ヶ月以上継続する契約では「育児・介護への配慮義務」「ハラスメント対策義務」「30日以上前の解除予告義務」も発注者に課されます。

違反した場合のペナルティ

これらの義務に違反した発注者には、公正取引委員会または中小企業庁から「助言・指導・勧告・命令」が行われます。命令に従わない場合は50万円以下の罰金、または法人にも50万円以下の罰金が科されます。

詳しい条文や運用については、公正取引委員会(https://www.jftc.go.jp/)や厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/)の公式サイトで確認できます。

フリーランス側がやるべきこと

フリーランス側として実務的にやるべきことは、次の3つです。

ひとつ目、契約時に必ず書面または電磁的方法で取引条件を受け取る。口頭発注を受け入れないこと。

ふたつ目、支払いサイトを確認する。受領日から60日を超える支払いサイトを提示されたら、それは違法の可能性が高いです。

みっつ目、報酬減額や受領拒否を受けたら、公正取引委員会のフリーランス・トラブル110番(無料相談窓口)に相談する。匿名相談も可能です。

このページでは、こうした月額固定報酬の業務委託契約の違法性・適法性や、適法な月額固定報酬の設定のしかたについて、開業22年・400社以上の取引実績がある行政書士が、わかりやすく解説していきます。

法律の詳しい解釈で迷ったときは、必ず弁護士または行政書士に相談してください。インターネット上の情報だけで自己判断すると、大きな損失につながることがあります。

月額固定契約の源泉徴収とインボイス対応

月額固定契約で見落としがちなのが、源泉徴収とインボイス制度の対応です。これも事務面で本当によく相談を受けるテーマです。

源泉徴収が必要なケース

業務委託で源泉徴収が必要になるのは、所得税法204条1項に定められた特定の報酬です。代表的なものは次の通りです。

報酬の種類 源泉徴収税率
原稿料・講演料・デザイン料 10.21%(100万円超部分は20.42%)
弁護士・税理士・行政書士等への報酬 10.21%(100万円超部分は20.42%)
司法書士・土地家屋調査士への報酬 1回支払金額から1万円控除後の10.21%
プロボクサー・モデル等への報酬 10.21%(100万円超部分は20.42%)

つまり、Webデザイン・記事執筆・イラスト制作・コンサルティング(士業ではないもの)などは源泉徴収の対象ですが、SNS運用代行・Web広告運用代行・システム開発・データ入力などは原則として源泉徴収の対象外です。

月20万円のWebデザイン契約の場合、源泉徴収2万420円が差し引かれて、振込額は17万9,580円になります。これは確定申告時に税額控除されるので、損するわけではありません。

詳しい源泉徴収の取扱いについては、国税庁(https://www.nta.go.jp/)の公式サイトで確認できます。

インボイス制度への対応

2023年10月から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)の影響も避けて通れません。月額固定契約においては、受託者側がインボイス登録事業者かどうかで、発注者の消費税負担が変わります。

例えば月20万円契約の場合、税抜20万円・消費税2万円で合計22万円を請求するのが一般的ですが、受託者がインボイス未登録の場合、発注者は仕入税額控除ができなくなります(2029年9月までは段階的経過措置あり)。

実務的な選択肢は3つ。インボイス登録して課税事業者になる、インボイス未登録のままで消費税分の値引きを受け入れる、インボイス未登録のままで消費税相当額を含めて請求し発注者と交渉する、です。

どれを選ぶかは年商や事業計画によりますが、月20万円×12ヶ月=240万円の年商で、他に副業収入や本業収入があれば、インボイス登録した方が長期的に有利なケースが多いです。判断に迷ったら税理士に相談してください。

なお、フリーランスの確定申告ではfreeeマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトを使うのが一般的です。月額契約の場合、毎月同じ仕訳を入力することになるので、自動化メリットが大きいです。

月額固定契約でよくあるトラブルと対処法

私の事務所で実際に相談を受けるトラブル事例を、匿名化して紹介します。月額固定契約を結ぶ際の参考にしてください。

ケース1:業務範囲がジワジワ広がる

Webデザイナーさんからの相談でした。「月20万円でLP制作とバナー制作の業務委託契約を結んだのに、半年経ったら、Web広告の運用、SNS投稿の制作、社内資料のデザインまで頼まれるようになった。報酬は変わらないまま」というケースです。

これ、本当に多い。月額固定契約の最大の落とし穴です。対処法は、契約書に「業務範囲外の追加依頼は別途見積もりとする」と明記しておくこと、そして「含まれないもの」リストを契約書に書いておくことです。

すでに業務が広がってしまっている場合は、契約更新のタイミングで「業務範囲が変わったので報酬を見直したい」と提案します。クライアントが応じない場合は、契約を見直す(中途解約する)覚悟も必要です。

ケース2:成果物を受領拒否される

Webライターさんからの相談でした。「月10本記事の業務委託契約で、5本目までは普通に受領されたのに、6本目から『品質が低い』と言って受領拒否され、報酬を払ってもらえない」というケースです。

これ、フリーランス保護新法で明確に禁止されている行為です。発注者は、契約した業務の成果物を、正当な理由なく受領拒否してはいけません。「品質が低い」という主観的な理由は、原則として正当な理由になりません。

対処法は、まず受領拒否の理由を書面で求めることです。そして、契約書に「品質基準」「修正回数」「修正の範囲」を明記しておくことです。それでも解決しない場合は、公正取引委員会のフリーランス・トラブル110番に相談してください。

ケース3:突然の契約解除

エンジニアさんからの相談でした。「月50万円で半年契約を結んでいたのに、3ヶ月目で『プロジェクトの方針変更で不要になった』と言われ、突然契約解除された」というケースです。

このケース、契約書に中途解約条項があるかどうかが争点です。「両当事者は1ヶ月前の書面通知により、いつでも本契約を解約できる」という条項があれば、発注者の解約は適法です。ただし、6ヶ月以上の継続契約の場合、フリーランス保護新法で30日以上前の解除予告義務が課されているので、突然の解除は違法の可能性があります。

対処法は、契約期間中の解除予告期間を明記しておくこと、解除時の補償条項(残期間報酬の何割を支払うか)を契約書に入れておくことです。これがあるだけで、突然解除のリスクは大きく減ります。

ケース4:報酬の遅延

SNS運用代行のフリーランスからの相談でした。「毎月末締め翌月末払いの契約だったのに、3ヶ月目から支払いが2週間〜1ヶ月遅れるようになった」というケース。

これも、フリーランス保護新法で禁止されている行為です。発注者は、契約で定めた支払期日までに必ず報酬を支払う義務があります。

対処法は、まず請求書を送って支払いを督促することです。それでも支払いがない場合は、内容証明郵便で督促状を送ります。最終的には、少額訴訟や支払督促といった法的手段に進むことも検討します。継続的に遅延が発生する取引先は、リスクを考えて契約を打ち切る判断も必要です。

ケース5:偽装フリーランス化

これは私自身が独立直後に近い経験をしました。あるクライアントから「月額固定でうちの仕事だけお願いしたい。週5日、9時から18時、オフィスに来てくれれば月35万円出す」と提案されたことがあります。条件は悪くなかったのですが、これは典型的な偽装フリーランスのパターンです。

時間と場所を完全に拘束され、他社の仕事もできず、業務内容も発注者の指示通り。これは契約書のタイトルが何であろうと、実態は雇用契約です。私はその場で「業務委託としてはお受けできない。雇用契約として社員になるか、勤務形態を業務委託らしく見直すかのどちらかにしてほしい」とお伝えしました。

結局その案件は別の方が受けることになりましたが、後で聞いた話では、その会社は数年後に労働基準監督署の調査で偽装フリーランスを指摘され、社会保険料を遡って徴収されたそうです。発注者側にとっても、月額固定の業務委託は実態が雇用にならないように設計することが重要なんです。

エンジニア系(システム開発・保守・運用)の月額固定案件は、専業フリーランスの主力契約として根強い人気があります。月40〜80万円のレンジが最多帯で、フルリモート対応の案件も増えています。詳しい単価動向はソフトウェア作成者の年収・単価相場を参照してください。

Web制作・デザイン系は、月額固定と成果報酬の併用型が多いです。月10〜30万円の月額固定(保守運用ベース)に、追加のWebサイト制作や改修案件を都度上乗せする形が一般的です。

ライティング・編集系では、月額固定よりも成果報酬(記事1本いくら)の方が多いですが、メディア運営の編集長ポジションでは月額固定契約も増えています。著述家,記者,編集者の年収・単価相場で職種別の単価分布を確認できます。

SNS運用・広告運用・マーケティング系は、月額固定が主流です。月15〜50万円のレンジが多く、運用するアカウント数や広告予算の規模に応じて報酬が変動します。

バックオフィス代行・カスタマーサポートは、稼働時間ベースで月10〜25万円の月額固定が多いです。在宅で完結する案件が多く、特に主婦層の人気が高いカテゴリーです。在宅ワークについては在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開や、在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニック在宅ワークの求人の探し方5選|初心者でも安心な方法と注意点を徹底解説も参考にしてみてください。

スキルアップを目指したい方には、関連する資格取得もおすすめです。例えばWeb系の業務委託ではCCNA(シスコ技術者認定)などのインフラ系資格、バックオフィス系ではビジネス文書検定などの実務系資格が、月額契約の単価アップにつながる傾向があります。

月額固定の業務委託契約は、フリーランスにとって安定収入を確保する強力な手段である一方、設計を間違えると偽装フリーランス化や買いたたき被害のリスクもあります。本記事で解説した「業務範囲の明確化」「上限稼働時間の設定」「フリーランス保護新法の理解」を踏まえて、自分を守りながら長く続けられる契約を結んでいきましょう。法律はあなたの味方です。仕組みを正しく使えば、安心して仕事に集中できる環境を作れます。

よくある質問

Q. 毎回の案件ごとに契約書が必要?

はい、案件ごとに内容が異なるため、個別契約を交わすのが基本です。ただし、継続的な関係の場合は「基本契約書」+「個別注文書」の形式にすることで、事務作業を大幅に短縮できます。

Q. 印紙代は誰が払うの?

一般的に、電子契約であれば印紙は不要です。書面契約の場合でも、甲乙折半とするのが一般的ですが、発注者が全額負担するケースも多々あります。契約書に記載しておけば安心です。

Q. 副業でやっている場合でも、この法律の対象になりますか?

対象になります。 本業か副業かは関係ありません。「従業員を雇わずに業務を請け負う個人」であれば、すべて特定受託事業者として守られます。会社員が週末にライティングやデザインを請け負う場合も、立派なフリーランスです。

Q. 自分が下請法とフリーランス新法のどちらの対象になるか、どうやって見分ければいいですか?

主な判断基準は「発注者の資本金」と「業務内容」です。下請法は発注者の資本金が1000万円超で、かつ物品の製造や情報成果物の作成などが対象になります。一方、フリーランス新法は発注者が従業員を使用していれば資本金要件はなく、すべての業務委託が対象となるため、より幅広いフリーランスが保護されます。記事内の「判定フロー」を活用して自分の状況を確認しましょう。

Q. 契約書がないまま仕事を受けてしまいました。今からでも間に合いますか?

間に合います。メールやチャットで「改めて取引条件の確認をさせてください」と送り、業務内容、報酬、支払期日の3点が含まれる回答をもらってください。これが「明示義務」の証拠になります。

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長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津

行政書士・元企業法務

企業法務で年間200件以上のフリーランス契約を処理した経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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