個人に外注するときの契約書の作り方|トラブルを避ける最低限の取り決め 2026

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
個人に外注するときの契約書の作り方|トラブルを避ける最低限の取り決め 2026

この記事のポイント

  • 個人(フリーランス・個人事業主)に業務を外注するとき
  • 契約書に何を書けばトラブルを防げるのかを発注者目線で解説
  • 業務範囲・報酬・納期・著作権・秘密保持など最低限の記載項目

結論から言います。個人に仕事を外注するなら、契約書は「あった方がいい」ではなく「無いと危ない」ものです。金額の大小に関わらず、業務範囲・報酬・納期・成果物の権利、この4つだけでも書面で取り決めておくと、後々のトラブルの大半は防げます。逆に、口約束やチャットのやり取りだけで進めてしまうと、「言った・言わない」の泥沼にはまり、支払いや納品を巡って余計な時間とストレスを消耗することになります。

この記事は、SNS運用・経理事務・広告運用・ライティング・デザインなどの業務を、フリーランスや個人事業主に外注しようとしている発注者側の方に向けて書いています。「契約書なんて大げさでは」と思っている方こそ読んでほしい内容です。何をどこまで書けばいいのか、収入印紙は要るのか、仲介会社を通すのと直接契約でどう違うのか。発注者が意思決定できる粒度で、順を追って整理していきます。

個人への外注が当たり前になった時代の「契約書」という盲点

まず市場の話から。フリーランスや副業で働く人は年々増えており、内閣官房が2020年に公表した調査ではフリーランスとして働く人はおよそ462万人と推計されました。その後もこの流れは加速しており、企業だけでなく個人事業主や小規模事業者が「一部の業務を外部の個人に任せる」という選択肢は、もはや特別なことではなくなっています。

背景にあるのは、ツールとプラットフォームの進化です。クラウドソーシングやスキルシェアのサービスが普及したことで、以前なら制作会社や代理店に頼むしかなかった作業を、個人のフリーランスへ直接お願いできるようになりました。SNS投稿の代行なら月3万円前後から、簡単なバナー1枚なら3,000円〜といった具合に、細かい単位で発注できるのも個人外注の魅力です。

ところが、この「気軽さ」が落とし穴になります。金額が小さく、やり取りもチャットで完結するため、契約書を交わさないまま仕事が始まってしまうケースが非常に多いのです。正直なところ、これはどうかと思います。金額が小さいからこそ、揉めたときに弁護士を立てるコストが割に合わず、泣き寝入りになりやすい。小さな取引ほど、実は書面での取り決めが自分を守ってくれます。

そもそも個人への外注で結ぶのは「業務委託契約」

個人に仕事を外注するとき、その多くは法的には「業務委託契約」に分類されます。業務委託契約とは何かについて、まず基本を押さえておきましょう。

業務委託契約書とは、企業が個人事業主やフリーランスに仕事を委託する際に、業務の内容や報酬、責任範囲などを明確にするために作成する契約書のことです。 出典: yayoi-kk.co.jp

ポイントは「業務委託」という言葉が民法上の正式な契約類型ではない、という点です。実務で「業務委託契約」と呼んでいるものは、民法上は「請負契約」か「委任・準委任契約」のどちらか(またはその組み合わせ)にあたります。この違いを理解しておくと、契約書に何を書くべきかが見えてきます。

請負契約は「成果物の完成」に対して報酬を払う契約です。ロゴ制作、記事執筆、システム開発など、「これを作って納品してもらう」タイプの仕事が該当します。一方、準委任契約は「業務の遂行そのもの」に対して報酬を払う契約です。SNSアカウントの運用代行、経理事務の継続サポート、コンサルティングなど、「成果物というより作業や役務を継続してお願いする」タイプが該当します。

なぜこの区別が大事かというと、責任の重さが変わるからです。請負では受託者が「完成責任」を負い、成果物に欠陥があれば契約不適合責任を問えます。準委任では受託者は「善良な管理者の注意義務(善管注意義務)」を果たせばよく、必ずしも特定の成果を保証するわけではありません。契約書を作るときは、自分が頼みたい仕事がどちらのタイプなのかを最初に見極めることが、記載項目を決める出発点になります。

発注者・受託者どちらにとっても契約書は「守り」の道具

契約書というと「相手を縛るもの」というイメージを持つ方がいますが、それは半分しか正しくありません。契約書は発注者と受託者の双方を守るための道具です。

無用なトラブルを防ぐためには、委託する企業側も受託する個人事業主やフリーランスの方も、業務委託契約書について正しく理解しておくことが大切です。 出典: yayoi-kk.co.jp

発注者からすれば、「頼んだものと違うものが上がってきた」「途中で音信不通になった」「著作権を主張されて自由に使えない」といったリスクを契約書で予防できます。受託者からすれば、「作業したのに払ってもらえない」「聞いていない追加作業を無償で押し付けられた」といったリスクを防げます。つまり契約書は、両者が安心して仕事を進めるための共通のルールブックなのです。

契約書を出すと相手に警戒されるのではないか、と心配する発注者もいますが、実務ではむしろ逆です。きちんとした契約書を用意する発注者は「信頼できる相手」と受け止められ、優秀なフリーランスほど契約の明確さを重視します。曖昧な条件で仕事を始めたがる相手の方が、後で揉める確率が高い。これは20年この市場を見てきた立場から言っても、はっきりした傾向です。

個人への外注契約書に必ず入れるべき記載項目

ここからが本題です。個人に外注するときの契約書に、最低限これは書いておくべき、という項目を発注者目線で整理します。難しく考える必要はありません。以下の項目を埋めていけば、大きなトラブルはほぼ防げます。

業務の内容と範囲を「できるだけ具体的に」書く

契約書のトラブルで最も多いのが、この「業務範囲」の曖昧さです。「SNS運用」とだけ書いてあると、投稿作成だけを想定していた発注者と、コメント返信や分析レポートまで含むと思っていた受託者の間で認識がずれます。

だから、業務内容はできる限り具体的に書きます。たとえばSNS運用なら「Instagramへの投稿画像作成 月12本、投稿文の作成、ハッシュタグ選定を含む。コメント返信・DM対応・広告運用は含まない」というレベルまで落とし込みます。含むものだけでなく「含まないもの」を明記するのがコツです。範囲外の作業を頼みたくなったら、別途料金を相談する、という前提を最初に共有しておけば、追加作業を巡るトラブルはほぼ起きません。

正直なところ、この一手間を惜しんで後で揉めるケースを何度も見てきました。業務範囲の記述に時間をかけるほど、契約後のストレスは減ります。

報酬額・支払条件・支払期日を明確にする

報酬まわりは、金額そのものより「いつ・どうやって・どこまで含めて払うのか」で揉めます。書いておくべきは次の要素です。

報酬の金額と、それが税込か税抜か。継続業務なら月額か時給か、成果物単位ならいくらか。支払方法(銀行振込など)と振込手数料をどちらが負担するか。支払期日(納品後○日以内、または月末締め翌月末払いなど)。源泉徴収の有無。原稿料やデザイン料など一定の報酬には源泉徴収が必要になる場合があり、これを見落とすと後で金額の食い違いが生じます。

金額の相場感も持っておくと交渉しやすくなります。たとえばWebライティングは1文字1円5円程度、バナーデザインは1点3,000円1万円、経理事務の代行は月2万円5万円あたりが目安です。もちろんスキルや業務量で大きく変わりますが、極端に安い見積もりには品質面の理由があることが多い、という点は頭に入れておきましょう。編集者・記者・ライターといった職種の報酬水準を知りたい場合は著述家,記者,編集者の年収・単価相場が参考になります。個別の指導や教育系の業務を頼むなら個人教師の年収・単価相場も相場の目安になります。

納期・納品方法・検収の基準

請負タイプ(成果物を作ってもらう)の外注では、納期と検収のルールが特に重要です。

納期は「○月○日まで」と具体的な日付で書きます。「なるべく早く」「お手すきで」は禁物です。納品方法(メール添付、クラウドストレージ、指定ツールへのアップロードなど)も指定します。そして意外と抜けがちなのが「検収」の基準です。検収とは、納品物が契約どおりかを発注者が確認して受け入れる工程のこと。「納品後○営業日以内に検収し、期間内に指摘がなければ検収完了とみなす」といった一文を入れておくと、いつまでも修正依頼が続く事態を防げます。

修正回数のルールも決めておくと安心です。「初稿提出後、修正は○回まで無償、それ以降は別途料金」と定めておけば、際限のない修正のやり取りで受託者が疲弊し、関係が悪化するのを避けられます。発注者にとっても、追加費用の発生条件が明確になるメリットがあります。

成果物の権利・著作権の帰属

これは発注者が特に注意すべき項目です。デザイン、イラスト、記事、動画、プログラムなど、成果物には著作権が発生します。そして著作権は、何も取り決めなければ「作った人(受託者)」に帰属します。

つまり、契約書に何も書かなければ、お金を払って作ってもらったロゴでも、受託者の許可なく改変したり別の用途に使ったりできない、という事態が起こりえます。これを防ぐには「本業務によって生じた成果物の著作権(著作権法第27条・第28条の権利を含む)は、報酬の支払いをもって発注者に譲渡する」といった条項を入れます。第27条・第28条まで明記するのは、これらの権利は「譲渡する」と書いただけでは移転せず、個別に明示しないと受託者に留保されるためです。細かいようですが、後で成果物を自由に使いたいなら必須のポイントです。

また、著作者人格権(作品を勝手に改変されない権利など)は譲渡できないため、「著作者人格権を行使しない」という不行使特約を入れておくのが実務の定石です。ここまで書いておけば、納品物を安心して二次利用できます。契約書や各種ビジネス文書の作成そのものを個人に外注したい場合は、契約書・資料・企画書作成のお仕事ビジネス文書・契約書作成のお仕事で対応できる人を探せます。

秘密保持(NDA)の取り決め

外注する際、受託者には自社の内部情報が渡ります。顧客リスト、売上データ、未公開の企画、SNSアカウントのログイン情報などです。これらが外部に漏れると大きな損害になりかねません。

そこで秘密保持(NDA)の条項を入れます。「業務上知り得た情報を第三者に開示・漏洩しない」「業務終了後も一定期間は守秘義務を負う」「業務終了時にデータを返却または破棄する」といった内容です。契約書本体に秘密保持条項を盛り込む方法と、別途NDA(秘密保持契約書)を単独で締結する方法があります。特に機微な情報を扱う業務では、業務委託契約に先立ってNDAだけ先に結ぶこともあります。

SNSアカウントの運用代行のようにログイン情報を渡す場合は、「業務終了時にパスワードを変更する」「アクセス権限を速やかに削除する」といった運用面のルールも合わせて決めておくと安全です。

契約期間・中途解約・再委託の可否

継続的な業務では、契約期間と解約のルールが必要です。「契約期間は○ヶ月、自動更新の有無、更新しない場合は○日前までに通知」といった形で定めます。中途解約についても「○日前に書面で通知すれば解約できる」と決めておけば、どちらかが続けられなくなったときにスムーズに関係を終えられます。

再委託の可否も明記しておきましょう。再委託とは、受託者がさらに別の人へ仕事を回すこと。品質管理や秘密保持の観点から「発注者の事前の書面による承諾なく再委託してはならない」と定めるのが一般的です。誰が実際に作業しているのか分からない状態を避けられます。

損害賠償・反社会的勢力の排除・準拠法

トラブル時の備えとして、損害賠償の条項も入れておきます。「受託者の故意または過失により発注者に損害が生じた場合、その賠償責任を負う」といった内容です。ただし個人相手では賠償能力に限界があるため、賠償額の上限を「報酬額を上限とする」などと定めることも実務ではよく行われます。

このほか、反社会的勢力の排除条項(暴力団等でないことを相互に表明する条項)、契約に関する紛争が起きた場合にどの裁判所で解決するかを定める合意管轄、準拠法(日本法とする旨)なども、テンプレートには標準で含まれています。個人への少額外注でここまで厳密にする必要は必ずしもありませんが、金額が大きい取引や長期契約では入れておくと安心です。

収入印紙は必要?個人外注の契約書で見落としがちな税務

契約書を紙で作るとき、「収入印紙を貼らないといけないのか」は多くの発注者が迷うポイントです。結論を先に言うと、契約の種類によって必要な場合と不要な場合があります。

請負契約に該当する業務委託契約書は、印紙税法上の「第2号文書(請負に関する契約書)」にあたり、記載金額に応じた収入印紙が必要です。契約金額が1万円未満なら非課税、1万円以上100万円以下なら200円、といった具合に金額が上がるほど印紙税額も上がります。一方、準委任契約(役務の提供のみで成果物の完成を目的としないもの)に該当する契約書は、原則として課税文書にあたらず収入印紙は不要です。

ここで一つ、実務的に大きなポイントがあります。契約書を紙ではなく電子契約(PDFに電子署名する形式など)で締結すれば、印紙税はかかりません。印紙税は「紙の文書」に課される税金であり、電子データには課税されないためです。継続的に外注を行うなら、電子契約サービスを導入した方が印紙代も郵送の手間も省けて合理的です。税務や契約手続きの詳しい扱いについては国税庁の情報も確認しておくと確実です。

報酬の源泉徴収と確定申告の扱い

税務面でもう一つ押さえておきたいのが、源泉徴収です。発注者が法人、または従業員を雇用している個人事業主の場合、原稿料・デザイン料・講演料など一定の報酬を個人に支払う際には、源泉徴収を行って国に納める義務があります。逆に、従業員を雇っていない個人事業主が発注する場合は、源泉徴収の義務がないケースが多いです。

支払う側の立場では、この源泉徴収を見落とすと「支払額の計算が合わない」「後で税務署から指摘される」といった問題につながります。契約書の報酬条項に「源泉徴収税額を控除して支払う」と明記しておけば、受託者との認識のずれも防げます。

受託者側の話も少しだけ触れておくと、業務委託で得た報酬は受託者の事業所得または雑所得となり、原則として確定申告が必要です。これは発注者が直接関与する話ではありませんが、支払調書の発行を求められることがあるので、頭の片隅に入れておくとやり取りがスムーズになります。

契約書を作らないと何が起きるか|発注者が直面する具体的リスク

「契約書なんてなくても、これまで問題なかった」という発注者もいるでしょう。運が良かっただけかもしれません。契約書を作らずに個人へ外注した場合に、発注者側が直面しうるトラブルを具体的に挙げます。

まず、成果物の品質を巡るトラブルです。業務範囲や品質基準が曖昧だと、「頼んだイメージと違う」となっても、契約上どこまで求められるかの根拠がありません。修正を依頼しても「それは契約外の追加作業です」と言われれば反論しにくい。逆に、際限なく修正を求めてしまい受託者との関係が壊れることもあります。

次に、納期の遅延や途中放棄です。納期の定めがなければ、いつまでに仕上げてもらえるのか法的に主張しにくくなります。「急ぎでお願いしたはずなのに一向に上がってこない」という状況で、契約書に納期が書かれていなければ、催促する以外に打つ手がありません。

そして、著作権を巡る問題です。前述のとおり、権利帰属を定めなければ成果物の著作権は受託者に残ります。納品されたデザインを別の媒体で使おうとしたら「その用途は聞いていない、別料金だ」と言われた、というのは実際によくある話です。

個人的な失敗談|安さで選んで品質で苦労した話

私自身、初めて外注を任されたときに痛い目を見たことがあります。あるメディアのバナー制作を個人のデザイナーに頼んだのですが、複数の見積もりを比べて、いちばん安い相手を選びました。1点2,000円という破格の価格に飛びついたわけです。

結果は散々でした。契約書を交わさず、口頭で「バナーを何点かお願いします」とだけ伝えていたため、修正回数の取り決めもなく、初稿の品質もイメージとかけ離れていました。修正を頼むたびに「これ以上は追加料金です」と言われ、結局は当初想定の倍近い費用がかかった上、納期も大幅に遅れました。安物買いの銭失いとは、まさにこのことです。

このとき学んだのは、「見積もりの金額だけで選ばないこと」と「どんなに小さな取引でも業務範囲と修正ルールは書面で決めること」の2つでした。次の案件からは、業務範囲・修正回数・納期・報酬をA4一枚のシンプルな契約書にまとめて渡すようにしたところ、トラブルは激減しました。契約書は相手を縛るためではなく、お互いの前提をそろえるためにあるのだと、身をもって理解した経験です。

「偽装請負」と見なされないための注意点

もう一つ、発注者が知っておくべきリスクが「偽装請負」です。これは、契約上は業務委託(請負・準委任)としながら、実態は労働者を雇っているのと変わらない働かせ方をしている状態を指します。

具体的には、外注先の個人に対して「毎日決まった時間に始業・終業させる」「作業手順を細かく指揮命令する」「勤怠を管理する」といった、雇用に近い関係を作ってしまうと、偽装請負と判断されるおそれがあります。偽装請負は労働者派遣法や職業安定法に抵触する可能性があり、発注者側が是正指導を受けるリスクがあります。

これを避けるには、業務委託の相手は「独立した事業者」であることを前提に、作業の進め方や時間配分は受託者の裁量に委ねる、という関係を保つことです。契約書でも「受託者は自己の裁量で業務を遂行する」「発注者は具体的な業務遂行方法を指揮命令しない」といった趣旨を明確にしておくと安全です。フリーランス保護の観点からは、2024年に成立したフリーランス・事業者間取引適正化等法(いわゆるフリーランス新法)にも留意が必要で、書面等による取引条件の明示が発注者に義務づけられています。詳しくは公正取引委員会厚生労働省の解説を確認しておくとよいでしょう。

契約書の作り方|テンプレートを自分の案件用に仕立てる手順

ゼロから契約書を書くのは大変ですが、実際にはその必要はありません。テンプレート(ひな型)をベースに、自分の案件に合わせて書き換えるのが現実的です。手順を整理します。

まずは自分の外注が「請負」か「準委任」かを判定する

前述のとおり、成果物の完成が目的なら請負、業務の遂行が目的なら準委任です。これによって、検収条項や契約不適合責任の書き方、収入印紙の要否が変わります。テンプレートを選ぶときも「請負型」「準委任型」で分かれていることが多いので、まず自分の案件のタイプを判定しましょう。

たとえば「ロゴを1点作ってもらう」なら請負、「毎月SNSを運用してもらう」なら準委任です。両方が混ざる契約(制作+運用保守など)もあり、その場合は両方の要素を盛り込みます。判断に迷ったら、「特定の完成物を納めてもらうか」を基準に考えると分かりやすいです。

テンプレートを入手し、自分の案件情報で埋める

業務委託契約書のテンプレートは、法律事務所や会計ソフト会社、行政関連のサイトなどが無料で公開しています。信頼できる提供元のものを使いましょう。テンプレートを入手したら、以下の順で自分の情報に置き換えていきます。

契約当事者(発注者・受託者の氏名または名称、住所)。業務の内容と範囲。報酬額と支払条件。納期・検収。成果物の権利帰属。秘密保持。契約期間・解約。この順で埋めていけば、抜け漏れが起きにくくなります。テンプレートに含まれる条項で自分の案件に不要なものは削り、足りない要素は追記します。丸ごとコピーして使うのではなく、「自分の案件用」に仕立て直すことが大切です。

契約書に関するトラブル事例やより詳しいテンプレートの探し方

外注契約で実際にどんなトラブルが起きるのか、その防止策を事前に知っておくと、契約書に盛り込むべき条項が具体的に見えてきます。よくあるトラブルの型と対策をまとめた外注先とのトラブル事例と防止策|契約書のポイント【2026年版】は、契約書作成前に一読しておく価値があります。また、実際に使える契約書のひな型を探しているなら、必須項目と注意点を解説した外注の契約書テンプレート無料ダウンロード|必須項目と注意点【2026年版】が参考になります。

契約書作成のスキルそのものを持つ人に依頼したい、あるいはAIツールやマーケティング関連の専門業務を外注したい場合は、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事で該当分野の人材を探せます。ビジネス文書の作成能力を客観的に測る指標としてはビジネス文書検定のような資格の有無を、IT系の業務ならCCNA(シスコ技術者認定)のような技術資格を、選定の参考にする方法もあります。

契約書の保管・電子化について

締結した契約書は、適切に保管する義務があります。契約書は取引に関する重要書類であり、税務上も一定期間の保存が求められます。法人なら原則7年間、個人事業主でも帳簿書類として保存が必要です。

紙で保管する場合は原本を紛失しないよう管理し、電子契約の場合は電子帳簿保存法の要件に沿って保存します。継続的に複数の個人へ外注するなら、契約書を電子化して一元管理する方が、検索性も保管効率も高まります。前述のとおり電子契約なら印紙税もかからないため、外注件数が増えるほど電子化のメリットは大きくなります。

仲介会社を通すか、個人に直接依頼するか|コスト構造の違い

個人に仕事を頼むルートには、大きく分けて2つあります。一つは代理店や制作会社、あるいは仲介手数料をとるプラットフォームを経由する方法。もう一つは、フリーランスに直接依頼する方法です。ここには無視できないコスト差があります。

代理店や仲介を通すと、当然ながら中間マージンが上乗せされます。たとえば制作会社にSNS運用を頼むと、実際に手を動かすのは外部のフリーランスでも、会社の管理費や利益が乗るため、直接依頼の1.5倍から2倍程度の費用になることも珍しくありません。クラウドソーシングのプラットフォームでも、システム利用料として発注額の一定割合が手数料として差し引かれる仕組みが一般的です。

一方、フリーランスへ直接依頼すれば、この中間マージンがまるごと不要になります。同じ予算なら、直接依頼の方がより多くの業務を頼めますし、受け手のフリーランスにとっても手取りが厚くなる。手数料0%の直接取引は、発注者と受託者の双方が得をする構造です。もちろん、直接依頼には「自分で相手を探し、契約や進行管理を自分でやる」という手間がかかります。仲介の手数料は、その手間を肩代わりしてもらう対価とも言えます。

だからこそ、この記事で解説してきた「契約書の知識」が効いてきます。契約書さえ自分で用意できれば、仲介に頼らずとも直接取引を安全に進められます。中間マージンを払わずに済む分、浮いた予算を報酬に回して優秀な人に頼む、という選択もできます。業務委託でフリーランスへ直接依頼できる個人教師の年収・単価相場のような相場データを押さえつつ、契約書で取引条件を明確にする。これが、コストを抑えながらトラブルも防ぐ、発注者にとって最も合理的なやり方です。

運営者の視点|長く付き合える外注先は「契約の明確さ」から生まれる

フリーランス・在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から、契約書について感じていることを述べておきます。

外注がうまくいっている発注者ほど、契約や条件の取り決めを丁寧にやっています。これは意外に思われるかもしれません。「良い関係なら細かい契約は要らないのでは」と考えがちですが、実際は逆です。最初に業務範囲・報酬・納期・権利をきちんと決めた相手とこそ、長く安定した関係が続きます。曖昧なまま始めた関係は、些細な認識のずれが積み重なって、いつか壊れる。運営者として見てきた限りでは、この傾向はかなりはっきりしています。

もう一つ、直接取引の話を実感として付け加えます。中間マージンが乗らない直接取引では、同じ予算で発注者はより多くを頼め、受け手はより多く受け取れます。この「双方が得をする」構造は、単に金額が安くなるという話にとどまりません。手取りが厚くなった受け手は、その仕事を大切にし、丁寧に応えてくれる。結果として品質が上がり、また頼みたくなる。この好循環が、長く続く外注関係の正体です。長く続く人ほど、単発の作業をこなすのではなく、「この人に任せると楽だ」と発注者に思わせる関係づくりに時間を使っています。契約書は、その信頼関係の土台を最初に固めるための、いちばん確実な道具なのです。

契約書というと堅苦しく感じるかもしれませんが、本質は「お互いの前提をそろえること」に尽きます。個人への外注が当たり前になった今だからこそ、金額の大小に関わらず、最低限の取り決めを書面にする習慣を持つこと。それが、無用なトラブルを避け、良い外注先と長く付き合っていくための、いちばんの近道です。

よくある質問

Q. 個人への外注で契約書は必ず必要ですか?

法律上、契約書がなくても口頭で契約は成立します。ただし業務範囲・報酬・納期・著作権の認識ずれによるトラブルは書面がないと防げません。金額が小さくても、最低限これら4項目を書面化しておくことを強くおすすめします。契約書は発注者・受託者の双方を守る道具です。

Q. 個人外注の契約書に収入印紙は必要ですか?

成果物の完成を目的とする請負契約の契約書は印紙税の課税対象で、契約金額に応じた収入印紙が必要です。一方、役務提供のみの準委任契約は原則不要です。また、電子契約で締結すれば紙の文書ではないため、いずれの場合も印紙税はかかりません。

Q. 仲介会社を通すのと個人に直接依頼するのはどちらが安いですか?

一般に直接依頼の方が安くなります。代理店や制作会社を通すと管理費や利益が上乗せされ、直接依頼の1.5〜2倍になることもあります。プラットフォームでも手数料が発生します。契約書を自分で用意できれば、中間マージンなしの直接取引を安全に進められます。

Q. 業務委託契約で気をつけるべき法的リスクは何ですか?

最も注意すべきは「偽装請負」です。外注先を細かく指揮命令したり勤怠管理したりすると、実態が雇用と見なされ法的リスクが生じます。契約では受託者の裁量を尊重する旨を明記しましょう。加えてフリーランス新法により、発注者には取引条件を書面等で明示する義務があります。

朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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