個人事業主のNISA(新NISA)活用ガイド|節税しながら資産形成する3つのポイント【2026年版】


この記事のポイント
- ✓個人事業主として独立すると
- ✓自由と引き換えに「退職金がない」「年金が少ない」という現実に直面します
- ✓会社員時代には意識しなかった老後資金やリスクへの備えを
個人事業主として独立すると、自由と引き換えに「退職金がない」「年金が少ない」という現実に直面します。会社員時代には意識しなかった老後資金やリスクへの備えを、すべて自分一人で設計しなければなりません。そこで注目されているのがNISA(少額投資非課税制度)ですが、事業所得を持つ私たちがどのように活用すべきか、その最適解は意外と知られていないのが実情です。
本記事では、フリーランスエンジニアとして活動する私、前田が実務経験を交えながら、個人事業主に特化したNISAの活用術を詳しく解説します。
2026年の個人事業主を取り巻く資産形成とNISAの現状
2024年に始まった新NISA制度は、2026年現在、個人事業主の間でも完全に資産形成の主役としての地位を確立しました。従来の制度に比べて非課税保有期間が無期限化され、年間投資枠が最大360万円まで拡大されたことで、収入の波が激しいフリーランスにとっても使い勝手の良い制度となっています。
以前は「まずはiDeCo(個人型確定拠出年金)」という考え方が一般的でしたが、現在は「NISAの流動性」を重視する声が増えています。個人事業主は事業の急な資金需要や、機材の買い替えなどでまとまった現金が必要になるケースがあるため、原則60歳まで引き出しができないiDeCoよりも、いつでも売却・出金ができるNISAの方がリスクヘッジとして機能しやすいからです。
実際に、最近のフリーランスコミュニティや税理士との対話の中でも、NISAをメイン口座として、余剰資金を効率的に運用するスタイルが標準化しています。特にデジタル化が進む昨今、スマホ一つで積立設定や運用状況の確認ができる利便性は、多忙な個人事業主にとって大きなメリットと言えるでしょう。
個人事業主がNISAを利用する最大のメリットと非課税制度の仕組み
NISAを利用する最大の魅力は、なんといっても投資で得た利益に対して税金がかからない点に集約されます。通常、投資信託や株式を運用して利益が出た場合、その利益に対して20.315%の税金が課せられます。しかし、NISA口座内での運用であれば、この税金がすべて免除されるのです。
NISA(少額投資非課税制度)は、株式や投資信託といった金融商品から得られる利益にかかる税金を免除する制度です。通常、これらの運用益には20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の税率で課税されますが、NISA口座で運用した場合、その利益は非課税となります。たとえば、課税口座で10万円の利益が出ると約2万円の税金が差し引かれますが、NISA口座で同額の利益が出た場合、税金は発生せず、利益を全額受け取れます。 出典: biz.moneyforward.com
個人事業主にとって、この20.315%という数字は無視できないインパクトを持ちます。事業所得には所得税や住民税、さらには国民健康保険料などが重くのしかかりますが、NISAで得た利益は確定申告の対象外となるため、健康保険料の算定基準に含まれることもありません。これは、手取り額を最大化させたい私たちにとって、極めて合理的な選択肢となります。
また、新NISAでは生涯非課税限度額が1,800万円と非常に大きく設定されています。これをコツコツと埋めていくことで、将来的に「自分専用の退職金」を無税で構築することが可能になります。老後の公的年金に上乗せする形で、毎月5万円から10万円程度の分配金や取り崩し資金を得られるようになれば、個人事業主としての生活の安定感は飛躍的に高まるでしょう。
新NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の賢い使い分け
新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの枠があります。個人事業主がこの制度を最大限に活かすためには、自身の収入サイクルに合わせた使い分けが重要になります。
つみたて投資枠:事業収入の「基本給」から拠出する
つみたて投資枠は年間120万円まで投資可能です。ここには、毎月の安定した収入の中から無理のない範囲で、低コストな全世界株式や米国株式のインデックスファンドを積み立てるのが定石です。私は月額3万円からスタートしましたが、この「自動的に引き落とされる」仕組みが、ついつい浪費しがちなフリーランスの財布の紐を締めるのに役立ちました。
成長投資枠:スポット案件やボーナス的な収入を充てる
成長投資枠は年間240万円まで投資が可能です。個人事業主であれば、大型案件が完了した際や、予定より経費が浮いた時などの「余剰資金」を投入するのに適しています。インデックスファンドだけでなく、高配当株やETF(上場投資信託)を購入し、定期的なキャッシュフロー(配当金)を得る戦略も有効です。
特に配当金が得られる銘柄を成長投資枠で保有しておくと、事業の閑散期でも一定の現金が入ってくるため、精神的な支えになります。私の周りのエンジニア仲間でも、この成長投資枠を「事業のリスクヘッジ用」として活用し、特定の業界に依存しない資産ポートフォリオを組んでいる人が増えています。
投資枠の再利用を活かしたキャッシュフロー管理
新NISAの画期的な点は、売却した翌年以降にその枠が「復活」することです。個人事業主は数年に一度、PCの買い替えや事務所の移転などで100万円単位の現金が必要になることがあります。その際、NISA口座の一部を売却して資金を捻出し、また事業が好調になったら再び買い直すという、柔軟な資金運用が認められているのです。
iDeCoや小規模企業共済との決定的な違いと併用戦略
個人事業主の資産形成において、NISAとしばしば比較されるのがiDeCo(個人型確定拠出年金)と小規模企業共済です。これらは目的が似ているようで、その特性は大きく異なります。
iDeCoは、拠出した掛金が全額「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、確定申告で所得税・住民税が軽減されます。個人事業主は月額6.8万円(年間81.6万円)まで拠出可能で、節税額は所得に応じて数十万円に達することもあります。さらに、運用益も非課税で再投資が可能です。ただし、60歳まで原則引き出しができないため、途中で資金を使えない点が最大の制約となります。 出典: biz.moneyforward.com
この引用にある通り、iDeCoの最大の武器は「掛金の全額所得控除」です。NISAにはない「入る時の節税効果」が非常に強力です。しかし、致命的なのは60歳までのロック期間です。
ここで私の体験談をお話しします。独立2年目、節税に目が眩んだ私はiDeCoの掛金を上限の6.8万円に設定しました。ところが、その半年後にメインクライアントとの契約が終了し、一気にキャッシュフローが悪化したのです。手元に現金が残っておらず、iDeCoに入れたお金も引き出せない。結局、一時的に支払いを停止する手続きを余儀なくされましたが、あの時の焦りは今でも忘れられません。
この教訓から導き出した併用戦略は以下の通りです。
- まずはNISAを優先する: いつでも引き出せる「自由な貯金」として、まずはNISAで一定の資産を築く。
- iDeCoは所得税率が高い場合に検討する: 所得が安定し、所得税率が高い(例えば20%以上)状態になったら、節税目的でiDeCoを併用する。ただし、掛金は最低限から始める。
- 小規模企業共済は「貸付制度」として捉える: 小規模企業共済も全額控除ですが、こちらは「契約者貸付」という形で一時的に資金を借りる機能があります。事業継続のリスクを考えるなら、iDeCoよりもこちらを優先するのも一つの手です。
詳しくは、国税庁の所得控除に関するページなどで最新の控除額を確認し、自身の所得レベルに合わせたシミュレーションを行うことを強くおすすめします。
個人事業主特有の注意点:経費にはならないが確定申告はどうなる?
NISAに関して個人事業主が最も誤解しやすいのが、「投資資金を事業の経費にできるか」という点です。結論から申し上げますと、NISAへの投資金は絶対に経費にはなりません。
これはNISAが「事業のための支出」ではなく、あくまで「個人の資産移動」と見なされるためです。そのため、会計ソフトで仕訳を入力する際は、事業用口座から拠出したのであれば「事業主貸」として処理し、所得計算には一切含めないように注意が必要です。
また、確定申告についても以下のポイントを整理しておきましょう。
- NISA内での売却益・配当金: そもそも非課税であり、申告の必要はありません。
- NISAでの損失: 税務上の「損益通算」ができません。他の課税口座(特定口座や一般口座)で出た利益と相殺して税金を安くすることは不可能です。
さらに、個人事業主が注意すべきは「社会保険料」との兼ね合いです。
NISA口座で得た利益は非課税のため、通常、確定申告の必要がなく、その結果として翌年の国民健康保険料の算定根拠となる所得にも算入されません。一方、一般の課税口座で利益が出て「総合課税」を選択して申告した場合などは、所得が増えることで保険料が上がってしまうリスクがあります。 出典: biz.moneyforward.com
このように、NISAは単なる非課税メリットだけでなく、社会保険料の増大を防ぐという点でも個人事業主にとって極めて有利な設計となっています。制度の正しい理解は、厚生労働省の年金制度解説サイトなども参照しつつ、正確な知識を身につけることが大切です。
実践的なステップ:証券口座選びからポートフォリオの考え方まで
では、具体的にどのようにNISAを始めればよいのでしょうか。個人事業主としての生産性を落とさず、手間をかけずに運用するためのステップを紹介します。
1. 証券会社は「ネット証券一択」
銀行の窓口に行く時間は私たちにはありません。SBI証券や楽天証券などのネット証券を選びましょう。手数料が圧倒的に安く、専用アプリの操作性が高いため、仕事の合間にチェックするのも簡単です。特にクレジットカード積立を利用すれば、投資額の0.5%〜1.1%程度のポイントが還元されるため、実質的な利回りを底上げできます。
2. ポートフォリオは「世界分散」を基本にする
個人事業主は、自らのスキルという「特定の資産」に頼って生きています。そのため、投資の世界ではあえて特定の国や業界に偏らない「全世界株式(オルカン)」などのインデックスファンドを核にするのが賢明です。自分の専門分野(例えばIT業界)が不況になった時でも、世界経済全体が成長していれば資産が守られるという「分散の論理」を働かせましょう。
3. 無リスク資産(現金)とのバランスを死守する
これが最も重要です。NISAはあくまで「余剰資金」で行うものです。個人事業主の場合、生活費の6ヶ月分から1年分は現金(普通預金)として確保し、その上で残った資金をNISAに回すようにしてください。暴落時に「生活費のために泣く泣く安値で売却する」という事態だけは避けなければなりません。
まとめ
個人事業主にとって、退職金や年金の不足を補う資産形成は避けて通れない課題ですが、2026年現在の新NISAはその柔軟な制度設計から非常に強力な武器となります。iDeCoや小規模企業共済のような所得控除のメリットはありませんが、必要な時にいつでも引き出せる機動性は、収入の波がある事業所得者にとって大きな安心材料になるはずです。ネット証券を活用し、世界の成長に投資する分散ポートフォリオを基本としつつ、まずは自身のキャッシュフローに無理のない範囲で少額から積み立てを開始してみましょう。事業の継続性と将来の生活防衛を両立させるために、制度の仕組みを正しく理解し、今日から具体的なプランニングを始めてみてください。
よくある質問
Q. iDeCoとNISA、個人事業主はどちらを優先すべきですか?
今すぐの節税(所得控除)を優先したい場合はiDeCo、将来の廃業や急な資金ニーズに備えて「いつでも引き出せる流動性」を確保したい場合はNISAを優先しましょう。それぞれの目的が異なるため、無理のない範囲で少額ずつ併用するのが理想的です。
Q. NISAの投資額は事業の経費として計上できますか?
いいえ、NISAの拠出金は経費にはなりません。iDeCoや小規模企業共済とは異なり所得控除の対象外ですが、運用で得た利益が期間無制限で非課税になるのが最大の特徴です。
Q. NISA口座で得た利益について、確定申告をする必要はありますか?
NISA口座内での運用益や配当金は非課税となるため、確定申告を行う必要はありません。ただし、他の証券口座(特定口座など)で発生した損失と、NISAの利益を相殺(損益通算)することはできない点にご注意ください。
Q. 売上が不安定なのですが、毎月の積立額はいくらに設定すべきですか?
まずは月1,000円〜5,000円程度の、生活防衛資金に影響しない少額から始めることをおすすめします。新NISAはいつでも積立金額の変更や停止が可能なため、収入の波に合わせて柔軟に調整することができます。
Q. 事業用の銀行口座をNISAの引き落とし先に指定しても問題ありませんか?
制度上の制限はありませんが、事業資金とプライベート資金を明確に分けるためにも、個人用口座を決済先に指定するのが望ましいです。もし事業用口座から引き落とされる場合は、会計処理上で「事業主貸」として適切に処理する必要があります。
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この記事を書いた人
前田 壮一
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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