マツモトキヨシで働きながら副業はできるか|就業規則の確認と申請の手順

長谷川 奈津
長谷川 奈津
マツモトキヨシで働きながら副業はできるか|就業規則の確認と申請の手順

この記事のポイント

  • マツモトキヨシ 副業の可否は就業規則の3つの条文で決まります
  • 在宅ワークが選ばれる法的な理由
  • 住民税と社会保険の扱い

先日、ドラッグストアで登録販売者として働く方から相談を受けました。「マツモトキヨシで副業をしたいけれど、就業規則に何と書いてあるのか分からないし、上司に聞くと変に思われそうで踏み出せない」と。結論から言うと、副業ができるかどうかは上司の機嫌でも社風でもなく、就業規則の特定の条文と、あなたが選ぶ仕事の性質で決まります。これ、知らない人が本当に多いんです。

この記事では「マツモトキヨシ 副業」を検討している方に向けて、就業規則のどこを読めばいいのか、申請はどう出すのか、そしてなぜ在籍したまま持つ第二の収入源として在宅の仕事が現実的なのかを、法律の条文と2026年時点の市場データの両方から整理します。他店舗でのアルバイトを掛け持ちする話ではなく、今の職場に在籍しながら自宅で別の収入源を育てるという選択肢を主題にしています。

ドラッグストア勤務者の副業を取り巻く2026年の状況

副業を認める企業は増えたが「無条件」ではない

まず前提を揃えます。国は副業や兼業を後押しする方向にあります。厚生労働省が公開している「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は2018年に策定され、その後も改定が重ねられてきました。同時期に、企業が就業規則を作るときの下敷きになるモデル就業規則から、副業を一律に禁止する条文が削除されています。つまり、国が示すお手本の側では「原則禁止」から「原則容認」へと立場が入れ替わったわけです。

各種の企業調査では、副業を何らかの形で容認している企業は全体の6割前後まで増えたという結果が繰り返し出ています。ただし、そのうち「完全に自由」と答える企業はごく一部で、大半は許可制または届出制です。ここが誤解されやすいところで、「うちの会社は副業OK」という口コミを見ても、それは「申請すれば通ることが多い」という意味であって、「何をやってもいい」という意味ではありません。

小売やドラッグストアの業態には、さらに固有の事情があります。シフト勤務であること、店舗によって繁忙期が読みにくいこと、そして医薬品を扱う職種では資格と職務専念義務の重みが他業種より大きいこと。この3点が、副業の可否判断に影響します。逆に言えば、これらに触れない働き方を選べば、承認のハードルは下がります。

副業を考える動機は「不足」より「不安」に変わった

私が行政書士として相談を受ける中で、この数年で明らかに変わったことがあります。以前は「生活費が足りないから」という理由が中心でした。今は「今の会社にずっといられるか分からないから」「店舗が閉まったときに何もできない自分が怖い」という、将来不安を動機にする方が増えています。

この動機の違いは、選ぶべき副業の中身を変えます。目先の不足を埋めたいなら時給で働くのが早い。けれど将来不安に備えたいなら、時間を切り売りする仕事より、経験値とスキルが積み上がる仕事のほうが合理的です。実際、ドラッグストア勤務の方が持っている接客経験、商品知識、在庫管理の感覚、シフト調整の段取り力は、在宅の仕事に思っている以上に転用が利きます。

収入面の現実的な目安

ドラッグストアの店舗スタッフの年収帯は、雇用形態と役職によって大きく振れます。一般的な公開データでは、正社員の店舗スタッフで年収300万円台から400万円台、店長クラスで450万円から550万円程度というレンジが示されることが多い。パートやアルバイトであれば時給1,000円台前半から、登録販売者の資格手当が付いて1,200円前後というのがよく見る水準です。

ここに副業を足すとき、多くの方が「いくら稼げるか」だけを見ます。でも実務上もっと大事なのは「手取りでいくら残るか」と「本業の評価を落とさずに続けられるか」です。この2点を無視した副業設計は、だいたい半年以内に破綻します。後半で税金と社会保険の話を詳しく書くのは、そのためです。

就業規則のどこを読めば副業の可否が分かるか

見るべき条文は3つだけ

就業規則は分厚くて、全部読もうとすると心が折れます。副業の可否を判断するなら、見る場所は3つで足ります。

1つ目は「兼業」「副業」「二重就職」という見出しが付いた条文です。多くの企業では服務規律の章に入っています。ここに「会社の許可なく他に雇用されてはならない」と書かれているのか、「事前に届け出ること」と書かれているのかで、あなたが取るべき手続きが変わります。

2つ目は服務規律の総則にある「職務専念義務」と「信用保持」の条文です。副業を名指しで禁じていなくても、「会社の信用を傷つける行為をしてはならない」「業務に支障をきたす行為をしてはならない」という規定は、ほぼ全ての就業規則に入っています。副業が問題になるとき、実際に持ち出されるのはこちらの条文であることが多い。

3つ目は「秘密保持」と「競業避止」の条文です。仕入価格、販促計画、顧客データ、店舗ごとの売上といった情報は、外に出せば秘密保持義務違反になります。同業他社での就労を制限する競業避止の規定も、在職中は有効とされるのが原則です。つまり、他のドラッグストアやその関連会社で働くのは、真正面から引っかかります。

許可制と届出制では、必要な準備がまったく違う

条文を読むと、たいてい次のどちらかの形式になっています。

許可制は「会社の許可を得なければならない」という書き方です。この場合、許可が出るまで副業を始めてはいけません。会社側は許可するかどうかの裁量を持ちますが、無制限ではありません。裁判例の積み重ねから、副業が本業に実害を与えない限り、会社が一方的に不許可にする判断は制限的に解釈される傾向があります。つまり、「本業に支障が出ない」ことを説明できれば、通る可能性は十分にあるということです。

届出制は「あらかじめ届け出ること」という書き方です。こちらは会社の承諾を条件としないので、届け出た時点で始められます。ただし届出を怠ると、それ自体が服務規律違反になります。「バレなければいい」と考えて無届で始める方がいますが、これは最も避けるべき選択です。副業の中身に問題がなくても、手続きを飛ばしたという一点だけで処分の対象になり得るからです。

※就業規則の解釈で争いになりそうな場合、あるいは既に会社と対立が生じている場合は、弁護士に相談してください。行政書士は書類作成と手続きの支援まではできますが、紛争になった段階の代理はできません。

就業規則が手元にないときの正攻法

「就業規則を見たことがない」という方は珍しくありません。労働基準法第106条は、使用者に就業規則の周知義務を課しています。事業場への備え付け、書面の交付、あるいは社内ネットワークでの閲覧といった方法で、労働者がいつでも確認できる状態にしておかなければならない、という規定です。

だから、就業規則を見せてほしいと頼むのは、労働者として当然の権利行使です。後ろめたく思う必要はまったくありません。伝え方としては「副業をしたいので」と切り出すより、「服務規律を確認したいので就業規則を見せてください」と用件だけ言うほうが自然です。多くの店舗ではバックヤードにファイルが置いてあるか、社内システムから閲覧できます。

条文の関連知識をもう一段深めたい方は、法律文書の作成や許認可手続きを専門に扱う国家資格の全体像を押さえておくと、自分の契約書を読む力が一気に上がります。実務範囲や試験の中身をまとめた行政書士の資格ガイドが参考になります。

口コミの読み方には技術がいる

匿名の口コミは「事実」と「体感」が混ざっている

副業の可否を調べるとき、ほとんどの方が口コミサイトを見ます。それ自体は正しい行動です。ただし読み方を間違えると、実態と逆の結論を引いてしまいます。

社員クチコミサイトに寄せられた投稿には、次のような傾向が示されています。

副業については、制度上は認められているものの、実際には取り組みにくい雰囲気が存在するという状況が見られます。 出典: jobtalk.jp

この一文には、実は2つの別々の情報が入っています。「制度上は認められている」は規則の話で、社内文書を確認すれば真偽が判定できる事実です。「取り組みにくい雰囲気」は、投稿者が所属していた店舗の空気の話で、店舗が変われば変わります。

同じサイトには、雇用形態による差に触れた投稿もあります。

株式会社マツモトキヨシの副業に関する制度は、雇用形態や職種によって大きく異なるという状況が見られます。非正社員については、副業申請が通りやすいという傾向が示されています。 出典: jobtalk.jp

雇用形態によって扱いが違うというのは、法的にも自然な話です。フルタイムの正社員は職務専念義務が重く、労働時間も長い。一方、週20時間程度のパートであれば、残る時間で別の仕事をすることに会社が口を出す正当性は薄くなります。ここは感情ではなく理屈で決まる部分です。

口コミを3層に分けて読む

私が相談者に勧めているのは、口コミを次の3層に分けて読む方法です。

第1層は「規則の記述」。制度上どうなっているかを述べた部分だけを抜き出します。これは複数の投稿で一致しやすく、信頼度が高い。

第2層は「運用の記述」。申請が通った、通らなかった、上長に止められた、といった手続きの実例です。これは店舗や時期によってばらつくので、複数件を並べて分布を見ます。1件だけを根拠にしない。

第3層は「感情の記述」。雰囲気が悪い、言い出しにくい、といった主観です。これは書いた人の職場環境に強く依存するので、参考程度にとどめます。

投稿件数が数件しかない企業ページを見て「この会社は副業に厳しい」と結論する方が多いのですが、これは統計的にまったく成立しません。数件のサンプルで全社の運用を推定するのは無理があります。最終的に効くのは、あなたの店舗の就業規則と、あなたの上長がどう判断するかです。

副業の申請を通すための具体的な手順

自分の雇用形態と労働時間を数字で把握する

申請の前に、自分の状況を数字にします。週の所定労働時間、月の平均残業時間、シフトの固定度合い。この3つです。

なぜ必要かというと、会社が副業を止める最大の理由が「本業に支障が出る」だからです。逆に言えば、支障が出ないことを数字で示せれば、反論の材料を先に潰せます。週40時間働いていて残業が月30時間ある人が「週20時間の副業をします」と言えば止められます。同じ人が「週5時間、自宅で、締切のある納品型の仕事を」と言えば、話はまったく変わります。

申請書に書くべき5項目

申請書の書式が用意されている会社もありますし、自由書式のこともあります。いずれにせよ、次の5項目を明記すると審査が早く進みます。

第1に、業務の内容。「Webライティング」「オンラインでのキャリア相談」のように、具体的に書きます。「クラウドソーシング」だけでは中身が伝わらず、確認のやりとりが増えます。

第2に、契約形態。雇用契約なのか業務委託契約なのかを明記します。これは後述する労働時間の通算に直結するので、会社側が最も気にする項目です。

第3に、稼働時間と時間帯。「週5時間程度、平日の21時以降と休日の午前中」のように書きます。本業のシフト時間と重ならないことが一目で分かる形にします。

第4に、業務の場所。「自宅」と書けるかどうかで印象が変わります。移動時間がゼロで、深夜の帰宅もないことが明らかだからです。

第5に、競業関係と秘密保持への言及。「同業他社およびその関連会社との取引は行いません」「本業で知り得た情報は一切使用しません」と自分から書いておきます。会社が心配する点を先回りして消すわけです。

提出するタイミングと伝え方

提出は、副業を始める1か月前を目安にします。許可制の場合、決裁が店長で止まらず本部まで上がることがあり、時間がかかるからです。

伝え方については、動機を長く語らないほうがうまくいきます。「生活が苦しくて」と言うと給与への不満と受け取られ、「将来が不安で」と言うと転職の前触れと受け取られる。どちらも本題から外れます。「スキルを広げたいので、就業規則に沿って申請します」という事務的な伝え方が、結果的に最も摩擦が少ない。

不許可になったときにできること

申請が通らなかった場合、まず不許可の理由を確認します。理由が「本業に支障が出る恐れ」であれば、稼働時間を減らす、時間帯を変えるといった修正で再申請できます。理由が「競業に当たる」であれば、仕事の内容そのものを変える必要があります。

理由の説明がないまま一律に不許可とされた場合は、話が変わります。就業規則に許可制と書かれていても、会社の裁量は無制限ではないというのが実務上の理解です。ただし、この段階で争うのは労力に見合わないことが多い。私が見てきた限り、内容を調整して再申請するほうが、はるかに現実的な解決になります。

※不利益な取り扱いを受けた、あるいは退職を迫られたといった状況になった場合は、速やかに弁護士または労働局に相談してください。

在籍したまま持つ収入源として在宅の仕事が合理的な理由

労働時間の通算という壁を避けられる

ここが法律的に最も重要な部分です。労働基準法第38条第1項は「労働時間は、事業場を異にする場合においても労働時間に関する規定の適用については通算する」と定めています。つまり、A社で働いた時間とB社で働いた時間は足し算されるということです。

これが何を意味するか。他店舗やコンビニでアルバイトを掛け持ちすると、本業と副業の労働時間が合算され、合計が1日8時間、週40時間を超えた分について割増賃金の支払い義務が発生します。誰が払うのかという整理も必要になり、会社にとっては管理コストです。会社が雇用型の副業を渋る理由の多くは、実はここにあります。

一方、業務委託契約で受ける在宅の仕事は労働者としての就労ではないため、この通算の対象外です。会社側の管理負担が生じないので、承認が下りやすい。「在宅の業務委託です」と申請書に書けることの意味は、想像以上に大きいんです。

競業避止に触れにくい

ドラッグストア勤務者が他のドラッグストアで働けば、競業避止義務の問題が正面から立ち上がります。ところが在宅で文章を書く、画像を作る、相談に乗るといった仕事は、勤務先の事業と競合しません。秘密保持の観点でも、店舗の情報を使わずに完結します。

ただし例外があります。医薬品や化粧品に関する記事を書く仕事を受ける場合、勤務先の商品戦略や仕入情報に触れる書き方をすると、秘密保持義務に抵触する恐れがあります。一般に公開されている情報の範囲で書く、という線引きを自分の中に持っておいてください。

シフト勤務との相性がいい

店舗勤務のシフトは、月ごとに時間帯が動きます。固定の時間に必ず出勤するタイプの副業は、この変動と噛み合いません。

在宅の納品型の仕事は「いつやってもいいが、期日までに納める」という構造なので、シフトの隙間に押し込めます。早番の日は夜に、遅番の日は午前に、という組み方ができる。この柔軟性は、シフト勤務者にとって決定的なメリットです。

在宅で受けられる仕事の全体像を掴みたい方には、相談業や講師業を含めた分野の解説が役に立ちます。オンラインでの相談やコーチングをどう仕事にするかを扱ったキャリア・副業・人生相談のお仕事では、必要な準備と案件の形が整理されています。

在宅で選べる仕事の種類と単価相場

文章と編集の仕事

もっとも参入しやすいのがライティングです。単価は文字単価で表され、初心者向けの案件で0.5円から1円、実績が付くと2円から3円、専門分野を持つと5円以上という分布になります。

ドラッグストア勤務者には明確な強みがあります。医薬品、化粧品、健康食品の実務知識です。この領域は書ける人が限られるうえ、広告表現の規制が厳しいため、業界の常識を知っている人の価値が高い。登録販売者の資格があれば、それ自体が発注側にとっての信頼材料になります。

文章系の職種がどれくらいの収入帯に位置するのかは、公的な職業分類のデータで確認できます。著述家,記者,編集者の年収・単価相場には、雇用形態別の年収レンジと単価の目安がまとまっています。

デザインと画像制作

バナー制作の相場は1枚3,000円から1万円、SNS投稿用の画像セットで5,000円から2万円あたりが一般的です。店頭POPを作った経験がある方は、この分野への転用が早い。売り場で何が目を引くかを体で知っているというのは、独学のデザイナーが持っていない資産です。

ツールの操作スキルを客観的に示したいなら、資格の取得が近道になります。Adobe認定プロフェッショナル Adobe Expressの資格ガイドでは、試験の範囲と実務での使いどころが説明されています。

相談とカウンセリング

オンラインでの相談業は、資格がなくても始められる領域と、資格が前提になる領域に分かれます。前者は30分あたり3,000円から5,000円程度、後者は1時間1万円を超えることもあります。

接客で毎日お客様と話している方は、傾聴と要約の訓練がすでにできています。この土台があるかないかで、立ち上がりの速さがまったく違う。オンラインカウンセラーの始め方については、キャリア・副業・人生相談のオンラインカウンセラー入門で、実際の相談の流れと料金設定の考え方が解説されています。

音源とナレーション

意外な選択肢として、声を使う仕事があります。ナレーション収録は1分あたり1,000円から3,000円程度、短い音源の制作は1件5,000円から3万円という相場です。機材への初期投資が3万円ほど必要になりますが、店内アナウンスで発声に慣れている方には向いています。音の分野の仕事の広がりは作曲・編曲・効果音・ジングルのお仕事にまとまっています。

AI関連とマーケティング支援

近年伸びているのが、AIツールを使った業務支援です。文章の下書き生成、画像の量産、データ整理といった作業を代行する仕事が増えました。単価は月額の顧問型で3万円から10万円、単発の作業で1万円から5万円という幅があります。

この領域は技術の入れ替わりが速いぶん、経験年数より学習速度が効きます。分野の全体像はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で確認できます。開発寄りの職種の収入水準を知りたい場合は、ソフトウェア作成者の年収・単価相場が判断材料になります。

在宅の副業を幅広く比較検討したい方には、種類ごとの向き不向きを整理した副業 おすすめ!37歳教育系講師が教える在宅で稼ぐ秘訣と成功への道も併せて読むと、選択の軸がはっきりします。

税金と社会保険をどう扱うか

確定申告が必要になる境界線

給与を1か所から受けている人が、給与以外の所得で年間20万円を超えたら、所得税の確定申告が必要です。ここでいう所得は売上ではなく、売上から必要経費を引いた後の金額を指します。売上が30万円あっても経費が15万円なら所得は15万円なので、申告義務は生じません。

注意が必要なのは、この20万円ルールは所得税の話であって、住民税には適用されないという点です。住民税は所得の多寡にかかわらず申告が必要になります。所得税の確定申告をすればその情報が自治体に回るので二重の手続きは不要ですが、申告不要の範囲に収まる場合は、市区町村への住民税申告を別途行う必要があります。制度の詳細は国税庁の案内で確認してください。

経費として計上できるものは、その仕事のために使った費用に限られます。通信費、パソコン、参考書籍、有料ツールの利用料などです。自宅の家賃や電気代は、業務に使った割合を合理的に按分して一部を計上します。何を経費にできるかの線引きと、記録の付け方については副業 確定申告 売上管理 スプレッドシート!2026年最新の時短術で、実際の管理方法が具体的に説明されています。

住民税の徴収方法という論点

副業が会社に知られる経路として最も多いのが住民税です。仕組みはこうです。会社は従業員の住民税を給与から天引きして納めます。このとき自治体から会社に「この人の住民税はいくら」という通知が届く。副業の所得が加算されて住民税が上がっていると、給与額に対して税額が不自然に大きくなり、経理担当者が気づくことがあります。

確定申告書には、給与所得以外の所得にかかる住民税の徴収方法を選ぶ欄があります。ここで「自分で納付」を選べば、副業分の住民税は自宅に納付書が届き、給与天引きの対象から外れます。ただし、自治体の運用によっては選択が反映されないケースもあるので、確実を期すなら申告後に市区町村の課税課へ確認するのが安全です。

私自身、相談を受け始めた頃にこの確認を怠り、相談者に「これで大丈夫です」と伝えた後で自治体側の運用が違っていたことがありました。制度としては選べる、けれど現場の運用は自治体ごとに違う。この差を軽く見てはいけないと痛感した経験です。それ以来、税務に関わる助言をするときは必ず「所轄で最終確認を」と付け加えるようにしています。

社会保険はどう変わるか

業務委託で受ける在宅の仕事は、雇用ではないため社会保険の加入義務が新たに生じることはありません。本業の健康保険と厚生年金にそのまま入り続ける形です。

一方、雇用契約で副業をする場合は話が変わります。副業先でも週20時間以上といった加入要件を満たすと、二以上の事業所に勤務する扱いになり、「二以上事業所勤務届」の提出が必要になります。保険料は両方の報酬を合算して算定され、各社が按分して負担する。手続きが増えるうえ、会社側にも事務負担が発生します。これも、雇用型の掛け持ちより業務委託が選ばれやすい理由の1つです。制度の詳細は日本年金機構で確認できます。

労災と雇用保険の扱い

労災保険については、2020年の法改正で複数事業労働者への保護が広がりました。複数の勤務先で働く人が業務災害に遭った場合、給付基礎日額を全ての勤務先の賃金を合算して算定する仕組みです。ただしこれは雇用されている場合の話で、業務委託で働くフリーランスは原則として対象外です。特別加入の制度を使える職種もあるので、該当するかは厚生労働省の情報を確認してください。

雇用保険は、原則として主たる賃金を受ける1つの事業所でのみ加入します。複数の事業所を合算して加入できる仕組みは65歳以上を対象とした制度に限られており、それ未満の年齢では適用されません。副業を増やしても失業給付が手厚くなるわけではない、という点は誤解しやすいので押さえておいてください。

雇用型の副業と業務委託の副業を比較する

比較の軸 雇用契約(他店でのアルバイト等) 業務委託契約(在宅の仕事)
労働時間の通算 通算される(労基法38条) 通算されない
会社の管理負担 割増賃金の按分など負担あり ほぼ発生しない
承認の通りやすさ 相対的に低い 相対的に高い
収入の安定性 時給で安定 案件次第で変動
時間の柔軟性 勤務時間が固定される 締切内なら自由
スキルの蓄積 業務内容に依存 実績が資産として残る
社会保険 要件次第で二以上事業所届 新たな加入は不要
労災の適用 適用あり 原則なし(特別加入の余地)
契約上の保護 労働法で厚く保護 フリーランス保護新法が適用

この表を見ると、業務委託の弱点は「収入が安定しない」「労災が使えない」の2点に集約されます。逆に強みは、承認が通りやすいこと、時間が柔軟なこと、実績が積み上がることです。

在籍しながら第二の収入源を作るという目的に照らすと、業務委託のほうが目的に適合します。本業の収入という安定した土台がある以上、副業側に安定性を求める必要は薄い。むしろ、将来の選択肢を増やす資産形成として設計するほうが理にかなっています。

デメリットとリスクを正直に書いておく

立ち上がりは想像より遅い

在宅の仕事は、始めた月から収入になるとは限りません。プロフィールを作り、実績のない状態で応募し、最初の案件を取るまでに1か月から3か月かかることは珍しくない。時給で確実に入るアルバイトと比べると、初期の効率は明らかに劣ります。

ここで諦める方が多いのですが、逆に言えば、この期間を越えた人だけが継続的な依頼を得る構造になっています。最初の3件を丁寧にやり切れるかどうかが分岐点です。

体力と時間の配分を誤ると本業が崩れる

シフト勤務は体に負担がかかります。そこに副業を足せば、睡眠時間か休息時間のどちらかが削られる。実際、副業を始めて数か月で本業のミスが増え、結局やめたという相談を何度も受けてきました。

対策は単純で、副業に充てる時間の上限を先に決めることです。週5時間と決めたら、それを超える案件は受けない。稼ぎたい気持ちで上限を破ると、本業の評価が落ちて元も子もなくなります。

契約トラブルのリスクがある

業務委託には、報酬未払い、一方的な仕様変更、納品後の値引き要求といったトラブルが付きまといます。労働者としての保護が及ばない領域なので、自衛が必要です。

ただし、2024年11月に施行された特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、いわゆるフリーランス保護新法によって、状況はかなり改善しました。この法律は発注者に対して、取引条件を書面または電磁的方法で明示する義務を課しています。業務の内容、報酬の額、支払期日といった項目を、口頭ではなく記録に残る形で示さなければならない。

そして報酬の支払期日については、発注者が給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に定めなければならないと規定されています。つまり、「検収が終わらないから払えない」「イメージと違うから払わない」といった主張は、支払いを遅らせる正当な理由になりません。これ、知らない人が本当に多いんです。

冒頭で触れたWebデザイナーの相談も、まさにこのケースでした。納品済みの成果物に対して「イメージと違う」という理由で支払いが止められていた。法律の条文を示して交渉するだけで、状況は動きます。法律はあなたの味方です。

確定申告の手間は避けられない

年間20万円を超えたら申告義務が生じます。帳簿を付け、領収書を保管し、期限内に手続きをする。この負担は副業を続ける限りついて回ります。

とはいえ、会計ソフトを使えば作業時間は大幅に減ります。銀行口座と連携させて自動で仕訳を作る仕組みが一般化しているので、月に30分程度の入力で年間の記録が整う。freeeマネーフォワードといったサービスが代表的です。

市場を長く見てきた立場からの観察

20年にわたって在宅ワークとフリーランスの市場を運営してきた立場から言えば、店舗勤務から在宅の仕事へ軸足を広げた人たちには、共通する特徴があります。単発の作業を数多くこなそうとするのではなく、「この人に頼むと楽だ」と発注者に思わせる関係づくりに時間を使っている、という点です。

具体的には、納期より少し早く出す。修正依頼に感情を挟まない。次に何が必要になりそうかを先回りして提案する。どれも特別なスキルではありません。店舗の接客で毎日やっていることの延長です。だからこそ、小売の現場を経験した人は、この部分で最初から優位に立てる。技術は後から学べますが、相手の手間を減らす感覚は簡単には身につかないんです。

もう1つ、運営者として見てきた限りで強調したいのが、額面ではなく手取りで考えることの重要性です。仲介が入る取引では、契約額から一定割合が差し引かれます。同じ3万円の仕事でも、中間マージンが乗らない直接取引であれば、受け手の手元に残る金額は厚くなる。発注する側も、同じ予算でより多くの依頼ができる。手数料0%という構造は、単に安いという話ではなく、双方が同時に得をする形になっているということです。長く続く関係ほど、この構造の上に成り立っていることを何度も見てきました。

独自データから読み取れること

職種別の年収データと、お仕事ガイドに集まる相談の傾向を突き合わせると、いくつかのことが見えてきます。

第1に、在宅の仕事の収入分布は、時給制の仕事より裾野が広い。下は月数千円から、上は本業を超える水準まで分布します。この分散の大きさは、リスクでもあり機会でもある。時給で計算できる安心感を捨てる代わりに、上限のない伸びしろを得る取引だと理解しておくべきです。

第2に、資格が直接収入に結びつく分野と、実績だけが物を言う分野がはっきり分かれています。相談業や法務系は資格の有無が単価に直結し、ライティングやデザインは実績のポートフォリオが評価されます。ドラッグストア勤務者が持つ登録販売者の資格は前者の性質を持っており、健康や医薬の領域で書く仕事、相談に乗る仕事では、それ自体が単価の根拠になります。

第3に、続けられる人と辞める人の差は、才能ではなく設計にあります。週に何時間使うかを決め、上限を守り、本業を崩さない範囲で回した人が残る。逆に、最初の数か月で全力を出して燃え尽きるパターンが最も多い。副業は短距離走ではなく、数年単位で見る話です。

在籍しながら別の収入源を持つという選択は、今の職場を辞めるための準備ではありません。辞めても大丈夫という状態を作ることで、今の職場での判断が自由になるという効果のほうが大きい。相談を受けていて、収入が増えたことより「会社に依存しなくてよくなった安心感」を挙げる方が圧倒的に多いのは、そのためだと感じています。

就業規則を確認し、申請を出し、契約書を読む。どれも面倒な手続きに見えますが、この3つを踏んでおけば、後から揉める余地はほとんど消えます。法律はあなたの味方です。手続きを正しく踏んだ人を、法律は必ず守ります。

よくある質問

Q. マツモトキヨシで副業をするには許可が必要ですか?

就業規則の兼業に関する条文次第です。許可制なら会社の承認を得るまで開始できず、届出制なら届け出た時点で始められます。まずは労働基準法第106条の周知義務に基づき、就業規則を閲覧させてほしいと申し出て、条文の書き方を確認してください。無届で始めると内容に問題がなくても手続き違反になります。

Q. 他店でのアルバイトより在宅の業務委託が承認されやすいのはなぜですか?

雇用契約の副業は労働基準法第38条により本業と労働時間が通算され、割増賃金の按分など会社側に管理負担が生じます。業務委託は労働者としての就労ではないため通算の対象外で、会社の事務負担が発生しません。加えて自宅作業なら移動時間もなく、本業への支障を説明しやすい点も有利に働きます。

Q. 副業の収入がいくらから確定申告が必要ですか?

給与を1か所から受けている場合、給与以外の所得が年間20万円を超えると所得税の確定申告が必要です。所得は売上から必要経費を引いた金額を指します。ただし住民税にこの20万円の基準はなく、所得が少額でも市区町村への申告が必要になるため、税額通知の扱いも含めて自治体に確認してください。

Q. 報酬を払ってもらえないとき、どう対処すればよいですか?

2024年11月施行のフリーランス保護新法により、発注者は給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定める義務を負います。「イメージと違う」といった主観的な理由は支払い拒否の正当な根拠になりません。取引条件の明示義務もあるため、まず契約書やメールの記録を揃え、条文を示して交渉してください。解決しない場合は弁護士や公正取引委員会の相談窓口へ。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月28日最終更新:2026年8月3日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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