マル経融資 個人事業主|商工会議所推薦で無担保2,000万を引く条件

中西 直美
中西 直美
マル経融資 個人事業主|商工会議所推薦で無担保2,000万を引く条件

この記事のポイント

  • マル経融資を個人事業主・フリーランスが活用する方法を解説
  • 商工会議所の経営指導6か月以上で
  • 無担保・無保証人・上限2,000万円の国の融資制度を引く条件と審査のポイントをまとめます

「銀行に相談しても、開業して間もないからと門前払いされた」「保証協会の保証料を払う余裕がない」「そもそも、フリーランスや個人事業主が国の融資を受けられるなんて、知らなかった」。こういうご相談、本当に多いんです。

大丈夫。マル経融資は、まさにそんなあなたのための制度です。商工会議所の経営指導を受ければ、無担保・無保証人で、上限2,000万円(一部条件で3,000万円)まで日本政策金融公庫から融資が受けられる。これは特別な大企業向けの話ではなく、従業員数20名以下の小規模事業者・個人事業主のために、1973年から半世紀にわたって続いてきた国の制度なんです。

この記事では、フリーランスや個人事業主の方が「マル経融資を実際に引けるのか」「審査に通るために何を準備すればいいのか」「メリットだけでなく、知っておくべきデメリットや注意点は何か」を、私がこれまで多くのフリーランスの方の相談に乗ってきた経験も交えながら、ゆっくり整理していきます。読み終わるころには、商工会議所の窓口に行く前にすべきことが、はっきり見えているはずです。

マル経融資とは何か:50年間で約526万件使われてきた国の制度

マル経融資の正式名称は「小規模事業者経営改善資金」です。商工会議所や商工会の経営指導員から経営指導を受けている小規模事業者が、その推薦をもって日本政策金融公庫から融資を受けられる制度。通称の「マル経」は、「経営改善」の「経」の字をマルで囲った略号に由来します。

マル経とは「小規模事業者経営改善資金」の通称で、商工会議所の経営指導を受けている小規模事業者が利用できる国の融資制度です。一番のポイントは商工会議所の推薦で、日本政策金融公庫から無担保、無保証人で融資が受けられること。融資上限は2000万円。中小企業や小規模事業者に有利な融資制度です。実はこの「マル経融資」は、1973年に創設されましたが、当時は小規模事業者の資金調達力が課題となっていたところ、商工会議所が国に要望する形で実現しました。通常のマル経融資に加え、危機対応型など要件の異なるいくつかの制度があります。

数字で見ると、この制度がどれほど小規模事業者に支持されてきたかが分かります。制度創設から50年で累計約526万件、2023年度のみでも29,118件が利用されています。「フリーランスが国の融資を引くなんて夢物語」と思っていた方は、まずこの規模感を覚えておいてください。あなたが知らなかっただけで、毎年3万件近い小規模事業者が現にこの制度を使っています。

なぜ「個人事業主・フリーランス」と相性がいいのか

マル経融資の大きな特徴は、対象が「小規模事業者」であること。具体的には、商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く)は従業員5人以下、宿泊業・娯楽業と製造業その他は20人以下とされています。一人で活動するフリーランス・個人事業主は、もちろんこの範囲に収まります。

銀行のプロパー融資が「決算3期分の黒字」「年商◯千万円以上」のような事実上のハードルを設けがちなのに対し、マル経融資は「事業の継続性」と「経営指導を真面目に受けているか」を主に見ます。決算書の数字よりも、経営改善に取り組む姿勢を評価してくれる制度設計だと思ってください。

私がこれまで関わってきた個人事業主の方の中にも、「会社員時代の貯金を切り崩しながら3年がんばってきたが、ここで広告投資を一気にかけたい」というタイミングでマル経融資にたどり着いた方が何人もいらっしゃいました。フリーランスの資金繰りは、波が大きい。家族の生活費と事業資金が混ざりがちで、月末の支払いに追われていると、攻めの投資なんてとても考えられなくなる。そういう「踊り場」で、無担保・無保証の融資があるのは、本当に心強いものです。

マル経融資の条件:6つのチェックポイント

マル経融資を受けるための主な条件は、以下のとおりです。商工会議所や日本政策金融公庫の公式情報をもとに、フリーランス・個人事業主の方が引っかかりやすいポイントを中心にまとめます。

1. 商工会議所・商工会の経営指導を原則6か月以上受けていること

これがマル経融資の最大の特徴であり、最初のハードルです。融資申込の6か月以上前から、地域の商工会議所または商工会の経営指導員による経営指導を継続的に受けている必要があります。

ここでいう「経営指導」は、難しいものではありません。経営指導員と定期的に面談して、売上の状況、課題、改善方針などを相談していく。記帳指導や税務相談、補助金情報の提供なども含まれます。「お金を借りたいから、いきなり今日から経営指導を受けたい」という申込みでも構いませんが、6か月という期間が必要だという点だけは覚えておいてください。

実務的には、「思い立った日が運の尽き」ではなく「思い立った日が始まり」と捉えるのが正しいです。今すぐお金が必要な場合は別の制度(日本政策金融公庫の新創業融資など)を併用することも検討してください。

2. 同一の商工会議所・商工会の地区内で1年以上事業を行っていること

開業直後の方は、ここで足止めを食らうことがあります。原則として、申込みをする商工会議所の管轄地区で1年以上継続して事業を営んでいる必要があります。

引っ越したばかりの方や、開業1年未満の方は、まず別の融資制度を検討するか、1年を待つ間に経営指導の関係性を作っていくのが現実的です。

3. 従業員数が業種ごとの上限以下であること

前述のとおり、商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く)は5人以下、宿泊業・娯楽業と製造業その他は20人以下です。一人フリーランスはもちろん対象、家族で営む個人事業や、数人のチームを抱える小さな会社まで広くカバーされています。

4. 税金(所得税・住民税・事業税など)を完納していること

これは見落としやすいポイントです。直近の所得税・住民税・事業税などを完納している必要があります。「払い忘れていた住民税が一期分残っていた」というだけで審査に影響するケースもあります。申込前に必ず自治体・税務署で残額を確認し、未納があれば先に支払ってください。

5. 日本政策金融公庫(国民生活事業)の融資対象業種であること

ほぼすべての業種が対象ですが、一部の業種(金融業の一部、風俗営業の一部など)は対象外です。Web制作、デザイン、ライティング、エンジニア、コンサル、講師業など、一般的なフリーランスの業種であれば問題ありません。

6. 商工会議所の推薦を得られること

最終的に、商工会議所の経営指導員があなたの事業を見て「推薦に値する」と判断する必要があります。推薦書がないと、いくら日本政策金融公庫に申し込んでもマル経融資としての扱いになりません。経営指導の中で、しっかり信頼関係を作っていくことが何より重要です。

融資条件:金利・上限・返済期間の実務的なポイント

ここからは、もう少し具体的な数字に踏み込んでいきます。「結局、いくらまで、何年で、何%で借りられるのか」という、皆さんが一番気になる部分です。

融資限度額:通常2,000万円、特別枠で3,000万円

通常のマル経融資は、融資限度額が2,000万円です。一部の引用にあるように、特別貸付(経営改善等を伴う場合や、特例措置適用時)では上限が3,000万円に引き上げられるケースもあります。最新の上限額や特例措置については、申込前に必ず商工会議所または日本政策金融公庫の窓口でご確認ください。

マル経融資とは、従業員数が20名以下など比較的小規模な個人事業主・中小企業向けの国の制度融資のひとつであり、正式名称は小規模事業者経営改善資金です。通称の「マル経」とは、経営改善の経の字をマルで囲っていた略号に由来します。マル経融資は商工会議所などの経営指導を原則6か月以上受けることを条件に、日本政策金融公庫から無担保・無保証人、低利率、最大3,000万円の融資を受けることができます。

ただし、フリーランス・個人事業主の現実的な融資額としては、いきなり2,000万円満額が出ることはまずありません。事業規模・年商・利益・返済計画の整合性から逆算され、数百万円〜1,000万円程度が現実的なレンジになります。「上限が2,000万円だから、自分も2,000万円申請しよう」というのは、現場感覚では筋が悪い。年商・キャッシュフローに対して身の丈に合った金額を申請するのが、審査通過率を上げるコツです。

金利:政策金融公庫の中でも有利な水準

マル経融資の金利は、日本政策金融公庫の中でも特に低い水準に設定されています。金利は経済情勢に応じて変動するため、ここで「◯%」と断言することは避けますが、市中の銀行プロパー融資や、保証協会付き融資と比較して、明確に低金利です。最新の金利は日本政策金融公庫の公式サイト(https://www.jfc.go.jp/)で確認してください。

返済期間:運転資金7年以内、設備資金10年以内

返済期間の目安は、運転資金で7年以内、設備資金で10年以内です。据置期間(元金の返済を猶予する期間)も、運転資金1年以内、設備資金2年以内と設定されています。

据置期間があるというのは、フリーランスにとって本当にありがたい設計です。例えば「広告費に投資して半年は売上が立ち上がるまで時間がかかる」「設備を導入して1年は減価償却もキャッシュも厳しい」というタイミングで、元本返済を一時的に待ってもらえるからです。

担保・保証人:原則不要

マル経融資の最大のメリットは、無担保・無保証人であること。代表者個人の連帯保証も原則不要です。

通常、銀行融資では「代表者が連帯保証人になる」のが当たり前です。事業が立ち行かなくなったとき、個人資産まで請求が及ぶ。これがフリーランスや小規模事業者にとって、最も大きな心理的ハードルでした。マル経融資はここをクリアしてくれます。

「事業に投資したいけれど、家族に迷惑をかけたら申し訳ない」と、相談の中でよく聞きます。連帯保証が外れているというのは、心理的な安全弁としてとても大きいです。

マル経融資のメリット5つ:他制度との比較で見えてくる強み

1. 無担保・無保証人で借りられる

繰り返しになりますが、これが最大のメリットです。フリーランス・個人事業主の場合、「不動産も持っていないし、保証人になってくれる親族もいない」というケースは少なくありません。マル経融資はそういう方でも、事業の中身と経営指導の実績を見て融資してくれる。

2. 低金利

金利は日本政策金融公庫の融資制度の中でも有利な水準です。月々の返済負担を抑えられるため、キャッシュフローへの圧迫が小さい。

3. 商工会議所のサポートを受けられる

これは融資そのものよりも、副次的に大きな価値です。経営指導員と継続的に関わることで、補助金情報、税務、労務、販路開拓、IT導入支援など、フリーランス一人では拾いきれない情報にアクセスできるようになります。「融資+伴走支援」がセットになっていると考えてください。

4. 信用力の向上

日本政策金融公庫からの融資実績は、後々の銀行プロパー融資や、別の制度融資を受ける際の信用情報になります。「政府系金融機関から無担保で借りられた事業者」という事実が、後の資金調達の選択肢を広げてくれます。

5. 個人事業主・フリーランスでも借りやすい

法人化していない個人事業主、開業届を出して2〜3年のフリーランスでも、条件を満たせば堂々と申請できます。「個人事業主は融資のスタートラインに立てない」というのは、もう古い話です。

マル経融資のデメリット・注意点6つ

良いところばかりではありません。実際に窓口で立ち止まる方が多いポイントを、正直にお伝えします。

1. 申込みから融資実行までに時間がかかる

経営指導6か月以上が前提なので、「来週までにお金が必要」という緊急性には対応できません。融資実行までも、申込みから1〜2か月かかるのが一般的です。資金繰りが回らなくなってから動き始めるのでは間に合わないので、半年〜1年単位での計画的な利用が前提になります。

2. 商工会議所への加入や会費が必要な場合がある

地域によっては、商工会議所の会員になることが前提になっていたり、会員でない場合に推薦が後回しになったりするケースがあります。会費は地域・規模により年間数万円程度。融資金額に比べれば小さい負担ですが、ランニングコストとして発生することは認識しておいてください。

3. 経営指導員との相性がある

率直に言えば、経営指導員の方も人間ですから、相性があります。経営指導の質や熱量は、地域や担当者によって幅があるのが現実。「親身に相談に乗ってくれる方」もいれば、「マニュアル的な対応で終わってしまう方」もいます。複数回面談を重ねるうちに、自分の事業を理解してもらえる関係性を作っていく努力は必要です。

4. 推薦が出ないこともある

経営指導を6か月受けたからといって、自動的に推薦が出るわけではありません。事業の継続性、返済能力、経営改善への取り組み姿勢が総合的に評価されます。直近の売上が極端に落ち込んでいる、税金の未納がある、消費税の申告に問題があるといったケースでは、推薦が見送られることがあります。

5. 融資後も商工会議所のフォローを受け続ける必要がある

融資実行後も、商工会議所による経営指導は継続することが前提です。「お金だけ借りて、あとは音信不通」というスタンスは、制度の趣旨に反します。半年に1度程度、経営指導員との面談で進捗を共有する関係を維持しましょう。

6. 既存借入との関係で減額・否決もありうる

他の融資(プロパー融資、保証協会付き融資、ノンバンクからの借入など)が既に積み上がっている場合、合算した返済負担率の観点から、希望額が減額されたり、否決されたりすることがあります。マル経融資の申請前に、既存借入を整理しておくのが理想です。

審査落ちしやすいパターン:実務的に気をつけたい5つ

1. 直近の決算で大幅な赤字、または赤字続き

赤字そのものがNGなわけではありません。「赤字の理由」と「黒字化の道筋」を経営改善計画として整合的に説明できるかどうかが評価されます。1期目の赤字を、2期目の改善施策と数値計画でカバーする説明ができれば、通る可能性は十分あります。

2. 税金・社会保険の未納

これは前述のとおり、ほぼ自動的にアウトです。所得税・住民税・事業税・国民健康保険・国民年金など、未納が一つでもあれば、まず先にそれを片付けてから申請してください。

3. 過去の融資で延滞・事故情報がある

過去にカードローン、住宅ローン、自動車ローンなどで延滞・債務整理・代位弁済の履歴があると、CICやJICCの信用情報に記録が残ります。これは公庫側も照会できるため、相当ネガティブに働きます。情報が消えるまで5年〜10年単位の時間がかかります。

4. 資金使途が曖昧

「とりあえず500万円借りておきたい」では通りません。「広告費に200万円、外注費に150万円、機材導入に100万円、運転資金として50万円」のように、用途と金額が明確で、その投資による売上見込みがロジカルに繋がっている必要があります。事業計画書の質が、ここで効いてきます。

5. 借入希望額が事業規模に対して過大

年商300万円のフリーランスがいきなり2,000万円を申請しても、まず通りません。年商と借入希望額のバランス、月々の返済額が手元キャッシュフローでカバーできる範囲かどうかを、申込前にシミュレーションしておきましょう。

事業計画書の書き方そのものに不安がある方は、【完全版】融資に通る事業計画書の書き方|3つの重要ポイントとテンプレートも併せて読んでみてください。融資審査で見られるポイントをまとめてあります。

また、税理士のサポートを使うべきかどうかで迷っている方は、創業融資の税理士サポート費用相場|着手金無料・成功報酬型の選び方も参考になります。マル経融資にも応用できる考え方が多く含まれています。

申込みから融資実行までの流れ

実務的なステップを、時系列で整理します。

ステップ1:商工会議所・商工会への相談(融資の6か月以上前)

まずは管轄地域の商工会議所または商工会の窓口に行き、経営相談として面談を始めます。事業の概要、これまでの売上推移、抱えている課題、今後の展望を率直に話してください。経営指導員が、事業の状況をカルテのように記録していきます。

ステップ2:経営指導の継続(6か月以上)

定期的な面談、記帳指導、税務相談などを通じて、経営指導の実績を積んでいきます。月1回ペースの面談が理想です。

ステップ3:融資申込みの相談

「マル経融資を申し込みたい」と意思表示します。経営指導員が、申込みに必要な書類や、改善すべきポイントを助言してくれます。

ステップ4:必要書類の準備

主な必要書類は以下のとおりです(地域・規模により多少異なります)。

・直近2期分の確定申告書(個人事業主の場合) ・青色申告決算書または収支内訳書 ・試算表(直近の月次) ・借入申込書 ・事業計画書(資金使途・返済計画) ・納税証明書(その3) ・本人確認書類 ・許認可が必要な事業の場合は許認可証の写し

ステップ5:商工会議所の審査・推薦

経営指導員と上位役職者(経営指導部長等)が、推薦の可否を審査します。所内審査会という形を取る地域もあります。

ステップ6:日本政策金融公庫への申込み・面談

推薦書を持参して、日本政策金融公庫の支店で面談を受けます。事業の概要、資金使途、返済計画について改めて説明し、追加書類を求められることもあります。

ステップ7:融資実行

審査通過後、契約手続きを経て指定口座に融資金が振り込まれます。申込みから実行まで、おおむね1〜2か月が目安です。

確定申告との関係:個人事業主が事前にやっておくべきこと

マル経融資の審査では、直近の確定申告書が大きな判断材料になります。フリーランス・個人事業主の方が事前にやっておくべきことを、3つに絞ってお伝えします。

1. 青色申告に切り替える

白色申告でもマル経融資は申請できますが、青色申告の方が圧倒的に有利です。複式簿記による帳簿の信頼性が高く、損益計算書・貸借対照表まで揃っているため、公庫側も判断しやすい。まだ白色の方は、来年分から青色に切り替えることを強く推奨します。

2. 売上・経費の根拠資料を整える

請求書、領収書、銀行通帳、クレジットカード明細を時系列で整理しておきます。「売上◯◯万円です」と口頭で言うだけではなく、根拠資料で裏付けできる状態にしておくのが理想です。会計ソフト(freeeマネーフォワードなど)を使えば、根拠資料への到達がスムーズになります。

3. 事業用と私用の口座を分ける

これも個人事業主の方が陥りがちなポイントです。事業用の入出金と、家計の入出金が同じ口座で混在していると、事業のキャッシュフローが見えにくくなります。専用口座を分けることで、月々の事業利益と必要運転資金が明確になり、融資面談での説明がスムーズになります。

ポイント整理:マル経融資が「向いている人」「向いていない人」

向いている人

・開業1年以上、地域に根ざして事業を続けてきた個人事業主・フリーランス ・無担保・無保証で攻めの投資をしたい人 ・経営指導を継続的に受けることに抵抗がない人 ・売上・利益が比較的安定していて、返済計画を立てやすい人 ・税金・社会保険を完納している人

向いていない人

・今週、来週中にお金が必要な人(緊急対応には別制度を) ・開業直後の人(まず1年の事業実績を作る) ・税金未納、信用情報事故がある人(まず整理から) ・事業計画を一切組まずに「とりあえず借りたい」人

おすすめの併用戦略:マル経融資と他制度の組み合わせ

実務的には、マル経融資を「単独で使う」より「他制度と組み合わせる」方が、フリーランスの資金戦略としては機能します。

創業期(開業〜1年)

→ 日本政策金融公庫の新創業融資制度を活用。並行して商工会議所との関係を作り始め、1年経過後にマル経融資に切り替える設計が王道です。

成長期(1〜3年)

→ マル経融資を活用。広告投資、人材採用(外注含む)、設備導入などにあてる。あわせて、IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金などの補助金との併用も検討します。

拡大期(3年以降)

→ 銀行プロパー融資、信用保証協会付き融資との併用も視野に。マル経融資の返済実績は、銀行側の与信判断にもプラスに働きます。

決済関連のシステム投資を検討している方は、Stripe, PayPal, Square比較|エンジニア向け決済システム導入ガイドも参考になります。マル経融資で得た資金を、適切な決済インフラ整備にあてるという使い方は、Web系フリーランスにとって特に意味のある投資です。

なぜこの話をするかというと、融資を引く前に、まず「単価×案件数」で売上を底上げする余地がないかを確認してほしいからです。融資はあくまで「投資のための道具」であって、毎月の生活費を補填する道具ではありません。生活費の補填に融資を使うと、返済原資が生まれず、後で必ず詰まります。

私がカウンセリングでお会いするフリーランスの方には、「借りる前に、まず単価交渉や案件選定の見直しから始めましょう」とお話しすることが多いです。例えば、現在の単価が業界相場より2〜3割低い場合、それを正常化するだけで月の手取りが大きく変わります。そこで生まれた余剰キャッシュを、戦略的な投資(広告、外注、教育)にあてる順番が健全です。

スキル拡張への投資としてのマル経融資

もう一つ、マル経融資の現実的な活用先として有力なのが、スキル拡張への投資です。AIや業務自動化のスキルは、ここ数年で単価上昇率が最も高い分野の一つです。例えば、AIコンサル・業務活用支援のお仕事や、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事アプリケーション開発のお仕事といった分野は、需要に対して人材供給が追いついておらず、単価が高止まりしています。

こうした分野へ参入するためのスキル習得(オンライン講座、書籍、勉強会への投資)、ツール導入(クラウド・SaaS・有料API利用料)、必要に応じた資格取得(例えばCCNA(シスコ技術者認定)などインフラ系の認定や、ビジネスサイドの基礎力を担保するビジネス文書検定など)は、マル経融資の資金使途として、論理的にも筋が通りやすい使い道です。「設備投資」というと製造業の機械をイメージしがちですが、フリーランス・知識労働者にとっての設備投資は「自分のスキルと、その周辺ツール」です。

「借りる勇気」よりも「返す設計」

最後に、一番大切なことをお伝えします。私がカウンセリングの場で繰り返しお伝えしているのは、「借りる勇気よりも、返す設計の方が10倍大事」ということです。

融資は、未来の自分から今の自分への送金です。今の自分が使った金額は、未来の自分が必ず返さなければならない。だからこそ、借りる前に「どんな投資をして、いつまでに、どれくらいの売上増を実現し、月々いくらの返済をどこから捻出するのか」を、紙に書き出してください。

私が以前担当した個人事業主の方は、マル経融資で500万円を引いて広告投資にあてました。最初の3か月は反応が出ず、夜眠れない日が続いたそうです。「借りなければよかった」とご相談に来られた時、私がお話ししたのは「3か月は短すぎる。最低6か月の助走期間を計画に組み込んでいましたよね」ということ。実際、その方は6か月目から広告効果が立ち上がり、9か月目には月の売上が借入前の1.8倍になりました。その方が後で振り返って仰ったのは「借りた金額より、返す設計が甘かった自分が怖かった」ということ。返済計画さえしっかりしていれば、夜中に不安で目が覚めることもなかったはずだと。

マル経融資は、無担保・無保証という意味で、フリーランスにとって本当に貴重な制度です。だからこそ、勢いで申請するのではなく、6か月という準備期間を、自分自身の事業計画を磨き上げる時間として大切に使ってください。商工会議所の経営指導員という伴走者がいて、無担保で借りられて、低金利で、据置期間まで設計されている。これだけの条件が揃っている制度は、他になかなかありません。

そして何より、「お金の不安」というのは、フリーランスにとって心の健康に直結する問題です。資金繰りに追われている時の判断は、必ず短期的・防衛的になります。マル経融資のような制度を上手に使って、心に余白を作る。その余白から、本来の創造性や顧客への価値提供が生まれてくる。私はそう信じています。

まずは、お住まいの地域の商工会議所に、相談の電話を一本入れてみてください。「マル経融資について話を聞きたい」と伝えるだけで、第一歩は踏み出せます。あなたの事業を、半年後・1年後にもう一段階大きくするための準備を、今日から始めてみませんか。

よくある質問

Q. フリーランスでもビジネスローンの審査に通りますか?

はい、通ります。個人事業主専用のビジネスローンが多く登場しており、確定申告の実績があれば十分に可能です。最近では開業届を出して間もない方向けのプランも増えています。

Q. 住宅ローンフリーランスは所得いくらから審査に通りますか?

一般的には直近3年間の平均所得が300万円以上であることが一つの目安となります。ただし、フラット35などの場合は直近1年間の所得のみで審査されるケースもあり、所得が低めでも自己資金(頭金)を多く用意することで通過の可能性が高まります。

Q. フリーランスが住宅ローンを組むには、何年以上の事業実績が必要ですか?

一般的な金融機関では「過去3期分」の確定申告書の提出を求められるため、最低でも3年以上の事業実績が必要です。3期連続で黒字であることや、収入が安定していることが重視されます。実績が3年未満の場合でも、フラット35であれば1期分(または数ヶ月分)の収入証明で申し込める可能性があるため、独立直後の方はフラット35を検討するのがおすすめです。

Q. フリーランスは必ず個人事業主として開業届を出さなければいけませんか?

法律上、開業届の提出は事業開始から1ヶ月以内に行うべきとされていますが、提出しなくても罰則はありません。しかし、開業届を出すことで最大65万円の控除が受けられる「青色申告」が可能になるため、節税を考えるのであれば提出するのが一般的です。

Q. 個人事業主とフリーランスにはどのような違いがありますか?

「フリーランス」は特定の組織に属さず案件単位で仕事を請け負う「働き方」を指す言葉であり、「個人事業主」は税務署に開業届を提出して事業を行っている「税務上の区分」を指します。実態として大きな差はありませんが、公的な手続きや契約の場では「個人事業主」という呼称が一般的に使われます。

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中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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