合同会社と株式会社どっち フリーランスが法人化する時の選び方


この記事のポイント
- ✓フリーランスとして事業が軌道に乗ってくると
- ✓必ずと言っていいほど直面するのが「法人化(法人成り)」のタイミングと
フリーランスとして事業が軌道に乗ってくると、必ずと言っていいほど直面するのが「法人化(法人成り)」のタイミングと、その形態の選択です。特に「合同会社と株式会社どっちがいいのか」という悩みは、多くの方が抱える共通の課題と なります。
私が大阪の会計事務所で10年間、数多くのフリーランスの皆様の確定申告や法人設立をサポートしてきた経験から申し上げますと、この選択一つで、初期コストやその後の運営コスト、さらには取引先からの見られ方が大きく変わります。
本記事では、合同会社(LLC)と株式会社の違いを、設立費用、税金、信用力、意思決定のスピードなど、あらゆる角度から詳細に比較・解説します。
フリーランスの法人化における「大きな分岐点」
フリーランスが個人事業主から法人へステップアップする際、真っ先に検討すべきは「何のために法人化するのか」という目的の明確化です。節税が目的なのか、それとも大手企業との取引を増やすための「ハク」をつけたいのか。この目的に よって、選ぶべき形態は自ずと決まってきます。
かつては「会社といえば株式会社」という時代もありましたが、2006年の会社法改正によって「合同会社」という形態が登場しました。AppleやGoogle、Amazonの日本法人が合同会社であることは有名ですが、実は個人が法人成りする際にも、その「合理性」から合同会社を選ぶケースが急増 しています。
私が会計事務所時代に担当したあるエンジニアの方は、売上が年間1,500万円を超えたタイミングで法人化を相談されました。彼は「自分一人で自由に動きたい、対外的な信用は実績でカバーできる」と考えていたため、迷わず合同会社を勧めました。結果として、設立費用を14万円以上抑えることができ、その資金を新しい機材の購入に充てることができたんです。
合同会社(LLC)と株式会社の基本比較表
まずは、両者の主な違いを一覧表で確認しましょう。
| ## 比較項目 | 合同会社 (LLC) | 株式会社 (KK) |
|---|---|---|
| 設立費用(実費) | 約6万円〜 | 約20万円〜 |
| 定款の認証 | 不要 | 必要(公証役場での手数料が必要) |
| 登録免許税 | 最低6万円 | 最低15万円 |
| 社会的信用度 | 株式会社に比べるとやや低い | 高い(一般的認知度が高い) |
| 利益の配分 | 自由に決められる | 出資比率に応じて配分 |
| 役員の任期 | 期限なし | 最長10年(更新手続きが必要) |
| 決算公告 | 不要 | 必要(官報掲載等に費用がかかる) |
このように、コスト面では合同会社が圧倒的に有利ですが、知名度や「見栄え」では株式会社に軍配が上がります。
設立費用の詳細比較:初期コストをどこまで抑えられるか
法人化にあたって最も分かりやすい違いが「設立費用」です。フリーランスにとって、初期コストの10万円、15万円の差は非常に大きいものです。
株式会社の設立費用内訳
株式会社を設立する場合、法定費用として以下の金額が確実に発生します。
- 登録免許税: 資本金の0.7%(最低15万円)
- 定款認証手数料: 約3万円〜5万円(資本金による)
- 定款の収入印紙代: 4万円(電子定款の場合は0円)
- 諸経費(謄本代等): 約2,000円
合計すると、自分で電子定款を使って手続きをしても最低約18万2,000円、紙の定款なら22万円以上かかります。
合同会社の設立費用内訳
一方、合同会社の場合は非常にシンプルです。
- 登録免許税: 資本金の0.7%(最低6万円)
- 定款認証手数料: 0円(不要)
- 定款の収入印紙代: 4万円(電子定款の場合は0円)
- 諸経費(謄本代等): 約2,000円
合計で約6万2,000円で設立可能です。株式会社と比較すると、その差は約12万円以上にもなります。この差額で、ハイスペックなPCを新調したり、デスク周りの環境を整えたりできると考えれば、合同会社のコストパフォーマンスの高さが際立ちます。
社会的信用とブランディング:どちらがビジネスを加速させるか
コスト面では合同会社が圧倒していますが、「信用」という目に見えない資産については、まだ株式会社の方が強いのが現実です。
株式会社を選ぶべきケース
もし、あなたのビジネスが以下のような特徴を持っているなら、株式会社を選んだ方が長期的なプラスになる可能性が高いでしょう。
- 大手企業との直接取引を目指している: 保守的な大手企業の中には、取引開始時の審査項目に「株式会社であること」を暗黙の了解としているケースが今でも存在します。
- 人材を採用する予定がある: 「合同会社の代表社員」よりも「株式会社の代表取締役」の方が、求職者やその家族に安心感を与えやすいという側面があります。
- 将来的に出資を受けたい、上場を目指したい: 合同会社は「所有と経営が一致」している形態であるため、外部から資本だけを入れるという株式会社のような仕組みには向いていません。
合同会社でも問題ないケース
逆に、以下のような場合は合同会社で十分です。
- BtoCビジネス(一般消費者向け): カフェの運営や個人向けのカウンセリング、Webサービスなどは、運営会社が合同会社か株式会社かを気にする消費者はほとんどいません。
- ITフリーランス(エンジニア、デザイナー): 技術力が何よりも優先される世界です。私の顧客でも、合同会社形態で大手企業のプロジェクトに参画しているエンジニアはたくさんいます。
ここで、ある有名な方の投稿を引用させていただきます。法人化のタイミングや形態に悩む方への一つの視点となるかもしれません。 税制上のメリットとランニングコストの差
「法人化すれば節税になる」というのはよく聞く話ですが、合同会社と株式会社で税率そのものに違いはありません。どちらも法人税、法人住民税、法人事業税が課されます。
しかし、毎年の「ランニングコスト」という点では差が出てきます。
役員の任期と登記費用
株式会社には役員の「任期」があります。非公開会社(譲渡制限会社)であれば最長10年まで延ばせますが、期限が来れば「重任登記」という手続きが必要です。 これには登録免許税が1万円(資本金1億円以下の会社の場合)かかり、司法書士に依頼すればさらに数万円の報酬が発生します。
一方、合同会社には役員の任期がありません。自分が辞めるか、誰かを追加しない限り、役員変更登記の必要はなく、その分のコストも発生しません。
決算公告の義務
株式会社は、毎決算期後に決算内容を一般に公開する「決算公告」の義務があります。官報に掲載する場合、毎年約3万円程度の費用がかかります。 これを怠ると過料の対象になる可能性もありますが、合同会社にはこの決算公告の義務自体がありません。
※ただし、これはあくまで「公告」の義務がないだけで、税務署への決算報告や申告の義務は、合同会社も株式会社も全く同じです。
利益配分の自由度:合同会社の「隠れたメリット」
ここが意外と知られていない、合同会社最大のメリットの一つです。
株式会社では、利益の配分(配当)は原則として「出資比率」に応じて行わなければなりません。100万円出した人は、10万円出した人の10倍の配当を受け取るのがルールです。
しかし、合同会社は定款で定めることにより、出資比率に関係なく利益を配分することができます。 例えば、「資金はAさんが90%出したが、技術と労力を提供したBさんに利益の70%を配分する」といった柔軟な設定が可能です。
共同で事業を立ち上げるフリーランス仲間がいる場合、この柔軟性は大きな武器になります。
ここで、マネーフォワード クラウドによる調査データを引用します。
マネーフォワード クラウドが会社設立経験者を対象に設立前の状況を調査した結果、全体の57.8%が会社設立前に個人事業主として事業を行っており、法人成りの形で会社を設立したことがわかりました。特に設立2〜3年以内の企業では75.2%に上り、まずは個人 事業主として手軽に始め、売上や利益が伸びたタイミングで合同会社などに法人化するケースが多い傾向にあります。 出典 (https://biz.moneyforward.com/establish/basic/51925/)
やはり、まずは個人で力をつけ、タイミングを見て法人化するというのが王道パターンのようです。
法人化のベストなタイミングはいつか?
会計事務所時代、私がお客様によくお伝えしていた目安は「利益(所得)が800万円を超えたとき」です。
個人事業主の場合、所得税は累進課税で最高45%まで上がりますが、法人税(中小法人)の実効税率は約23%〜34%程度に収まります。特に年間利益800万円以下の部分については、軽減税率が適用されるため、個人の所得税よりも低くなる逆転現象が起きやすくなります。
また、消費税の免税期間というメリットもあります。個人事業主として2年、法人化してさらに最大2年、合計4年近く消費税の納税義務を免除される可能性があります(※インボイス制度の導入により、このスキームは複雑化していますが、依然として法人化の大きな検討要素です)。
法人化を検討する前に、自身のスキルアップを図り、より高単価な案件を安定して受注できる基盤を作ることも重要です。
例えば、専門的な資格やスキルを習得することで、市場価値を高めることができます。厚生労働省の「教育訓練給付金制度」などを活用して、自己投資を行うのも賢い選択です。
こちらのページでは、国から受講費用の補助を受けられる対象講座を検索できます。法人化して経営者になる前に、最新のITスキルやマネジメント知識を身につけておくことは、将来の事業安定に直結します。
合同会社から株式会社への変更は可能か?
「今は予算がないから合同会社で始めて、大きくなったら株式会社にしたい」というご相談もよく受けます。
結論から言うと、可能です。これを「組織変更」と呼びます。 ただし、以下の費用がかかることを覚悟しておかなければなりません。
- 組織変更の登記: 登録免許税 合計6万円(株式会社設立3万円 + 合同会社解散3万円)
- 官報公告費用: 約3万円〜4万円(債権者保護手続きが必要なため)
- 司法書士報酬: 数万円〜10万円程度
合計で15万円〜20万円程度のコストが別途発生します。最初から株式会社にする費用と、後から変更する費用を天秤にかけて判断する必要があります。最初から株式会社にしていれば、この「二度手間」のコストはかからなかったわけですから 。
手続きの大変さ:書類作成の壁
前述の通り、株式会社設立には「定款認証」というステップがあり、公証役場へ足を運ぶ手間があります。合同会社はこのステップがまるごと省略できるため、手続きのスピード感も違います。
再びマネーフォワードの調査を引用します。
一方で、会社設立の手続きには苦労も伴うようです。会社設立の手続きで大変さを感じた項目を尋ねたところ、最も会社設立の手続きで大変さを感じた項目として挙げられたのは申請書類の作成で、48.7%でした。次いで、会社設立のやり方・ 手続きを調べること(44.9%)、会社の基礎情報を決定すること(37.5%)と続きます。 出典 (https://biz.moneyforward.com/establish/basic/51925/)
約半数近い人が「書類作成」に苦労しています。フリーランスが本業の合間にこれらを行うのはかなりの負担です。最近ではクラウド型の会社設立支援サービスも充実していますが、それでも基本情報を決めるのは自分自身です。
結局、どっちを選べばいいのか?
私の結論はこうです。
「合同会社」を選ぶべきフリーランス
- 初期費用をとにかく安く抑えたい
- 自分一人、あるいは家族経営で完結する予定
- 「株式会社」という肩書きがなくても取引に影響しない業種
- 将来的に上場や外部出資を考えていない
「株式会社」を選ぶべきフリーランス
- 将来的に社員を10名、20名と増やしていきたい
- 大手企業や官公庁との取引をメインにしたい
- 「社長」「代表取締役」としてのブランディングを重視したい
- 資金調達(出資)を受ける可能性がある
迷ったら「合同会社」で始めて、どうしても必要になった時に「株式会社」へ組織変更するというのが、フリーランスにとっては最もリスクの低い選択と言えるでしょう。
私自身の体験談:自宅兼オフィスの「盲点」
ここで、私が会計事務所時代に経験した、ある小さな失敗談をお話しします。 あるライターの方が合同会社を設立した際のことです。彼女は「自宅兼オフィス」で登記をしました。設立自体は非常にスムーズで、費用も7万円以下で済みました。
しかし、設立から3ヶ月後、彼女は泣きそうになりながら事務所に来られました。 「朝比奈さん、賃貸マンションのオーナーから『勝手に法人登記するな』って怒られてしまったんです……」
実は、居住用マンションの場合、契約書に「事務所利用不可」や「法人登記不可」と記載されていることが多く、無断で登記すると契約違反になるリスクがあります。結局、彼女は急いでバーチャルオフィスを契約し、本店の移転登記をする羽 目になりました。 この移転登記の登録免許税だけで3万円。せっかく合同会社で安く抑えたのに、手痛い出費となってしまいました。
ここ、意外と見落としがちなんです。法人化する際は、まずは今の作業場所が「登記可能か」を必ず確認してくださいね。
まとめ:自分に最適な形を選んで一歩踏み出そう
合同会社と株式会社、どちらを選ぶにせよ、法人化はあなたのビジネスが「次のステージ」に進むための大きな一歩です。
コストを抑えて実利を取るか、初期投資をして信用を買うか。 この記事の内容を参考に、今の自分に最も適した形を選んでください。
また、法人化すると「自分の給料(役員報酬)」を自分で決めることになります。これは個人事業主の時とは全く異なる感覚です。経営者としての視点を持つために、まずは今の自分の市場価値を正確に把握しておくことも大切です。
@SOHOのようなプラットフォームでは、多くの案件が公開されており、どのようなスキルが今求められているのか、その単価相場はいくらなのかをリアルタイムで知ることができます。
@SOHOは、エンジニアやクリエイター、ライターなど、多種多様なフリーランスが活躍する場です。 特に手数料0%で案件を探せる仕組みは、利益を最大化したい個人事業主や設立間もない法人にとって、非常に強力な味方となります。
よくある質問
Q. フリーランスが法人化した場合、これらの制度はどうなりますか?
法人化すると小規模企業共済は引き続き加入できますが、iDeCoの上限額が月23,000円に下がります(企業年金がない場合)。国民年金基金と付加年金は加入できなくなります。ただし、法人化すれば厚生年金に加入できるため、年金面ではメリットもあります。税金の仕組みについてはフリーランスの税金完全ガイドも併せてご覧ください。
Q. フリーランスでもビジネスローンの審査に通りますか?
はい、通ります。個人事業主専用のビジネスローンが多く登場しており、確定申告の実績があれば十分に可能です。最近では開業届を出して間もない方向けのプランも増えています。
Q. フリーランス 賃貸 審査 事務所は、独立1年目でも通りますか?
はい、可能です。ただし確定申告の実績がないため、預金残高の証明や、前職の年収証明、事業計画書の提出を求められるケースが多いです。審査に柔軟な不動産会社を選ぶことが重要です。
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この記事を書いた人
朝比奈 蒼
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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