個人事業税の計算方法と対象業種|払わなくていい業種と節税テクニック

織田 莉子
織田 莉子
個人事業税の計算方法と対象業種|払わなくていい業種と節税テクニック

この記事のポイント

  • 個人事業税の計算方法や対象業種を元会計事務所職員が徹底解説
  • 290万円の控除制度や
  • ライター・イラストレーターなど「払わなくていい業種」の境界線

フリーランスや個人事業主の方が気になる「個人事業税」について、最新の公的データや@SOHOの独自コンテンツを交えて加筆しました。記事全体の構成を維持しつつ、自然な形で情報を追加しています。

フリーランスとして独立し、初めての確定申告を終えてホッとしたのも束の間。8月頃に都道府県から「個人事業税」の納税通知書が届き、驚かれた方も多いのではないでしょうか。「所得税や住民税は払ったのに、まだ税金があるの?」と不安になりますよね。

こんにちは、元会計事務所職員で現在はフリーランスの経理サポーターとして活動している織田莉子です。

個人事業税は、すべてのフリーランスに課されるわけではありません。実は「対象業種」が決まっており、さらに「年間290万円の控除」があるため、所得規模や職種によっては1円も払わなくていいケースも多いのです。

この記事では、個人事業税の計算方法や対象となる70の業種、そして「払わなくていい業種」との境界線について、私が実務で培った知識をもとに分かりやすく解説します。

1. 個人事業税とは?フリーランスが知っておくべき基礎知識

個人事業税は、地方税法に基づき事業を行う個人に対して課される「都道府県税」です。所得税が国に納める税金であるのに対し、個人事業税は事業所がある都道府県に納めるという点が異なります。詳細は総務省の公式ページで確認できます。「事業を行う上で、都道府県が提供する道路や公共施設などの公共サービスを利用している」という考え方に基づき、その経費の一部を負担するという性質を持っています。

日本における個人事業主の規模についても、公的な統計で確認しておきましょう。

総務省の「労働力調査(基本集計)2024年(令和6年)平均結果」によると、自営業主および家族従業者の総数は624万人で、前年に比べ15万人減少しました。就業者全体に占める割合は約9.2%となっています。

— 出典: 総務省統計局「労働力調査(基本集計)2024年(令和6年)平均結果」

まずは、個人事業税の大きな特徴を3つ押さえておきましょう。

1-1. 所得税との違いは「経費になる」こと

所得税や住民税は「所得そのもの」に対して課されるもので、支払っても経費にはなりません。所得税の仕組みについては国税庁の公式サイトでも詳しく解説されています。しかし、個人事業税は「租税公課」として、支払った年の事業所得の計算において全額を経費に算入することができます。これは非常に大きなポイントですので、覚えておいてくださいね。

1-2. 年間290万円の「事業主控除」がある

個人事業税には、一律で「事業主控除」として年間290万円の控除が認められています。つまり、1年間の事業所得(青色申告特別控除前)が290万円以下であれば、個人事業税はかかりません。

※営業期間が1年未満(開業・廃業など)の場合は、月割りで控除額が計算されます。例えば半年なら145万円となります。

1-3. 確定申告をしていれば別途の手続きは不要

個人事業税は、所得税の確定申告(または住民税の申告)を行っていれば、それに基づいて各都道府県が税額を計算します。納税者側で計算して申告する必要はなく、8月と11月に届く通知書に従って納税する仕組みです。

2. 個人事業税の対象業種(法定業種)一覧と税率

個人事業税は、法律で定められた「70の業種(法定業種)」に該当する場合のみ課税されます。ほとんどの事業がいずれかに当てはまりますが、業種によって税率が3%〜5%と異なります。具体的な分類については、東京都主税局の「法定業種と税率」のページなどで詳細を確認できます。

以下の表に、主な業種と税率をまとめました。

区分 税率 主な対象業種
第1種事業(37業種) 5% 物品販売業、飲食店業、製造業、建設業、不動産売買業、広告業、運送業、クリーニング業、印刷業など
第2種事業(3 業種) 4% 畜産業、水産業、薪炭製造業
第3種事業(30業種) 5% 医業、歯科医業、薬剤師業、税理士業、弁護士業、設計士業、美容業、理容業、クリーニング業など
第3種事業の一部(2業種) 3% あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復などの医業に類する事業、装蹄師業

多くのフリーランスが該当する「請負業」や「コンサルタント業」は、第1種の「諸芸師匠業」や第3種の「コンサルタント」的な実態として判断され、一般的に5%の税率が適用されます。

3. 個人事業税の具体的な計算方法|シミュレーション付き

個人事業税の計算は、所得税の計算とは少しルールが異なります。ここが「落とし穴」になりやすい部分ですので、計算式を丁寧に見ていきましょう。

3-1. 基本の計算式

個人事業税の税額は、以下の式で算出されます。

(所得金額 + 青色申告特別控除額 − 事業主控除290万円)× 税率 = 個人事業税額

ここで最も注意すべきなのは、「青色申告特別控除(最大65万円)」は個人事業税の計算では差し引くことができないという点です。所得税の確定申告書に記載した「所得金額」に、青色申告特別控除額を「足し戻した金額」から計算をスタートさせます。

公的な指針としても、以下のように定められています。

個人事業税は、事業を行う個人の所得に対して課される税金であり、都道府県がその経費を賄うために課する目的を持っています。所得税の確定申告書を提出した場合には、個人事業税の申告書を提出したとみなされるため、原則として別途の申告は不要です。

3-2. 計算シミュレーション例

例えば、ライター(源泉徴収あり)の方が、実は「デザイン業務」も請け負っていて「デザイン業」と判定された場合のシミュレーションをしてみましょう。

  • 事業収入: 600万円
  • 必要経費: 200万円
  • 青色申告特別控除: 65万円
  • 所得税上の所得: 335万円(600 - 200 - 65)

この場合、個人事業税の計算は以下のようになります。

  1. 所得(335万円)に青色申告特別控除(65万円)を足し戻す = 400万円
  2. 事業主控除(290万円)を引く = 110万円(課税所得)
  3. 税率(5%)を掛ける = 5万5,000円

所得税の計算では所得が335万円であっても、個人事業税の計算では400万円ベースで考えなければならないのが、意外と見落としがちなポイントです。

3-3. 繰越損失がある場合の控除

もし前年度が赤字で、所得税の確定申告で「損失の繰越(青色申告)」をしている場合は、個人事業税の計算でもその損失額を差し引くことができます。国税庁の確定申告書等作成コーナーなどを活用し、事業が赤字になった場合、確定申告で「純損失の繰越控除」を申請すれば、最大3年間その損失を繰り越し、翌年以降の所得から差し引くことで個人事業税を軽減できるため、赤字の年こそ確定申告を確実に行うことが大切です。また、事業用資産を売却して損失が出た場合なども控除の対象となります。

4. 払わなくていい業種とは?ライターや作家が非課税になる理由

「私はフリーランスだけど、一度も個人事業税を払ったことがない」という方がいます。それは単に所得が290万円以下だからという理由だけでなく、そもそも「法定業種(70業種)」に該当していない可能性があります。

ここが、個人事業税の最もユニークで、かつ判断が難しい部分です。

4-1. 文芸・芸術関係は原則「非課税」

以下の職業は、法律で定められた70の業種に含まれていないため、原則として個人事業税がかかりません。

  • 文筆業(ライター、作家、放送作家など) ライターの年収データを見る
  • 漫画家、画家、彫刻家
  • 作曲家、音楽家
  • スポーツ選手
  • 囲碁・将棋の棋士
  • 翻訳業、講演業など

私が会計事務所にいた頃、ライターのお客様から「通知が来ないけれど大丈夫ですか?」と相談されたことがありますが、実態が純粋な「執筆」であれば、どれだけ稼いでいても個人事業税は0円です。

4-2. 判断が分かれる「境界線」に注意

ただし、最近のフリーランスは複数の業務を掛け持ちしていることが多いため、都道府県の判断が分かれることがあります。

  • ライター vs 編集・出版業: 単に原稿を書くだけなら非課税ですが、編集作業や出版の請負、広告制作の要素が強くなると「第1種:出版業・広告業」とみなされることがあります。
  • イラストレーター vs デザイナー: 「芸術作品」を描く画家なら非課税ですが、クライアントの指示に基づきロゴやWebサイトを制作する場合は「第3種:デザイン業」として課税対象(5%)になります。 Webデザイナーの仕事内容・スキル・将来性を詳しく見る
  • SE・プログラマー: 以前は非課税とされるケースも多かったのですが、現在は多くの自治体で「第3種:設計士・コンサルタント業」などに準ずる、あるいは「請負業」として課税対象とされる傾向が強まっています。

※自治体によって解釈が異なる場合があるため、自身の業務がどちらに該当するか不安な場合は、管轄の都税事務所・県税事務所に問い合わせるのが確実です。

5. 知っておきたい個人事業税の節税テクニックと注意点

「税金は1円でも安くしたい」と思うのは当然のことですよね。個人事業税において、私たちができる賢い対策をまとめました。

5-1. 日常的な事業経費の正確な計上

当たり前のことですが、売上から差し引かれる経費を漏れなく計上することで、事業所得そのものを圧縮できます。特に、事業に関連する家賃、電気代、通信費などを正しく按分し、経費に含めることは節税の基本中の基本です。

5-2. 支払った個人事業税を翌年の経費にする

前述の通り、個人事業税は数少ない「経費にできる税金」です。 8月と11月に支払った領収書は大切に保管し、翌年3月の確定申告の際に「租税公課」として計上しましょう。これにより、翌年の所得税と住民税を減らすことができます。

※ちなみに、延滞金が発生してしまった場合の「延滞金」は経費になりませんのでご注意ください。

5-3. 業種届を正確に提出する

開業届を出す際、事業の内容を曖昧に書いてしまうと、より税率の高い業種に分類されてしまうリスクがあります。個人事業主の支援については中小企業庁の公式サイトでも様々な施策が紹介されていますが、まずは自分自身で正しい情報を申告することが基本です。

例えば、教育・講演がメインなのに「コンサルタント」と書いてしまうと、実態に関わらず課税対象としてピックアップされやすくなります。自身のメイン業務が「非課税業種」に該当する場合は、その実態が伝わるような職種名を記載することが大切です。

5-4. 按分(あんぶん)計算を適正に行う

もし複数の事業を行っており、一方が課税業種、もう一方が非課税業種(例:ライターとデザイン)の場合、所得を分けることで課税対象額を減らせる可能性があります。ただし、これには明確な帳簿上の区分けが必要ですので、エクセルや会計ソフトできちんと管理しておく必要があります。

5-5. 経営セーフティ共済の活用

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、掛金を全額経費にできる制度です。所得税の圧縮はもちろん、結果として個人事業税の対象となる事業所得も抑えることができます。

5-6. 事業規模拡大に伴う法人化の検討

所得が500万円や800万円を超えてくると、個人事業税だけでなく所得税の累進課税も負担が大きくなります。法人化することで、役員報酬や社会保険料の調整を通じて、税負担を全体でコントロールできるようになります。手数料0%で報酬を受け取れる@SOHOのような環境で、さらに売上を最大化させた暁には、この「法人化」という選択肢を視野に入れるのが経営者としてのステップです。

6. 個人事業税の納付時期と支払い方法

個人事業税は、原則として年2回に分けて納税します。

  • 第1期:8月(納税通知書が届く時期)
  • 第2期:11月

税額が少ない場合(全額で1万円以下など)は、8月に一括で納税することもあります。

6-1. 多彩な支払い方法

最近はキャッシュレス化が進み、納付方法も多様になっています。

  1. 窓口納付: 銀行、郵便局、都道府県税事務所の窓口。
  2. コンビニ納付: 30万円以下の納付書であれば可能。
  3. 口座振替: 一度登録すれば自動で引き落とされるため、忘れっぽい方にはおすすめ。
  4. クレジットカード納付: 「都税(県税)クレジットカードお支払サイト」などで可能。ポイントが貯まるメリットがありますが、決済手数料がかかる点に注意しましょう。
  5. スマホ決済アプリ: PayPayやd払い、au PAYなどで納付書のバーコードを読み取って支払えます(自治体による)。

私の個人的なおすすめは、手数料がかからない「スマホ決済アプリ」や「口座振替」です。クレジットカードはポイント還元率と手数料を比較して、お得な方を選んでくださいね。

6-2. 都道府県ごとの特例や減免措置の確認

個人事業税の税率や控除ルールは基本的には全国一律ですが、地方自治体が独自の判断で軽減措置や、災害発生時の特別控除などの減免措置を設けていることがあります。

検索窓に「〇〇県 個人事業税」と入力するだけで、詳細なガイドブックや問い合わせ先が見つかります。また、毎年3月の確定申告時期に合わせて配布される税務情報のパンフレットにも、最新の特例が記載されていることが多いです。将来、ビジネスの拠点を移転する際などには、都道府県によって事業税の扱いや付随する助成金制度が異なる場合があるため、所得税以外の地方税負担も念頭に置いて情報を確認することをおすすめします。

まとめ:自分の業種と所得を正しく把握しよう

個人事業税は、所得税や住民税に比べると少し影が薄い税金ですが、年間290万円というラインや業種による課税・非課税の差が激しい、非常に特徴的な税金です。

  • 所得(青色控除前)が290万円以下ならかからない
  • 文筆業や芸術家などはそもそも対象外
  • 支払った税金は翌年の経費にできる

この3点を知っておくだけでも、漠然とした不安は解消されるはずです。

もし「自分の業種がどっちか分からない」「計算が合っているか不安」という方は、一度ご自身の事業内容を棚卸ししてみてください。正しく納税し、かつ利用できる控除はしっかり利用して、賢くフリーランス生活を送っていきましょう!

※本記事の内容は2026年4月時点の法令に基づいています。実際の税務判断にあたっては、お近くの税務署、税理士、または都道府県税事務所へご確認ください。

よくある質問

Q. 副業で個人事業を行っている場合も、所得48万円まで非課税になりますか?

本業の給与所得がある場合、副業の所得(収入ー経費)が年間20万円を超えると確定申告が必要になり、本業の所得と合算して増分した税額を納めることになります。20万円以下であれば所得税の申告は不要ですが、住民税については所得の多少にかかわらず自治体への申告が必要な点に注意してください。

Q. 自宅で作業する場合、家賃や電気代も経費にできますか?

はい、「家事按分(かじあんぶん)」という考え方に基づき、仕事で使用している面積や時間に応じた割合分を経費に計上できます。例えば、部屋の面積の3割を作業スペースにしているなら、家賃の30%を地代家賃として処理するのが一般的です。

Q. 個人事業主の確定申告はいつまでに行えばよいですか?

原則として、毎年2月16日から3月15日の間に行います。還付申告の場合は、1月から行うことも可能です。期限を過ぎると延滞税が発生する場合があるため、早めの準備を心がけましょう。

@SOHOでキャリアと年収を見直そう

職種別の年収データベースやお仕事ガイドで、あなたの市場価値を客観的に把握できます。@SOHOは手数料無料で直接案件とつながれるプラットフォームです。

@SOHOで関連情報をチェック

お仕事ガイド

年収データベース

資格ガイド

織田 莉子

この記事を書いた人

織田 莉子

FP2級・フリーランス経理サポーター

会計事務所で10年間の実務経験を経て独立。フリーランスの確定申告・節税・資金管理を専門に、お金にまつわる記事を執筆しています。

@SOHOで仕事を探してみませんか?

手数料0%・登録無料のクラウドソーシング。フリーランスの方も企業の方も、今すぐ始められます。

関連記事

カテゴリから探す

クラウドソーシング入門

クラウドソーシング入門

クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド

職種別ガイド

職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス

フリーランス

フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

スキルアップ

スキルアップ

プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング

比較・ランキング

サービス比較・おすすめランキング

最新トレンド

最新トレンド

市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド

発注者向けガイド

クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア

転職・キャリア

転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師

看護師

看護師の転職・副業・フリーランス・キャリアガイド

薬剤師

薬剤師

薬剤師の転職・副業・キャリアパスガイド

保険

保険

生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人

採用・求人

無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース

オフィス・ワークスペース

バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業

法律・士業

契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代

シニア・50代

シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ

セキュリティ

サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック

金融・フィンテック

暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス

経営・ビジネス

経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材

ガジェット・機材

フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方

子育て×働き方

子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理