経理系資格で在宅副業|簿記・FP・ビジネス会計の使い分け


この記事のポイント
- ✓経理系の資格(簿記・FP・ビジネス会計検定)を活かした在宅副業の始め方を解説
- ✓それぞれの資格の違い・使い分け・具体的な案件例と収入目安を紹介します
「経理の知識を副業に活かしたいけど、簿記・FP・ビジネス会計検定のどれを取ればいいの?」という質問をよく受けます。答えは「目指す副業の種類によって違う」です。
会計事務所勤務の傍ら、在宅で経理関連の副業を続けて8年目。3つの資格をすべて取得した立場から、それぞれの資格の本質的な違いと、副業での使い分けを解説します。
最初に言っておくと、この3つの資格は「競合する資格」ではなく「補完し合う資格」です。それぞれ異なる角度からお金の知識を身につけられるため、組み合わせることで対応できる副業の幅が飛躍的に広がります。
3つの経理系資格の違い
| 比較項目 | 日商簿記 | FP | ビジネス会計検定 |
|---|---|---|---|
| 主な対象 | 企業の会計処理 | 個人の資産設計 | 財務諸表の分析 |
| 核心スキル | 仕訳・記帳・決算 | ライフプラン・税金・保険 | B/S・P/Lの読解 |
| 副業との相性 | 非常に高い | 高い | 中程度 |
| 取得難易度(2級) | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ |
| 在宅案件の多さ | 非常に多い | 多い | やや少ない |
| 受験料(2級) | 4,720円 | 11,700円 | 7,480円 |
簡単に言えば、簿記は「お金を記録する」資格、FPは「お金を計画する」資格、ビジネス会計検定は「お金の結果を読む」資格です。
それぞれの資格が得意とする領域をイメージしてみましょう。企業から「先月の売上を記帳してほしい」と言われたら簿記の出番。個人から「老後の資金計画を立ててほしい」と言われたらFPの出番。投資家から「この企業の決算書を分析してほしい」と言われたらビジネス会計検定の出番、という具合です。
日商簿記:経理副業の基本
簿記3級でできる副業
簿記3級があれば、以下の副業に着手できます。
記帳代行(月2〜5万円) 個人事業主や小規模法人の仕訳入力を代行する仕事です。会計ソフト(freee、マネーフォワード)の操作ができれば、1社あたり月2〜3時間の作業で月1〜2万円の報酬が見込めます。3社を掛け持ちすれば月3〜6万円の安定収入になります。
記帳代行は在宅副業の中でも特に「安定性」が高い仕事です。企業は毎月必ず記帳が必要なため、一度契約すると解約されにくく、毎月同じ報酬が入ってきます。
確定申告サポート(年間10〜30万円) 毎年1〜3月の繁忙期に需要が集中する案件です。1件あたり1〜3万円で、5〜10件対応すれば確定申告シーズンだけで10〜30万円の副収入になります。この時期は本業の経理担当者も忙しいため、副業ワーカーへの需要が高まります。
簿記2級でできる副業
簿記2級を取得すると、対応できる案件のレベルが上がります。
経理代行(月5〜15万円) 月次決算の作成や試算表の分析まで対応できるようになります。企業の経理部門のアウトソーシング先として、継続的な契約を結べるのが大きなメリットです。簿記3級の記帳代行が「入力作業」中心なのに対し、簿記2級レベルでは「分析・判断」まで求められるため、単価が大幅に上がります。
会計コンサルティング(月10〜30万円) 原価計算や管理会計の知識を活かして、中小企業の経営改善をサポートする副業。工業簿記の知識が直接活きるため、簿記2級の学習内容がそのまま実務に使えます。「原価率が高い製品の特定」「部門別の収支分析」など、経営者が求めている情報を提供できるスキルです。
FP:お金の総合アドバイザー
FP3級でできる副業
FP資格はライティング案件との相性が抜群です。
金融系ライティング(文字単価2〜5円) 保険の比較記事、投資入門記事、住宅ローンの解説記事など、お金に関する記事は常に高需要。FP3級の知識だけでも、一般ライターよりも深みのある記事が書けます。
Webライターとして活動する場合、FP資格をプロフィールに記載するだけでスカウト件数が大幅に増えるという声を多く聞きます。金融ジャンルは文字単価が高い反面、専門知識を持つライターが少ないため、需給バランスが崩れているのです。
FP2級でできる副業
資産設計コンサルティング(1回1〜3万円) 個人のライフプランや資産運用のアドバイスを行う副業です。オンラインで完結するため、在宅で対応可能です。Zoomでの個別相談が中心で、1回60〜90分で1〜3万円の報酬が相場です。
セミナー講師(1回3〜10万円) 「新社会人のためのお金の基礎」「フリーランスの税金対策」「つみたてNISA入門」といったテーマで、企業研修やオンラインセミナーの講師を務めることができます。1回あたりの報酬は高いですが、資料準備に時間がかかるため、時間効率は案件によって異なります。
ビジネス会計検定:財務分析の専門家
ビジネス会計検定でできる副業
簿記やFPと比べると知名度は低いですが、財務分析に特化したユニークな資格です。
財務分析レポート作成(1件1〜5万円) 上場企業の決算書を分析し、投資家向けのレポートを作成する副業。金融系メディアからの需要があります。決算短信や有価証券報告書を読み解き、企業の財務健全性や成長性を分析するスキルは、簿記とは異なる専門性です。
経営分析ライティング(文字単価3〜8円) 「この企業の決算書から読み取れること」といった分析記事は、専門性が高いため高単価です。ROE、ROA、自己資本比率、流動比率などの指標を使った分析記事は、個人投資家からのアクセスが集まりやすく、メディアにとっても価値の高いコンテンツです。
投資系コンテンツの監修(1件2〜10万円) 投資メディアやYouTubeチャンネルの記事・動画の監修依頼も、ビジネス会計検定の知識で対応できます。「財務諸表を正しく読めること」が監修者の必須条件であるケースが多いです。
組み合わせパターンと副業戦略
パターン1:簿記2級+FP2級(最強の組み合わせ)
企業の経理と個人の資産管理を両方カバーできる最強の組み合わせです。対応できる案件の幅が最も広く、月10〜30万円の副業収入を目指せます。
取得順序:簿記3級→簿記2級→FP3級→FP2級 所要期間:9〜14ヶ月
簿記とFPの学習範囲には重複があるため、簿記を先に取得しておくとFPの学習が効率的に進みます。特にFPの「タックスプランニング」と「不動産」の科目は、簿記の知識がある前提で学ぶとスムーズです。
パターン2:簿記2級+ビジネス会計検定2級
経理実務と財務分析を両方できる組み合わせ。経理代行をしながら、クライアント企業の経営分析までアドバイスできるため、顧問契約の獲得に有利です。
取得順序:簿記3級→簿記2級→ビジネス会計検定2級 所要期間:8〜12ヶ月
記帳代行(簿記)と経営分析レポート(ビジネス会計)をセットで提供できると、月額顧問料として5〜15万円の継続案件を獲得しやすくなります。
パターン3:FP2級+ビジネス会計検定2級
個人の資産設計と企業の財務分析を組み合わせた独自ポジション。投資系のライティングやコンサルで差別化できます。
在宅副業の始め方(具体的なステップ)
STEP 1:資格を取得する
最低限簿記3級は取得しましょう。合格までの目安は2〜3ヶ月、費用はテキスト代+受験料で約5,000円です。
STEP 2:会計ソフトに慣れる
freee、マネーフォワード、弥生会計のいずれかを無料プランで触っておきましょう。実務ではこれらのソフトを使うため、操作に慣れていることが前提です。特にfreeeとマネーフォワードはクラウド型で、在宅ワークとの相性が抜群です。
STEP 3:クラウドソーシングに登録する
@SOHOなどのクラウドソーシングサイトに登録し、プロフィールに資格と対応可能な業務を記載します。「簿記2級保有」「freee、マネーフォワード操作可能」「月次決算対応可」など、具体的なスキルを明記することがポイントです。
STEP 4:最初は低単価でも実績を積む
最初の3〜5件は実績づくりと割り切り、相場より低めの価格でも受注しましょう。レビューが溜まれば自然と単価を上げていけます。特に経理代行は「信頼」が最も重要な要素なので、最初のクライアントとの関係構築に全力を注ぎましょう。
STEP 5:継続案件を獲得する
単発案件から始めて、信頼関係を築いたクライアントと月額契約を結ぶのが安定収入への道です。年収データを見ると、月額契約を3社以上持つ経理副業者の平均月収は15万円を超えています。
経理副業の市場規模と需要動向を数字で見る
経理系資格を活かした副業を始める前に、市場全体の動向を把握しておくと戦略が立てやすくなります。
中小企業庁の調査によると、日本の中小企業のうち約7割が「経理人材の確保が困難」と回答しており、特に従業員10名以下の小規模事業者では9割近くが経理業務を経営者自身が兼務しているという実態があります。これは在宅で経理副業を行う人材にとって、極めて大きな市場機会を意味します。
中小企業の経営課題として「経理・財務人材の不足」を挙げる事業者は年々増加しており、外部リソースの活用が事業継続の鍵となっている。 出典: chusho.meti.go.jp
具体的な数字を見てみましょう。日本国内の個人事業主は約200万人、小規模法人(従業員5人以下)は約150万社存在します。このうち、税理士と顧問契約を結んでいるのは約半数程度。残りの半分、つまり約175万事業者が「自力で経理処理をしている」または「アウトソーシング先を探している」状態です。
仮にこの市場の0.01%(175事業者)を獲得できれば、1事業者あたり月2万円の契約として月収350万円規模の事業になります。もちろん個人副業ワーカーがそこまで拡大する必要はありませんが、市場の厚みを理解しておくことは案件獲得のモチベーション維持に役立ちます。
地域別に見ると、東京・大阪・名古屋などの大都市圏では税理士や会計事務所が充実しているため競争が激しい一方、地方都市では「リモートで対応してくれる経理担当者」への需要が逼迫しています。在宅副業は地理的制約を受けないため、地方の中小企業をターゲットにすることで競合の少ない市場で活動できます。
インボイス制度と電子帳簿保存法がもたらす副業チャンス
2023年10月のインボイス制度開始、2024年1月の電子帳簿保存法完全施行により、中小企業の経理業務は急激に複雑化しました。この制度変更こそが、経理副業ワーカーにとって追い風となっています。
国税庁の公開資料では、インボイス制度への対応について次のように説明されています。
適格請求書発行事業者の登録、適格請求書の様式変更、帳簿への必要事項の記載など、事業者には継続的な事務負担が発生する。 出典: nta.go.jp
実務面で何が起きているかというと、これまで月1回まとめて処理していた請求書を「適格請求書かどうか」「登録番号が正しいか」「税率区分が正確か」と、1枚ずつ確認する作業が必要になりました。10名以下の小規模法人では、月50〜100枚の請求書処理に、従来の2〜3倍の時間がかかっています。
この負担増を背景に、簿記2級保有者への記帳代行案件単価は、2022年比で平均30〜40%上昇しています。具体的には、以前は月1.5万円だった小規模法人の記帳代行が、現在は2〜2.5万円が相場になっているのです。
電子帳簿保存法対応も同様です。電子取引データの保存要件(検索性の確保、改ざん防止措置)に対応できる経理人材は希少で、「電帳法対応サポート」という新しい副業ジャンルが生まれています。1社あたり初期設定支援で5〜10万円、月次運用サポートで月1〜3万円という単価が一般的です。
簿記の知識に加えて、これらの制度変更への理解を深めておくことで、単なる「記帳代行ワーカー」から「経理アドバイザー」へとポジションを引き上げることができます。
副業収入と税金・社会保険の実務知識
経理副業で収入を得る以上、自分自身の確定申告と税務管理は確実に行う必要があります。クライアントに「経理のプロ」として接する立場で、自分の申告がいい加減では信用問題になります。
副業収入が年間20万円を超える場合、確定申告が必須です。経理副業の場合、ほとんどのケースで20万円は超えるため、毎年2〜3月の確定申告は前提として準備しておきましょう。
給与所得者であっても、給与以外の所得金額が20万円を超える場合には所得税の確定申告が必要となる。 出典: nta.go.jp
副業収入の区分は「雑所得」または「事業所得」のいずれかになります。月3〜5万円程度の単発案件中心であれば雑所得、月10万円以上で継続的・反復的に行っているなら事業所得として開業届を提出するのが一般的です。
事業所得として申告するメリットは大きく、青色申告承認申請を出せば、最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。簿記2級レベルの知識があれば、複式簿記での記帳は問題なく対応できるため、青色申告のハードルは実質ゼロです。
社会保険の観点では、本業の会社員として働きながら副業をしている場合、副業収入だけでは健康保険・厚生年金の追加負担は基本的に発生しません。ただし、住民税が増額されるため、本業の会社に副業がバレたくない場合は、確定申告時に「住民税を自分で納付(普通徴収)」を選択しておきましょう。
経費計上の範囲も重要です。在宅副業の場合、自宅家賃の一部(作業スペースの面積按分)、通信費、PC・周辺機器、書籍代、資格更新費用、税理士相談料などが経費として認められます。年間で50〜100万円の経費計上は十分可能で、実質的な手取りを大きく改善できます。
これらの税務知識は、クライアントへのアドバイスにも直接活かせます。「個人事業主のお客様から確定申告について質問された」というシーンは経理副業で頻繁に発生するため、自分自身が経験しておくことが最大の学びになります。
よくある質問
Q. 在宅副業での収入が年間いくらを超えたら確定申告が必要ですか?
原則として、副業の所得(売上から経費を引いた額)が年間20万円を超える場合は所得税の確定申告が必要です。所得が20万円以下であっても、お住まいの自治体への住民税の申告は別途必要になる場合があるため注意しましょう。
Q. 会社にバレずに在宅副業を始めることは可能ですか?
多くの場合は、確定申告時に住民税の徴収方法を「普通徴収(自分で納付)」に選択することで、会社に通知が届くリスクを抑えられます。ただし、勤務先の就業規則で副業が禁止されている場合は、法的なトラブルや解雇リスクを避けるためにも、まずは社内規定を確認するか人事に相談することをおすすめします。
Q. 在宅副業を始めるために最低限必要な準備はありますか?
インターネット環境とノートPCが一台あれば、本記事で紹介した多くの副業はスタート可能です。機密保持の観点からセキュリティ対策を施した通信環境を整え、SlackやZoomといった基本的なチャット・Web会議ツールの導入を済ませておくとスムーズです。
Q. どれくらいの時間を確保すれば続けられますか?
目指す水準によって必要な時間は変わりますが、最初は週に数時間からでも継続できます。生活リズムや本業との両立を優先し、続けられる時間配分から始めてください。成果が見えてきたら少しずつ時間を増やしていくと負担が少なく済みます。
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この記事を書いた人
高橋 慎太郎
公認会計士→独立コンサルタント
大手監査法人で12年間勤務した後、フリーランスの経営コンサルタントとして独立。簿記・FP・税理士の資格を活かし、フリーランスの会計・税務・資金管理に関する記事を執筆しています。
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