フリーランスのiDeCo|掛金上限7.5万円の節税効果を年収別に試算


この記事のポイント
- ✓フリーランス(第1号被保険者)のiDeCo掛金上限は制度改正で月6.8万円から7.5万円に引き上げ
- ✓年収別の節税効果の試算
- ✓小規模企業共済との併用
フリーランスとして働く私たちにとって、避けて通れないのが「老後資金」と「節税」の問題です。会社員のような厚生年金や退職金がない分、自ら備える必要があります。そんな中、2026年12月の制度改正で、個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出上限額が月額7.5万円(年額90万円)へと大幅に引き上げられる予定(2027年1月拠出分から。現行は月6.8万円)なのは、まさに「フリーランス大増税時代」の救いとも言えるニュースです。
本記事では、会計事務所で10年間、数多くの確定申告をお手伝いしてきた私が、この「月7.5万円」という新しい上限をフル活用した場合の節税効果を具体的に試算しました。2026年時点での最新情報を踏まえ、損をしないための運用戦略を余すところなくお伝えします。なお本記事執筆時点(2026年7月)では上限はまだ現行の月6.8万円であり、7.5万円は2027年1月拠出分から適用される予定の数字である点を、あらかじめご承知おきください。
1. iDeCoの基本と2026年の改正点|フリーランスの掛金上限はどう変わった?
まずは、今回の制度改正の内容を正しく把握しておきましょう。フリーランス(国民年金第1号被保険者)にとって、iDeCoは単なる積立投資ではなく、「最強の節税ツール」としての側面が今回の改正でさらに強化される予定です。
掛金上限が月額7.5万円へ引き上げられる背景
現行(2026年7月時点)、自営業者・フリーランスのiDeCoの掛金上限は、付加保険料や国民年金基金との合算で月額6.8万円です。しかし、公的年金の補完として私的年金の重要性が高まったこと、そして会社員の企業型DCとの公平性を担保する観点から、2027年1月拠出分から月額7.5万円(年間90万円)へと引き上げられる予定です。
この改正の背景には、インフレ対策としての資産形成を国が後押ししたいという意図もあります。私たちフリーランスにとっては、所得から差し引ける額(所得控除)が増えることを意味しており、非常に大きなチャンスです。
厚生労働省の資料によれば、iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入者数は着実に増加しており、特に自営業者等を含む第1号被保険者の加入者数は2023年時点で100万人を突破しました。2026年の改正は、働き方の多様化に対応し、フリーランスの自助努力による資産形成をより強力に支援することを目的としています。
フリーランス(第1号被保険者)にとってのメリット
フリーランスがiDeCoを利用するメリットは、主に以下の3点に集約されます。
- 掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引ける。
- 運用益が非課税で再投資される。
- 受け取り時にも税制優遇(退職所得控除や公的年金等控除)がある。
特に「全額所得控除」の効果は絶大です。2027年1月拠出分からの新上限では、年間最大90万円を所得から差し引けるようになる予定のため(現行は年間最大81.6万円)、所得税率が高い方ほど、手元の現金を残しながら資産を増やすことが可能になります。
【注意】国民年金基金との枠の共有について
※ここで注意が必要なのは、この上限枠(現行6.8万円、2027年1月拠出分から7.5万円の予定)は「国民年金基金」との合算枠であるという点です。すでに国民年金基金に加入している方は、その掛金を差し引いた残りの額がiDeCoの拠出上限となります。
2. 【試算】月7.5万円拠出した場合の圧倒的な節税効果
「実際にどれくらい税金が安くなるの?」という疑問に答えるため、年収(所得)別の節税シミュレーションを作成しました。会計事務所時代、多くの方がこの具体的な数字を見て「もっと早く始めればよかった」と仰っていたのが印象的です。
年収別・所得税+住民税の年間軽減額一覧
以下の表は、フリーランスがiDeCoで月額7.5万円(年間90万円)を拠出した場合の、1年あたりの節税見込み額です(住民税は一律10%で計算)。
| 課税所得(経費・基礎控除後) | 所得税率 | 年間の節税額(所得税+住民税) |
|---|---|---|
| 300万円 | 10% | 180,000円 |
| 500万円 | 20% | 270,000円 |
| 800万円 | 23% | 297,000円 |
| 1,000万円 | 33% | 387,000円 |
| 2,000万円 | 40% | 450,000円 |
※実際の節税額は、他の所得控除(配偶者控除や医療費控除など)の状況により変動します。正確な金額は、確定申告書を作成する際にご確認ください。なお、具体的な所得税の税率については、国税庁の所得税の税率ページで詳細を確認できます。
例えば、課税所得が500万円の方であれば、年間で27万円もの税金が安くなります。これは、「90万円を積み立てるのに、実質的な自己負担は63万円で済む」という計算になります。利回りに換算すると、投資を始める前から既に30%の利益が確定しているようなものです。
30年運用した場合のシミュレーション
次に、この節税メリットを享受しながら、年利3%で30年間運用した場合の資産推移を見てみましょう。
- 毎月の拠出額: 7.5万円
- 運用期間: 30年
- 想定利回り: 3%(複利)
- 積立総額: 2,700万円
- 運用結果: 約4,370万円
- 30年間の節税総額: 約810万円(課税所得500万円の場合)
運用益の約1,670万円が非課税になるだけでなく、800万円以上の税金を払わずに済むという事実は、フリーランスの将来設計において無視できない数字です。大阪で育った私としては、「これだけ得をするとわかっていてやらないのは、本当にもったいない!」と声を大にして言いたくなります。
3. フリーランスがiDeCoを運用する際の注意点と戦略
節税効果が高いiDeCoですが、フリーランス特有のリスクや他の制度との兼ね合いも考慮する必要があります。賢く使うための戦略を解説します。
小規模企業共済との併用・優先順位
フリーランスには、もう一つの強力な節税手段として「小規模企業共済」があります。こちらも掛金が全額所得控除になります。詳細は中小企業庁の公式サイトで確認できます。
| 制度名 | 掛金上限(月額) | 特徴 |
|---|---|---|
| iDeCo | 現行6.8万円/2027年1月拠出分から7.5万円(予定) | 自分で投資先を選んで運用する。 |
| 小規模企業共済 | 7.0万円 | 倒産防止や廃業時の退職金。貸付制度あり。 |
戦略のポイント:
- まずは小規模企業共済: 資金繰りが悪化した際に「貸付」を受けられるため、事業のセーフティネットとして優先度が高いです。
- 余裕があればiDeCoを最大化: 資産形成(投資)の側面を重視するなら、2027年1月拠出分から上限が増える予定のiDeCoを活用しましょう。
理想は「両方の制度をフル活用すること」ですが、合計で月14.5万円の固定支出になります。無理をして事業資金を圧迫しては本末転倒ですので、まずは小規模企業共済で月1〜3万円、iDeCoで月2〜3万円といった具合に、バランスを見ながら始めるのが賢明です。自身のスキルを再定義し、より高単価な案件を目指すことで、iDeCoの掛金を安定して捻出するキャリア戦略も重要になります。 Webデザイナーの仕事内容・スキル・将来性を詳しく見る
iDeCo・国民年金基金・付加保険料・小規模企業共済の徹底比較
小規模企業共済との比較だけでなく、フリーランス(第1号被保険者)が使える節税・積立制度を横断的に整理しておきましょう。「掛金の枠がどこまで共有されているか」を理解していないと、知らないうちに上限を超えて拠出してしまったり、逆に枠を余らせてしまったりします。
| 制度名 | 税制優遇 | 流動性(途中引き出し・解約) | 上限枠の関係 |
|---|---|---|---|
| iDeCo | 掛金は全額「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除。運用益は非課税。受取時も退職所得控除・公的年金等控除の対象。 | 原則60歳まで資産を引き出せない。掛金の減額・拠出停止(運用指図者への切替)は可能だが、積み立てた資産そのものの解約・払い戻しはできない。 | 国民年金基金の掛金・国民年金の付加保険料と合算枠(現行68,000円、2027年1月拠出分から75,000円の予定)。 |
| 国民年金基金 | 掛金は社会保険料控除として所得から全額控除。 | 任意脱退・中途解約は原則できない。老齢基礎年金に上乗せする終身年金として受け取る仕組みで、一時金化の自由度は低い。 | iDeCoと合算枠を共有する(同上の枠内)。 |
| 付加保険料 | 掛金(月400円)は社会保険料控除の対象。 | 国民年金保険料と一体で納付するため、単独での引き出しはできない。 | iDeCo・国民年金基金と合算枠を共有する(付加保険料を納付している月はその分iDeCoに回せる枠が目減りする)。 |
| 小規模企業共済 | 掛金は全額「小規模企業共済等掛金控除」の対象(iDeCoと控除の種類は同じだが上限枠は別建て)。 | 貸付制度があり事業資金の調達に使える。任意解約も可能だが、加入期間が12ヶ月未満での解約は掛け捨てになるなど元本割れのリスクがある。 | iDeCoとは完全に別枠(月額上限70,000円)。iDeCoの拠出上限を消費しない。 |
こうして並べると、iDeCo・国民年金基金・付加保険料の3つは「同じ財布(合算枠)」を分け合っている制度であり、小規模企業共済だけは「別の財布」であることがわかります。すでに国民年金基金や付加保険料を利用している方は、iDeCoの拠出額を決める前に、まず合算枠のうちどれだけを他制度で使っているかを確認してください。制度ごとの正確な要件・手続きは、国民年金基金連合会や各実施機関の公式情報で最新の内容を確認することをお勧めします。
出口戦略:一時金か年金か?退職所得控除の活用
「iDeCoは受け取る時に税金がかかるから意味がない」という意見を聞くことがありますが、これは半分正解で半分間違いです。フリーランスの場合、受け取り方を工夫することで、税金を最小限に抑えることができます。
- 一時金受取: 「退職所得控除」が適用されます。フリーランスには本来ない「退職金」として扱われるため、非常に大きな非課税枠が使えます。
- 年金受取: 「公的年金等控除」が適用されます。
おすすめは、退職所得控除の枠内で「一時金」として受け取り、残りを「年金」として受け取る併用方式です。2026年時点の税制では、勤続年数(iDeCo加入期間)に応じた控除額が設定されていますので、加入期間を1年でも長くすることが節税のコツです。
※ここ、意外と見落としがちなんです
iDeCoの掛金は、原則として60歳まで引き出すことができません。急な入院や機材の故障、売上の激減など、フリーランス特有のトラブルに備えるための「生活防衛資金(最低でも生活費の6ヶ月〜1年分)」を確保した上で、拠出額を決めるようにしてください。
4. 2026年版・おすすめの金融機関と商品選びのポイント
2026年現在、iDeCoを取り扱う金融機関は非常に多く、どこを選べばいいか迷ってしまう方も多いでしょう。会計事務所で多くの顧問先を見てきた経験から、選定基準を明確に示します。
手数料の安さは絶対条件
iDeCoには、加入時や毎月の運用にかかる手数料があります。特に「運営管理手数料」が無料の金融機関を選ぶことは必須条件です。
- 国民年金基金連合会への手数料: 月額105円(共通)
- 事務委託先金融機関への手数料: 月額66円(共通)
- 運営管理手数料: 0円〜500円程度(金融機関により異なる)
毎月数百円の差でも、30年積み重なれば数十万円の差になります。ネット証券大手(SBI証券、楽天証券、マネックス証券など)であれば、運営管理手数料は基本的に0円です。各金融機関が提供している商品ラインナップについては、iDeCo公式サイトの運営管理機関一覧から最新の情報を確認できます。銀行の窓口などで勧められるままに高い手数料のプランに加入しないよう、十分にご注意ください。
信託報酬を抑えたインデックスファンドの選び方
商品選びでは、個別の株を当てるようなギャンブルは不要です。市場全体に投資する「インデックスファンド」を選び、かつ「信託報酬(管理コスト)」が極めて低いものを選びましょう。
2026年現在のトレンドとしては、以下のカテゴリが主流です。
- 全世界株式(オール・カントリー): これ一本で世界中の株式に分散投資できます。
- 米国株式(S&P500): 成長性の高い米国企業に集中投資します。
- 先進国債券: リスクを抑えたい場合に組み合わせます。
フリーランスは、事業自体が一種のリスク資産と言えます。そのため、iDeCoのポートフォリオは「全世界株式」や「米国株式」を中心とした、シンプルかつ低コストな運用をお勧めします。
5. 【実践】フリーランスのためのiDeCo加入・増額の手順
制度改正を受けて、これから加入する方、あるいは現在加入中で掛金を増額したい方のための手順を整理しました。
必要書類とオンライン申請の流れ
現在はほとんどの金融機関でオンライン完結の申し込みが可能です。金融機関の選定に迷った際は、iDeCo公式サイトで基本的な制度の仕組みを再確認することをお勧めします。
- 金融機関の選定: 前述の通り、手数料の安いネット証券を選びます。
- 基礎年金番号の確認: 年金手帳やマイナポータルで確認してください。
- 登録情報の入力: 職業を「第1号被保険者(自営業・フリーランス)」として登録します。
- 掛金額の設定: 現行の上限6.8万円(2027年1月拠出分からは7.5万円に引き上げ予定)を意識して設定します。
- 引落口座の設定: 事業用口座ではなく、プライベートの口座から引き落とすのが経理処理上はスムーズです。
新規加入の際に事前に準備しておきたい書類は、主に次の3点です。
・基礎年金番号がわかるもの(年金手帳、基礎年金番号通知書、ねんきん定期便のいずれか) ・本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等) ・掛金の引き落とし口座の情報(口座番号がわかる通帳やキャッシュカード、金融機関により銀行印が必要な場合あり)
申込書類を提出すると、受付をした金融機関(運営管理機関)が内容を確認したうえで国民年金基金連合会に資格審査を回します。ここでは「第1号被保険者としての要件を満たしているか」「国民年金保険料に未納がないか」といった点が確認されるため、申込から加入手続きの完了までは1〜2ヶ月程度かかるのが一般的です。急いで節税効果を得たい場合ほど、余裕を持って早めに申し込んでおくことが重要になります。加入が完了すると、金融機関から口座開設の通知が届き、そこから実際の掛金の引き落としと運用がスタートします。
掛金変更のタイミングと手続き
すでにiDeCoに加入している方が掛金を増額する場合(現行の上限6.8万円まで、または2027年1月拠出分からの新上限7.5万円まで)、年に1回(12月から翌年11月の間)だけ変更手続きが可能です。
- 手続き方法: 利用している金融機関のマイページから「加入者掛金額変更届」をオンライン提出するか、書類を取り寄せて郵送します。
- 反映時期: 申し込みから反映まで1〜2ヶ月かかる場合があります。早めの手続きを心がけましょう。
収入が不安定な年の掛金対応(減額・拠出停止の手続き)
フリーランスは会社員と違い、月々の収入が一定とは限りません。売上が落ち込んだ年に、無理をして掛金を拠出し続けると事業資金や生活防衛資金を圧迫してしまいます。iDeCoには、こうした収入変動に対応するための仕組みが用意されています。
・掛金の減額: 掛金額は年に1回(12月〜翌年11月の間)変更でき、増額だけでなく減額も可能です。掛金の下限は月額5,000円で、1,000円単位で設定できます。 ・拠出の一時停止(運用指図者への切替): 掛金の拠出そのものを一時的に止めたい場合は、加入資格を喪失する届出を提出し「運用指図者」に切り替えることで対応します。この間は新規の掛金拠出は行われませんが、それまでに積み立てた資産の運用は継続されます。 ・再開時の手続き: 収入が回復し拠出を再開する場合は、改めて加入者としての手続きが必要です。反映までには申込から1〜2ヶ月程度かかることがあるため、再開のタイミングは早めに見込んでおきましょう。
注意したいのは、国民年金保険料そのものを未納にしている月は、第1号被保険者としてiDeCoに拠出する資格自体がないという点です。資金繰りが厳しい年こそ、国民年金保険料の納付を優先し、iDeCoは掛金の減額・停止で調整するという順番を守ることをお勧めします。運用指図者に切り替えた場合も、事務委託先金融機関への手数料(月額66円)などは発生し続けるため、その点も踏まえて金融機関に確認してください。具体的な届出書の名称や手続き方法は金融機関によって呼び方が異なるため、必ず利用中の金融機関または国民年金基金連合会に確認するようにしてください。
※法的な免責事項:本記事に記載された試算結果や税制に関する情報は、2026年4月現在の法令に基づいています。将来の制度変更や、個別の状況による差異が生じる可能性があるため、具体的な投資判断や税務申告に際しては、税理士やFPなどの専門家にご相談いただくか、最新の公的資料をご確認ください。
まとめ:2026年はフリーランスの「老後資金」元年
2027年1月拠出分から予定されているiDeCo掛金上限7.5万円への引き上げ(現行は6.8万円)は、私たちフリーランスにとって「自分で自分を守る力」を強化する最大のチャンスです。
年間90万円を積み立てれば、節税額だけで年間数十万円が手元に残ります。この資金を事業の再投資に回すも良し、家族との思い出に使うも良し、あるいはさらにNISAでの運用に回すも良し。
「数字が苦手だから」「手続きが面倒だから」と後回しにするのは、大阪人の私からすれば「1万円札が落ちているのに拾わない」ようなものです。この記事をきっかけに、まずは金融機関のサイトでシミュレーションをすることから始めてみてください。
6. 【比較表】iDeCo掛金上限は会社員と自営業でいくら違う?(2026年版)
「iDeCoの掛金上限は会社員と自営業でどう違うのか」という疑問に、区分別の一覧表で答えます。結論として、2027年1月拠出分からの新上限では、フリーランス・自営業(第1号被保険者)の上限が月額7.5万円となり、全区分の中で最も大きな枠が与えられる予定です(現行は月6.8万円)。会社員の2倍以上の枠がある理由は、厚生年金や退職金という「2階部分」を持たないフリーランスに、自助努力の器を大きく用意する必要があるからです。
| 被保険者区分 | 現行の上限(月額) | 2027年1月拠出分からの上限(月額・予定) |
|---|---|---|
| 自営業・フリーランス(第1号) | 68,000円(国民年金基金・付加保険料と合算) | 75,000円(同じく合算) |
| 会社員(企業年金なし・第2号) | 23,000円 | 62,000円 |
| 会社員(企業型DC等あり・第2号) | 20,000円 | 事業主掛金と合算で62,000円 |
| 公務員(第2号) | 20,000円 | 事業主掛金相当と合算で62,000円 |
| 専業主婦・主夫(第3号) | 23,000円 | 23,000円(据え置き) |
会社員側の上限も2027年1月拠出分から大きく引き上げられる予定のため「フリーランスの優位性が薄れる」ように見えますが、会社員は企業型DCの事業主掛金と合算した枠である一方、フリーランスの7.5万円は丸ごと自分の意思で使える枠です。年間ベースでは第1号が90万円、第2号が最大74.4万円と、依然として15万円以上の差があります。なお、区分ごとの適用条件や施行スケジュールの詳細は今後の政省令で確定し個別の状況でも変わり得るため、加入・増額前にiDeCo公式サイトや利用中の金融機関で最新の条件を確認してください。
被保険者種別ごとの掛金上限|現行と2027年1月からの新上限を整理
ここまでの内容を、時点を分けて改めて整理します。本記事執筆時点(2026年7月)では、iDeCoの拠出上限はまだ現行のままです。2026年12月に見込まれる制度改正は、2027年1月の拠出分から適用される予定であり、記事中に登場する「7.5万円」「6.2万円」といった新しい上限は、いずれもこの2027年1月以降の数字である点を混同しないようにしてください。
| 被保険者区分 | 現行の上限(〜2026年内の拠出分) | 2027年1月拠出分からの新上限(2026年12月改正予定) |
|---|---|---|
| 第1号(自営業・フリーランス等) | 68,000円(国民年金基金の掛金・国民年金の付加保険料と合算) | 75,000円(同じく合算枠) |
| 第2号(企業年金なしの会社員等) | 23,000円 | 62,000円(企業年金等と合算) |
| 第2号(企業型DCありの会社員等) | 20,000円 | 事業主掛金と合算で62,000円 |
| 第2号(公務員) | 20,000円 | 事業主掛金相当と合算で62,000円 |
| 第3号(専業主婦・主夫) | 23,000円 | 23,000円(据え置き) |
すでに現行の上限を前提に掛金を設定している方は、2027年1月分から自動的に上限が引き上がるわけではありません。増額したい場合は、本記事で解説した「加入者掛金額変更届」の提出が別途必要になります。年に1回しか変更できないという制約とあわせて、2026年内のうちに変更手続きのタイミングを確認しておくと安心です。なお、施行時期や上限額の詳細は今後の政省令で確定するため、最終的な数値・スケジュールは必ずiDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)や利用中の金融機関の最新情報でご確認ください。
フリーターや副業会社員の場合はどの区分になる?
フリーターの方は、勤務先で厚生年金に加入していなければ「第1号被保険者」となり、フリーランスと同じ枠(現行6.8万円、2027年1月拠出分から7.5万円の予定)が使えます。一方、アルバイト先で社会保険(厚生年金)に加入している場合は「第2号被保険者」となり、会社員と同じ枠が適用されます。会社員をしながら副業をしている人も、本業で厚生年金に入っている限り第2号の枠です。「働き方は自由業に近いのに、区分は年金の加入状態で決まる」という点は誤解が多いので注意してください。
7. 「上限は月額68,000円」で止まっている人へ|現行と新上限の違い・増額手続き
現行(2026年7月時点)の自営業者・フリーランスのiDeCo掛金上限は月額68,000円で、これはまだ有効な数字です。ただし2026年12月の制度改正で、2027年1月拠出分から上限が月額75,000円へ引き上げられる予定です。改正後も68,000円のまま掛金設定を放置していると、新しい枠を使い切れず、年間84,000円分の所得控除枠(月7,000円×12ヶ月)を活かせないことになります。課税所得500万円(所得税率20%+住民税10%)の人なら、上限まで増額するだけで年間約25,000円の追加節税が見込めます。
新上限の施行に備えて、確認・対応しておきたいことは次の3つです。
- 現在の掛金設定額を確認する: 金融機関のマイページで、月額掛金がいくらに設定されているかを確認します。上限まで拠出したい場合、現行では68,000円、2027年1月拠出分からは75,000円が目安になります。
- 国民年金基金・付加保険料との合算を再計算する: 上限枠は国民年金基金・付加保険料(月額400円)との合算です。付加保険料を納めている人は、iDeCoに充てられる額がその分目減りする点に注意してください。
- 「加入者掛金額変更届」を提出する: 本文で述べた通り、掛金変更は年1回だけ可能で、反映まで1〜2ヶ月かかります。新上限に合わせて増額したい場合は、施行時期を見込んで早めに手続きしましょう。
なお、古い情報と新しい情報が混在している時期は、金融機関の比較サイトよりも、iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)や利用中の証券会社の公式ページを一次情報として確認するのが確実です。上限が「現行68,000円」なのか「2027年1月拠出分から75,000円(予定)」なのか、時点を分けて表示しているページほど信頼できます。
8. よくある質問
付加年金(付加保険料)とiDeCoは併用できますか?
併用は可能です。ただし付加保険料は国民年金基金・iDeCoと拠出上限の枠を共有しているため、付加保険料を納めている月はその分だけiDeCoに充てられる上限が目減りします。現行であれば68,000円、2027年1月拠出分からは75,000円という上限から、付加保険料分(月400円相当の枠消費)を差し引いた金額がiDeCoの実質的な拠出可能額になります。両方をフル活用したい場合は、金融機関やねんきんネット等で現在の付加保険料の納付状況を確認してから、iDeCoの掛金額を設定してください。
国民年金に未納の月がある場合、iDeCoの掛金はどうなりますか?
第1号被保険者としてiDeCoに拠出するには、国民年金保険料を納付していることが前提となります。未納の月はその月分のiDeCo掛金を拠出することができません。国民年金保険料の納付猶予・免除を受けている場合の扱いは個別の状況によって異なるため、判断に迷う場合は日本年金機構や利用中の金融機関に確認することをお勧めします。未納が続くと、資格の確認が取れず運用指図者への切り替えを求められるケースもあるため、国民年金保険料の納付状況は定期的に確認しておきましょう。
法人成りして会社員(第2号被保険者)になった場合、iDeCoはどうなりますか?
被保険者種別変更の届出(第1号→第2号)が必要です。手続きをしないままだと、資格情報と実態が一致せず、掛金が拠出エラーで還付されてしまうことがあります。掛金の上限も、第1号の枠(現行68,000円、2027年1月拠出分から75,000円)から、勤務先の企業年金の有無に応じた第2号の枠(現行23,000円程度〜、2027年1月拠出分から62,000円程度〜)に変わります。法人化・就職のタイミングが決まったら、できるだけ早く利用中の金融機関に種別変更の手続きを申し出てください。
よくある質問
Q. フリーランスが法人化した場合、これらの制度はどうなりますか?
法人化すると小規模企業共済は引き続き加入できますが、iDeCoの上限額が月23,000円に下がります(企業年金がない場合)。国民年金基金と付加年金は加入できなくなります。ただし、法人化すれば厚生年金に加入できるため、年金面ではメリットもあります。税金の仕組みについてはフリーランスの税金完全ガイドも併せてご覧ください。
Q. フリーランスの手取りは会社員時代より増えますか?
売上が同じであれば、手取りは減る可能性が高いです。会社員は社会保険料の半分を企業が負担しているため、フリーランスが同じ手取りを維持するには、会社員時代の給与の1.5倍〜2倍の売上を目指すのが一般的です。ただし、節税対策や経費計上の工夫次第で、自由に使えるお金を増やすことは十分に可能です。
Q. フリーランスが税務調査に入られる確率はどのくらいですか?
売上規模や業種によって異なりますが、一般的には数パーセント程度と言われています。ただし、不自然な経費計上や売上の急激な変動がある場合は調査の対象になりやすいため、日々の正確な記帳が不可欠です。
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この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
織田 莉子@SOHO編集部
FP2級・フリーランス経理サポーター
会計事務所で10年間の実務経験を経て独立。フリーランスの確定申告・節税・資金管理を専門に、お金にまつわる記事を執筆しています。
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