フリーランスの年金対策:老後を安心して暮らすためのおすすめ方法

伊藤 遥
伊藤 遥
フリーランスの年金対策:老後を安心して暮らすためのおすすめ方法

この記事のポイント

  • フリーランスになると年金が国民年金だけになり
  • 老後の生活に不安を感じる方も多いでしょう
  • フリーランスの年金制度の基礎知識から

「フリーランスになりたいけど、子どもがいるから老後の年金が不安で無理」。これ、私がキャリア相談で一番よく聞く言葉です。会社員とは違い、フリーランスは年金制度が大きく変わるため、漠然とした不安を抱くのは当然ですよね。でも、ちょっと待ってください。不安は知識で解消できます。

私自身、娘が昼寝している2時間で記事を1本仕上げることもありますし、限られた時間の中でどう効率的に働くか、老後の備えをするかを常に考えています。フリーランスだからこそ、自分の働き方や将来を「デザイン」できる。今回は、フリーランスの年金制度の基礎から、老後の生活を安心して送るためのおすすめ方法まで、具体的なアドバイスを交えながらお話ししていきましょう。

フリーランスになったら国民年金に切り替えよう

会社員からフリーランスへの転身は、働き方が大きく変わるだけでなく、社会保障制度、特に年金制度においても重要な切り替えが必要になります。会社員時代に加入していた厚生年金から、国民年金への切り替え手続きを忘れないようにしましょう。

フリーランスの年金制度の基本

日本の公的年金制度は「2階建て」とよく表現されます。 1階部分は、すべての国民が加入する「国民年金」です。日本に住む20歳以上60歳未満の人が加入義務を負い、基礎年金として老齢基礎年金が支給されます。フリーランスや自営業者は、この国民年金に第一号被保険者として加入します。

一方、会社員や公務員は、国民年金に加えて「厚生年金」という2階部分の年金にも加入しています。厚生年金は、給与に応じて保険料が決まり、その分、将来受け取れる年金額も国民年金に上乗せされます。フリーランスになると、この厚生年金がなくなるため、国民年金のみとなるわけです。

私のクライアントのAさん(40代・グラフィックデザイナー)は、会社員からフリーランスになった当初、年金の手続きをすっかり忘れていました。「会社が全部やってくれていたから、自分でやることが増えて戸惑いましたね」と話していましたが、区役所の窓口で国民年金への切り替えを済ませ、一安心されていました。こういったうっかりは誰にでもあることです。大切なのは、気づいた時にきちんと対応すること。年金は老後の大切な収入源ですから、早めの手続きを心がけましょう。

将来の年金、会社員とフリーランスでどう違う?年収別の比較も

フリーランスは会社員よりも年金額が少ないという印象を持っている方も多いと思いますが、実際に将来受け取れる年金額はどのくらい違うのでしょうか。ここでは、会社員とフリーランスの年金額の違いと、年収が年金に与える影響について解説します。

国民年金の満額受給額と現実

会社員は国民年金に加えて厚生年金にも加入しているため、フリーランスと比較して将来受け取れる年金額は多くなります。フリーランスの場合、国民年金の保険料を20歳から60歳までの40年間480ヶ月)すべて納付した場合の満額受給額は、年間約80万円程度(月額約6.5万円程度)です(2026年度の見込み)。

ここで、具体的な数字を見てみましょう。

20歳から60歳までの国民年金保険料をすべて納付していたフリーランスの2025年度の年金受給額は、満額で月額約6.9万円です。 詳しくは記事内「会社員とフリーランスが受給する年金金額の違い」をご覧ください。

たとえば20歳~60歳までの40年間(480カ月)きちんと保険料を払い続けたとすると、令和7年度の受給金額は年間83万1,700円、1カ月の受給金額は6万9,308円です。

これに対して、会社員の場合は国民年金に厚生年金が上乗せされるため、例えば年収300万円600万円前後であれば、国民年金と合わせて月額15万円20万円以上の年金を受け取れるケースが多いです。 つまり、フリーランスは会社員と比較して、月額で8万円13万円程度の年金受給額の差が生じる可能性があるということです。この差額をどう埋めるかが、フリーランスの年金対策の鍵となります。私の経験上、フリーランスは自己責任でこの部分を補填していく意識が非常に重要です。

フリーランスが年金を増やすおすすめの方法

「フリーランスになって国民年金だけじゃ老後が不安…」そう感じたなら、安心してください。フリーランスには、会社員の厚生年金に代わる、老後資金を増やすための様々な「方法」があります。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoは、自分で掛金を拠出し、自分で運用する私的年金制度です。掛金が全額所得控除の対象となるため、所得税・住民税が軽減されます。また、運用益も非課税で再投資されるため、効率的に資産を増やせます。受け取る時も公的年金等控除や退職所得控除の対象となり、税制優遇が手厚いのが特徴です。フリーランスの場合、国民年金の加入者は月額最大6.8万円(年間81.6万円)まで拠出できます。

私のクライアントのBさん(30代・Webライター)は、フリーランスになったばかりの頃、「毎月の1万円でも良いから、iDeCoで積立を始めたら?」とアドバイスしました。最初は「年金って難しそう」と躊躇していましたが、税制優遇のメリットを知ってすぐに口座を開設。今では「毎月の貯蓄が自然にできて、将来が少し楽しみになりました」と喜んでいます。少額からでも始められるので、まずは情報収集から始めてみるのがおすすめです。

国民年金基金

国民年金基金は、国民年金に上乗せして給付を受けられる公的な制度です。フリーランスや自営業者など、国民年金の第一号被保険者のみが加入できます。掛金は全額所得控除の対象となり、iDeCoと同様に税制優遇を受けられます。国民年金基金には様々な型があり、ご自身のライフプランに合わせて選択できるのが魅力です。

iDeCoと国民年金基金は併用可能ですが、掛金の上限額が合算で月額6.8万円となります。どちらか一方だけでなく、両方を活用して年金の上乗せを検討するのも良いでしょう。

付加年金

付加年金は、国民年金に上乗せして少額の年金を増やすことができる制度です。月々の国民年金保険料にプラスして400円を納付することで、将来受け取れる年金額が「200円×納付月数」で増額されます。例えば40年間480ヶ月)納付すると、年間で約9.6万円(月額8,000円)の年金が上乗せされます。少額ですが、確実にリターンがあるため、手軽に年金を増やしたい方におすすめです。

小規模企業共済

小規模企業共済は、フリーランスや個人事業主、小規模企業の経営者のための退職金制度です。掛金は全額所得控除の対象となり、iDeCoや国民年金基金と同様に節税効果があります。将来、事業を廃止した場合などに共済金を受け取ることができ、退職金のような役割を果たします。掛金は月額1,000円から7万円まで自由に設定できます。

その他の保険や資産形成の選択肢

上記の公的な制度以外にも、老後資金を準備するための方法はたくさんあります。例えば、つみたてNISAなどの非課税投資制度を活用したり、生命保険会社の個人年金保険や変額年金保険などを検討したりするのも良いでしょう。

重要なのは、自分自身のライフプランやリスク許容度に合わせて、最適な「方法」を選ぶことです。専門家に相談したり、書籍やセミナーで知識を深めたりしながら、自分に合った老後資金計画を立てていきましょう。私はいつも「まずは小さく試す」ことを推奨しています。例えば、iDeCoも月5,000円からでも始められます。完璧を目指さず、できる範囲で始める。それが長続きするコツですよ。

まとめ:フリーランスの年金は「自分でデザイン」できる!

フリーランスの年金は、会社員に比べて「少ない」というイメージがあるかもしれません。確かに、会社員が加入する厚生年金という2階部分がないため、国民年金だけでは老後の生活費を賄うには不足が生じる可能性があります。しかし、不安に感じる必要はありません。iDeCoや国民年金基金、小規模企業共済といった様々な制度を組み合わせることで、自分自身の力で老後の年金を「デザイン」できるのがフリーランスの強みです。

「フリーランスになりたいけど、子どもがいるから無理」と言っていたAさんも、今では国民年金基金に加入し、iDeCoも少しずつ始めています。「自分で選んで、自分で増やしていく感覚が面白い」と、前向きに老後資金計画に取り組んでいます。

完璧な計画を一度に立てようとするのではなく、「まず小さく試す」ことから始めてみましょう。月1,000円からでも始められる制度もありますし、少しずつ知識を増やしていくことで、不安は必ず解消されます。フリーランスとしての自由な働き方を手に入れながら、安心して老後を迎えるための一歩を、今日から踏み出してみませんか。

フリーランスの年金、未納・滞納はリスク大!知っておくべきこと

フリーランスとして活動していると、収入が不安定になる時期もあり、「今月は国民年金保険料の支払いが厳しい…」と感じることもあるかもしれません。しかし、安易に未納や滞納を続けてしまうと、将来の年金受給だけでなく、思わぬ不利益を被るリスクがあります。私のキャリア相談でも、収入の波に悩むフリーランスの方から「年金、払えない月があったらどうしよう」というご相談を頻繁にいただきます。

未納が将来の年金額に与える影響

国民年金保険料を未納のまま放置すると、まず将来受け取れる老齢基礎年金の額が減ってしまいます。前述の通り、40年間(480ヶ月)すべて納付して満額となるため、未納期間があるとその分だけ受給額が削られる仕組みです。例えば、10年間未納だった場合、満額の4分の1にあたる年間約20万円が減額される計算になります。月々の負担額は決して大きくないですが、長期間続くとその影響は無視できません。

さらに深刻なのは、老齢年金だけでなく、万が一の際の障害年金や遺族年金にも影響が出る可能性があることです。これらは病気やケガで障害を負ったり、家族を残して亡くなったりした場合に、本人や遺族が受け取れる大切な保障です。保険料の納付状況によっては、これらの給付を受けられないこともあるため、注意が必要です。

国民年金保険料の納付が困難な場合は、ご自身の判断で未納のままにせず、保険料免除制度や納付猶予制度の活用をご検討ください。 出典: nenkin.go.jp

保険料免除・納付猶予制度を賢く活用しよう

収入が一時的に減少し、保険料の納付が難しい場合は、「国民年金保険料免除制度」や「納付猶予制度」を積極的に活用しましょう。これらの制度を利用すれば、未納にならずに済み、将来の年金受給資格期間に算入されたり、老齢基礎年金の受給額に一部反映されたりします。免除には全額・4分の3・半額・4分の1の4種類があり、所得に応じて適用されます。納付猶予制度は、20歳から50歳未満の方が対象で、保険料の納付が猶予されます。

私のクライアントのCさん(30代・フリーランスのWebデザイナー)は、独立後すぐに収入が大きく落ち込み、保険料の納付に困っていました。「未納だけは絶対に避けたい」と相談に来てくれたので、私はすぐに区役所への相談を勧めました。結果、所得状況に応じた免除が認められ、安心して事業に集中できるようになったそうです。「諦めずに相談してみるものですね」と話してくれました。これらの制度を利用しても、後から「追納」することで将来の年金額を満額に近づけることも可能ですから、まずは年金事務所や役所に相談してみるのが賢明です。

老後資金は「貯める」だけじゃない、「使い方」もデザインする

フリーランスとして老後資金を準備する際、つい「いくら貯めるか」に意識が集中しがちですが、実は「どう使っていくか」も同じくらい、いやそれ以上に重要な視点です。せっかく貯めた資金も、計画なく使えばあっという間に底をついてしまいます。私のキャリア相談では、貯蓄計画と並行して、将来のライフプランを具体的にイメージすることをお勧めしています。

退職金代わりの「小規模企業共済」を再認識する

会社員には退職金がありますが、フリーランスにはありません。この「退職金がない」という点も、老後の不安要素の一つでしょう。しかし、フリーランスには「小規模企業共済」という、まさに退職金代わりとなる強力な制度があります。掛金が全額所得控除になる節税メリットだけでなく、廃業時や老齢給付として一括または分割で受け取れるため、計画的な老後資金として活用できます。私のクライアントの中には、20代後半から月1万円ずつ積み立て始め、現在ではかなりまとまった金額を準備している方もいます。

老後のライフプランと支出計画を立てる

「老後に月いくらあれば生活できるのか」「どんな生活を送りたいのか」を具体的にイメージすることが、資金計画の第一歩です。例えば、夫婦二人で旅行を楽しみたい、田舎で自給自足の生活をしたい、孫の教育費を援助したい、など、人それぞれ理想の老後があるでしょう。総務省統計局の家計調査によれば、高齢夫婦無職世帯の月々の消費支出は平均約26万円とされています。これを基準に、ご自身が望む生活水準と必要な資金を逆算してみるのがおすすめです。

健康なうちはアクティブに過ごし、年齢を重ねるごとに医療費や介護費が増える可能性も考慮に入れるべきです。私自身、娘の成長を見守る傍ら、自分の老後についても常にアンテナを張っています。フリーランスは「働き方」だけでなく、「お金の使い方」までデザインできるのが面白いところ。今のうちから、未来の自分が安心して笑顔でいられるよう、具体的な「お金の地図」を描いてみましょう。

よくある質問

Q. 国民年金保険料を払えない場合はどうすればいい?

放置するのが一番危険です。「免除制度」や「納付猶予制度」を申請してください。承認されれば、未納扱いにならず、将来の年金額にも(全額ではありませんが)反映されます。また、滞納すると将来の「障害年金」や「遺族年金」が受け取 れなくなるリスクがあります。

Q. 2026年から年金制度はどう変わりますか?

公的年金の被用者保険(厚生年金)の適用拡大が議論されており、将来的にはフリーランスであっても一定の条件で厚生年金に加入できるようになる可能性があります。常に最新のニュースをチェックしておくことが大切です。

Q. iDeCoと国民年金基金、どちらか片方しか選べない?

両方に加入できます。ただし、合計の拠出限度額は月額6万8,000円以内となります。手堅く将来額を確定させたい分を基金に、リスクを取って増やしたい分をiDeCoに、といったバランス配分が可能です。

Q. 付加年金と国民年金基金は両方加入できますか?

いいえ、付加年金と国民年金基金は選択制です。どちらか一方しか加入できません。国民年金基金の1口目には付加年金相当の保険料が含まれているため、国民年金基金に加入する場合は付加年金に別途加入する必要はありません。

Q. フリーランスが法人化した場合、これらの制度はどうなりますか?

法人化すると小規模企業共済は引き続き加入できますが、iDeCoの上限額が月23,000円に下がります(企業年金がない場合)。国民年金基金と付加年金は加入できなくなります。ただし、法人化すれば厚生年金に加入できるため、年金面ではメリットもあります。税金の仕組みについてはフリーランスの税金完全ガイドも併せてご覧ください。

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伊藤 遥

この記事を書いた人

伊藤 遥

キャリアコンサルタント・元人事

大手メーカー人事部で採用・研修を担当した後、キャリアコンサルタントとして独立。女性のキャリアチェンジや副業開始に関する記事を、自身の経験をもとに執筆しています。

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