業務委託契約書 雛形|個人事業主が損しない15条項と修正交渉のコツ


この記事のポイント
- ✓業務委託契約書 雛形を探すフリーランス・個人事業主向けに
- ✓修正必須の15条項と発注側との交渉のコツを実務目線で解説
- ✓アパレルEC運営代行の現場で実際に揉めたポイントも紹介します
「業務委託契約書 雛形」と検索してこの記事にたどり着いた方の多くは、初めて取引先から契約書のドラフトを受け取って戸惑っているか、自分から雛形を出さないといけなくなって焦っている個人事業主の方だと思います。私もアパレルブランドのEC運営代行をフリーランスとして請ける中で、契約書を巡って何度も冷や汗をかいてきました。結論からお伝えすると、雛形は無料のものを使って構わないけれど、雛形をそのまま署名するのは絶対にやめたほうがいいです。本記事では、雛形をベースに「個人事業主が損をしないために必ずチェック・修正すべき15条項」と、発注側に角を立てずに修正を依頼するコツを実務目線でまとめます。
業務委託契約書を取り交わす個人事業主が急増している背景
業務委託契約書の雛形ニーズは、ここ数年で明確に増えています。背景には、2024年11月施行の「フリーランス・事業者間取引適正化等法(通称:フリーランス新法)」と、2023年10月開始のインボイス制度があります。発注事業者側に契約条件の書面(または電磁的方法)明示が義務付けられたことで、これまで口約束で済ませてきた中小企業や個人事業主同士の取引でも、契約書のやり取りが当たり前になりました。
厚生労働省や公正取引委員会の資料でも、フリーランスが受託する取引のうち契約書面が交付されないトラブル事例が繰り返し指摘されてきました。フリーランス新法の運用ガイドラインは公正取引委員会のサイトで公開されています(https://www.jftc.go.jp/)。発注側に契約条件明示義務がある以上、雛形を整備していない発注者は受託者側に「契約書のひな形あります?」と聞いてくるケースも多く、フリーランス側が雛形を用意できると主導権を握りやすくなります。
私自身、アパレルブランドのEC運営代行を始めた頃は「先方が大手だから雛形は向こうが出すだろう」とタカをくくっていました。ところが、相手は社員数30名規模のメーカーで、法務担当はおらず、いざ契約段階で「うちは雛形ないので、御社(個人事業主の私)から出してください」と言われ、慌てて雛形を作ったのを今でも覚えています。あの時、自分のひな形を用意していたら2週間のロスはなかったはずです。
そもそも業務委託契約書とは|民法上は3類型あることを知っておく
業務委託契約書という名前は契約実務上の通称で、民法には「業務委託契約」という条文は存在しません。実態は次の3類型のいずれか、または組み合わせです。
- 請負契約(民法632条):仕事の完成を目的とする。成果物の納品で報酬が発生する
- 委任契約(民法643条):法律行為の事務処理を委ねる
- 準委任契約(民法656条):法律行為以外の事務処理を委ねる(コンサル・運用代行など)
雛形を選ぶ際に最初に確認すべきは、自分の案件がどの類型に当たるかです。例えば私が請けるEC運営代行は、商品撮影のディレクションは請負(成果物=撮影写真)、Instagram運用やCS対応は準委任(成果物ではなく稼働を提供)と性質が混在します。雛形を1本でまとめる場合は「業務内容ごとに類型を明記する」か、「業務ごとに別の契約書を作る」かのどちらかになります。
類型を曖昧にしたまま雛形を流用すると、契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)の重さが変わってきて揉めます。請負契約だと「成果物のクオリティが基準に達していなければ修補・代金減額・損害賠償」の対象になりますが、準委任契約だと「善管注意義務を尽くしたかどうか」が問われるだけで、結果責任は問われにくくなります。
業務委託契約書を一から作成するのは、専門的な知識も必要となり、非常に手間がかかります。そこで、弁護士が監修した業務委託契約書のテンプレートを、実務ですぐに使えるWordファイルでご用意しました。実際の契約内容にあわせてカスタマイズしつつ、活用してみてください。
弁護士監修の雛形は確かに使いやすいですが、「ベンダー(受託者)寄り」と「クライアント(発注者)寄り」のどちらの立場で書かれているかで、有利・不利が真逆になる条項があります。雛形をダウンロードしたら必ず「誰の立場で書かれた雛形か」を確認してください。「コンサル契約 ベンダー側 雛形」のように立場を明示して検索すると、自分に有利な雛形が見つかりやすいです。
業務委託契約書の雛形を無料で入手できる主な配布元
雛形は無料で入手できる先がいくつもあります。私が実際に使ったことのある、信頼できる配布元を紹介します。
- freee(クラウド会計):起業家向けに業務委託契約書や秘密保持契約書(NDA)のWordテンプレートを配布(https://www.freee.co.jp/)。発注者寄り
- マネーフォワード クラウド:契約書テンプレートを配布(https://biz.moneyforward.com/)。発注者寄りだが項目が網羅的
- 中小機構(J-Net21):中小企業向けの契約書サンプルを掲載(https://www.smrj.go.jp/)
- 公正取引委員会:下請取引適正化のためのモデル契約条項を公開(https://www.jftc.go.jp/)
- 法務省:契約書の作成に関する一般的な解説資料を公開(https://www.moj.go.jp/)
ただし、無料雛形には共通の弱点があります。汎用的に作られているため、業務範囲・成果物・検収基準・知的財産権の帰属など、案件ごとにカスタマイズが必要な条項が空欄か、発注者に有利な条文がデフォルトで入っていることです。雛形を入手したら、必ず後述の15条項をチェックしてください。
業務委託契約書の雛形にある15条項|個人事業主が必ずチェックする項目
ここからが本記事の核心です。一般的な業務委託契約書の雛形に含まれる15条項について、個人事業主が自分の立場で何をチェック・修正すべきかを順に解説します。
1. 業務の内容(範囲)
雛形には「乙は甲が委託する○○業務を遂行する」とだけ書かれていることが多いですが、これは絶対にそのまま署名してはいけません。業務範囲が曖昧だと、後から「これも業務範囲ですよね」と無償で追加業務を振られて疲弊します。
修正のコツは、業務内容を別紙(業務仕様書)に切り出して、本文には「別紙1に定める業務」と書くこと。別紙には次のように箇条書きで具体化します。
- 対応する業務:○○・△△・□□(具体名を列挙)
- 対応しない業務:◇◇(明示的に除外を書く)
- 業務量の目安:月○件まで、または月○時間まで
私の場合、EC運営代行の契約書では「商品撮影のディレクション:月10商品まで、Instagram運用:投稿週3本・ストーリーズ週5本」のように上限を明記しています。これがないと、繁忙期に投稿数だけが青天井になって時給換算で割に合わなくなります。
2. 委託料(報酬)
雛形には「月額○円(税抜)」とだけ書かれているパターンが多いですが、必ず次の4点を明記します。
- 金額(税抜か税込か)
- 支払日(毎月末締め翌月末払いなど)
- 支払方法(指定銀行口座への振込)
- 振込手数料の負担者(発注者負担が原則)
振込手数料は、フリーランス新法と下請法上、原則として発注者が負担する建付けです。雛形に「振込手数料は受託者負担」と書かれていたら必ず削除を依頼してください。1回数百円でも、年間にすれば数千円〜数万円の差になります。
3. インボイス・消費税の取り扱い
2023年10月のインボイス制度開始以降、雛形にインボイス対応の文言が入っているかは必ずチェックします。受託者側がインボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)かどうかで、発注者側の消費税仕入控除が変わるためです。
雛形に「乙は適格請求書発行事業者であることを保証する」と書かれているケースがありますが、自分が免税事業者を継続する選択をしているなら、この文言は削除または「現時点で適格請求書発行事業者ではない」と明記してもらう必要があります。免税事業者であることを理由に一方的に消費税分を減額するのは下請法・フリーランス新法の禁止行為に該当する可能性があります。詳細は国税庁のインボイス特集ページ(https://www.nta.go.jp/)で確認できます。
4. 検収(成果物の確認)
請負型の業務(成果物がある業務)では、検収条項が報酬支払いのトリガーになります。雛形にありがちな問題条文は「甲が成果物を検収完了した時点で報酬支払義務が発生する」とだけ書かれているパターン。これだと甲(発注者)が検収しなければ永遠に支払いが発生しません。
修正のコツは「みなし検収」を入れることです。「乙が成果物を納品してから○営業日(例:10営業日)以内に甲から書面による不合格通知がない場合、検収完了とみなす」と明記します。これがないと、発注者が検収を放置するだけで支払いが止まり、フリーランス側の資金繰りが破綻します。
5. 契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)
民法改正で「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に名称変更されましたが、雛形によっては旧表記のまま残っているものがあります。注意すべきは、責任を負う期間です。雛形だと「納品から1年間」「成果物の検収完了から2年間」など長期に設定されていることがあり、受託者側にとって重い負担になります。
修正の交渉余地としては、責任期間を成果物の検収完了から6ヶ月程度に短縮するのが現実的です。また、「乙の故意または重過失による場合を除き」という限定を入れてもらえると、軽微なミスでの責任追及を回避できます。
6. 損害賠償の上限
ここは個人事業主にとって死活問題の条項です。雛形に上限の定めがないと、賠償額が青天井になる可能性があります。例えば、私が運用するアパレルブランドのECサイトで仮にシステム障害を起こして売上機会を逸失した場合、月商数百万円のブランドだと、私の月額報酬15万円では到底賄えない金額の請求が来かねません。
修正のコツは「乙の損害賠償責任の総額は、本件業務委託契約に基づき甲から乙に支払われた直近6ヶ月分の委託料を上限とする」のように、明確な上限を設けることです。発注者側が嫌がる場合は「12ヶ月分」など妥協ラインを用意します。これは絶対に交渉すべき条項で、上限なしで署名するのは個人事業主の自殺行為です。
7. 知的財産権の帰属
成果物の著作権がどちらに帰属するかは雛形ごとに大きく違います。発注者寄りの雛形だと「成果物の著作権は甲に帰属する」「乙は著作者人格権を行使しない」と書かれていることがほとんどです。
ここで注意すべきは「著作者人格権の不行使」条項。これに同意すると、ポートフォリオに掲載する権利、改変を拒否する権利などを失います。私がよく交渉するパターンは「成果物の著作権は委託料完済時に甲に移転する。ただし、乙は自己のポートフォリオへの掲載目的で、甲の機密情報を含まない範囲で成果物を利用できる」という条文の追加です。
8. 秘密保持(NDA)
NDAは雛形にほぼ必ず入っていますが、注意すべきは「秘密情報の定義」と「秘密保持期間」です。雛形によっては「乙が業務を通じて知り得たすべての情報」と定義されていることがありますが、これは広すぎて事実上どの情報も口外できなくなります。
修正の余地としては「書面または電子データで秘密と明示されたもの」「口頭で開示された場合は14日以内に書面で秘密と通知されたもの」に限定するのが標準的です。秘密保持期間は契約終了後3年〜5年が一般的で、永久秘密の文言は削除を依頼します。
9. 競業避止義務
雛形によっては「乙は契約期間中および契約終了後○年間、甲と同業の事業を行ってはならない」と書かれているケースがあります。これは個人事業主にとって致命的な条項です。
私のような業界特化型のフリーランス(アパレルEC運営)が「契約終了後3年間、アパレルブランドのEC運営代行を一切しない」と約束したら、廃業に等しい状態になります。修正の交渉では「契約終了後の競業避止義務は削除する」または「同一クライアントへの直接アプローチ禁止に限定する」よう依頼します。判例上も、合理性のない競業避止義務は公序良俗違反で無効になるケースがありますが、明文化されていると無用な紛争を招くので削除しておくべきです。
10. 再委託の可否
雛形には「乙は甲の書面による事前承諾なく業務を第三者に再委託してはならない」と書かれていることが多いです。一人で完結する業務なら問題ありませんが、ECサイトの撮影代行など、カメラマンやモデルを別途手配する業務だと、この条項のせいで毎回承諾を取らないといけなくなって機動力が落ちます。
修正のコツは「乙はあらかじめ甲に通知することにより、業務の一部を第三者に再委託することができる」とゆるめてもらうか、「業務遂行に必要な範囲で乙の責任において再委託できる」と書いてもらうことです。再委託先の管理責任は受託者が負う前提なので、発注者側もある程度は受け入れてくれます。
11. 契約期間と更新
雛形にありがちな契約期間条項は「契約期間は○年○月○日から○年○月○日までとし、期間満了の○ヶ月前までにいずれの当事者からも書面による申し出がない限り、同条件で○年間自動更新する」というパターン。
ここで注意すべきは「自動更新」と「中途解約」のセットです。1年自動更新の契約で中途解約に2ヶ月前予告が必要だと、9ヶ月目以降は次年度に半強制的に突入する設計になります。修正のコツは「中途解約予告期間を1ヶ月に短縮する」「自動更新条項を削除して都度合意更新にする」のどちらかです。
12. 中途解約
中途解約は雛形によって発注者側だけに有利な条項になっていることがあります。「甲は乙に対し書面で通知することにより、いつでも本契約を解約できる」と書かれていて、乙側の解約権が書かれていないパターンが典型です。
これは双方対等な解約権に修正する必要があります。「甲または乙は相手方に対し○ヶ月前までに書面で通知することにより、本契約を解約できる」とし、解約予告期間中の業務継続義務と最低保証報酬を明記しておくと、解約予告を受けてから次の案件を探す期間の生活費を確保できます。
13. 反社会的勢力の排除
これは標準的な雛形に必ず入っている条項で、内容自体は問題ないことが多いです。ただし、表明保証違反時の解除権だけ確認しておきます。一方的に「乙が反社条項に違反した場合、甲は催告なく解除でき、損害賠償を請求できる」となっているケースがほとんどですが、念のため双方向の条文にしておくと安全です。
14. 個人情報・データ保護
ECサイトの運用代行など、顧客の個人情報に触れる業務では、個人情報保護法・GDPR対応の条項が雛形に入っているか確認します。委託先(受託者)の監督義務は発注者側にあるため、雛形には「乙は個人情報保護法上の安全管理措置を講じる」と書かれているはずです。
ここで個人事業主側がチェックすべきは「データ漏洩時の損害賠償の上限」です。前述の損害賠償上限と同じ理屈で、データ漏洩を理由とした青天井の賠償は致命的なので、必ず損害賠償上限条項とリンクさせて上限を設けておきます。サイバー保険や個人事業主向けの賠償責任保険に加入していると、月額数千円で数千万円までカバーできる商品があるので、検討する価値があります。
15. 合意管轄
雛形の最後にある合意管轄条項は、紛争時にどこの裁判所で裁判するかを定めるものです。発注者寄りの雛形だと「甲の本店所在地を管轄する裁判所」と書かれていることが多いですが、地方の発注者から東京の個人事業主が受託する場合(またはその逆)、紛争時に出廷だけで大きな負担になります。
修正の交渉余地としては「受託者の住所地を管轄する裁判所」または「双方協議の上、合意する裁判所」に変更を依頼します。難しい場合は、簡易裁判所での少額訴訟(60万円以下)が使えるよう、東京・大阪など主要都市の裁判所を指定しておくとよいです。
業務委託契約書の雛形を修正交渉する時のコツ
雛形を渡されて「これにサインしてください」と言われた時、いきなり全項目に赤を入れて返すと発注者は身構えます。私が現場で使っている交渉の進め方は次の通りです。
修正依頼は3層に分けて伝える
修正したい項目を「①絶対譲れない」「②できれば修正したい」「③本来は修正したいが今回は譲歩」の3層に分けて、優先順位を明確に伝えます。例えば次のように整理します。
- ①絶対譲れない(譲歩したらサインしない):損害賠償上限、競業避止義務削除、業務範囲の別紙化
- ②できれば修正したい:みなし検収、知的財産権の限定譲渡、中途解約の双方向化
- ③本来は修正したいが今回は譲歩:合意管轄、契約期間の短縮
「全部修正してください」と言うとゼロ回答になりがちですが、「ここは絶対に譲れないが、ここは譲歩する」と明示すると、交渉が前に進みます。
修正案を具体的な条文で提示する
「ここは修正してほしい」とだけ伝えると、発注者側で修正案を作る手間が発生し、レスポンスが遅れます。修正後の条文をそのまま提示するのがコツです。Word文書の変更履歴機能を使って差分を可視化すると、相手の法務担当者がチェックしやすくなります。
私の場合、頻繁に登場する条項の修正案テンプレートをEvernoteに保存しておき、案件ごとにコピペで対応しています。これだけで契約締結までの時間が半分以下になりました。
修正の根拠を必ず添える
「業務範囲を別紙化したい」とだけ言うのではなく、「業務範囲が曖昧だと無償の追加業務発生時にお互い揉めるリスクがあるため、別紙で具体化したい」と理由を添えると、発注者側も納得しやすくなります。フリーランス新法・下請法・民法など、根拠条文がある場合はそれも併記すると説得力が上がります。
公正取引委員会のフリーランス新法ガイドライン(https://www.jftc.go.jp/)には、契約条件の書面明示義務、報酬支払期日の規律、禁止行為などが整理されていて、修正交渉の根拠資料として使えます。
業務委託契約書についても、「雛形で問題ないか見てほしい」「自社に合う内容へ調整してほしい」といったご相談に、迅速かつ正確に対応してくれます。
弁護士に相談するのも一つの手ですが、個人事業主が毎回弁護士に契約書チェックを依頼すると5万円〜10万円の費用がかかります。年間で複数件の契約を結ぶフリーランスなら、最初の1本だけ弁護士にレビューしてもらって自分の標準雛形を作り、以降はそれを使い回すという方法がコスト効率がよいです。
業務委託契約書の収入印紙|雛形に貼り忘れて指摘される事例
業務委託契約書の雛形を使う時、収入印紙の要否で迷う人が多いです。結論を整理すると、業務委託契約書のうち請負契約に該当するものには、契約金額に応じて収入印紙が必要です。準委任契約や委任契約には収入印紙は不要です。
具体的な金額別の印紙税は次の通り(第2号文書「請負に関する契約書」の場合):
| 契約金額 | 印紙税額 |
|---|---|
| 1万円未満 | 非課税 |
| 1万円以上100万円以下 | 200円 |
| 100万円超200万円以下 | 400円 |
| 200万円超300万円以下 | 1,000円 |
| 300万円超500万円以下 | 2,000円 |
| 500万円超1,000万円以下 | 10,000円 |
| 1,000万円超5,000万円以下 | 20,000円 |
印紙税の正確な税額は国税庁の印紙税額一覧表(https://www.nta.go.jp/)で確認できます。雛形をWordで作成して紙で印刷・押印する場合は印紙が必要ですが、電子契約サービスで電子署名する場合は印紙税が課税されません。クラウドサインや電子印鑑GMOサインなどの電子契約サービスを使うと、年間で数万円〜数十万円の印紙税が節約できます。
EC運営代行のような準委任型の業務であれば、そもそも印紙は不要です。ただし、契約書の中に「成果物○○を納品する」という請負的な業務が含まれると、契約書全体として請負契約とみなされて印紙が必要になることがあります。判断に迷う場合は税理士または所轄税務署に相談してください。
業務委託契約書がない場合のリスク|口約束だけで進める怖さ
「雛形を探すのが面倒だから、メールでのやり取りで済ませよう」と考える個人事業主もいますが、契約書なしで業務を進めるリスクは想像以上に大きいです。私自身、駆け出しの頃に契約書なしでEC運営代行を始めて、3ヶ月目で揉めた苦い経験があります。「Instagram運用は週2本の投稿で合意していたはず」が、いつの間にか「週5本+ストーリーズ毎日」に拡大していて、報酬は据え置き。LINEのやり取りを遡っても明確な合意の根拠が見つからず、結局、その月で契約を打ち切ることになりました。
契約書がない場合に起こりやすい具体的なトラブルは次の通りです。
- 業務範囲の拡大:合意なしで業務が積み上がり、報酬が見合わなくなる
- 支払い遅延・未払い:支払期日の明確な根拠がなく、入金が遅れても催促しづらい
- 成果物の権利関係トラブル:誰の著作権か、ポートフォリオに使えるか不明確
- 損害賠償リスク:上限がないため、トラブル時に賠償額が青天井
- 競業避止・秘密保持の解釈違い:契約終了後にどこまで自由に活動できるか不明確
フリーランス新法では、発注事業者から受託者への契約条件明示が義務化されています。書面(または電磁的方法)での明示がない場合、公正取引委員会への申告や勧告対象になる可能性があります。受託者側から「契約条件を書面でいただけますか」と求めても法的に問題ありません。むしろプロフェッショナルとして必須の確認です。
フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストでは、下請法・フリーランス新法の観点から、発注書・契約書に書くべき必須項目をチェックリスト形式でまとめています。今回の業務委託契約書の雛形チェックと併せて確認すると、抜け漏れを防げます。
雛形だけでは対応できない|士業に依頼すべき契約パターン
雛形を使い回せる契約と、士業(弁護士・司法書士・行政書士)に依頼すべき契約には線引きがあります。私の経験則では、次のような場合は迷わず弁護士に相談しています。
- 契約金額が単発で500万円を超える大型案件
- 知的財産権の移転を伴うシステム開発・コンテンツ制作
- 海外クライアントとの英文契約(準拠法・仲裁地の取り決めが特殊)
- 業務範囲が複雑で、複数当事者が絡むコンソーシアム型の業務委託
- 競合との取引制限など、独占禁止法・下請法のグレーゾーンに踏み込む契約
法人化のタイミングで本店移転や役員変更の登記が絡む案件は、司法書士に依頼するのが一般的です。本店移転・役員変更登記の報酬相場|オンライン申請とプロへの依頼比較【2026年最新】では、登記関連の士業報酬相場とオンライン申請の使い分けを整理しています。
確定申告や源泉徴収の取り扱いが複雑な契約は、税理士に契約書段階から関与してもらうと安心です。特に源泉徴収義務の有無は契約類型と業務内容で変わるため、雛形通りに署名すると後で税務リスクが顕在化することがあります。税理士の副業活用については税理士の副業ガイド|確定申告代行・記帳代行で稼ぐ方法【2026年版】でも触れています。
これは因果関係というより、相関の話です。契約書をきちんと取り交わすフリーランスは、業務範囲の交渉やトラブル対応にも慣れており、そうしたプロフェッショナルな対応が単価交渉力の高さに繋がっている、というのが現場感覚です。逆に言えば、雛形を整備して契約書を毎回取り交わす習慣をつけるだけで、受託者としての信頼感・プロ感が一段上がり、単価交渉の余地が広がります。
業務委託契約書のリテラシーを高める方法として、ビジネス文書の基礎を体系的に学ぶアプローチもあります。ビジネス文書検定のような資格学習を通じて、契約書・覚書・発注書の構造を理解しておくと、雛形レビューや修正交渉の質が大きく上がります。IT系の契約書(システム開発委託、SES、保守委託など)を扱うなら、CCNA(シスコ技術者認定)のような技術系資格と並行して、契約実務の知識を持っておくと、技術と契約の両面で発注者と対等に話せます。
私自身、契約書チェックの精度が上がってから、明らかに案件継続率が上がりました。契約段階で業務範囲・報酬・解約条件を詰めておくと、業務開始後の認識ズレが激減し、結果として長期契約に繋がります。雛形は単なる事務処理ツールではなく、長期的なクライアントとの関係を健全に保つための「共通認識のドキュメント」として位置付けるのが、結局のところ一番得な使い方です。
雛形をダウンロードしてサインするだけの「事務作業」と捉えるか、案件の前提条件を発注者と擦り合わせる「交渉プロセス」と捉えるかで、フリーランスとしての成長スピードが大きく変わります。本記事で紹介した15条項のチェックを習慣化すれば、契約書レビューにかかる時間も30分程度に収まるようになります。最初は時間がかかっても、雛形を一度整備すれば長く使えるので、ぜひ自分専用の雛形作成に投資してみてください。
よくある質問
Q. インターネット上にある業務委託契約書の無料の雛形をそのまま使っても大丈夫ですか?
そのまま使うのは避けるべきです。ネット上の雛形はあくまで一般的なケースを想定しており、発注者寄りに作られていたり、トラブルを防ぐための具体的な記述が抜けていたりすることが多いため、必ず自分の業務内容や条件に合わせてカス タマイズする必要があります。
Q. 契約書を確認する際、特に注意して見るべきポイントは何ですか?
「報酬の支払条件(支払期日と振込手数料の負担)」「業務内容と範囲の明確化」「成果物の検収期間」「契約の解除条件と損害賠償の上限」の4点は特に重要です。ここが曖昧だと後々大きな不利益を被る可能性があります。
Q. 印紙代は誰が払うの?
一般的に、電子契約であれば印紙は不要です。書面契約の場合でも、甲乙折半とするのが一般的ですが、発注者が全額負担するケースも多々あります。契約書に記載しておけば安心です。
Q. 契約書の修正を提案したら、案件を見送られることはありませんか?
誠実な企業であれば、合理的な修正提案を理由に一方的に契約を破棄することはありません。逆に、一方的で不利な条件を強要し、交渉の余地すら与えない企業とは、最初から取引を見送った方が中長期的なリスクを回避できます。
Q. 契約書を作る際、「請負」と「準委任」のどちらを選べばいいですか?
「仕事の完成(成果物の納品)」に対して責任を持ち報酬が発生するWebサイト制作やシステム開発などの場合は「請負契約」を、「特定の業務を行うこと(アドバイザリーやコンサルティングなど)」に対して報酬が発生する場合は「準委任 契約」を選びます。
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この記事を書いた人
丸山 桃子
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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