フリーランスでもマンション購入は可能?住宅ローン審査の実態

織田 莉子
織田 莉子
フリーランスでもマンション購入は可能?住宅ローン審査の実態

この記事のポイント

  • フリーランスのマンション購入と住宅ローン審査の実態を解説
  • 審査に通る年収・勤続年数の基準
  • 審査を有利にする具体的なテクニックを紹介します

「フリーランスは住宅ローンが組めない」と思い込んでいる方がとても多い。

結論から言うと、フリーランスでもマンション購入はできる。ただし、会社員よりハードルが高いのは事実だ。私が会計事務所で担当してきたクライアントの中にも、フリーランスで住宅ローンの審査を通した方は何人もいる。

ただ、失敗例もたくさん見てきた。ユウト(35歳・Webエンジニア)は独立2年目4,500万円のマンション購入を希望して住宅ローンを申し込んだ。年収は700万円あったのに、結果は審査落ち。原因は「節税を頑張りすぎた」こと。経費を大量に計上して確定申告の所得を320万円まで圧縮していたため、銀行から見ると「年収320万円の個人事業主」でしかなかった。「え、売上じゃなくて所得で見られるんですか?」とユウトは驚いていたけど、これは住宅ローン審査の基本中の基本。住宅購入を考えるなら、3年前から所得を意識した申告が必要だと痛感したケースだった。

フリーランスの住宅ローン審査基準

民間銀行の住宅ローンでフリーランスに求められる基本条件は以下の通り。

審査項目 会社員の基準 フリーランスの基準
年収の評価 額面年収 確定申告の所得(3年平均)
勤続年数 1年以上 開業3年以上
借入可能額 年収の7〜8倍 年収の5〜6倍
頭金 なしでも可 物件価格の10〜20%推奨
返済負担率 35%以内 25〜30%以内

最も大きな違いは「年収の評価方法」。会社員は直近1年の額面年収で審査されるけど、フリーランスは直近3年間の確定申告書の所得の平均で判断される。

しかも、3年間のうち1年でも赤字や大幅減収があると、マイナス評価になる。

フラット35はフリーランスの味方

民間銀行の審査が厳しいフリーランスにとって、フラット35(住宅金融支援機構が提供)は最も有力な選択肢だ。

項目 フラット35 民間銀行ローン
勤続年数 制限なし 3年以上
審査対象の年数 直近1〜2年 直近3年
金利タイプ 全期間固定 変動 or 固定選択
審査の柔軟性 比較的柔軟 厳しい
団信加入 任意(加入しなくても可) 必須

勤続年数の制限がないから、開業1年目でも確定申告書があれば申し込み可能。金利は民間より若干高めだけど、フリーランスにとっては審査に通る可能性が格段に上がる。知り合いのミユ(33歳・Webデザイナー)はメガバンク2社で落ちた後にフラット35で通った。「メガバンクが全てじゃないんだ」と安堵していた。

NG例/OK例:住宅ローン審査への準備

NG例: 住宅購入を決めてから慌てて審査に申し込む。直近3年のうち1年が赤字申告で、民間銀行3社から審査落ち。時間もメンタルも大幅に消耗。

OK例: 3年前から計画的に確定申告の所得を管理。経費の過度な計上を控え、所得を500万円以上に維持。フラット35で無事審査通過し、3,500万円のマンションを購入。

審査に通るための具体的な準備

1. 確定申告の所得を意識する

住宅ローンを組む予定があるなら、購入予定日の3年前から所得を意識した確定申告を心がけてください。

例えば、4,000万円のマンションを購入したい場合。

借入条件 計算
借入希望額 3,600万円(頭金400万円)
返済負担率25% 年間返済額 ÷ 年収 ≦ 25%
年間返済額(35年・金利1.5%) 約130万円
必要年収 130万 ÷ 25% = 520万円以上

確定申告の所得を3年間平均で520万円以上にする必要があります。節税のために経費を膨らませすぎると、住宅ローンは組めなくなります。

2. 頭金を用意する

フリーランスの場合、頭金は物件価格の10〜20%を用意するのが現実的です。

物件価格 頭金10% 頭金20%
3,000万円 300万円 600万円
4,000万円 400万円 800万円
5,000万円 500万円 1,000万円

頭金が多いほど借入額が減り、審査が通りやすくなります。また、諸費用(仲介手数料、登記費用、ローン保証料など)で物件価格の5〜8%が別途かかることも忘れないでください。

3. 税金と社会保険料の滞納をゼロにする

住民税、国民健康保険料、国民年金の滞納があると、住宅ローン審査は即アウトです。過去に滞納歴があっても、完済していれば問題ないケースが多いですが、現在進行形の滞納は絶対にNGです。

4. クレジットカードの利用額を整理する

住宅ローン審査では、既存の借入(クレジットカードのリボ払い、カーローン、奨学金など)の返済額も「返済負担率」に含まれます。

カードのキャッシング枠も借入可能額として計算される銀行があるため、使っていないカードのキャッシング枠は事前に解約しておくのが安全です。

独身でマンション購入を決断した理由として、資産形成や家賃の無駄をなくしたいという声が多い。筆者は6つの理由でマンション購入をおすすめします。 — 出典: 独身でマンション購入して後悔するケースとは(穴吹工務店)

法人化すると住宅ローンはどうなるか

法人化したフリーランスが住宅ローンを組む場合、「役員報酬」が年収として評価されます。

形態 年収の評価基準
個人事業主 確定申告の所得
法人の代表 役員報酬(源泉徴収票)

法人化して毎月一定の役員報酬を設定すると、会社員と同じ「給与所得者」として扱われるため、審査が有利になるケースがあります。ただし、法人の決算が赤字だと逆に不利になることもあるので注意が必要です。

フリーランス向け住宅ローンを扱う金融機関の見分け方

フリーランスの住宅ローン審査は、申し込む金融機関によって結果が天と地ほど変わる。これは私が会計事務所で何百件も住宅ローン相談を受けてきた中で、最も強く感じる事実だ。

まず押さえておきたいのが「フラット35」と「民間銀行」の住み分け。フラット35は住宅金融支援機構が民間金融機関と提携して提供する全期間固定金利のローンで、勤続年数や開業年数の制限がないため、フリーランスにとって最も入り口が広い選択肢になる。

【フラット35】の利用条件として、職業による制限はありません。自営業の方や、転職してから間もない方もご利用いただけます。 出典: flat35.com(住宅金融支援機構)

民間銀行の中でも、フリーランスに対するスタンスはバラバラだ。私の体感では、ネット銀行は「直近1〜2年の所得」を重視する傾向があるため、開業3年未満でも所得が安定していれば通る可能性がある。一方、メガバンクは依然として「3年連続黒字・所得右肩上がり」を強く求める。地方銀行・信用金庫は地域密着型で、税理士の事業計画書添付や面談で柔軟に判断してくれることもある。

申込先を選ぶ際の実務的なコツは、「最初に1社だけ仮審査を出さない」こと。フリーランスは1社落ちると心折れがちだが、属性的に通りやすい3〜4社を同時並行で当たるのが鉄則だ。ただし、本審査の同時申込は信用情報に「申込ブラック」として残るため、仮審査で当たりをつけてから本審査は2社程度に絞り込もう。

また、住宅ローン専門の独立系仲介会社(金融機関ではない)に相談するのも有効。彼らは各銀行の「フリーランスへの審査基準」を熟知していて、最初から通る可能性が高い銀行を3〜5社提案してくれる。仲介手数料はかかるが、自力で銀行を回って消耗するより遥かに合理的だ。

マンション購入後にフリーランスを直撃する「想定外コスト」

審査通過と引き渡しがゴールだと思っていると、購入後3〜5年で必ず資金繰りに苦しむ。私のクライアントで「マンション買って楽になりました」と言う方はほぼおらず、「思ったよりお金が出ていく」が共通の感想だ。

最も見落とされるのが、固定資産税と都市計画税。新築マンションの場合、購入翌年から毎年4〜6月に納税通知書が届き、年間で物件価格の0.3〜0.7%程度(自治体・物件によって差がある)を納める必要がある。たとえば4,000万円のマンションなら年間12〜28万円。これを4期分割で払うか一括で払うかは選べるが、フリーランスは収入の波があるため、毎月分の積立貯金が必須だ。

固定資産税は、毎年1月1日現在に固定資産課税台帳に所有者として登録されている方に課税される税金です。 出典: soumu.go.jp

次に管理費・修繕積立金。新築時は月1〜2万円程度に設定されているケースが多いが、築10〜15年で修繕積立金が大幅に増額されるのが業界の通例。国土交通省のマンション総合調査でも、修繕積立金の不足は全国的な課題として指摘されており、購入時点の積立金額だけで判断するのは危険だ。長期修繕計画書を必ず取り寄せ、20〜30年後の月額負担まで試算してから購入判断をしよう。

さらに、フリーランス特有の落とし穴として「住宅ローン控除の申告忘れ」がある。会社員は会社の年末調整で2年目以降は自動処理されるが、フリーランスは毎年自分で確定申告書に控除明細を添付する必要がある。1年でも申告漏れすると、その年の控除(最大年間21〜31.5万円程度、借入残高と物件性能による)が消える。

加えて、団体信用生命保険(団信)の選び方も要注意。フラット35では団信加入が任意だが、フリーランスは会社員のような遺族厚生年金が手薄なため、原則として団信加入を強く推奨する。さらに「がん団信」「3大疾病団信」など特約付きを選ぶと金利が0.1〜0.3%上乗せされるが、就労不能リスクを考えれば検討に値する。

購入前に必ず受けるべき「3つの公的相談窓口」

最後に、住宅ローンや住宅購入で迷ったときに、無料で活用できる公的な相談窓口を紹介する。フリーランスは情報弱者になりやすいので、これらをフル活用しないのは損だ。

第一に、住宅金融支援機構の「住宅ローン相談ダイヤル」と全国の住宅相談窓口。フラット35の制度詳細はもちろん、自分の所得状況で借入可能な金額のシミュレーションも無料で受けられる。電話・対面・オンラインに対応していて、土日対応の窓口もあるため、平日忙しいフリーランスでも使いやすい。

第二に、各自治体の「住宅相談窓口」。多くの政令市・中核市では、建築士やファイナンシャルプランナーが常駐する無料相談を実施している。たとえば物件のチェックポイント、契約書の不備、ローン特約条項の解釈などを中立的な立場で確認してくれる。不動産会社の営業トークだけで判断する前に、必ず一度は受けたい相談だ。

第三に、国民生活センターおよび各地の消費生活センター。住宅購入は契約金額が大きいため、トラブル発生時のダメージも大きい。国民生活センターには毎年、住宅・不動産関連のトラブル事例が大量に蓄積されている。

不動産・賃貸住宅に関する相談は、消費生活相談の中でも継続的に多く寄せられている分野の一つである。 出典: kokusen.go.jp

不審な勧誘や強引な契約を求められたら、188(消費者ホットライン)に電話するだけで地元の相談窓口につながる。「フリーランスで信用ないから」と弱気になり、不利な条件で押し切られるケースが本当に多いので、おかしいと感じたら必ず第三者に相談してほしい。

加えて、住宅取得者向けの税制優遇(住宅ローン控除、すまい給付金廃止後の代替制度、贈与税の住宅取得資金特例など)は毎年細かく改正される。国税庁のタックスアンサー、国土交通省の住宅政策ページを年1回はチェックする習慣をつけてほしい。フリーランスは税金・社会保険・住宅費の管理を自分で完結させなければならない以上、「公的情報を一次情報で取りに行く力」が、生涯の手取りを大きく左右する。

よくある質問

Q. フリーランスが住宅ローンを組むには、何年以上の事業実績が必要ですか?

一般的な金融機関では「過去3期分」の確定申告書の提出を求められるため、最低でも3年以上の事業実績が必要です。3期連続で黒字であることや、収入が安定していることが重視されます。実績が3年未満の場合でも、フラット35であれば1期分(または数ヶ月分)の収入証明で申し込める可能性があるため、独立直後の方はフラット35を検討するのがおすすめです。

Q. 節税のために経費を多く計上しているのですが、審査に悪影響はありますか?

はい、悪影響を及ぼす可能性が高いです。住宅ローンの審査では、売上(年商)ではなく経費を差し引いた「所得金額(利益)」が基準となります。過度な節税で所得を低く抑えていると、返済能力が低いとみなされ審査に通りにくくなります。マンション購入を計画している場合は、購入の数年前から経費計上を見直し、十分な所得金額を申告して実績を作ることが重要です。

Q. フラット35がフリーランスに有利と言われるのはなぜですか?

民間金融機関の住宅ローンは「過去3年間の安定した所得」を厳しくチェックしますが、住宅金融支援機構が提供するフラット35は「直近1年間の所得」を基準に審査を行うためです。また、職業形態や勤続年数(事業年数)に対する制限が緩やかで、自営業者でも審査に通りやすい独自の基準を持っています。固定金利で返済計画が立てやすい点もフリーランスにとって大きなメリットです。

Q. マンション購入前に「法人化」したほうが審査に通りやすくなりますか?

法人化してすぐのローン申し込みは、かえって審査が厳しくなるためおすすめしません。法人化すると「新設法人の代表取締役(勤続年数1年目)」という扱いになり、個人の時よりも厳しい決算書(通常3期分)の提出を求められるケースがほとんどです。住宅購入を優先するなら個人事業主のまま申し込み、無事にマンションを購入した後に法人成りする順番が安全です。

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織田 莉子

この記事を書いた人

織田 莉子

FP2級・フリーランス経理サポーター

会計事務所で10年間の実務経験を経て独立。フリーランスの確定申告・節税・資金管理を専門に、お金にまつわる記事を執筆しています。

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