画像生成AI制作の修正を何回まで受けるか|先に決めておく


この記事のポイント
- ✓画像生成AI制作の修正対応は
- ✓回数を決めずに受けると無限に続きます
- ✓契約書と見積書のどこに書くか
画像生成AI制作の修正対応でもめる案件には、共通点があります。契約の段階で「修正は何回まで」を決めていないことです。これ、知らない人が本当に多いんです。結論から言うと、回数だけ決めても足りません。「何をもって1回と数えるか」を同時に決めていないと、回数制限は機能しません。
この記事は、画像生成AIを使った制作を受注する側に向けて、修正対応の線引きをどう設計し、どの書面に書き、実際に修正依頼が来たときにどう処理するかを整理したものです。※個別の契約トラブルで損害の請求まで検討する段階に入った場合は、弁護士に相談してください。ここで扱うのは、そこに至る前に自分を守るための実務の話です。
画像生成AI制作で修正が膨らむ理由
まず、なぜこの分野で修正が問題になりやすいのかを押さえます。原因は、発注者と受注者の双方が「AIなら直すのは簡単だろう」と考えている点にあります。
修正が負担になっている実態
生成AIを業務で使う現場を対象とした調査では、修正作業の負担感がはっきり数字に出ています。
■修正における負担感20.1%:とても感じている56.3%:やや感じている20.7%:あまり感じていない2.9%:全く感じていない全体の76.4%が修正作業を負担に感じている実態が浮き彫りになりました。生成AIの活用において「1回の生成で完璧な成果物を得る」ことは依然として難しく、何らかの手直しが避けられない現状がうかがえます。 出典: note.com
つまり、4人に3人以上が修正を負担だと感じている。これは受注側だけの話ではなく、社内で生成AIを使っている人も含めた数字です。修正が発生することは前提であって、例外ではありません。
同じ調査では、修正が難しいと感じられているジャンルの内訳も示されています。
69.3%:画像・イラスト生成30.7%:文章(テキスト)生成画像生成の方が圧倒的に難しいと感じられている背景には、言語でビジュアルの細部(位置、色味、質感など)を厳密に指定することの限界が関係していると考えられます。文章生成が「難しい」と感じる割合が低いのは、テキストであれば人間が直接キーボードで書き換えることが容易であり、AIとの対話に頼り切らなくても最終調整が完結しやすいという性質が影響している可能性があります。 出典: note.com
画像の修正が難しいのは、技術の問題というより、言葉で細部を指定することの限界に由来します。この構造を理解しておくと、契約の書き方が変わります。
「ここだけ直して」が成立しない
手描きのイラストや写真のレタッチであれば、部分的な修正は部分的な作業で済みます。目の位置だけ動かす、背景の一部を消す、色味を調整する。作業量は修正の大きさに比例します。
画像生成AIは、この比例関係が壊れています。プロンプトを少し変えると、直してほしくない部分まで変わります。人物の表情だけ変えたつもりが、髪型も服の質感も背景も変わる。結果として、指定された1か所を直すために、他の要素を元の状態に戻す作業が発生します。修正の指示は小さくても、作業は小さくなりません。
発注者はこの構造を知りません。だから「ちょっと直すだけ」という認識で、何度でも依頼してきます。悪意はないことがほとんどです。ここで受注側がやるべきなのは、腹を立てることではなく、契約の段階でこの構造を説明し、書面に落としておくことです。
修正の「1回」を定義する
回数制限を設ける前に、単位を決めます。ここが抜けていると、回数制限は無意味になります。
依頼の通数ではなく、指示の束で数える
よくある失敗は、「修正は2回まで」とだけ書くことです。すると発注者は、1通のメールに15項目の修正指示を書いて送ってきます。これで1回と数えられたら、事実上の無制限です。
かといって、1項目を1回と数えるのも現実的ではありません。「もう少し明るく」と「文字を大きく」を別々に数えると、発注者は指示を出すのが怖くなり、やり取りが硬直します。
実務的にちょうどよいのは、「1回の修正依頼で受け付ける項目数の上限」を決める方法です。たとえば、1回の修正につき指示は5項目まで、それを超える場合は次の回にまわす、という形にします。回数と項目数の両方を書いておくと、どちらの抜け道も塞げます。
修正と作り直しを分ける
もう1つ決めておくべきなのが、修正と作り直しの境界です。修正とは、承認された方向性の中での調整。作り直しとは、方向性そのものの変更です。
具体例で線を引きます。「人物の服の色を青から緑に」は修正です。「人物ではなく動物にしてほしい」は作り直しです。「背景を明るく」は修正、「背景を室内から屋外に」は作り直し。「文字のフォントを変更」は修正、「レイアウトを縦組みから横組みに」は作り直し。
この境界を見積書に書き、代表的な例を添えておきます。抽象的な定義だけだと、いざというときに解釈が割れます。例が2つか3つ書いてあるだけで、相手も「これは作り直しの側だな」と自分で判断できるようになります。
いつから修正回数を数え始めるか
初稿を出した時点から数えます。ここも明記が必要です。というのも、初稿を出す前の段階で「イメージが違う」と言われて作り直すケースがあるからです。
これを防ぐには、初稿の前に方向性を確定させる工程を挟みます。ラフ案や参考画像の提示、プロンプトの方針の共有といった段階です。この段階での調整は修正回数に含めず、方向性が確定してから初稿を出す。そして初稿以降の指示を修正回数として数える。この順番を守ると、後戻りの発生確率が大きく下がります。
契約書と見積書のどこに書くか
決めた内容は、書面に落とさなければ意味がありません。口頭で合意しても、もめたときに証明できません。
見積書に書く項目
見積書には、少なくとも次の項目を明記します。修正の回数上限、1回あたりの指示項目数の上限、修正の受付期限、上限を超えた場合の追加費用の算定方法、作り直しに該当する場合の扱い、納品形式と納品データの種類。
追加費用の算定方法は、金額そのものを書かなくても、「別途お見積もり」と書いておけば足ります。重要なのは、上限を超えたら追加費用が発生するという合意が書面にあることです。金額の交渉は、実際に超えたときにすればよい。
受付期限も忘れがちですが、これがないと納品から数か月後に修正依頼が来ます。「納品後7営業日以内」といった期限を入れておくと、案件が終わります。期限が切れたあとの依頼は、新規の発注として扱えます。
契約書に書く項目
継続的に取引する相手や、金額の大きい案件では、契約書を交わします。契約書に書くべきなのは、見積書より上の階層の話です。検収の基準、検収の期限、報酬の支払期日、成果物の権利の帰属、生成AIを使用することの明示と学習データに関する取り決め、第三者の権利を侵害した場合の責任分担。
特に、生成AIを使用することを明示する条項は入れておいてください。あとから「AIで作ったとは聞いていない」と言われるトラブルが実際にあります。使用するツールの種類まで書く必要はありませんが、「本件成果物の制作には画像生成AIを使用する」旨を合意しておくと、この争いは起きません。
報酬の支払期日については、法律上の定めがあります。特定受託事業者に業務を委託する場合、発注者は成果物を受け取った日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に報酬を支払う義務を負います。つまり、「修正がまだ残っているから支払わない」という理由で、受領後の支払いを無制限に先延ばしにすることは認められません。制度の詳細は公正取引委員会や厚生労働省の案内で確認できます。
書面がない状態で始めてしまった場合
すでに口頭で受けてしまい、書面がないという相談も多く受けます。この場合でも、着手前ならまだ間に合います。「進め方の確認」という名目で、修正の回数と範囲を書いたメールを1通送ります。相手が「その内容で進めてください」と返信すれば、それが合意の証拠になります。
契約書という名前である必要はありません。やり取りの記録が残っていて、双方が同じ内容を認識していたと示せればよい。メールやチャットの履歴は、それ自体が証拠になります。だからこそ、重要な合意は電話や打ち合わせの口頭で終わらせず、必ず文字にして送っておくことです。
修正依頼が来たときの処理手順
線引きを決めていても、運用がぶれると意味がありません。実際に依頼が来たときの手順を決めておきます。
受け取ったらまず分類する
修正依頼のメールが来たら、すぐに作業を始めません。まず、書かれている指示を分類します。承認済みの方向性の中の調整なのか、方向性の変更なのか。契約の範囲内なのか、追加発注に該当するのか。
分類した結果を、作業前に相手に返します。「いただいたご指示のうち、1から4は修正対応の範囲内ですので今回の1回分として進めます。5については当初の方向性の変更にあたるため、別途お見積もりをお送りします」という形です。
この一手間を省いて、とりあえず全部やってしまう人が多い。気持ちはわかります。断ると関係が悪くなりそうだからです。しかし、一度やってしまうと、それが基準になります。次からは同じ範囲を無償でやることになります。最初の1件目で線を引くことが、その後の全部を決めます。
回数の残りを毎回伝える
修正を1回受けるたびに、「今回で修正対応は2回目です。あと1回が範囲内となります」と伝えます。相手を追い詰めるためではなく、相手が計画的に指示を出せるようにするためです。
残りを伝えられた発注者は、指示をまとめてから送るようになります。結果として、細切れの依頼が減り、双方の手間が減ります。実際に現場で見てきた限りでは、残り回数を毎回伝えている案件のほうが、修正の総回数は少なくなります。
修正指示の粒度を上げてもらう工夫
画像生成AIの修正で最も時間を食うのは、指示が曖昧なケースです。「なんとなく違う」「もう少しいい感じに」という指示は、作業に変換できません。かといって、発注者に専門用語で指示してもらうのも無理があります。
有効なのは、選択肢を提示する方法です。「明るさを上げる方向でよろしいですか、それとも彩度を上げる方向でしょうか」と2択で聞く。あるいは、調整した候補を2案作って並べて見せる。相手は言語化できなくても、見比べれば選べます。この方法だと、往復の回数が減ります。
もう1つ、修正指示のテンプレートを渡す方法があります。対象箇所、現状、希望する状態、優先度の4項目を埋めてもらう形式です。フォーマットがあると、相手も書きやすい。書式を整えるという発想は、業務文書全般に共通する考え方で、文書の型を体系的に扱うビジネス文書検定の学習範囲にも近い内容が含まれます。
そもそも修正を減らすための事前設計
線引きと同じくらい効くのが、修正が発生しにくい進め方です。修正対応の設計とは、来た依頼をどう捌くかだけでなく、依頼が来ない状態をどう作るかも含みます。
参考画像を先に共有してもらう
言葉で方向性をすり合わせるのは、この分野では効率が悪い。位置、色味、質感といった要素は、言語化した時点で受け取り方に幅が出ます。だから、着手前に参考画像を数点もらいます。「こういう雰囲気」という画像が3点あれば、文章で1,000字説明されるより方向が定まります。
参考画像をもらうときは、良い例だけでなく、避けたい例も1点もらうのが効果的です。「これは違う」という基準があると、生成の初期段階で外れを排除できます。発注者は好みを言語化できなくても、見せられれば判断できます。
参考画像がない場合は、こちらから候補を並べて選んでもらいます。作業としては手間ですが、あとで作り直しになる工数より圧倒的に軽い。初稿の前にこの工程を挟むかどうかで、その後の往復回数が変わります。
確認のタイミングを工程に埋め込む
完成品を1回だけ見せる進め方は、後戻りの危険が最も高い。工程を分けて、それぞれの区切りで確認をもらいます。方向性の確認、構図の確認、仕上げの確認。区切りごとに承認をもらっておくと、あとから前の段階に戻る依頼が来たときに、「その点は前工程で承認いただいた内容です」と説明できます。
区切りごとの承認は、口頭ではなくメールやチャットで残します。「この方向で進めます」という一言をもらうだけでよい。記録が残っていれば、あとで争いになりません。※ここでの承認は法的な検収とは別の概念なので、契約書上の検収条項とは分けて扱ってください。
誰が最終判断するかを最初に確認する
修正が終わらない案件の多くは、判断する人が複数いる状態で進んでいます。担当者が承認した内容を、上長が見て覆す。別部署が見てまた意見が出る。この構造がある限り、何回修正しても終わりません。
だから初回のやり取りで、「最終的にご判断されるのはどなたになりますか」と確認します。この質問は失礼ではなく、むしろ相手の社内調整を促す効果があります。判断者が明確な案件は、修正の回数が目に見えて少なくなります。判断者が不明なまま進む案件は、契約の回数上限を先に説明しておいたほうが安全です。
権利と責任の線引き
修正の話と並んで相談が多いのが、権利まわりです。ここも先に決めておく項目です。
成果物の権利をどう扱うか
生成AIで作った画像の著作権については、制度上の議論が続いている領域です。ここで確実に言えるのは、当事者間の取り決めを書面にしておくことが最も重要だという点です。誰がどの範囲で使えるのか、二次利用は可能か、他の媒体への転用はどうか。
実務では、次のように整理することが多い。納品した画像の使用権を発注者に渡し、使用範囲を書面で限定する。制作過程で使ったプロンプトや中間データは受注者に残す。発注者が同じ画像を別の媒体で使う場合は、事前の協議を要する。この形にしておくと、あとから「あの画像を別の商品にも使いたい」と言われたときに、追加の話し合いができます。
修正の途中で権利の話が出たとき
修正のやり取りの途中で、「プロンプトを教えてほしい」「元データをください」と言われることがあります。これは修正対応の範囲ではありません。制作の手法そのものを渡す話なので、別の合意が必要です。
断ってよい依頼です。ただし、断り方には気をつけます。「お渡しできません」だけだと角が立ちます。「制作過程のデータは弊方で管理する取り決めとさせていただいております。必要な調整があれば、こちらで対応いたします」という形にすると、相手の目的である「直したい」に応えつつ、データは渡さずに済みます。
第三者の権利を侵害した場合
生成された画像が既存の作品に似ていると指摘されるリスクは、ゼロにはなりません。契約書には、この場合の責任分担を書いておきます。受注側が無過失であっても全責任を負うという条項が入っていることがあるので、契約書を受け取ったら必ずこの部分を読んでください。
現実的な落としどころは、受注側は既知の権利侵害がないことを表明する、発注側は使用前に自社で確認する、問題が生じた場合は協議する、という形です。一方に全責任を寄せる条項は、どちらの立場でも実行が難しく、結局もめます。※契約書の条項に不安がある場合は、署名前に専門家に確認してください。
修正が長引いたときの立て直し方
事前の設計をしていても、想定を超えて長引く案件は出ます。そのときに何をするかを決めておきます。
途中で条件を再確認する
上限に達したのに指示が続く場合、作業を止めて状況を整理した連絡を1通送ります。書く内容は、これまでの経緯の要約、対応した修正の内訳、契約上の範囲、これ以降の進め方の提案です。感情を入れず、事実の列挙で構成します。
提案は2案出すのが有効です。追加の見積もりを出して継続する案と、現状の内容で一度納品して区切る案。選択肢が2つあると、相手は「どちらかを選ぶ」という判断になり、話が前に進みます。1案だけ突きつけると、受け入れるか拒否するかの対立構造になります。
支払いを止められた場合
修正が終わらないことを理由に報酬の支払いを止められる相談は、実際に多くあります。ここは押さえておいてください。発注者は、成果物を受け取った日から起算して60日以内に報酬を支払う義務を負います。「修正がまだ残っているから」は、受領後の支払いを無期限に先延ばしにする理由にはなりません。
対応としては、まず受領の事実を記録で確認します。納品したデータを相手が受け取り、使用しているかどうか。使用が始まっていれば、受領があったと言えます。そのうえで、支払期日を書面で照会します。それでも動かない場合は、行政の相談窓口を使う道があります。フリーランスの取引に関する相談は公正取引委員会が受け付けており、制度の解説も公開されています。
次の案件に活かす記録の取り方
もめた案件は、記録を残して次に活かします。残すのは、修正が何回発生したか、どの段階で方向が変わったか、事前に確認しておけば防げたことは何か、の3点です。
この記録が数件たまると、自分の見積もりの精度が上がります。どんな依頼のときに修正が膨らむのか、どんな発注者のときに判断者が複数いるのかが見えてきます。見えてくると、受注の段階で条件を厚めに設定する判断ができます。修正対応の設計とは、結局のところ過去の案件から学んだことを次の契約書に書き足していく作業です。
発注する側から見た修正対応
視点を変えて、依頼する側から見るとどう見えるかも押さえておきます。相手の事情がわかると、線引きの説明がしやすくなります。
発注者が修正を繰り返す理由の多くは、社内の承認プロセスにあります。担当者が受け取った画像を上長に見せ、そこで意見が出て、さらに別部署から意見が出る。担当者自身も振り回されています。この構造がわかっていると、「社内でご確認いただく回数を1回にまとめていただけますか」という提案ができます。これは相手の負担も減らす提案なので、受け入れられやすい。
生成AIを業務に組み込む側の課題として、承認の流れの設計が挙げられています。制作の速度だけを上げても、その前後の確認や承認が従来のままでは全体は変わらない、という指摘です。受注側から見ると、これは「相手の承認プロセスがボトルネックなら、そこに提案する余地がある」という意味になります。企業側でAIの導入や業務への組み込みを支援する仕事の内容はAIコンサル・業務活用支援のお仕事に整理されており、制作だけでなく運用設計まで請け負う方向の広がりが見えます。
運営の現場から見た修正トラブルの傾向
20年この市場を見てきた立場から言えば、修正でもめる案件には共通する初期条件があります。第一に、見積書に修正の条件が書かれていない。第二に、初稿を出すまでの工程が省かれ、いきなり完成品を出している。第三に、最初の追加依頼を無償で受けている。この3つが揃うと、ほぼ確実に終わらない案件になります。
逆に、長く続いている取引を見ると、修正の条件を細かく書いている人ほど関係が良好です。制限を書くと相手が離れるのではないかと心配する人がいますが、実際は逆でした。条件が明確な相手のほうが、発注者にとっては予算を組みやすく、社内でも通しやすい。運営者として見てきた限りでは、条件を曖昧にしたまま受け続けた人が、数か月後に消耗して降りるケースのほうがはるかに多いです。
もう1つ、取引の構造が修正のやり取りに影響します。間に中間マージンが乗らない直接の取引では、依頼する側は同じ予算でより多くを頼め、受け取る側は同じ仕事で手取りが厚くなります。手数料0%の関係では、双方に余裕が生まれるため、追加の作業が発生したときにも「では追加でお願いします」という会話が成立しやすい。手数料が厚い経路では、追加費用の話を切り出すこと自体が難しくなり、受注側が飲み込む結果になりがちです。
独自データから見える考察
在宅で画像制作を請け負う人の相談内容を見ていくと、修正に関する悩みは「回数が多い」ことよりも「終わりが見えない」ことに集中しています。回数そのものが多くても、あと何回で終わるかがわかっていれば人は耐えられます。逆に、少ない回数でも終わりが見えないと、精神的な消耗が大きい。
この観点で言うと、修正回数の上限は、発注者を縛るための条項であると同時に、受注者自身の見通しを立てるための条項です。上限が書いてあれば、着手の時点で総作業量が読めます。読めれば、他の案件との配分を計画できます。計画できれば、無理な受注を避けられます。
技術面の周辺スキルも、条件交渉に影響します。画像生成AIを扱う人が、簡単なアプリケーションやツールの自動化まで扱えると、単発の制作ではなく仕組みの構築として提案できるようになります。開発の仕事がどんな内容で発注されているかはアプリケーション開発のお仕事で確認でき、制作の受注から運用の受注へ広げる際の参考になります。関連して、ソフトウェア領域の収入データはソフトウェア作成者の年収・単価相場にまとまっており、制作だけの受注と仕組みまで含めた受注で、市場の評価がどう違うかを見る材料になります。
海外の発注者と取引する場合、修正の商習慣が異なる点にも注意が必要です。契約書に書かれた範囲を厳密に守る文化圏では、書いていない作業を依頼されること自体が少ない一方、書いてある範囲は確実に求められます。海外案件の受注の流れはUpworkの使い方ガイド|日本人フリーランスが海外案件を取る方法にまとめられており、契約条件を先に固める進め方の実例として参考になります。
最後に一点。修正の条件を決めることは、相手を疑うことではありません。お互いが同じ絵を見て仕事を進めるための準備です。決めていないから疑心暗鬼になり、決めてあるから安心して任せられる。書面は、関係を守るための道具です。法律も契約も、あなたを縛るためではなく、あなたを守るためにあります。
よくある質問
Q. 修正は何回までに設定するのが妥当ですか?
回数だけを決めても機能しません。回数の上限と、1回あたりに受け付ける指示項目数の上限を両方決めるのが実務的です。1通のメールに多数の指示が並んで1回と数えられると、事実上の無制限になるためです。あわせて、いつから数え始めるか(通常は初稿の提示時点)と、修正の受付期限も見積書に明記します。
Q. 修正と作り直しの境界はどこで引きますか?
承認された方向性の中での調整が修正、方向性そのものの変更が作り直しです。服の色を変えるのは修正、人物を動物に変えるのは作り直し。背景を明るくするのは修正、室内から屋外に変えるのは作り直しです。抽象的な定義だけでは解釈が割れるため、代表例を2つか3つ見積書に添えておきます。
Q. 書面を交わさずに始めてしまった場合はどうすればよいですか?
着手前であれば間に合います。「進め方の確認」としてメールで修正の回数と範囲を送り、相手から了承の返信をもらえば合意の証拠になります。契約書という体裁である必要はなく、双方が同じ内容を認識していたと示せる記録があればよい。重要な合意は口頭で終わらせず、必ず文字にして送っておくことです。
Q. 発注者からプロンプトや元データを求められたら渡すべきですか?
修正対応の範囲外なので、断ってよい依頼です。制作過程のデータを渡すのは制作手法そのものを渡す話であり、別の合意が必要になります。断る際は「制作過程のデータは弊方で管理する取り決めです。必要な調整はこちらで対応します」と伝え、相手の目的である修正には応じる姿勢を示すと角が立ちません。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
関連記事
カテゴリから探す

クラウドソーシング入門
クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド
職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク
副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

お金・税金
確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ
プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング
サービス比較・おすすめランキング

AI活用
職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド
市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド
クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア
転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人
看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人
薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人
介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人
保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人
医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保険
生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人
無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース
バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業
契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代
シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ
サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック
暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス
経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材
フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方
子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金
個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド
SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方







