CROに向いている人|長く続く人に共通していること


この記事のポイント
- ✓CRO(開発業務受託機関)に向いている人とはどんな人かを
- ✓長く続く人に共通していることから整理しました
- ✓記録や手順との付き合い方
「CROの仕事に興味はあるけれど、自分に向いているのか分からない」。
「入社してみたものの、このまま続けていけるのか不安になってきた」。
こういうご相談、本当に多いんです。
CROに向いている人を調べると、「コミュニケーション能力がある人」「几帳面な人」といった言葉がよく並んでいます。間違いではありません。でも、それだけでは、自分に当てはまるのかどうか、なかなか判断がつきませんよね。
この記事では、「向いている人の条件」を並べるのではなく、CROで長く働き続けている人に共通していることを、職場の性質と結びつけてお話しします。今は当てはまらなくても大丈夫。多くの共通点は、生まれ持った性格ではなく、仕事との付き合い方で身についていくものだからです。
「向いている人」を考える前に、CROという職場の性質を知る
向き不向きを考える前に、まずCROという職場がどういう性質を持っているのかを押さえておきましょう。ここが分かると、「なぜその特徴が向いていると言われるのか」が腑に落ちます。
CROは、製薬会社などの依頼者から、治験の業務を受託する会社です。治験は、新しい薬が患者さんに使えるようになるまでに、その有効性と安全性を人で確かめる試験のこと。国の定めたルールに沿って、決められた手順で進める必要があります。
この仕事の性質を、3つにまとめてみます。
1つ目は、「ルールと記録の仕事」だということです。治験では、何をいつ誰が確認したかをすべて記録に残します。記録に残っていないことは、やっていないのと同じと扱われます。
2つ目は、「間に立つ仕事」だということです。CROの社員は、依頼者である製薬会社と、治験を行う医療機関の間に立ち、両方の都合を調整しながら仕事を進めます。社内でも、モニタリング、データ管理、統計解析などの部署が連携しています。
3つ目は、「成果が見えるまで時間がかかる仕事」だということです。1つの治験は、立ち上げから終了まで数年かかることも珍しくありません。自分が関わった薬が承認されるまでには、さらに時間がかかります。
もう1つ、見落としやすいのが、CROという職場の中にも大きな違いがあることです。人材紹介会社のコラムでも、次のように書かれています。
CROといっても、内資・外資、大手・中堅によって経験できる領域やキャリアパス、働き方には違いがあります。 出典: cra-recruit.com
つまり、「CROに向いているか」という問いは、「どのCROの、どの職種に向いているか」という問いに置き換えたほうが、答えに近づけるということです。この点は、後半でもう一度お話ししますね。
同じ医療に関わる仕事でも、病院や薬局とは、仕事の手応えの感じ方がかなり違います。病院では、目の前の患者さんが回復していく姿や、感謝の言葉が直接返ってきます。CROでは、患者さんと直接会うことはほとんどなく、手応えは「期限どおりに終わった」「記録に抜けがなかった」といった形で返ってきます。どちらが上ということではなく、手応えの形が違う。この違いを知っておくと、向き不向きを考えるときの見当がつけやすくなります。
ここから先は、この3つの性質に対して、長く続く人がどう向き合っているのかを見ていきます。
共通点1:記録と手順を「自分を守るもの」と捉えている
長く続く人に最初に共通しているのは、記録や手順書を「面倒な縛り」ではなく、「自分を守ってくれるもの」と捉えていることです。
CROの仕事では、社内の標準業務手順書(SOP)、治験ごとの計画書、依頼者ごとの手順書など、読むべき文書がたくさんあります。医療機関を訪問したら報告書を書き、電話で確認したことも記録に残し、書類は決められた場所に決められた名前で保管する。
最初は、この細かさに驚く人がほとんどです。「なぜここまで書かなければいけないの」と感じる時期は、誰にでもあります。
治験では、後になって依頼者の監査や、国の調査が入ることがあります。そのときに問われるのは、「手順どおりに仕事をしたか」です。記録がきちんと残っていれば、「このとき、この手順に沿って、こう判断しました」と説明できます。つまり、記録は、未来の自分を守る盾になるんです。
こういう相談がよくあります。「細かい作業が苦手なので、CROは向いていないと思う」と。
ここで少し考えてみてほしいのは、「細かい作業が苦手」と「ルールに沿って確実に進めるのが苦手」は、同じではないということです。細かい作業が得意でなくても、チェックリストを作り、ダブルチェックの仕組みを使い、1つずつ確実に進めることはできます。
実際、長く続いている人の中には、「自分はうっかりが多いから、仕組みに頼るようにしている」と話す人が少なくありません。自分の弱さを知っていて、それを補う道具を持っている。これは、几帳面さとは別の、とても大切な力です。
逆に、つまずきやすいのは、「自分の経験ではこうだから」と手順を省いてしまう場合です。臨床や前職で実力のあった人ほど、この落とし穴にはまりやすいことがあります。CROでは、個人の判断より、決められた手順が優先される場面が多い。ここを受け入れられるかどうかは、向き不向きを考えるうえで、大きな分かれ目になります。
もう1つ、手順について大切なことがあります。手順を守ることは、何も考えずに従うこととは違います。長く続いている人は、手順どおりに進めながらも、「この手順だと、ここで抜けが起きやすい」と気づいたときに、上司や品質管理の担当者にきちんと伝えています。手順は、現場の気づきで少しずつよくなっていくものです。守りながら、よりよくすることにも関われる。そう捉えられると、ルールの多い職場が、窮屈なだけの場所ではなくなります。
共通点2:間に立つ立場を、自分の役割として受け止めている
2つ目の共通点は、「間に立つ」立場を、苦しいものではなく、自分の役割として受け止めていることです。
CROの社員、特に医療機関を訪問する臨床開発モニター(CRA)は、依頼者と医療機関の間で調整を担います。依頼者からは「症例の登録を急いでほしい」「この書類を今週中に回収してほしい」と求められる。医療機関の先生や治験コーディネーター(CRC)は、日々の診療で忙しく、すぐには対応できない。
その間で、どちらの事情も分かったうえで、落としどころを探していく。いわゆる板挟みの状態になることもあります。
心理学では、相手の立場に立って物事を捉える力を「視点取得」と呼ぶことがあります。難しい言葉ですが、要するに「あの人から見ると、今こう見えているんだろうな」と想像する力のことです。
長く続く人は、この想像を自然にしています。依頼者の担当者も、社内で進捗を報告しなければならない立場にある。医療機関の先生も、患者さんの診療を最優先にしなければならない。どちらも悪くない。そう捉えられると、板挟みの苦しさはずいぶん和らぎます。
もう1つ大切なのは、「自分がすべてを解決しなくていい」と知っていることです。
間に立つ役割の人は、つい自分が全部を丸く収めなければと思い込みがちです。でも実際には、上司に相談する、依頼者に状況をそのまま伝えて判断を仰ぐ、医療機関の治験事務局に協力をお願いする、といったように、周りの力を借りて進める仕事です。
私自身、人の間に立って話を聞く仕事を長く続けてきて、ある時期に気づいたことがあります。両方の気持ちを全部引き受けようとすると、自分がすり減ってしまう。大切なのは、それぞれの事情を正確に聞き取って、次に誰が何をすればよいかを整理することでした。気持ちに寄り添うことと、気持ちを背負うことは、別のことなんですね。
人と話すのが得意かどうかより、この「整理して、つなぐ」ことに手応えを感じられるかどうかが、長く続くかどうかを分けているように思います。
具体的な場面で考えてみましょう。依頼者から「今月中にあと3人の患者さんを登録してほしい」と求められ、医療機関の治験コーディネーターからは「対象になる患者さんが今月は来院の予定がない」と言われたとします。ここで、依頼者の要望をそのまま医療機関に押しつけても、医療機関の事情をそのまま依頼者に伝えるだけでも、話は進みません。長く続く人は、「来月の来院予定で登録できる見込みは何人か」「他の医療機関で補える余地はあるか」と、次の選択肢を整理して依頼者に返します。板挟みを、判断材料を集める役割に変えているんですね。
共通点3:成果が見えるまでの長さに、自分なりの区切りを持っている
3つ目の共通点は、成果が見えるまでの長さに対して、自分なりの区切りを持っていることです。
治験の仕事は、とにかく時間がかかります。1つの試験の立ち上げに数か月、症例の登録に1年以上、データを固めて報告書をまとめるまでにさらに時間がかかることもあります。そして、その薬が承認されて患者さんに届くのは、ずっと先のことです。途中で開発が中止になることもあります。
臨床の仕事や、営業の仕事のように、目の前の相手の反応や、月ごとの数字で成果が見える仕事から移ってきた人は、ここで戸惑うことが多いです。
「毎日一生懸命やっているのに、何のためにやっているのか分からなくなった」。
こういう声を、本当によく聞きます。これは、やる気の問題ではありません。人は、自分の行動の結果が見えないと、手応えを感じにくいものなんです。
長く続いている人は、この長さに対して、自分で小さな区切りを作っています。
例えば、「担当する医療機関の立ち上げが終わった」「データの問い合わせを期限までにすべて片付けた」「報告書に先輩からの修正が入らなかった」。治験全体のゴールは遠くても、その途中には、確かに達成できる節目がたくさんあります。
もう1つは、自分の仕事が何につながっているかを、ときどき思い出す習慣です。例えば、承認された薬のニュースを見たときに、「この薬も、どこかのCROの誰かが、同じように書類を確認していたんだな」と想像してみる。それだけで、日々の作業に意味が戻ってくることがあります。
一方で、「成果がすぐに見えないと、どうしても気持ちが続かない」と自分で分かっている場合は、無理をしなくていいんです。CROの中でも、安全性情報のように日単位で期限のある仕事や、立ち上げ手続きのように区切りがはっきりした仕事もあります。自分の心のリズムに合った仕事を選ぶことも、長く続けるための立派な工夫です。
また、成果の見えにくさは、評価の受け取り方にも関わります。CROでは、1年ごとの人事評価で、担当した試験の進み具合や、期限の守り方、周りとの連携などが見られます。けれど、試験そのものの成否は、自分の努力だけでは決まりません。登録が進まない病気の試験を担当すれば、どれだけ丁寧に働いても数字は伸びにくい。長く続く人は、「自分がコントロールできること」と「できないこと」を分けて振り返っています。できることをきちんとやったなら、それで十分。そう自分に言ってあげられることも、続けるための大切な力です。
共通点4:変化に合わせて、学び直すことを楽しめる
4つ目の共通点は、変化に合わせて学び直すことを、負担だけでなく、どこか楽しめていることです。
CROの仕事は、同じことの繰り返しに見えて、実は変化の多い仕事です。
担当する試験が変われば、対象の病気も、使う薬も、計画書も変わります。依頼者が変われば、手順書や書式、報告の仕方も変わります。治験のルールそのものも、国際的な基準の改訂に合わせて見直されていきますし、医療機関を訪問せずにリモートで記録を確認する方法や、電子的な同意の取得など、新しい仕組みも取り入れられています。
さらに、英語の資料を読む機会も少なくありません。国際共同治験では、計画書や手順書が英語で、海外のチームとやり取りすることもあります。
こう書くと、「覚えることが多すぎて大変そう」と感じるかもしれませんね。
実際、大変な時期はあります。でも、長く続いている人たちは、新しい試験に入るたびに「今度はこの病気について学べる」と、どこかで面白がっている様子があります。
ここでいう「学ぶことが好き」は、勉強が得意という意味ではありません。分からないことに出会ったときに、「知らない自分はだめだ」と責めるのではなく、「知らなかった、じゃあ調べてみよう」と切り替えられることです。
心理学では、能力は努力や経験で伸びていくと捉える考え方を「成長型のマインドセット」と呼ぶことがあります。この考え方を持っている人は、失敗や分からないことを、自分の価値を下げるものではなく、伸びるための材料として受け取りやすいと言われています。
変化への向き合い方で、もう1つ見ておきたいのが、同じ職場にいる期間の長さです。CROの仕事では、担当する試験や依頼者が数年ごとに入れ替わり、一緒に働くチームも変わっていきます。人間関係が固定されにくいので、「苦手な人がいても、試験が終われば離れられる」と気楽に捉える人もいれば、「毎回ゼロから関係を作るのが疲れる」と感じる人もいます。自分がどちらに近いかを知っておくことも、向き不向きを考える手がかりになります。
大丈夫ですよ。この捉え方は、後からでも身につけられます。分からないことを1つ調べたら、それを1つ覚えた自分を認める。その小さな積み重ねが、変化の多い職場で長く働き続ける土台になります。
共通点5:忙しい時期の休み方と、仕事との境目を持っている
5つ目の共通点は、少し意外に思われるかもしれません。長く続く人は、忙しい時期をどう乗り切るかだけでなく、「どう休むか」を自分なりに決めています。
CROの仕事には、忙しさの波があります。治験の立ち上げ期には書類のやり取りが一気に増え、データを固める直前には期限に追われます。製薬会社の年度末に向けて、報告書の締切が重なることもあります。
この波の中で、ずっと全力で走り続けることはできません。
長く続いている人たちの話を聞くと、忙しい時期ほど、小さな休み方を大切にしていることが分かります。昼休みは必ずパソコンから離れる。外勤で移動する日は、移動中にメールを見ない時間を作る。データを固めた後の落ち着いた時期に、まとめて休暇を取る。
こうした習慣は、一見ささいに見えます。でも、心と体の疲れは、少しずつ溜まっていくものです。溜まりきる前に小さく抜いていく人ほど、繁忙期を何度も越えていけます。
在宅勤務が広がったことで、もう1つ大切になったのが、仕事と生活の境目です。
CROでは、データマネジメントや安全性情報、メディカルライティングなど、在宅で働く割合の高い職種が多くあります。通勤がない分、時間の自由は増えました。一方で、夜遅くに届いたメールにそのまま返信してしまったり、休日にも仕事のことを考え続けてしまったりしやすくなります。
心理学では、仕事から心理的に離れる時間を持つことを「リカバリー」と呼び、翌日の意欲や集中に関わると考えられています。つまり、休むことは怠けることではなく、次の日にまたよい仕事をするための準備なんです。
こういう相談がよくあります。「在宅勤務になってから、いつ仕事が終わったのか分からなくなった」と。
そういうときにお伝えしているのは、終業の「儀式」を決めることです。パソコンを閉じたら、部屋を出て一杯のお茶をいれる。仕事用の机に布をかける。散歩に出る。どんな小さな行動でも、「ここで仕事は終わり」と体に教えてあげると、頭の切り替えがしやすくなります。
真面目な人ほど、休むことに罪悪感を持ちやすいものです。けれど、CROのように長い時間をかけて成果につながる仕事では、息切れしないことこそが大切な力です。休み方を持っていることは、立派な「向いている」の条件の1つだと、私は思っています。
職種によって「向いている」の中身は変わる
ここまで、CROで長く続く人の共通点をお話ししてきました。ただ、CROの中には多くの職種があり、職種によって「向いている」の中身は少しずつ違います。
代表的な職種ごとに、合いやすい傾向を整理してみます。
| 職種 | 仕事の中心 | 合いやすい傾向 |
|---|---|---|
| CRA(臨床開発モニター) | 医療機関の訪問、調整、報告書作成 | 人とのやり取りに手応えを感じる、移動が苦にならない |
| スタディスタートアップ | 治験開始前の書類と手続き | 期限から逆算して段取りを組むのが得意 |
| データマネジメント | 治験データの点検と問い合わせ | 矛盾や抜けに気づくことが好き、一人で集中できる |
| 統計解析 | 解析計画とプログラミング | 数字と論理で考えることが好き |
| 安全性情報 | 副作用などの情報の登録と評価 | 医学的な記載を丁寧に読み込める、期限を守るのが得意 |
| メディカルライティング | 計画書や報告書の作成 | 長い文章を正確に組み立てることが好き |
例えば、「人と話すのは好きだけれど、ずっと座って書類を見るのはつらい」という人は、CRAが合いやすいかもしれません。反対に、「人との調整は疲れるけれど、一人で集中して正確に作業するのは得意」という人は、データマネジメントや安全性情報のほうが、力を発揮しやすいでしょう。
こういう相談がよくあります。「CRAとして入社したけれど、調整の多さに疲れてしまった。自分はCROに向いていないのでは」と。
でも、話をよく聞いてみると、「データを見て矛盾を見つける作業は楽しかった」ということも少なくありません。その場合、向いていないのはCROではなく、今の職種との組み合わせかもしれない。社内の異動や、同じCROの中での職種変更で、働きやすさが大きく変わる人もいます。
「CROに向いているか」を一度で決めてしまわず、「どの職種の、どの部分が自分に合っているか」を分けて考えてみてください。そのほうが、ずっと現実に即した答えが見つかります。
向いていないと感じたときに、見直したいこと
働き始めてから「自分はCROに向いていないのかもしれない」と感じることは、誰にでもあります。そのとき、すぐに結論を出す前に、見直してほしいことがいくつかあります。
1つ目は、「今の時期」です。入社して3か月から1年くらいは、覚えることが多く、自分の力を発揮しにくい時期です。この時期に感じる「向いていない」は、仕事そのものではなく、慣れていないことから来ている場合がよくあります。
2つ目は、「今の試験」です。担当している試験が立ち上げ期で書類が多い、データを固める直前で残業が続いている、といった状況だと、仕事全体がつらく感じられます。試験の段階が変わると、同じ職種でも1日の過ごし方がまるで変わります。
3つ目は、「今の職場の型」です。冒頭で紹介したように、CROは内資か外資か、大手か中堅かによって、働き方が大きく違います。大手では役割が細かく分かれていて、決まった範囲の仕事を深く担当することが多い。中堅では1人が担う範囲が広く、全体を見渡しながら動くことが求められやすい。外資では英語の使用や、評価の仕組みが違うこともあります。
また、CROに雇われて製薬会社などの職場で働く「外部就労」という形もあります。自社で受託した試験を担当する働き方と、就労先の会社の中で働く働き方では、合う人が違います。
4つ目は、「心と体の状態」です。眠れない、食欲がない、休日も仕事のことが頭から離れない、といった状態が2週間以上続いているなら、それは向き不向きの問題ではなく、休息や相談が必要なサインかもしれません。社内の産業医や、外部の相談窓口、医療機関に相談することをためらわないでください。
見直すときは、紙に書き出してみるのがおすすめです。「つらいと感じた場面」を1週間ほど記録し、それが時期のせいなのか、試験のせいなのか、職場の型のせいなのか、仕事の性質のせいなのかを分けてみる。頭の中だけで考えていると、すべてが「自分が向いていないから」に見えてしまいます。書き出すと、意外なほど一部の場面に偏っていることに気づくものです。
この4つを見直してみて、それでも「この仕事の性質そのものが合わない」と感じるなら、それは大切な発見です。向いていない場所から離れることは、逃げではありません。自分に合う場所を探すための、前向きな選択です。
自分に合うかを、入る前に確かめる方法
最後に、これからCROを目指す人が、入る前に自分に合うかを確かめる方法をお伝えします。
1つ目は、自分の過去の経験を振り返ることです。次の問いに、具体的な場面を思い出しながら答えてみてください。
・決められた手順どおりに進めることで、うまくいった経験はあるか ・異なる立場の人の間に入って、話をまとめた経験はあるか ・結果が出るまで時間のかかることを、途中で投げ出さずに続けた経験はあるか ・知らない分野のことを、自分で調べて身につけた経験はあるか
これらは、この記事でお話しした4つの共通点と対応しています。すべてに当てはまる必要はありません。1つでも「あのとき、こうだった」と思い出せる場面があれば、それはCROの仕事につながる力の芽です。
2つ目は、実際に働いている人の話を聞くことです。業界の説明会や、転職の相談の場では、CROで働く人の話を聞ける機会があります。そのとき、「仕事の中で、いちばんしんどいのはどんな場面ですか」と聞いてみてください。やりがいより、しんどさの話のほうが、自分に合うかどうかを判断する材料になります。
3つ目は、働き方の入口を工夫することです。いきなり正社員として入るのが不安なら、派遣で安全性情報や治験事務の仕事から始める人もいます。一定期間働いた後に直接雇用へ進むことを前提とした「紹介予定派遣」という仕組みもあります。実際に働いてみて合うかどうかを確かめられるのは、心の負担を減らすうえでも大きな意味があります。
4つ目は、自分の「しんどさのサイン」を知っておくことです。どんな仕事にも、合わない瞬間はあります。自分がどういう状況で疲れやすいのかを知っていれば、入ってから早めに手を打てます。
5つ目は、求人票や会社の情報から、職場の型を読み取っておくことです。在宅勤務の割合、外勤の頻度、担当する病気の領域、英語を使う場面、外部就労の有無。これらは、この記事でお話しした共通点のどれが特に求められる職場なのかを示しています。例えば外勤の多いCRAの募集なら、間に立つ役割が大きく、在宅中心のデータマネジメントの募集なら、一人で集中する力と、仕事との境目を保つ力が求められやすい、というように読み替えてみてください。
向いているかどうかは、入る前に完全には分かりません。でも、自分を知っておくことで、入った後の迷い方はずっと穏やかになります。
運営者として見てきた、長く働き続ける人のこと
20年にわたってフリーランスや在宅ワークの市場を見てきた立場から言えば、専門分野で長く働き続けている人ほど、「向いているかどうか」より「どう続けるか」に意識を向けています。最初から完璧に向いている人は、ほとんどいません。自分の弱さを仕組みで補い、合わない部分があれば職種や働き方を少しずつ調整しながら、自分の居場所を作っていく。長く続く人に共通しているのは、そういう柔らかさです。
治験の周辺では、CROで経験を積んだ人が、メディカルライティングや翻訳、安全性情報の評価の支援などを、業務委託で請け負う働き方もあります。運営者として見てきた限りでは、発注者と直接つながる関係を築いた人ほど、仲介の手数料が乗らない分、依頼する側は同じ予算で多くを頼め、受ける側の手取りも厚くなっています。手数料0%の直接取引の良さは、金額の多さより、この「双方が得をする」関係の心地よさにあると感じています。
CROで働く人には、看護師や薬剤師の資格を持つ人が多くいます。資格を活かして働いた場合の年収の相場や、職場ごとの違いは、看護師の年収・単価相場と薬剤師の年収・単価相場でまとめています。臨床とCROのどちらが自分に合うかを考えるときの材料にしてください。
また、「自分に向いている仕事が分からない」と一人で抱えてしまうときは、キャリアの専門家に話を聞いてもらうのも1つの方法です。キャリア相談を担う国家資格についてはキャリアコンサルタントで、職場や転職の悩みに向き合う仕事の広がりは職場・転職・キャリア相談のお仕事で紹介しています。
向いているかどうかは、最初から決まっているものではありません。自分のペースで、少しずつ確かめていけば大丈夫です。
よくある質問
Q. 人と話すのが苦手でもCROで働けますか?
働けます。医療機関との調整が多いCRAは人とのやり取りが中心ですが、データマネジメントや統計解析、安全性情報、メディカルライティングなど、一人で集中して正確に作業する時間が長い職種もあります。どの職種でもメールや会議での連絡は必要ですが、話の上手さより、事情を整理して正確に伝えることが大切にされます。
Q. 細かい作業が苦手な人はCROに向いていませんか?
一概には言えません。CROでは記録や手順に沿った確実な仕事が求められますが、長く続く人の中には、うっかりが多いと自覚してチェックリストやダブルチェックの仕組みを活用している人も多くいます。大切なのは几帳面さそのものより、自分の弱さを仕組みで補い、手順を省かずに進められるかどうかです。
Q. CROに向いていないと感じたらすぐに辞めるべきですか?
結論を急がず、まず今の時期、担当している試験の段階、職場の型、心と体の状態を見直してみてください。入社1年以内は慣れていないことによるつらさが大きく、試験の段階や職種が変わると働きやすさが大きく変わることもあります。眠れない、食欲がないといった状態が続く場合は、向き不向きより先に休息や相談を優先してください。
Q. CROで長く働き続ける人に共通する特徴は何ですか?
記録や手順を自分を守るものと捉えていること、依頼者と医療機関の間に立つ役割を受け止めていること、成果が見えるまでの長さに自分なりの区切りを持っていること、変化に合わせて学び直せることが共通しています。これらは生まれ持った性格ではなく、仕事との付き合い方で身についていくものです。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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