個人事業主との業務委託契約書に必須の10項目|行政書士に頼まず作る方法

中西 直美
中西 直美
個人事業主との業務委託契約書に必須の10項目|行政書士に頼まず作る方法

この記事のポイント

  • 個人事業主に業務委託する際に必須の契約書項目10個を解説します
  • 行政書士に頼まず自分で作る方法
  • 失敗しない発注のコツを実務目線でまとめました

「個人事業主の方に仕事をお願いしたいけれど、契約書って何をどこまで書けばいいんだろう」。そんなふうに立ち止まっている方、多いのではないでしょうか。SNS運用や経理事務を外注しようと思ったとき、契約書のひな型をネットで探しても、項目が多すぎて何が本当に必要なのか分からなくなる。大丈夫です。今日は、個人事業主に業務委託する際に契約書へ必ず入れておくべき項目を、実務目線で一つずつ整理していきます。

個人事業主への業務委託が増えている背景

在宅ワークやフリーランスという働き方が定着したことで、個人事業主に業務を委託する企業や個人事業主が急増しています。総務省の統計でも、雇用によらない働き方をする人の割合は年々増加傾向にあり、SNS運用代行、経理事務、Webライティング、動画編集といった業務を外部の個人事業主に任せるケースが一般的になりました。

背景には、正社員を雇うコストの高さがあります。社会保険料の会社負担分、賞与、退職金の積立など、正社員1人を雇用するには給与以外にも多くのコストがかかります。一方、業務委託であれば必要な業務量だけを発注でき、繁忙期だけ依頼する、特定の専門スキルだけをピンポイントで借りるといった柔軟な使い方ができます。

企業が個人事業主やフリーランスに仕事を依頼する際に、業務委託契約を結ぶ場合があります。このとき、仕事を発注する側(委託者)と受ける側(受託者)の間で取り交わされるのが、業務委託契約書です。

出典: yayoi-kk.co.jp

ただし、この柔軟さの裏側で、契約書を交わさずに口頭やチャットのやり取りだけで発注してしまい、後からトラブルになるケースも少なくありません。「思っていた成果物と違う」「報酬の支払いタイミングで揉めた」「途中で連絡が取れなくなった」。こうした相談は、産業カウンセラーとして独立してからフリーランスの方々の話を聞く中でも本当によく耳にします。契約書は、発注者と受託者、双方を守るための最低限の約束事なのです。

業務委託契約書とは何か。雇用契約との違い

まず前提として、業務委託契約と雇用契約の違いを整理しておきましょう。

雇用契約は、労働者が使用者の指揮命令のもとで働き、その対価として給与を受け取る契約です。労働基準法の保護対象となり、最低賃金や労働時間の規制、社会保険の加入義務などが発生します。

一方、業務委託契約は、発注者が受託者に対して特定の業務や成果物の完成を依頼し、その対価として報酬を支払う契約です。受託者は独立した事業主として業務を遂行するため、発注者からの指揮命令は原則として発生しません。作業時間や作業場所、作業手順についても、受託者が自分の裁量で決められるのが本来の姿です。

無用なトラブルを防ぐためには、委託する企業側も受託する個人事業主やフリーランスの方も、業務委託契約書について正しく理解しておくことが大切です。 本記事では、業務委託契約書の必要性や対象となる契約の種類、作成方法のほか、業務委託契約書の締結にあたって委託者・受託者のそれぞれが注意すべき点についても解説します。

出典: yayoi-kk.co.jp

この違いを曖昧にしたまま契約を進めると、後で「偽装請負」と判断されるリスクがあります。偽装請負とは、契約形式は業務委託でありながら、実態は雇用契約と変わらない指揮命令下で働かせている状態のことです。発注者が始業・終業時刻を細かく指定したり、業務の進め方を逐一指示したりすると、偽装請負と見なされる可能性があるため注意が必要です。

業務委託契約の2つの種類。請負契約と準委任契約

業務委託契約には、大きく分けて2つの種類があります。どちらの形式で契約するかによって、記載すべき項目や責任の所在が変わってくるため、最初にどちらの契約なのかを明確にしておく必要があります。

請負契約とは

請負契約は、成果物の完成を目的とする契約です。Webサイト制作、ロゴデザイン、記事執筆など、明確な納品物があり、その完成をもって報酬が発生する業務に向いています。請負契約では、受託者は成果物に対して契約不適合責任を負います。納品後に成果物に不備が見つかった場合、修正や損害賠償を求められる可能性があるということです。

準委任契約とは

準委任契約は、業務の遂行そのものを目的とする契約です。SNS運用代行、経理事務代行、コンサルティング業務など、明確な完成形がなく、継続的な業務遂行が求められる業務に向いています。準委任契約では、受託者は善管注意義務(善良な管理者としての注意義務)を負いますが、成果物の完成責任までは負いません。

どちらの契約形態を選ぶかは、依頼したい業務の性質によって決まります。「完成させてほしい成果物があるか」「継続的な作業をお願いしたいか」を基準に判断するとよいでしょう。

業務委託契約書に必須の10項目

ここからが本題です。個人事業主と業務委託契約を結ぶ際、契約書に必ず盛り込むべき項目を10個に整理しました。

1. 契約の目的と業務内容

まず最初に、何のための契約なのか、どのような業務を委託するのかを明記します。「SNS運用代行業務」「経理事務代行業務」といった大枠だけでなく、具体的な作業範囲まで記載することが重要です。例えば「Instagram投稿の作成・投稿」だけでなく、「月間8投稿のフィード投稿作成、コメント返信対応、月次レポート作成」まで具体的に書くことで、後から「これも含まれると思っていた」という認識のズレを防げます。

2. 契約期間と更新条件

契約の開始日と終了日、更新の有無とその条件を明記します。「自動更新とするか」「更新の場合は何日前までに双方の申し出が必要か」といった条件も書いておくと、契約終了間際のトラブルを避けられます。継続的な業務であれば、まず3ヶ月の試用期間を設けて双方の相性を確認してから本契約に移行する方法も実務上よく使われます。

3. 報酬の金額と支払い条件

報酬額、支払い方法、支払いサイト(締め日・支払日)を明記します。「月末締め翌月末払い」「成果物納品後30日以内払い」など、具体的な期日を記載することが重要です。振込手数料をどちらが負担するかも忘れずに記載しましょう。個人事業主は資金繰りに敏感な方が多いため、支払いサイトが曖昧だと信頼関係にも影響します。

4. 業務範囲の明確化と追加業務の扱い

業務範囲を明確にすると同時に、範囲外の追加業務が発生した場合の扱いも定めておく必要があります。「別途協議のうえ追加報酬を支払う」という一文があるだけで、依頼者側も受託者側も安心して業務にあたれます。ここが曖昧だと、無償の業務範囲がなし崩し的に広がっていく、いわゆる「スコープクリープ」が起きやすくなります。

5. 知的財産権の帰属

成果物に関する著作権や知的財産権が、発注者と受託者のどちらに帰属するかを明記します。特にデザイン、ライティング、動画制作などのクリエイティブ業務では、著作権の帰属を曖昧にしたまま契約すると、納品後に「この成果物を他の媒体でも使いたい」となった際にトラブルになりがちです。著作権法上、著作権は原則として作成した者(受託者)に帰属するため、発注者側に権利を譲渡してほしい場合は、契約書にその旨を明記する必要があります。

6. 秘密保持義務(NDA)

業務を通じて知り得た情報を第三者に漏らさないことを定める条項です。顧客リスト、社内の数値データ、未公開の商品情報などを扱う業務委託では、必ず盛り込むべき項目です。契約終了後も一定期間(一般的に1〜2年程度)秘密保持義務が継続する旨を記載することが多いです。単独のNDA(秘密保持契約)を別途締結する場合もあります。

7. 契約不適合責任・善管注意義務

請負契約であれば契約不適合責任、準委任契約であれば善管注意義務について明記します。成果物に不備があった場合の修正対応の範囲、対応期間、無償修正の回数上限などを具体的に定めておくと、後々の水掛け論を防げます。

8. 中途解約と契約解除の条件

契約期間中に、どちらか一方の都合で契約を終了したい場合の条件を定めます。「解約の何日前までに通知が必要か」「解約時の報酬精算方法」「重大な契約違反があった場合の即時解除条項」などを記載します。特に継続的な業務委託では、中途解約の条件が曖昧だと、突然の契約終了に双方が困ることになります。

9. 損害賠償に関する条項

契約違反によって相手方に損害が生じた場合の賠償責任について定めます。賠償額の上限を「契約金額の範囲内」などと設定しておくケースも多く見られます。これは発注者・受託者どちらにとってもリスクヘッジになる項目です。

10. 反社会的勢力の排除条項

契約当事者が反社会的勢力に該当しないこと、また将来にわたって該当しないことを表明保証する条項です。近年ではほぼすべての契約書に標準的に盛り込まれる項目となっています。

業務委託契約書とは、企業が個人事業主やフリーランスに仕事を委託する際に、業務の内容や報酬、責任範囲などを明確にするために作成する契約書のことです。

出典: yayoi-kk.co.jp

業務委託契約書を作成する際の注意点

10項目を押さえたうえで、さらに気をつけておきたいポイントをいくつか挙げます。

収入印紙の要否を確認する

業務委託契約書は、契約内容によって印紙税法上の課税文書に該当する場合があります。特に請負契約書(第2号文書)に該当する場合は、契約金額に応じた収入印紙の貼付が必要です。準委任契約の場合は原則として印紙は不要ですが、契約書のタイトルだけでなく実質的な内容で判断されるため、迷った場合は税務署や専門家に確認することをおすすめします。国税庁のWebサイトでも印紙税の課税文書について詳しい説明が掲載されています。

偽装請負に注意する

先述の通り、契約形式は業務委託でも、実態が雇用契約と変わらない指揮命令を行っていると偽装請負と判断されるリスクがあります。始業・終業時刻の指定、作業場所の強制、業務手順の詳細な指示などは避け、あくまで「成果」や「業務遂行」に対して報酬を支払う関係性を保つことが重要です。

個人事業主側の確定申告への配慮

個人事業主に業務委託した場合、発注者側は源泉徴収の要否を確認する必要があります。原稿料や講演料、デザイン料など特定の業務については源泉徴収義務が発生する場合があるため、支払い時に注意が必要です。受託者側は業務委託で得た所得について確定申告が必要になるため、契約書や請求書のフォーマットを整えておくと受託者にとっても親切です。関連して個人事業主 請求書 テンプレート 無料 Excel!2026年最新の書き方では、請求書の書き方や無料テンプレートについて詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。

テンプレートをそのまま使わない

インターネット上には業務委託契約書のテンプレートが数多く出回っています。ひな型を使うこと自体は問題ありませんが、業務内容や報酬体系は案件ごとに異なるため、必ず自社の実態に合わせてカスタマイズする必要があります。テンプレートの空欄を埋めただけの契約書は、いざというときに実効性を持たないことがあります。

行政書士に頼まず契約書を作る方法

「専門家に頼むと費用がかかりそうで不安」という声もよく聞きます。実際、行政書士や弁護士に契約書の作成を依頼すると、内容の複雑さにもよりますが3万円から10万円程度の費用がかかることが一般的です。継続的に何人もの個人事業主と契約を結ぶ場合、この費用は積み重なっていきます。

そこでおすすめしたいのが、まず自分でひな型を作成し、上記の10項目を漏れなく盛り込んだうえで、必要に応じて部分的にリーガルチェックだけを専門家に依頼する方法です。ゼロから作成を依頼するよりも費用を抑えられます。中小企業庁や中小機構のWebサイトでは、業務委託契約に関する参考情報や相談窓口の案内が掲載されているので、こうした公的機関の情報も活用するとよいでしょう。

また、freeeやマネーフォワードといったクラウド会計サービスでは、契約書や請求書のテンプレートを提供している場合があります。会計ソフトと連携させることで、契約から請求、支払いまでの流れを一元管理できるメリットもあります。

業務委託契約書に関するよくある失敗談

ここで、私自身が発注する立場になって痛感した失敗について少し触れておきます。フリーランスとして独立してから、自分のWebサイトの更新作業を別の個人事業主の方にお願いしたことがあります。当時は契約書を作る余裕がなく、チャットでのやり取りだけで業務を依頼してしまいました。

作業が始まってから「どこまでの範囲を対応してもらえるのか」が曖昧だったため、簡単な修正のたびに「これは追加料金が発生するのか、しないのか」を都度確認する羽目になり、お互いに気を遣う関係になってしまったのです。結局、途中から簡単な業務委託契約書を作成し、業務範囲と追加対応時の費用について明記したところ、驚くほどスムーズにやり取りできるようになりました。契約書は、相手を縛るためのものではなく、お互いが安心して仕事に集中するための土台なのだと、身をもって学んだ経験です。

もう一つの失敗は、報酬の支払いタイミングを曖昧にしてしまったことです。「キリのいいときに払います」と伝えていたのですが、受託者側からすると「いつ入金されるのか分からない」という不安が積み重なっていたようで、後になって率直にそう伝えられました。曖昧な約束は、たとえ悪気がなくても相手の不安を生みます。支払い日は必ず具体的な日付で契約書に明記すること。これは発注者として絶対に外してはいけないポイントだと感じています。

直接依頼と仲介経由のコスト差

個人事業主に業務を委託する際、代理店や仲介会社を通す方法と、フリーランスに直接依頼する方法の2つの選択肢があります。

代理店を通す場合、仲介手数料が上乗せされることが一般的です。仲介手数料の相場は業種によって異なりますが、契約金額の20%から30%程度が上乗せされるケースも珍しくありません。一方、フリーランスに直接依頼すれば、この中間マージンが発生しないため、同じ予算でより多くの業務量を依頼できたり、受託者側により多くの報酬を還元できたりします。

もちろん、直接依頼には人材を自分で探して見極める手間がかかります。だからこそ、契約書を整えておくことが重要になります。契約内容がしっかりしていれば、仲介会社を挟まなくても双方が安心して取引できる土台ができるからです。マッチングサービスを活用しつつ、直接契約を結ぶという形であれば、仲介手数料を抑えながら、探す手間も軽減できます。

独自データから見る発注実態の考察

20年近くフリーランス・在宅ワーク市場を見てきた運営者の立場から言えば、契約書をきちんと整えている発注者ほど、長く付き合える受託者との関係を築けている傾向があります。逆に、契約書を後回しにしてトラブルが起きてから慌てて整備するケースは、一度きりの取引で終わってしまうことが多いという印象です。

長く続く発注者と受託者の関係を観察していると、共通しているのは「単発の作業を依頼する」という発想ではなく、「この人に任せると楽だ」と思ってもらえる関係づくりに時間をかけている点です。契約書はその第一歩に過ぎませんが、最初の約束事をきちんと交わすことで、受託者側も「この発注者は信頼できる」と感じ、結果的に質の高い仕事につながっていきます。

また、額面の報酬額だけでなく、手取りの厚さという観点も見逃せません。仲介会社を通す取引では、発注者が支払う金額の一部が手数料として差し引かれ、受託者の手取りは目減りします。直接契約であれば、同じ予算でも受託者の手取りは厚くなり、発注者側も予算内でより多くの業務を依頼できます。この双方が得をする構造は、抽象的な話ではなく、実際に長く直接取引を続けている発注者・受託者のペアを見てきた実感として言えることです。手数料0%で直接つながる仕組みは、単なる価格の話ではなく、こうした信頼関係を土台から支える仕組みだと感じています。

業務委託契約書は、一見すると事務的な書類に見えるかもしれません。しかし実際には、発注者と受託者、双方の不安を取り除き、安心して長期的な関係を築くための最初のコミュニケーションツールなのです。10項目を押さえた契約書を用意することで、契約後のトラブルを未然に防ぎ、気持ちよく仕事を進められる土台が整います。

依頼したい業務のジャンルによっては、専門性の高い人材を探す必要がある場合もあります。例えばAIコンサル・業務活用支援のお仕事では、AI活用の相談に対応できる人材の見つけ方について解説していますし、アプリケーション開発のお仕事ではエンジニアへの発注時に押さえておきたいポイントを紹介しています。あわせて、ソフトウェア作成者の年収・単価相場を確認しておくと、適正な報酬水準を判断する材料になります。

契約書の整備は面倒に感じられるかもしれませんが、一度テンプレートを作ってしまえば、次回以降の契約はスムーズに進みます。まずは今回紹介した10項目を、自分の依頼したい業務内容に当てはめて書き出してみることから始めてみてください。

よくある質問

Q. 業務委託契約書に収入印紙は必ず必要ですか?

契約内容によります。請負契約に該当する契約書は印紙税法上の課税文書となり収入印紙が必要な場合がありますが、準委任契約は原則不要です。契約の実質的な内容で判断されるため、迷う場合は税務署や専門家に確認するのが確実です。

Q. 個人事業主との契約で偽装請負にならないための注意点は?

始業・終業時刻の指定や作業場所の強制、業務手順の細かい指示を避け、あくまで成果や業務遂行に対して報酬を支払う関係を保つことが重要です。指揮命令関係が強いと雇用契約と見なされるリスクがあります。

Q. 契約書を専門家に依頼せず自分で作ることは可能ですか?

可能です。本記事で紹介した10項目を漏れなく盛り込んだうえで、必要な部分だけ専門家にリーガルチェックを依頼する方法なら、ゼロから作成を依頼するより費用を抑えられます。

Q. 仲介会社を通さず個人事業主に直接依頼するメリットは何ですか?

仲介手数料が発生しないため、同じ予算でより多くの業務を依頼できたり、受託者側の手取りが厚くなったりします。ただし人材を自分で探し見極める手間がかかるため、契約書を整えて信頼関係の土台を作ることが重要です。

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年6月10日最終更新:2026年8月3日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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