バックオフィス外注先の情報管理体制を見極める方法|チェックすべき項目


この記事のポイント
- ✓バックオフィスを外注する際
- ✓情報管理体制をどう見極めるかを解説します
- ✓アクセス権限の設計など
バックオフィス業務を外注しようとしたとき、多くの担当者が最後に立ち止まるのが情報管理の問題です。経理・人事・総務は会社の口座情報や従業員の個人情報、取引先の契約内容など、機密性の高いデータを扱います。外部の人間にこれを渡してよいのか、渡すとしてどこまで管理を求めればよいのか。結論から言えば、情報管理体制の見極めは「相手の規模」ではなく「相手が示す具体的な運用ルール」で判断すべきです。この記事では、発注者が外注先の情報管理体制をチェックする際の具体的な項目と、失敗しない進め方を解説します。
バックオフィス外注における情報管理の現状
バックオフィス業務のアウトソーシング市場は年々拡大しています。人手不足を背景に、経理・人事・総務といった専門知識が必要な業務を外部に任せる企業は中小企業だけで数十万社規模に達していると見られています。ただし、市場が拡大する一方で、情報管理の甘さがトラブルの火種になるケースも増えています。
バックオフィス業務の多くは、専門知識やスキル、経験などが必要です。そのため、バックオフィス業務は属人化しやすい傾向にあります。人材不足による忙しさから、ほかの社員の教育や業務マニュアルなどを作成する時間がない点が属人化する要因です。 出典: persol-bd.co.jp
属人化しやすいということは、裏を返せば「その業務が誰にどう管理されているか」が外部から見えにくいということでもあります。社内で担当者一人が経理データを抱え込んでいた場合、その業務を外注に切り替える際、データの受け渡し方法やアクセス権限の設計を最初にきちんと決めておかないと、情報がどこにどう流れているか誰も把握できない状態になりかねません。
発注者側の意識も変わってきています。かつては「安いから」「知人の紹介だから」という理由だけで外注先を決める企業が少なくありませんでした。しかし個人情報保護法の改正やインボイス制度の導入により、取引先に求められる管理水準は年々上がっています。外注先を選ぶ際に情報管理体制を最初にチェックする発注者が増えているのは、こうした社会的背景があるからです。
バックオフィス外注で情報管理が重要な理由
扱うデータの機密性が極めて高い
バックオフィス業務で扱うデータは、企業活動の根幹に関わるものばかりです。経理業務であれば銀行口座情報、取引先との契約金額、給与データ。人事業務であれば従業員のマイナンバー、住所、家族構成、健康診断結果。総務業務であれば株主情報や役員報酬、社内規程の詳細。これらが外部に漏れた場合、取引先との信頼関係が崩れるだけでなく、従業員本人からの損害賠償請求に発展する可能性もあります。
私が発注者として初めて経理代行を依頼したとき、見積もりの安さだけで比較して契約しかけたことがあります。契約直前になって「データはどう管理していますか」と聞いたところ、担当者は個人のGoogleドライブに請求書データを保存していると答えました。パスワードも共有アカウントで使い回しているという話を聞き、契約を見送りました。金額だけを見て判断していたら、危うく重大なリスクを抱え込むところでした。
情報漏洩が起きたときの責任の所在が曖昧になりやすい
外注先で情報漏洩が発生した場合、法律上の責任(個人情報保護法上の安全管理措置義務)は委託元である発注者にも及びます。「外注先が悪いから自社は関係ない」という理屈は通用しません。委託先の監督義務を果たしていたかどうかが問われるため、発注前にどのような管理体制を敷いているかを確認し、それを契約書に落とし込んでおくことが発注者自身を守ることにつながります。
属人化した業務ほどブラックボックス化しやすい
前述の引用にもある通り、バックオフィス業務は属人化しやすい性質を持っています。外注先が個人事業主一人で運営している場合、その人がどのようなセキュリティ意識を持ち、どのような環境でデータを扱っているかは、発注者が具体的に質問しなければ見えてきません。逆に言えば、きちんとした運用ルールを持つ外注先は、聞かれる前に自ら開示してくることが多いという傾向があります。
バックオフィス外注先の情報管理体制をチェックする具体的な項目
NDA(秘密保持契約)の内容を確認する
外注契約を結ぶ際、まず必須となるのがNDAです。ただし「NDAを結んでいるかどうか」だけでなく、その中身を確認することが重要です。チェックすべき項目は次の通りです。
・秘密情報の定義が具体的か(単に「秘密情報」とだけ書かれていないか) ・情報の利用目的が業務遂行に限定されているか ・第三者への再委託を禁止する、または事前承諾を必要とする条項があるか ・契約終了後のデータ返却・破棄の方法が明記されているか ・違反時の損害賠償に関する条項があるか
NDAのひな型をこちらで用意して外注先に提示するのも有効な方法です。相手が独自のNDAを持っている場合は、そちらの内容を精査し、自社にとって不利な条件(たとえば損害賠償の上限が極端に低い等)が含まれていないか確認しましょう。
データの保管方法と暗号化の有無
次に確認すべきは、実際にデータをどこにどう保管しているかです。以下のような質問を投げかけてみると、相手の管理水準が見えてきます。
・クラウドストレージを使っている場合、そのサービス名とセキュリティ設定(二段階認証の有無等) ・ローカルのパソコンに保存している場合、パソコン自体の暗号化(BitLockerやFileVault等)の有無 ・バックアップの取得頻度と保管場所 ・データの送受信時に暗号化されたファイル共有サービスを使っているか、それともメール添付で済ませているか
個人のフリーランスであっても、専用のパスワードマネージャーやクラウドストレージのビジネスプランを使い、アクセスログを記録している人は少なくありません。逆に、無料のファイル共有サービスやメール添付でやり取りを済ませている場合は、注意が必要です。
アクセス権限の設計
外注先が複数人でチームを組んでいる場合、誰がどこまでのデータにアクセスできるかという権限設計も確認すべき項目です。経理データ全体に全員がアクセスできる状態になっていないか、案件ごとにアクセス権限を分けているか、退職・契約終了したスタッフのアカウントを速やかに削除する運用になっているか。個人事業主一人で完結している場合はこの項目は該当しませんが、法人格を持つ代行会社に依頼する場合は必ず確認しておきたいポイントです。
業務範囲と情報アクセスの範囲を明確にする
依頼する業務範囲を曖昧にしたまま契約すると、必要以上の情報を外注先に渡してしまうことがあります。たとえば経理業務のうち記帳代行だけを依頼するのであれば、通帳のコピーや請求書だけを渡せば済むはずが、「念のため」とアカウント情報一式を渡してしまうケースです。依頼する業務範囲を最初に明確にし、その業務遂行に必要な最小限の情報だけを渡す設計にすることが、情報管理の基本です。
再委託の有無を必ず確認する
代行会社に依頼したつもりが、実際の作業は別のフリーランスに再委託されていた、というケースは珍しくありません。再委託自体が悪いわけではありませんが、再委託先にも同水準の情報管理が適用されているかを確認する必要があります。契約書に再委託を禁止する条項を入れるか、再委託する場合は事前に発注者の承諾を得る旨を明記しておくと安心です。
バックオフィス外注のメリット
情報管理のリスクばかりに目を向けると外注そのものに及び腰になりがちですが、正しく管理体制を見極めた上で外注すれば得られるメリットは大きいものです。
専門知識を持つ人材にすぐアクセスできる
経理・人事・総務は専門知識が必要な業務が多く、自社で採用しようとすると採用コストと教育コストがかかります。
どの業界においても人材不足は大きな課題であり、バックオフィス業務に関する社員採用も容易ではありません。スキルや知識、経験値の高い優秀人材を雇用するには、求職者を十分に集めた上で選定する必要があり、採用に費用や労力がかかります。また、未経験者を雇用する場合、社員教育を自社で行えばコストが嵩み、生産性の高い業務にリソースを回せなくなる恐れもあるでしょう。 出典: persol-bd.co.jp
外注であれば、すでに実務経験を積んだ人材にすぐアクセスできます。採用にかかる時間とコストを省き、繁忙期だけ稼働時間を増やすといった柔軟な対応も可能です。
コア業務にリソースを集中できる
バックオフィス業務は会社の運営に欠かせない一方、直接的な売上にはつながりません。経理や総務にかかっていた時間を営業や商品開発に回せることは、特に中小企業やスタートアップにとって大きな価値があります。
中間マージンのない直接依頼ならコストを抑えやすい
代行会社や仲介会社を通す場合、その分の手数料が費用に上乗せされます。フリーランスへ直接依頼する形であれば、中間マージンが発生しない分、同じ予算でより多くの業務時間を確保できたり、依頼できる範囲を広げられたりします。ただし直接依頼の場合は、代行会社が担っていた品質管理やセキュリティ管理の機能を発注者自身が肩代わりする必要がある点は理解しておく必要があります。手数料が乗らない分、その浮いた予算を情報管理体制の確認や契約書の整備に充てるという考え方が現実的です。
バックオフィス外注のデメリットと注意点
社内にノウハウが蓄積されにくい
バックオフィス業務をアウトソーシングすると、社員が業務に携わる機会が減るため社内にノウハウが蓄積されにくくなります。何らかの理由でアウトソーシングをやめた場合、保有するノウハウが古い状態だと対応できません。また、外部業者に頼りきりになると、社員の経験値やスキルが上がらないといった懸念点も考えられるでしょう。 出典: persol-bd.co.jp
この指摘は情報管理の観点でも重要です。社内にノウハウがない状態で外注先に業務を全面委託すると、外注先が示す情報管理のレベルが適切かどうかを判断する材料が社内になくなってしまいます。最低限、業務の全体像と重要なチェックポイントは発注者側の担当者が理解しておくべきです。
コミュニケーションコストが発生する
外注先とのやり取りには一定の時間がかかります。特に情報管理に関するルールのすり合わせは、最初のうちは何度かのやり取りが必要になることが多いです。この工程を省略せず、最初にしっかり時間をかけることが、後々のトラブルを防ぐ最も確実な方法です。
安さだけで選ぶと品質面で苦労する
私自身、以前に見積もりの安さだけで判断して外注先を決めたところ、成果物の精度が低く、結局チェックと修正に自分の時間を大きく取られてしまった経験があります。情報管理体制の確認を怠ったわけではありませんでしたが、業務品質そのものへの確認が甘かったのが原因でした。料金の安さは魅力的に見えますが、情報管理と業務品質の両方を天秤にかけて判断することが大切です。
バックオフィス外注の費用相場
バックオフィス業務の外注費用は、依頼する業務内容や範囲によって大きく変わります。記帳代行のみであれば月額1万円〜3万円程度、給与計算まで含めると月額3万円〜10万円程度が目安とされています。人事・総務業務を包括的に依頼する場合はさらに幅が広がり、月額5万円〜20万円程度となるケースもあります。
代行会社を通す場合はこれに手数料が加算されますが、フリーランスへ直接依頼する場合は同じ業務範囲でも費用を抑えられる傾向があります。ただし、安さだけで判断せず、情報管理にかかるコスト(NDAの整備、暗号化ツールの導入等)も含めて総合的に比較することをおすすめします。
バックオフィス外注先の選び方
実績よりも運用ルールの具体性を見る
外注先の実績や利用者数は判断材料の一つですが、情報管理の観点では「どのような運用ルールを持っているか」を具体的に聞くことの方が重要です。「セキュリティは万全です」という抽象的な回答ではなく、「クラウドストレージは○○を使い、二段階認証を設定しています」といった具体的な回答が返ってくるかを見極めましょう。
契約書とNDAをセットで確認する
業務委託契約書とNDAは必ずセットで確認しましょう。業務範囲、報酬、納期だけでなく、情報の取り扱いに関する条項がどこまで具体的に書かれているかをチェックします。契約書のひな型を発注者側で用意し、外注先に提示する形式にすれば、確認漏れを防ぎやすくなります。
段階的に業務範囲を広げる
いきなり全てのバックオフィス業務を任せるのではなく、まずは機密性の低い業務(たとえば書類の電子化やデータ入力)から任せてみて、情報管理の運用が実際にどうなっているかを確認してから、徐々に範囲を広げていく方法も有効です。信頼関係を築きながら業務範囲を拡大することで、リスクを最小限に抑えられます。
業務範囲の決め方と依頼の流れ
外注を始める際の一般的な流れは次の通りです。
・現状の業務を棚卸しし、外注可能な業務と社内に残すべき業務を切り分ける ・外注する業務範囲と、それに伴い渡す情報の範囲を明確にする ・複数の外注先から見積もりを取り、料金だけでなく情報管理体制についても質問する ・NDAと業務委託契約書を締結する ・最初は限定的な範囲から依頼を開始し、運用を確認しながら範囲を広げる
この流れの中で最も見落とされやすいのが、業務範囲と情報アクセス範囲を紐づけて考えるステップです。業務範囲だけを決めて、情報の受け渡し方法を後回しにすると、必要以上の情報を渡してしまったり、逆に必要な情報が渡らず業務が滞ったりします。契約前にこの二つをセットで整理しておくことが、スムーズな外注運用の鍵になります。
独自データの考察
こうした在宅ワーク求人サービスの利用動向を見ていると、バックオフィス業務を発注する企業側の意識にも変化が見られます。以前は「単価の安さ」を最優先で外注先を探す発注者が多かったのですが、近年は「情報管理体制について事前に質問してくる」発注者の割合が増えています。特に経理・人事関連の業務では、初回の問い合わせ段階でNDAの有無やデータの保管方法を確認する企業が目立つようになってきました。
長くこの市場を見てきた立場から言えば、情報管理体制がしっかりしている外注先ほど、契約が長期化する傾向があります。単発の作業を安く請け負うことよりも、「この人になら任せて安心できる」という関係を築くことに時間を使っているフリーランスほど、発注者からの継続依頼を得やすいという構図です。
また、仲介会社を通さずフリーランスへ直接依頼する形態が増えている背景には、コスト面のメリットだけでなく、発注者と受注者が直接コミュニケーションを取ることで情報管理のルールをすり合わせやすいという側面もあります。仲介会社を挟むと、情報管理に関する要望が間に入る担当者を経由して伝わるため、細かいニュアンスが抜け落ちることがあります。直接のやり取りであれば、発注者が求める具体的な管理レベルをそのまま相手に伝え、合意した内容をそのまま契約書に反映できます。中間マージンがない分、浮いた予算をセキュリティ対策や契約書の整備に回せるという構造は、発注者と受注者の双方にとって理にかなった選択と言えるでしょう。
バックオフィス業務は会社の根幹に関わる情報を扱うからこそ、外注先の選定においては料金だけでなく情報管理体制を具体的に確認する姿勢が欠かせません。NDAの内容、データの保管方法、アクセス権限の設計、業務範囲の明確化。これらを一つずつ丁寧に確認していくことが、外注を成功させる最も確実な道筋です。
経理・総務の外注先を探す際は、バックオフィス業務の外注完全ガイド|経理・人事・総務【2026年版】で業務範囲ごとの具体的な依頼内容を確認しておくと、今回解説した情報管理チェックの前提となる業務理解が深まります。労務関連の外注を検討している場合は、社労士フリーランスの需要と将来性|企業が外注する労務業務とはも参考になります。社会保険や労働契約に関わる情報は特に機密性が高いため、専門家への外注を検討する際の判断材料になるでしょう。
AIコンサルティングや業務効率化の観点からバックオフィス改善を進めたい場合は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事で業務プロセス全体の見直し方を確認するのも一つの方法です。AIツールの導入と外注を組み合わせることで、情報管理のリスクを抑えながら業務効率を高められるケースもあります。
外注先の情報管理体制を評価する際は、相手がどのようなスキルセットを持つ人材かという観点も参考になります。たとえば経理システムの構築やデータベース管理に強みを持つ人材であれば、ソフトウェア作成者の年収・単価相場で見られるように、セキュリティ意識の高い実務経験者が多い傾向にあります。依頼する業務内容によって適した人材像は変わってくるため、単価相場と合わせて確認しておくとよいでしょう。
よくある質問
Q. バックオフィスを外注する際、NDAは必ず結ぶべきですか?
必ず結ぶべきです。秘密情報の定義、利用目的の限定、再委託の可否、契約終了後のデータ返却・破棄方法を具体的に明記した内容にすることが重要です。抽象的な内容のNDAは実効性が低いため、中身を必ず確認してください。
Q. フリーランス個人と法人の代行会社、情報管理の観点ではどちらが安心ですか?
法人だから安心、個人だから不安という単純な図式ではありません。フリーランス個人でも、クラウドストレージの暗号化やパスワード管理を徹底している人は多くいます。規模ではなく、具体的な運用ルールを開示できるかどうかで判断してください。
Q. 情報管理体制の確認で、最初に何を聞けばよいですか?
まずはデータの保管場所と方法(クラウドかローカルか、暗号化の有無)、そして再委託の有無を聞くことをおすすめします。この2点への回答の具体性で、相手の管理水準がある程度見えてきます。
Q. 業務範囲を限定して依頼すれば、情報漏洩のリスクは下がりますか?
リスクを下げる効果はあります。依頼する業務に必要な最小限の情報だけを渡す設計にすることで、万一のトラブル時の影響範囲を限定できます。最初は限定的な範囲から始め、信頼関係を築きながら段階的に範囲を広げる進め方が安全です。
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入力は3分ほど。掲載料も取引手数料も0円です。@SOHOに登録しているフリーランス・副業ワーカーから、早ければ当日中に最初の応募が届きます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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