制作会社を変える際のソースコード引き継ぎ手順|著作権の帰属を先に確認する 2026

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
制作会社を変える際のソースコード引き継ぎ手順|著作権の帰属を先に確認する 2026

この記事のポイント

  • 制作会社変更時のソースコード引き継ぎで失敗しないための手順を解説します
  • ドメイン・サーバー権限の移管
  • 費用相場まで発注者目線で整理しました

制作会社を変更するとき、多くの担当者が見落とすのがソースコードの引き継ぎです。結論から言うと、契約を切る前に「著作権が誰に帰属するか」を確認しないまま話を進めると、最悪の場合サイトの中身を一切引き渡してもらえないという事態が起こります。この記事では、制作会社変更の際にソースコードをどう引き継ぐか、著作権の確認から実務手順、費用相場までを発注者目線で整理します。

なぜ「著作権の帰属」が最初の関門になるのか

制作会社を変更したいと考えたとき、多くの担当者はまず新しい依頼先を探し始めます。しかし実務上、最初に確認すべきは新しい依頼先ではなく、現行の契約書における著作権の帰属条項です。

日本の著作権法では、原則として著作物を創作した者に著作権が発生します。つまり、特に契約書で取り決めがなければ、ホームページやシステムのソースコードは制作した会社側に著作権が残る可能性が高いということです。発注者側は「お金を払ったのだから当然自分たちのもの」と考えがちですが、これは法律上の原則とは異なります。

契約書に著作権譲渡の条項がなければ、制作会社は納品したソースコードの著作権を保持したままになります。この場合、発注者は利用許諾(ライセンス)を受けているだけの立場になり、改変や他社への引き継ぎに制作会社の同意が必要になるケースがあります。実際、独立行政法人が公表している下請取引に関する調査でも、契約書に著作権の帰属や利用範囲が明記されていないトラブルが一定数報告されています。

その際に、前任者が在籍している、もしくは引き継ぎ資料があればスムーズに引き継ぎできますが、場合によっては、ソースコードだけ渡されて「後はよろしく」なんてことがあります。

出典: lancarse.co.jp

この指摘は開発者側の視点ですが、発注者側でもまったく同じ構図が起こります。旧制作会社との関係が悪化した状態で契約解除に至ると、資料もコメントもないソースコードだけを渡され、新しい制作会社が中身を読み解くところから始めなければならない、というケースは珍しくありません。

制作会社変更の市場動向とよくある背景

制作会社を変更したいと考える背景は、業界動向を見るとおおむね共通しています。中小企業庁が公表している調査では、IT関連の外部委託において「担当者の対応品質」「見積もりの妥当性」「更新頻度」に対する不満が、契約見直しの主要因として挙げられることが多い傾向にあります。

具体的には次のようなケースが多く見られます。

一つ目は、担当者の異動や退職によって制作会社側の窓口が変わり、それまでの経緯が引き継がれなくなったケースです。二つ目は、月額保守料が3万円〜10万円程度と幅があるなかで、対応内容に見合わない請求が続き、費用対効果に疑問を持つケースです。三つ目は、事業拡大に伴ってシステム連携やAPI活用など、現行の制作会社の技術力では対応しきれない要件が出てきたケースです。

正直なところ、これは制作会社側だけの問題ではありません。発注者側が「任せきり」にしてドメインやサーバーの管理情報を把握していなかったことが、変更をこじらせる原因になっていることも多いというのが実務上の実感です。制作会社を変更する際にトラブルが起きやすいのは、契約解除そのものよりも、その後の資産の受け渡しの段階です。

制作会社変更でソースコード引き継ぎを進める手順

ここからは、実際に制作会社を変更する際にソースコードを引き継ぐ具体的な手順を解説します。順番を守ることが重要で、いきなり解約を通知すると交渉力を失う場合があるため注意してください。

手順1:契約書と発注書を確認する

まず着手すべきは、現行の制作会社との契約書、発注書、見積書一式を確認することです。特に確認すべき項目は次の3点です。

著作権の帰属条項があるかどうか、あるとすればどちらに帰属すると書かれているか。次に、成果物の定義がソースコード一式を含むかどうか。最後に、契約解除に関する条項、特に解除後の資産引き渡し義務についての記載があるかどうかです。

契約書が見当たらない、あるいは口頭契約だったという場合も少なくありません。この場合は請求書や見積書、メールのやり取りから、支払った金額と対価として何を受け取る約束だったかを整理しておく必要があります。

手順2:現状の権限保有状況を棚卸しする

サイトやシステムを構成する要素は、ソースコードだけではありません。次の項目について、誰が管理者権限を持っているかを一つずつ確認してください。

ドメインの登録者情報とレジストラの管理画面、サーバー(レンタルサーバーやクラウド環境)の契約者情報とログイン権限、CMSの管理画面アカウント、アクセス解析ツールや検索コンソールの管理者権限、SSL証明書の管理状況、そしてメールアドレスやSNSアカウントとの連携状況です。

7割近くのケースで、発注者はドメインとサーバーの契約者名義が制作会社になっていることに変更のタイミングで初めて気づきます。これは制作会社が善意で代行してくれていた場合もあれば、意図的に囲い込みの手段として使われている場合もあります。いずれにせよ、名義が制作会社側にある状態は、契約解除時の交渉力を大きく下げる要因になります。

手順3:新しい制作会社に現状を共有し、受け入れ体制を作る

権限の棚卸しが終わったら、次の依頼先候補となる制作会社に、現状のシステム構成とソースコードの著作権の状況を正直に共有します。この段階で「ソースコードは受け取れる見込みだが、著作権が制作会社側にあるかもしれない」といった不確定要素も伝えておくべきです。

新しい制作会社側から見ると、著作権の帰属が不明確なソースコードをそのまま引き継いで改修することにはリスクがあります。改変によって元の著作物の同一性保持権を侵害する可能性があるためです。信頼できる制作会社であれば、この段階で「著作権の状況を先に確認してから着手しましょう」と提案してくるはずです。逆にこのリスクに一切触れずに「すぐ着手できます」と言う相手は、あとで追加費用や作業のやり直しが発生するリスクを見落としている可能性があります。

手順4:旧制作会社に正式に解約と引き継ぎを通知する

権限の棚卸しと新しい依頼先の受け入れ体制が整った段階で、旧制作会社に正式な解約通知と引き継ぎ依頼を行います。書面(メールでも可)で、次の内容を明記してください。

解約の意思表示と契約終了希望日、ソースコード一式の引き渡し希望日、ドメイン・サーバー・CMSなど各種権限の移管手続きの希望、そして著作権の帰属について契約書に基づく確認事項です。

口頭でのやり取りだけで済ませると、後になって「言った言わない」の争いになりやすいため、必ず文書として残してください。

手順5:ソースコードと関連資産の受け渡しを実施する

実際の引き渡しでは、ソースコード一式に加えて、データベースのダンプファイル、環境設定ファイル、使用しているライブラリやフレームワークのバージョン情報、デザインの元データ(Figma、Photoshop等)、そして可能であれば開発時の仕様書やコメントも合わせて依頼することをおすすめします。

引き渡し方法としては、圧縮ファイルでのメール送付、クラウドストレージでの共有、あるいはGitリポジトリごと移管する方法があります。近年はGitリポジトリでの管理が一般的になっているため、リポジトリのアクセス権限をそのまま移管してもらえるかを確認するとスムーズです。

費用相場と直接依頼という選択肢

ソースコード引き継ぎ自体には、明確な相場が存在するわけではありません。多くの場合、既存の保守契約の範囲内、あるいは無償で対応されます。ただし、旧制作会社が「引き継ぎ作業費」として3万円〜15万円程度を請求してくるケースもあり、これは契約書に明記がなければ交渉の余地があります。

一方で見落とされがちなのが、新しい制作会社への支払いです。制作会社変更の相談を、広告代理店や制作会社の仲介サービスを経由して行うと、仲介手数料が上乗せされることがあります。相場としては、仲介を挟むことで本来の制作費用に15%〜30%程度のマージンが乗るケースが見られます。

これに対して、業務委託マッチングサービスなどを通じてフリーランスのエンジニアやデザイナーに直接依頼する方法もあります。仲介会社を通さず直接契約を結ぶことで、その分の中間マージンが発生しないため、同じ予算でより多くの作業を依頼できる、あるいは同じ作業をより低い費用で依頼できる可能性があります。もちろん直接依頼には契約管理や進行管理を自社で担う手間が伴いますが、ソースコードの引き継ぎのように「相手との信頼関係」が重要な作業では、間に仲介者が入らない分、意思疎通のロスが減るという利点もあります。

私自身、以前初めて外注先を変更したときに、複数社から見積もりを取って金額だけで比較してしまい、実際に依頼してみたら仕様の認識がずれていて手戻りが発生した経験があります。見積もりの金額だけでなく、引き継ぎ作業にどこまで対応してくれるかを事前に確認しておくべきだったと反省しています。安さだけで選ぶと、結局は追加費用や修正のやり取りで時間を取られることになりかねません。

よくあるトラブルと回避策

ソースコード引き継ぎで実際に起きやすいトラブルを、事前に把握しておくことでかなりの部分は回避できます。

トラブル1:ソースコードが暗号化・難読化されている

一部の制作会社では、独自のCMSやテンプレートエンジンを使用しており、ソースコードを渡されても人間が読める形になっていないことがあります。これは著作権上の問題というより、技術的なブラックボックス化です。契約前にこの可能性を確認し、可能であれば標準的な技術(WordPress、HTML/CSS/JavaScript等)で構築してもらうよう交渉することが望ましいです。

トラブル2:デザインデータが提供されない

ソースコードは渡されても、デザインの元データ(PSDファイルやFigmaデータ)は「別料金」あるいは「提供対象外」とされることがあります。これは著作権法上、デザインとコードが別の著作物として扱われることに起因します。契約時点で、成果物の範囲にデザインの元データを含めるかどうかを明記しておくことが重要です。

トラブル3:サーバー移管中にサイトが表示されなくなる

ドメインとサーバーの管理者が異なる場合、DNS設定の変更タイミングによっては一時的にサイトが表示されなくなるリスクがあります。移管作業は必ず低アクセス時間帯に行い、事前に新旧両方の環境で表示確認を行ってから切り替えることをおすすめします。

こういう「ちょっと変えて欲しい」案件を、別に私は軽く見ていたつもりはなかったのですが、想像以上に上振れることがわかりました。大体想像の30〜40%増のバッファで見積もるのですが、現実は80%〜300%という感じです。

出典: otihateten.hatenablog.com

この指摘は開発者側の見積もり感覚についてのものですが、発注者側にも参考になります。既存のソースコードを引き継いで改修する案件は、ゼロから作るよりも簡単に見えて、実際には既存コードの構造を理解するコストが上乗せされるため、想定より工数がかかりがちです。見積もりの段階で「引き継ぎ作業だから安いはず」と決めつけず、新しい制作会社に十分な調査期間を与えることが、結果的にトラブルを減らします。

業務範囲の決め方と発注時のチェックリスト

制作会社を変更する際、新しい依頼先との契約書には、次の項目を明記しておくことをおすすめします。

成果物としてのソースコード一式の著作権が発注者に譲渡されるかどうか。譲渡されない場合は、利用許諾の範囲(改変の可否、第三者への譲渡の可否)。保守契約が別途必要かどうか、必要な場合の月額費用と対応範囲。緊急時のサポート体制と連絡手段。そして、将来的にさらに別の制作会社へ引き継ぐ可能性を見据えた、成果物の引き渡し義務についての条項です。

特に最後の項目は見落とされがちですが、一度トラブルを経験すると、次に依頼する制作会社との契約では必ず明記しておきたいと考える発注者が多いというのが実感です。

独自データ考察:発注者が抱える引き継ぎ不安の傾向

在宅ワーク求人サービスの運営者として日々寄せられる相談を見ていると、「制作会社変更」に関する不安は、単なる技術的な引き継ぎ作業というより、コミュニケーションの不安に起因していることが多いという傾向が見えてきます。

具体的には、アプリケーション開発を依頼したいと考えている発注者からの相談では、「今の制作会社に不満はあるが、変更を切り出すと関係が悪化してソースコードを渡してもらえなくなるのではないか」という懸念が最も多く聞かれます。アプリケーション開発のお仕事を依頼する際にも、この不安を解消するために、契約時点で著作権の帰属と引き渡し義務を明記しておくことが有効だと案内しています。

また、システムの保守や改善を依頼する段階では、AIを活用した業務効率化の相談も増えています。AIコンサル・業務活用支援のお仕事を依頼する担当者の中には、既存システムの引き継ぎと同時に、AIツールを組み込んだ改善提案を求めるケースも見られます。この場合、既存のソースコードの構造を正確に把握できるかどうかが、改善提案の質を左右します。

20年この市場を見てきた立場から言えば、長く同じ制作会社と良好な関係を続けている発注者ほど、契約時点で「もし将来変更することになったら」という前提を共有できている傾向があります。逆にトラブルになりやすいのは、良好な関係が前提で「まさか変更することになるとは思わなかった」というケースです。制作会社との関係が良好なうちにこそ、権限の所在や著作権の扱いを確認しておくことが、結果的に双方にとって健全な関係を保つことにつながります。

中間マージンが発生しない直接依頼の構造は、単に費用が安くなるという以上の意味を持ちます。仲介者を挟まない分、発注者と受注者が直接コミュニケーションを取ることになり、引き継ぎのような繊細な作業では、この直接のやり取りが認識のずれを減らす効果を持ちます。同じ予算であれば、依頼者はより多くの作業範囲を頼めますし、受け手は手取りが厚くなることで、丁寧な引き継ぎ対応にも時間を割きやすくなります。この双方が得をする構造は、抽象的な理屈ではなく、実際に長く続いている取引関係の多くに共通して見られる特徴です。

技術面での連携先を探す場合には、ソフトウェア作成者の年収・単価相場を参考に、依頼する作業内容に対して妥当な予算感を把握しておくことも重要です。また、引き継ぎ資料の整備やドキュメント作成を依頼したい場合には、著述家,記者,編集者の年収・単価相場も参考になります。文章による仕様書やマニュアルの整備は、次に制作会社を変更する際の負担を大きく減らします。

制作会社変更を検討する背景には、資金繰りや事業計画の見直しが絡むケースも少なくありません。関連して、個人事業主が活用できる支援制度について知りたい場合は一人親方 持続化補助金も参考にしてください。事業の立て直しと合わせてシステムの見直しを行う事業者にとって、こうした制度活用の知識も判断材料の一つになります。

よくある質問

Q. 制作会社を変更する際、ソースコードは必ずもらえますか?

契約書に著作権譲渡や成果物引き渡しの条項がない場合、もらえない、あるいは利用許諾の範囲に限定される可能性があります。解約前に契約書を確認し、明記がなければ書面で引き渡しを依頼してください。

Q. ドメインやサーバーの名義が旧制作会社になっている場合はどうすればいいですか?

まず名義変更の手続きを旧制作会社に依頼します。応じてもらえない場合は、レジストラやサーバー会社に直接問い合わせ、契約者確認の手続きを進める必要があります。

Q. 引き継ぎ作業費用はどのくらいかかりますか?

多くは無償か保守契約の範囲内ですが、旧制作会社が3万円〜15万円程度の作業費を請求することもあります。契約書に記載がなければ交渉の余地があります。

Q. デザインの元データも引き継ぎ対象に含めるべきですか?

含めることを推奨します。デザインとソースコードは別の著作物として扱われることがあり、明記がないと元データが提供されないケースがあります。契約時点で成果物の範囲に含めておくと安心です。

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この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月10日最終更新:2026年7月31日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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