個人事業主向け少額減価償却資産の特例の書き方|30万円未満の経費処理【2026年版】

丸山 桃子
丸山 桃子
個人事業主向け少額減価償却資産の特例の書き方|30万円未満の経費処理【2026年版】

この記事のポイント

  • パソコンやソフトウェアなどの高額な設備投資は
  • ビジネスの成長に欠かせないステップであると同時に
  • 節税の大きなチャンスでもあります

個人事業主にとって、パソコンやソフトウェアなどの高額な設備投資は、ビジネスの成長に欠かせないステップであると同時に、節税の大きなチャンスでもあります。通常、10万円以上の備品は数年かけて分割経費にする「減価償却」が必要ですが、青色申告者であれば「少額減価償却資産の特例」を使うことで、30万円未満の資産をその年の経費として一括計上できます。本記事では、確定申告での具体的な書類の書き方から、間違いやすい適用要件まで、実務に即して分かりやすく解説します。

少額減価償却資産の特例を取り巻く2026年の現状と改正動向

現在、日本の税制において個人事業主や中小企業を強力にバックアップしているのが、この「少額減価償却資産の特例」です。特に2026年時点では、デジタル化の加速や円安による機材価格の上昇を受け、この制度の重要性がこれまで以上に高まっています。フリーランスエンジニアやクリエイターにとって、ハイスペックな機材を導入した年度に大きな経費を作れることは、キャッシュフローの改善に直結するからです。

さらに注目すべきは、令和8年度税制改正大綱で検討されている内容です。現在、上限額を30万円から40万円へと引き上げる方向で調整が進んでいます。これは、AI開発や高精細な映像制作など、高度な計算資源を必要とする業務が増えている実態に即した動きと言えるでしょう。

少額減価償却資産の特例は、現行制度を正確に理解した上で活用しましょう。40万円への引上げは改正予定であり、確定情報ではないので準備して続報を待ってください。

このように、制度の枠組み自体が変化しようとしている時期だからこそ、まずは現行の「30万円未満」というルールに基づく正確な書き方をマスターしておく必要があります。

少額減価償却資産の特例を適用するための「3つの必須要件」

この特例は、誰でも無条件に使えるわけではありません。書き方を学ぶ前に、まず自分が適用対象であるかを確認しましょう。

1. 青色申告者であること

この特例は「青色申告」を行っている個人事業主だけの特権です。白色申告の場合は、この特例は使えず、後述する「一括償却資産(20万円未満)」などの別のルールを検討することになります。

2. 取得価額が30万円未満であること

対象となるのは、1個または1組の取得価額が30万円未満の資産です。ここで重要なのは「税込」か「税抜」かという点です。自身の経理方式が「税込経理」なら税込で30万円未満、「税抜経理」なら税抜で30万円未満である必要があります。

3. 年間の合計限度額が300万円まで

1台あたりの上限だけでなく、年間の合計額にも制限があります。1年間(1つの会計年度)に取得した少額減価償却資産の合計額が300万円を超える場合、超えた分については通常の減価償却を行う必要があります。

私がフリーランスWebエンジニアとして独立して2回目の確定申告の際、高性能なサーバーと複数の検証用デバイスを一度に購入したことがありました。その時、合計額が危うく300万円に届きそうになり、慌てて帳簿を見直したのを覚えています。当時は「とにかく経費に!」と前のめりになっていましたが、こうした上限枠の把握は事業計画を立てる上でも非常に大切です。

【実践】青色申告決算書への具体的な「書き方」ステップ

それでは、多くの個人事業主が悩む「確定申告書・決算書への記入方法」を具体的に見ていきましょう。会計ソフトを使っている場合でも、最終的なアウトプットが正しい場所に記載されているかチェックすることは必須です。

青色申告決算書「減価償却費の計算」欄の記入

個人事業主が提出する「所得税の青色申告決算書」の3枚目にある「減価償却費の計算」欄に以下の内容を記入します。

  1. 資産の種類・名称: 「ノートパソコン」や「オフィスチェア」など具体的に記入します。
  2. 面積又は数量: 購入した個数を記入します(例:1台)。
  3. 取得年月: 購入した年月を記入します。
  4. 取得価額: 実際に支払った金額を記入します(例:280,000円)。
  5. 償却の基礎になる金額: 基本的に取得価額と同額を記入します。
  6. 償却方法: 「少額」または「即時償却」と記入します。
  7. 耐用年数: 本来の耐用年数を記入しますが、特例適用時は空欄でも通るケースが多いです(PCなら4年)。
  8. 本年分の普通償却費: 取得価額の全額を記入します。

摘要欄への「魔法の一言」が重要

ここが最も重要なポイントですが、摘要欄(または計算欄の余白部分)に必ず以下の文言を記載してください。

「措置法第28条の2適用」

この一言がないと、税務署側で「なぜ耐用年数を無視して全額経費にしているのか」が判断できず、不備として指摘される可能性があります。

参考情報

本記事の内容を補足する公的機関の情報源として、以下も参考にしてください。

まとめ

少額減価償却資産の特例は、30万円未満の設備投資を一括で経費化できる、個人事業主にとって非常にメリットの大きい制度です。適用には青色申告者であることや年間300万円の合計限度額といった必須要件がありますが、正しく活用することで単年度のキャッシュフローを改善し、賢い節税へとつなげることができます。確定申告時には決算書の「減価償却費の計算」欄へ正確に記載し、摘要欄への特例適用の文言を忘れずに記入するようにしましょう。2026年の改正動向も踏まえつつ、まずは手元の備品購入履歴を整理して、特例の対象となる資産がないか確認することから始めてみてください。

「10万円未満」「10〜20万円未満」「20〜30万円未満」「30万円以上」の処理方法を完全整理

少額減価償却資産の特例は30万円未満が対象ですが、実は資産の取得価額帯によって最適な経理処理方法が異なります。多くの個人事業主が「とりあえず特例を使えばいい」と思っていますが、金額帯ごとに4つの選択肢があり、それぞれに会計上のメリット・デメリットがあります。これを理解することで、年度ごとの所得を戦略的にコントロールできるようになります。

第一に「10万円未満の資産」。これは原則として消耗品費として全額経費計上できます。減価償却資産の概念に該当しないため、書類記載も不要で最もシンプルです。例えば9万円のスマホ、8万円のタブレット、7万円のディスプレイなどはここに該当します。

第二に「10万円以上20万円未満の資産」。ここは3つの選択肢があります。(1)通常の減価償却(耐用年数で按分)、(2)一括償却資産(3年で均等償却)、(3)少額減価償却資産の特例(青色申告者のみ全額経費化)。一括償却資産を選ぶと償却資産税の対象外となるメリットがあります。

第三に「20万円以上30万円未満の資産」。ここは2つの選択肢で、(1)通常の減価償却、(2)少額減価償却資産の特例。一括償却資産は対象外です。青色申告者なら特例で全額経費化が一般的に有利です。

第四に「30万円以上の資産」。これは特例の対象外となり、原則として通常の減価償却(定額法または定率法)で耐用年数に応じて経費化します。ただし、中小企業向けの「中小企業経営強化税制」を活用すれば、即時償却または税額控除が可能なケースがあります。

中小企業者等が少額減価償却資産を取得した場合の必要経費の特例制度は、青色申告書を提出する個人で常時使用する従業員の数が500人以下の者が対象となる。 出典: nta.go.jp

実務的な使い分けとして、(1)10〜20万円帯の資産で「翌年以降も所得が高そう」なら一括償却資産で3年に分散、(2)10〜20万円帯で「今年の所得が突出して高い」なら特例で全額経費化、(3)20〜30万円帯はほぼ常に特例を使う、(4)30万円以上は本則減価償却または中小企業経営強化税制の活用、という判断軸を持つと迷いません。

償却資産税(固定資産税の一種)の観点も重要です。一括償却資産は償却資産税の対象外、少額減価償却資産の特例適用資産は償却資産税の対象です。年間の特例適用額が150万円を超える場合、市区町村への償却資産申告と税負担が発生するため、トータルで見ると一括償却資産の方が有利になるケースもあります。

2026年度税制改正で何が変わるか:40万円引き上げの実務インパクト

令和8年度税制改正大綱で議論されている「少額減価償却資産の特例の上限額40万円への引き上げ」は、個人事業主の経理処理に大きな影響を与えます。改正が確定すれば2026年4月以降に取得する資産から適用される見込みで、AI開発者、動画クリエイター、3DCGデザイナーなど、高額機材を必要とする業種にとって朗報です。

引き上げ後の影響を具体的に試算すると、現行30万円なら高性能ノートPC(27〜29万円帯)が中心ですが、40万円なら、(1)プロ仕様のMac Studioまたは高性能ワークステーション、(2)カラーグレーディング用4K対応モニター、(3)高解像度デジタルカメラ+レンズセット、(4)3Dプリンター・レーザーカッターなどの製造機材、まで一気に対象範囲が広がります。これまで複数年の減価償却が必要だったプロ機材を、初年度に全額経費化できるようになる経済効果は絶大です。

中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例については、その適用期限を延長することが検討されている。 出典: meti.go.jp

実務的な対応戦略として、改正が確定した場合は、(1)2026年3月までに30〜40万円帯の機材購入を急ぐ必要はなく、4月以降に購入計画を後ろ倒しする、(2)現行30万円ギリギリで購入するか迷っている場合、4月以降まで待って40万円帯のワンランク上の機材を選ぶ、(3)中小企業経営強化税制との併用判断は税理士と相談、の3点が重要です。改正前後で「同じ機材を購入しても税負担が変わる」という現象が発生するため、年度末の駆け込み購入は慎重に判断しましょう。

ただし、改正大綱は確定情報ではない点にも注意が必要です。例年12月に税制改正大綱が発表され、翌年3月の通常国会で正式に法改正されるサイクルですが、政治情勢や財政状況により内容が変更される可能性があります。最新情報は国税庁のサイトで必ず確認してから、設備投資計画を最終決定してください。

税務調査で否認されないための「証憑保存」と「事業使用率」の実務ポイント

少額減価償却資産の特例を適用したパソコンや機材が、税務調査で「事業に使用していない」「家事用ではないか」と否認されるケースは少なくありません。特に在宅ワーク中心の個人事業主は、家庭用と事業用の境界が曖昧になりがちで、調査官から厳しくチェックされます。否認されると、修正申告と過少申告加算税の負担が発生するため、事前の証憑整備が極めて重要です。

否認リスクが高い典型例は、(1)家族と兼用の高額パソコン、(2)タブレット端末(iPad等)、(3)スマートフォン、(4)カメラ・撮影機材、(5)ゲーム機(配信用と称した場合)、の5項目です。これらは「家事使用率」の判定が難しく、調査官から「100%事業使用の根拠は?」と問われた際に答えられないと、家事使用率分が否認されます。

防衛策として、(1)購入時の業務目的を文書化(「動画編集業務専用機」などのメモを領収書に添付)、(2)事業専用機としてセットアップした証拠(OS再インストール記録、業務ソフトのみインストール)、(3)家族からの「使用しない旨の同意書」を取得、(4)月次の使用ログ(業務日報に「○○PCで△△作業」と記録)、の4点を実施します。これらの証憑を揃えていれば、税務調査でほぼ100%通ります。

個人事業主が事業の用と家事の用の両方に使用している資産については、事業の用に供している部分を明らかに区分できる場合に限り、その部分について必要経費に算入できる。 出典: nta.go.jp

電子帳簿保存法対応も忘れてはいけません。2024年1月以降、電子取引(オンライン購入の領収書など)は電子データのまま保存することが義務化されており、印刷保存は認められません。具体的な保存要件は、(1)真実性の確保(タイムスタンプ付与または訂正履歴の保存)、(2)可視性の確保(検索機能、表示装置の確保)、(3)取引先名・金額・日付による検索性、の3点です。クラウド会計ソフト(freee・マネーフォワード等)の電子帳簿保存対応プランを使うか、専用の電子帳簿保存システムを導入することで、自動的に法令対応が完了します。

最後に、特例適用資産の保存期間は7年間(青色申告者の繰越欠損金がある場合は10年間)です。購入時の領収書、納品書、設置場所の写真、業務使用記録などを、年度別フォルダに整理してクラウドストレージに保存しておくと、万一の税務調査時に即座に対応できます。月1回30分の整理時間を確保するだけで、5〜10年後の自分を救う最高の「税務リスク保険」になります。

よくある質問

Q. 青色申告決算書の摘要欄には具体的に何と書けばよいですか?

減価償却費の計算欄の摘要(右端の備考欄)に「措置法28の2」と記載します。これは「租税特別措置法第28条の2」を指し、この特例を適用して計算したことを税務署に示すための「魔法の一言」です。この記載がないと、一括計上の根拠が不明確になり、税務調査等で修正を求められるリスクがあります。

Q. 取得価額が30万円かどうかは「税込」と「税抜」どちらで判定しますか?

個人事業主本人が採用している会計処理方式によって異なります。税抜経理を採用している場合は「税抜価格」で判定し、税込経理を採用している場合は「税込価格」で判定します。免税事業者の場合は原則として税込価格での判定となるため、299,999円ギリギリの買い物を検討する際は注意が必要です。

Q. 白色申告でも30万円未満の一括経費計上は可能ですか?

いいえ、この「少額減価償却資産の特例」は青色申告者のみに認められた特典です。白色申告の場合、10万円以上の備品は原則として耐用年数に応じた減価償却を行うか、20万円未満であれば3年間で均等償却する「一括償却資産」の制度を利用することになります。節税メリットを最大化したい場合は、青色申告への切り替えを検討しましょう。

Q. パソコンを数台まとめて購入した場合、合計額が30万円を超えても適用できますか?

本特例の判定基準は「1商品(1単位)」ごとです。1台あたりの取得価額が30万円未満であれば、合計額が30万円を超えていても適用可能です。ただし、年間で本特例を適用できる合計限度額は300万円までと定められているため、大量に購入する場合は年間の累計額を確認しておきましょう。

Q. 中古品を購入した場合でも、この特例を使って一括経費にできますか?

はい、中古品であっても要件を満たせば適用可能です。取得価額が30万円未満であり、青色申告者が事業用として供したものであれば、新品・中古の区別なくその年の経費として計上できます。オークションやフリマサイトで購入した際も、領収書や支払い証明書を適切に保管しておきましょう。

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丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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