納期がつくと苦しくなるハンドメイド販売、発達障害のある人の在宅


この記事のポイント
- ✓発達障害 ハンドメイド販売 在宅で検索している方へ
- ✓受注量と納期の相談のしかた
- ✓福祉事業所経由の内職型まで
「作ること自体は好きなんです。でも、注文が入った瞬間に苦しくなる」。このご相談、本当によくいただきます。
ハンドメイドを在宅の仕事にしようとしている方から、一番多く聞く声です。作業に没頭している時間はむしろ心地よい。手を動かしていると落ち着く。ところが、納期がついた途端に、その心地よさが消えてしまう。注文通知が怖くなって、アプリを開けなくなる。
大丈夫ですよ。それは「向いていない」という意味ではありません。順番の問題です。
「発達障害 ハンドメイド販売 在宅」と検索してこの記事を開いた方は、たぶんこんな状況だと思います。外に働きに出るのが難しい、あるいは職場の環境が合わなかった。手先を使う作業は苦にならない、むしろ得意かもしれない。でも、売る側になったときのやりとり、期限、数の管理が不安。そして、「本当に仕事として成り立つのか」を知りたい。
この記事では、医学的な話には触れません。私は心と働き方の相談を受ける立場であって、診断や治療の専門家ではないからです。特性の出方は人によって本当に大きく違いますから、「発達障害の人はこう」という書き方もしません。代わりに、在宅でハンドメイド販売を続けるための実務、つまり販売の場の選び方、価格の決め方、受注量と納期をどう相談するか、そして福祉の仕組みを使った別ルートまでを、順番にお話しします。
ハンドメイド販売の在宅市場は、いま2つの入り口がある
まず全体像を整理しましょう。在宅でハンドメイドに関わる方法は、大きく2種類あります。ここを混同したまま始めてしまう方が多いので、丁寧に分けます。
1つ目は、自分で作って自分で売る「販売者」のルートです。materialを仕入れ、作品を作り、写真を撮り、価格を決め、販売サイトに出品し、注文を受け、梱包して発送する。全部自分でやります。売れなければ収入はゼロですが、売れれば利益はすべて自分のものです。
2つ目は、事業所や企業から作業を請け負う「受注者」のルートです。雑貨やノベルティの組み立て、袋詰め、シール貼り、縫製の一部工程など、決められた作業を決められた数だけこなして、1個あたりいくらという単価で報酬を受け取る形です。売れるかどうかを心配する必要がありません。その代わり、単価は自分で決められません。
どちらが良い悪いではなく、性質がまるで違います。そして、この違いが「向き不向き」を大きく左右します。
販売者ルートの現状
ハンドメイド作品を売る場は、この10年で選択肢が増えました。ハンドメイド専門のマーケットプレイス、フリマアプリのショップ機能、自分でネットショップを開設するサービス。それぞれ、集客力、手数料、必要な準備の量が違います。
実際に販売を経験した方の声を見てみましょう。
大手のネットショップのサービスBはアプリの累計ダウンロード数が800万程度、ハンドメイド品専門のサービスMはアプリの累計ダウンロード数が1,100万程度ですので、それらに比べてとても利用者数が多い点に魅力を感じました。 出典: salad-knowdo.com
ここで語られているのは、「作品の良し悪しより、まず人が見に来る場所かどうか」という視点です。これは非常に実務的な観点です。ハンドメイド専門のサイトは、作品を探しに来る人が集まっているので購入意欲は高い。一方、利用者総数の多いフリマ系のプラットフォームは、そもそも見てくれる人の絶対数が違います。
どちらを選ぶかの判断は、実は自分の特性とも関係します。ハンドメイド専門サイトは、作品の世界観やプロフィールの作り込みが売上に効きます。文章で世界観を作るのが得意な人には有利です。一方、フリマ系は写真と価格の分かりやすさが効きます。文章を書くのが負担な人には、こちらのほうが消耗が少ない。
手数料の相場は、販売額の10%前後が中心です。加えて振込手数料がかかります。この数字は必ず原価計算に入れてください。後ほど詳しくお話しします。
受注者ルートの現状
もう1つの入り口が、事業所を通じた在宅の作業受注です。こちらは「売る不安」がありません。
障害者の在宅ワークは、自宅で業務を進める以外に福祉作業所の中で作業を行う方法があります。在宅就業障害者支援制度の特例調整金・特例報奨金の対象となり得るため、「自宅で進めるのは難しい」と考えられる業務でも在宅ワークとして発注可能です。実際にそうした業務を請け負っている福祉事業所の取り組みをご紹介します。 出典: shigoto4you.com
制度の裏付けがあるので、企業側にも発注する動機があります。ここが重要なところです。「善意でお願いする仕事」ではなく、発注する企業側にもメリットがある仕組みになっている。だから継続性があります。
ただし、物を扱う作業を在宅で進めるには工夫が要ります。
雑貨や企業のノベルティ製作は障害者が従事する職域として多く見られる業務です。こうした業務は実際に物品を扱う作業なので、自宅で進めるには材料の配送や完成品の引き上げ、作業手順の指示等において新たな仕組みづくりが必要になります。そのため、「在宅ワークで任せるのは難しい」というイメージが強いかもしれません。 出典: shigoto4you.com
材料をどう届けるか、完成品をどう回収するか、作業手順をどう伝えるか。これらを事業所が間に入って整えてくれるなら、在宅でも成立します。そして、この「間に入ってくれる存在」があることが、実は最大のメリットなんです。納期の交渉も、作業量の調整も、体調を崩したときの連絡も、事業所の支援員が窓口になってくれます。1人で全部抱えなくていい。
こうした就労支援や在宅就業の制度については、厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/)が窓口や制度の案内を出しています。地域の障害者就業・生活支援センターやハローワークの専門援助部門でも相談ができます。まずここに一度話をしてみてから販売者ルートを考える、という順番でも、まったく遅くありません。
メリットとデメリットを、正直に並べます
「ハンドメイドは在宅でできて自由」という説明だけを読んで始めると、必ずつまずきます。良いところと苦しいところを、両方きちんと見ておきましょう。
メリット1:作業のペースを自分で決められる
これが最大の利点です。雇用されて働く場合、始業時刻も休憩時間も決まっています。在宅販売なら、夜中に作業してもいい、3日休んでもいい。調子の良い日にまとめて作り、悪い日は何もしないという配分ができます。
体調に波がある場合、この可変性は決定的です。「決まった時間に決まった場所にいる」ことが最大のハードルだった方にとって、そのハードルが丸ごと消えます。
メリット2:対人のやりとりを最小化できる
ハンドメイド販売のやりとりは、ほぼすべてテキストです。購入者とのメッセージ、発送通知、レビューへの返信。電話は基本的にありません。
口頭での即時の応答が負担になる方にとって、これは大きい。文字なら、読み返せる。考えてから返せる。返信するタイミングも選べます。
メリット3:集中と反復が価値になる
同じ工程を丁寧に何度も繰り返せることは、ハンドメイドでは明確な強みです。1つひとつの品質のばらつきが少ない作り手は、それだけでリピーターがつきます。
細かい違いに気づく力、決めた手順を厳密に守る力。これらは、量産の現場では本当に貴重です。ただし、ここも人によって差があります。同じ作業の反復が苦痛になる方もいますから、「得意なはず」と決めつけずに、実際に少量作ってみて確かめてください。
デメリット1:収入が読めない
売れるかどうかは、作品の質だけでは決まりません。季節、流行、競合の数、写真の写り、タイミング。コントロールできない要素が多すぎます。
出品してから最初の1個が売れるまで、数か月かかることも普通です。この期間に収入がゼロでも生活が回る状態かどうか。ここを先に確認してください。生活費の不安を抱えたまま始めると、「売れないこと」が精神的な負荷になり、作ること自体が苦痛に変わってしまいます。これが一番もったいない。
デメリット2:作る以外の作業が想像以上に多い
これが、多くの方が想定していない部分です。
作品を作る時間が全体の何割を占めると思いますか。実際には、半分に届かないことが多いんです。残りは、写真撮影、商品説明文の作成、価格設定、在庫管理、材料の発注、梱包、発送手続き、購入者への連絡、確定申告のための記帳。全部やらなければなりません。
しかも、これらの作業は性質がバラバラです。作業の切り替えが苦手な場合、ここが最大の負担になります。作品作りには何時間でも没頭できるのに、発送手続きが1週間放置される。この状態は珍しくありません。
対処法は後ほど具体的にお話ししますが、先に結論だけ言うと、「作る日」と「事務の日」を完全に分けることです。同じ日に混ぜないでください。
デメリット3:オーダーメイド対応が地雷になりやすい
「この色で作ってもらえますか」「サイズを変えられますか」。この要望に応え始めると、収拾がつかなくなります。
見積もりが難しくなり、作業時間が読めなくなり、購入者との細かいやりとりが増え、完成品が期待と違ったときのトラブルリスクが上がる。しかも、単価はほとんど上がりません。
最初のうちは、オーダーメイド不可と明記して既製品だけを売る。これを強くおすすめします。断ることに罪悪感を持たなくていいんです。「現在オーダーメイドは承っておりません」の一文をプロフィールに入れておけば、それで済みます。
受注量と納期を、相談できる形にする
ここからが、この記事の中心です。冒頭でお話しした「注文が入った瞬間に苦しくなる」問題を、仕組みで解きます。
在庫販売に寄せる
まず、大前提を変えます。「注文を受けてから作る」のをやめて、「作ってから出品する」形に寄せてください。
受注生産は、注文が入った瞬間に納期のカウントが始まります。体調が落ちたら即座に遅延になります。一方、完成品を在庫として持ってから出品すれば、注文が入った時点で作業は終わっています。あとは梱包して送るだけ。
「在庫を抱えるのが不安」という声もありますが、ハンドメイドの多くは材料費が数百円から数千円です。売れ残っても損失は限定的です。それに対して、納期に追われる心理的な負担は、金額に換算できないほど大きい。
在庫販売に寄せるだけで、続けられる確率が大きく変わります。
出品数の上限を先に決める
売れると嬉しくなって、出品数を増やしたくなります。ここで止まれるかどうかが分かれ道です。
先に「同時に出品するのは最大10点まで」といった上限を決めてください。売れたら補充する。売れなければ増やさない。この形なら、注文が一度に殺到することがありません。
上限は、「調子が悪い日が1週間続いても、発送が滞らない量」を基準に決めます。逆算の起点は、稼働できる日の数ではなく、稼働できない日の数です。ここを間違えないでください。
発送期日は最長設定にする
多くの販売サイトでは、発送までの日数を出品者が選べます。「1〜2日で発送」を選ぶと売れやすくなるのは事実です。でも、最初は迷わず最長の設定を選んでください。
「4〜7日で発送」でも、購入者はちゃんと買います。むしろ、約束を守れることのほうが評価に直結します。早く送れるときは早く送ればいい。約束を短くして守れないより、約束を長くして毎回守るほうが、確実にレビューは良くなります。
事務作業を曜日で固定する
作る作業と事務作業を、同じ日に混ぜないでください。
たとえば、「月曜と木曜は発送と連絡の日」「それ以外は作る日」と決めます。発送を毎日やろうとすると、作業の切り替えが1日に何度も発生して消耗します。週2回にまとめれば、切り替えは週2回で済みます。
購入者には、プロフィールに「発送は火曜と金曜にまとめて行っています」と書いておけば問題ありません。事前に伝えてあることは、クレームになりません。伝えていないことだけがクレームになります。
在宅で1日の時間をどう配分するかについては、在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開に具体的な組み立て方の例があります。中断が入る前提でどこにまとまった時間を置くかという考え方は、ハンドメイドの作業計画にもそのまま使えます。
また、作業に集中しすぎて休憩を取れない、あるいは逆に取りかかれないという悩みには、在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックが参考になります。時間で区切るより「10個作ったら休む」のように作業量で区切るほうが機能する場合もあります。
定型文を全部作っておく
購入者への連絡文は、毎回考えないでください。あらかじめ全パターンを用意しておきます。
購入時のお礼、発送完了の連絡、遅延のお詫び、質問への返答。この4種類があれば、ほとんどの場面をカバーできます。
遅延の連絡文だけは、特に丁寧に作っておいてください。
「〇〇様、このたびはご購入ありがとうございます。□□です。ご注文いただいた△△について、体調不良により発送が予定より遅れております。◇月◇日までには必ず発送いたします。お待たせして申し訳ございません。お急ぎの場合はキャンセルも承りますので、お気軽にお知らせください。」
体調が悪い日に、この文章をゼロから考えるのは無理です。だから元気なうちに作っておく。日付を入れ替えるだけで送れる状態にしておく。これだけで、「連絡できずに放置してしまう」という最悪のパターンを防げます。
私が相談を受けていて感じるのは、トラブルの大半は「品質」ではなく「連絡が途絶えたこと」で起きているということです。遅れること自体は、多くの購入者が許容してくれます。何も言われないまま待たされることが、不信につながるんです。
価格の決め方と、お金まわりの基本
作品の価格を安くつけすぎてしまう方が、本当に多いです。ここも丁寧にお話しします。
原価に必ず含めるもの
価格を決めるとき、材料費だけで計算していませんか。それでは必ず赤字になります。
含めるべきものは、材料費、梱包資材費、送料(自己負担の場合)、販売手数料、振込手数料、そして自分の作業時間です。
たとえば、材料費600円、梱包資材100円、送料350円の作品を2,500円で売ったとします。販売手数料が10%なら250円。残るのは1,200円です。作るのに3時間かかっていたら、時給換算で400円になります。
この計算を一度もしないまま出品を続けている方が、非常に多い。まず1点、実際に計算してみてください。
安売りは優しさではありません
「こんな値段では買ってもらえない」と感じて、価格を下げてしまう。その気持ちはよく分かります。でも、安い価格をつけると、買う人は増えても、疲弊する速度が上がります。
そして、値上げは想像以上に難しい。最初に低く設定した価格は、後から上げるとリピーターが離れます。だから、最初から適正な価格をつけたほうが、結果的に長く続きます。
もし価格に見合わないと感じるなら、値段を下げるのではなく、作品を減らして1点あたりの完成度を上げるほうを選んでください。安いものをたくさん作るのは、体力的にも精神的にも消耗が激しい戦い方です。
確定申告と、給付との関係
副業や在宅ワークで得た所得が一定額を超えると、確定申告が必要になります。給与所得がある方は年間20万円を超える所得、給与所得がない方は基礎控除額を超える所得が目安です。詳しい要件は国税庁(https://www.nta.go.jp/)で確認してください。
大切なのは、売上と経費を最初から記録しておくことです。後からまとめてやろうとすると、必ず苦痛になります。売れたらその日のうちに、金額と材料費をメモする。この習慣だけつけておいてください。会計サービスを使えば、口座と連携して自動で記録できます。
障害年金を受給している方は、収入との関係が気になると思います。障害基礎年金や障害厚生年金の支給要件は制度によって扱いが異なりますので、日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/)や年金事務所で個別に確認してください。ここは一般論で判断すると危険な領域です。必ず窓口に聞いてください。
続けるための考え方と、次の一歩
「売れない期間」を設計に入れる
最初の3か月は売れないもの、と最初から決めておいてください。
そう決めておけば、売れないことで落ち込まずに済みます。落ち込まなければ、作り続けられます。作り続けていれば、出品数が増えて、いずれ見つけてもらえます。
こういう相談がよくあります。「1か月出品したけど1個も売れないので、やっぱり向いてないと思います」。違います。1か月で判断するのが早すぎるだけです。ハンドメイドの販売は、検索でたどり着いてもらう仕事です。作品数が少ないうちは、そもそも見つけてもらえる確率が低い。
記録を残しておく
何をいつ作ったか、いくらで売れたか、何が売れなかったか。簡単でいいので記録してください。
これは経理のためだけではありません。調子が悪い時期に「自分は何もできていない」と感じたとき、記録を見返すと、実際にはたくさん作っていたことが分かります。自己評価が事実とずれるのを、記録が防いでくれます。
ハンドメイド以外の在宅の選択肢も見ておく
ハンドメイドが合わなかった場合の逃げ道も、先に見ておくと安心です。手を動かす仕事と、パソコンで完結する仕事では、疲れ方がまったく違います。
在宅で成立する職種の全体像は、在宅でできる仕事おすすめ【2026年版】|スキル別ランキングに整理されています。文章を書く仕事の相場感は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で、技術職の水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場で確認できます。
パソコン系に進む場合、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事やAIコンサル・業務活用支援のお仕事、アプリケーション開発のお仕事といった職種ガイドで、実際の仕事内容を確認しておくと判断しやすくなります。ハンドメイドの世界観づくりで培った表現力は、こうした領域でも意外と活きます。
事務書類の作り方に自信がないなら、ビジネス文書検定で扱う内容が実務にそのまま使えます。IT寄りの資格としてCCNA(シスコ技術者認定)もありますが、ハンドメイド販売とは距離があるので、優先度は低く見ておいてください。
材料と道具の管理を、記憶に頼らない形にする
作ることそのものより先につまずくのが、実は材料の管理です。ここを先に整えておくと、制作の負担が驚くほど軽くなります。
材料は「作品1つ分」で袋に小分けする
材料をまとめて箱にしまうと、作り始めるたびに探す時間が発生します。この探す時間は、集中を立ち上げるために必要な力を先に消費してしまいます。作業に入る前に疲れてしまう、という状態です。
おすすめは、作品1つ分の材料を透明の袋に1セットずつ小分けしておくことです。金具、パーツ、糸、留め具。袋を1つ開ければ、すぐ手を動かせる状態にしておきます。
小分けの作業は、体調の良い日にまとめて進めてください。頭を使わない単純作業なので、制作ができない日にも進められます。「今日は袋詰めだけした」と言える日が作れると、止まっている感覚が減ります。これは気休めではなく、実際に翌週の作業速度が変わります。
買い足しは「残り3セット」で発注する
在庫が切れてから注文すると、届くまでの数日間、作業が完全に止まります。そして、止まった状態から再開するのは、続いている状態を保つより何倍も難しい。ここが落とし穴です。
そこで、残りが3セットになった時点で発注する、というルールにしてください。数を数えるだけの判断なので、体調に左右されません。「そろそろ買わないと」という曖昧な感覚に任せると、必ず切らします。
同じ理由で、材料は定番品を選んでください。廃番になりやすい限定品を主力にすると、リピーターがついた後で作れなくなります。
発送資材は半年分をまとめて買っておく
封筒、緩衝材、テープ、宅配袋、送り状。これらは1回の注文でまとめて買っておいてください。単価が下がるという利点もありますが、本当の目的は「資材がないから発送できない」という事態を防ぐことです。
発送は、注文が入った後の工程です。ここで止まると、待っているのは購入者です。自分の都合で日程を動かせない工程ほど、事前の準備を厚くしておく。これが基本の考え方です。
トラブルが起きたときの動き方を、先に決めておく
起きてから考えると、判断そのものに大きな力が要ります。先に手順を決めておけば、その日は決めた手順をなぞるだけで済みます。判断を減らすことが、そのまま負担を減らすことになります。
評価が下がったときにやること
低い評価がつくと、強い落ち込みが来ます。これは避けられません。ですから、落ち込むこと自体は前提にしてください。落ち込まない方法を探すより、落ち込んでいる間の行動を決めておくほうが現実的です。
決めておくのは、「その日は返信しない」というルールです。感情が動いている状態で書いた文章は、ほぼ後悔します。翌日、用意してある定型文をもとに、事実だけを短く返す。これで十分です。
そして、評価は件数が積み重なるほど1件の影響が薄まります。最初の数件のうちに低評価がつくと致命的に見えますが、続けていれば必ず薄まっていきます。1件で全部が決まるわけではありません。
返品や返金を求められたときの線引き
届いた商品に不備があった場合は、素直に対応してください。返金するか、作り直すか。どちらを選ぶかは、材料費と作業時間を比べて決めます。作り直しのほうが安く済むことも、返金のほうが早く終わることもあります。
一方、「イメージと違った」という理由の返品は、受けるかどうかを自分で決めてよい領域です。手作りの品は既製品と違い、色味や風合いに個体差が出ます。この点を商品説明にあらかじめ書いておけば、無条件に応じる必要はありません。
大切なのは、どちらの方針でも構わないので、先に決めておくことです。その場で考えると、断れずに全部受けてしまいます。そして受け続けた結果、続けられなくなります。
続けられなくなったときの、止め方を知っておく
体調が崩れて作業できなくなる時期は、来ます。そのときのために、販売を止める手順を先に確認しておいてください。
多くの販売サイトには、出品を一時的に非公開にする機能や、購入を受け付けない設定があります。退会しなくても止められる仕組みが用意されている、ということです。この設定の場所を、元気なうちに一度開いて確認しておいてください。
止め方を知っていると、「無理をしてでも続けなければ」という気持ちから解放されます。いつでも止められると分かっていることが、逆に続ける力になります。これは、相談を受けていて何度も確かめてきたことです。
独自データの考察|長く続けている作り手が共通してやっていること
フリーランス・在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から、いくつか観察をお伝えします。
長く続いている在宅の作り手には、はっきりした共通点があります。それは、作品の数を増やすことより、「同じ人にもう一度買ってもらう」ことに時間を使っている点です。
新しい購入者に見つけてもらうには、出品数を増やし、写真を撮り直し、説明文を書き直し、季節に合わせて作品を入れ替える必要があります。この作業量は、作品を作る時間と同じかそれ以上になります。
一方、一度買ってくれた人がまた買ってくれる場合、この工程はほぼ不要です。運営者として見てきた限りでは、収入が安定している作り手ほど、新規の獲得よりリピーターの維持に手をかけています。
そして、リピーターがつく理由は、作品の完成度だけではありません。「注文したら、書いてある通りの日に、書いてある通りのものが届いた」。この当たり前が毎回守られることが、実はいちばん効いています。
体調に波がある場合、この「毎回守る」をどう作るかが課題になります。答えは、約束のハードルを下げることです。発送日数を長めに設定する。在庫販売に寄せる。オーダーメイドを受けない。この3つで、守れる約束だけを並べた状態を作れます。守れない約束をして謝るより、守れる約束だけをして毎回守るほうが、評価は確実に高くなります。
もう1つ、構造的な話をします。ハンドメイドの世界では、作り手が受け取る額と、購入者が払う額の差が、思ったより大きい。販売手数料、決済手数料、振込手数料が段階的に引かれ、さらに送料の負担がのしかかります。同じ作品を同じ価格で売っても、間に入る仕組みが多いほど、手元に残る額は薄くなります。
だから、中間の手数料が乗らない直接の取引の意味は大きいんです。同じ予算でも、仲介が減れば依頼する側はより多くを頼めますし、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%で直接つながれる仕組みの価値は、金額の大小というより、「同じ作業量に対して残る額が違う」という質の問題です。
稼働できる時間に上限がある場合、これは切実な話になります。時間を伸ばして収入を増やす戦略が取りにくいなら、1時間あたりの取り分を厚くするしかないからです。作業量を増やすのではなく、同じ作業量で残る額を増やす。この発想の転換ができるかどうかで、続けられる期間が変わります。
最後に、相談を受けていていつも感じることをお伝えします。作ることが好きな方ほど、「売るための作業」を自分の苦手なこととして責めてしまいます。写真がうまく撮れない、説明文が書けない、発送が滞る。それを「怠けている」と自分で評価してしまう。
そうではありません。作ることと売ることは、まったく別の技能です。両方を1人で完璧にこなせる人のほうが少数派です。だから、苦手な部分は仕組みで減らしていい。出品数を絞る、定型文を使う、発送日をまとめる。全部、自分を責めずに済むようにするための工夫です。
あなたは一人じゃありません。事業所を通す方法もあれば、公的な相談窓口もあります。1人で全部を背負う形だけが在宅ワークではない、ということを、どうか覚えておいてください。
よくある質問
Q. ハンドメイド販売は在宅の仕事として収入になりますか?
なりますが、時間はかかります。材料費・梱包資材・送料・販売手数料を差し引くと、価格2,500円の作品で手元に残るのは1,200円程度です。作るのに3時間かかれば時給換算400円になります。最初の3か月は売れない前提で、生活費とは切り離して始めるのが安全です。
Q. 注文の納期が不安です。どうすれば無理なく続けられますか?
受注生産をやめて在庫販売に寄せてください。作ってから出品すれば、注文時点で作業は終わっています。発送までの日数は最短ではなく最長の設定を選び、同時出品数も10点程度の上限を決めます。約束のハードルを下げて毎回守るほうが、評価は高くなります。
Q. 自分で売る以外に、在宅でハンドメイドに関わる方法はありますか?
福祉事業所を通じて、雑貨やノベルティ製作の作業を在宅で請け負う方法があります。在宅就業障害者支援制度の対象となり得るため企業側にも発注の動機があり、材料の配送や手順の指示を事業所が整えてくれます。売れるかどうかを気にせず働けるのが利点です。
Q. オーダーメイドの依頼は受けたほうがよいですか?
最初は受けないことをおすすめします。作業時間が読めなくなり、細かいやりとりが増え、完成品が期待と違ったときのトラブルにもなりやすい割に、単価はほとんど上がりません。プロフィールに「現在オーダーメイドは承っておりません」と書いておけば十分です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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