正社員が別の仕事も持って40時間を超えたとき|就業規則と労働時間の通算


この記事のポイント
- ✓正社員 ダブルワーク 40時間以上で悩む人向けに
- ✓割増賃金を誰が負担するのか
- ✓雇用契約と業務委託の分岐
先日、ある会社員の方から相談を受けました。「正社員として週5日フルタイムで働いているのに、応募したアルバイト先から『あなたはもう週40時間働いているので採用できません』と断られた」と。結論から言うと、これは法律違反を避けるための、副業先としてはきわめて合理的な判断です。正社員 ダブルワーク 40時間以上という条件で副業を探すと、雇用契約(アルバイト・パート)ではほぼ確実にこの壁にぶつかります。理由は、労働時間が会社をまたいで足し算されるからです。これ、知らない人が本当に多いんです。
この記事では、なぜ正社員がダブルワークで週40時間を超えると「全部が割増賃金」になるのか、その構造を条文レベルで分解します。そのうえで、雇用契約ではなく業務委託を選ぶという判断がなぜ現実解になるのか、就業規則をどう読めばいいのか、社会保険と税金はどうなるのかまで、実務の順番どおりに整理します。
「週40時間」はどこから来るのか。正社員はすでに枠を使い切っている
まず前提を揃えます。労働基準法第32条は、使用者が労働者を働かせてよい時間の上限を定めています。原則は1日8時間、週40時間。これを法定労働時間と呼びます。つまり、この枠を超えて働かせるには、労使協定(いわゆる36協定)を結んで労働基準監督署に届け出たうえで、超えた分に割増賃金を払う必要がある、ということです。
ここで多くの人が見落とすのが、この40時間という枠は「会社ごと」ではなく「その人ごと」に与えられている、という点です。正社員として月曜から金曜まで1日8時間働いていれば、その時点で週の枠はぴったり使い切っています。土曜に別の会社で5時間働けば、その5時間はまるごと法定時間外です。1時間目から時間外労働として扱われます。
実際、この構造を知らないまま副業を始めて、後から驚く人は非常に多い。次のような声は、質問サイトでも繰り返し投稿されています。
今現在、正社員として週5日8時間勤務で働いてます。ダブルワークをしようと思い、とあるアルバイトに応募したのですが、すでに週40時間働いているので、労働基準法に抵触する旨を言われ断られました。 全くもって無知なので、詳しい方どうかご回答を頂けないでしょうか? 宜しくお願いします。 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
この方は何も悪いことをしていません。むしろ、断ったアルバイト先のほうが法律を正確に理解していたわけです。ここを起点に、構造を分解していきます。
法定労働時間と所定労働時間は別物です
混乱の元になりやすいので、用語を整理しておきます。
法定労働時間は、法律が決めた上限です。1日8時間・週40時間。これは会社が勝手に変えられません。一方、所定労働時間は、あなたと会社が雇用契約で約束した働く時間です。1日7時間30分の会社もあれば、1日8時間ちょうどの会社もあります。
つまり、所定労働時間が1日7時間30分で週37時間30分の会社に勤めている人は、法定の40時間まであと2時間30分の余裕があります。この2時間30分までは、副業先でも通常の時給で働けます。超えた分から割増になります。
ここが実務で効いてきます。自分の会社の所定労働時間が何時間なのかを、就業規則か雇用契約書で確認してください。「フルタイム=40時間」と思い込んでいる人は多いのですが、実際には38時間45分や37時間30分の会社も珍しくありません。わずか2時間でも、副業先にとっては「割増を払わずに済む枠」があるかどうかの分岐点になります。
もうひとつ、休憩時間は労働時間に含まれません。9時から18時拘束で休憩1時間なら、労働時間は8時間です。拘束時間で数えると計算がずれるので注意してください。
労働時間は事業場が違っても通算される
核心はここです。労働基準法第38条第1項に、こう書かれています。労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
「事業場を異にする場合」というのは、同じ会社の別支店だけを指すのではありません。行政解釈では、事業主が異なる場合、つまり別会社で働く場合も含むとされています。つまり、A社で8時間働いた日にB社で3時間働けば、その日のあなたの労働時間は11時間と評価される、ということです。A社もB社も、あなたが他方で何時間働いているかを無視できません。
厚生労働省が公開している副業・兼業に関するガイドラインでも、この通算の考え方と、副業を認める場合の労働時間管理の方法が整理されています(厚生労働省)。企業の人事担当者がダブルワーク希望者に慎重になるのは、感情的な理由ではなく、この通算義務があるからです。副業先が労働時間を把握しないまま働かせて上限を超えると、責任を負うのは労働者ではなく使用者側です。
そしてもうひとつ重要なのが、通算されるのは「労働時間」であって、「働いた時間すべて」ではないという点です。ここが、後で説明する業務委託との決定的な違いになります。雇用契約に基づいて働く時間だけが通算対象で、雇用契約でない働き方の時間は通算されません。この一線が、正社員 ダブルワーク 40時間以上という問題の実質的な出口になります。
副業を雇用契約にすると、その時間の「ほぼ全部」が割増になる
正社員として週40時間を働き切っている人が、アルバイトやパートとして副業に入ると、副業側の労働時間はすべて法定時間外になります。法定時間外労働には25%以上の割増賃金が必要です(労働基準法第37条)。つまり、時給1,200円の求人に応募しても、あなたを雇う会社は1,500円を払わなければならない計算になります。
さらに、深夜(22時から翌5時)に働く場合は深夜割増25%が別途上乗せされます。時間外かつ深夜なら合計50%増。仕事終わりの20時から24時までコンビニで働くようなパターンは、まさにこの二重割増の領域に入ります。
割増賃金を払うのは、原則として「後から契約した会社」
ここが最も誤解されている論点です。「本業の会社が払うのか、副業先が払うのか」という問いに対する行政解釈の原則は、時間的に後から労働契約を締結した使用者が割増賃金の支払義務を負う、というものです。
つまり、正社員として先に働いていて、後からアルバイト契約を結んだのであれば、割増賃金を負担するのは副業先です。副業先の会社から見れば、通常の時給で募集をかけたのに、あなたを採用した瞬間に人件費が1.25倍から1.5倍になる。しかもそれは、あなたの本業の労働時間という、副業先がコントロールできない要素で決まります。
ただし、これは「先に契約したほうが常に免責される」という単純な話ではありません。所定労働時間を超えて働かせた時点で通算後の法定時間を超えるなら、その超過を発生させた側が負担するという整理になります。本業側が突発的に残業を命じた結果、通算で上限を超えたのであれば、本業側が負担すべきケースもあります。実務では、どちらの会社がその日の超過を生じさせたかを個別に見ることになります。
※ 実際に未払いの割増賃金が発生していると考えられるケースでは、労働基準監督署または弁護士に相談してください。この記事の説明は一般的な考え方の整理であり、個別事案の結論を保証するものではありません。
金額で見ると、副業先が二の足を踏む理由がはっきりします
具体的な数字で見てみましょう。正社員として月曜から金曜まで1日8時間働いている人が、土曜に6時間のアルバイトを週1回入れるとします。
| 項目 | 通常の想定 | 通算ルール適用後 |
|---|---|---|
| 副業の時給 | 1,200円 | 1,500円(25%増) |
| 1日あたり(6時間) | 7,200円 | 9,000円 |
| 月4回(24時間) | 28,800円 | 36,000円 |
| 副業先の追加負担(月) | 0円 | 7,200円 |
副業先は、募集時に想定していた人件費より月7,200円多く払うことになります。同じシフトを、他に本業を持たない人に任せれば追加負担はゼロです。採用担当者が「フルタイム勤務の方は今回は見送らせてください」と言う背景には、この差があります。あなたの能力や人柄の問題ではありません。
もし副業を深夜帯にすると、割増は50%になります。時給1,200円が1,800円。同じ24時間で月43,200円となり、追加負担は月14,400円です。深夜のシフトほどダブルワーク人材が敬遠されるのは、ここに理由があります。
副業先が「聞かなかったこと」にしても解決しません
「本業のことを言わなければいいのでは」と考える人がいますが、これは副業先を危険な状態に置く行為です。使用者は労働者の申告等により他社での労働時間を把握し、通算して管理する責任を負います。申告がなければ把握しようがないため、実務上は入社時の申告書で他社就労の有無を確認します。ここで虚偽の申告をすると、後で発覚したときに副業先との信頼関係が壊れ、契約解除の理由にもなり得ます。
そして、隠していても発覚する経路はあります。社会保険の加入要件を満たせば二以上事業所勤務の届出が必要になりますし、住民税の課税通知は本業の会社に届きます。労災が起きれば、複数事業労働者としての給付手続きの中で就労状況が明らかになります。隠す前提の設計は、遅かれ早かれ破綻します。
36協定と時間外労働の上限。もうひとつの天井
割増賃金の話とは別に、時間外労働そのものに上限があることも押さえておく必要があります。
労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)を結んでいなければ、そもそも法定労働時間を超えて働かせること自体ができません。そして2019年からは、36協定を結んでいても、時間外労働は原則として月45時間・年360時間が上限とされ、特別条項を付けても年720時間、複数月平均80時間以内、単月100時間未満という絶対的な天井が設けられました。
ここで、通算の話が効いてきます。時間外労働の上限規制のうち、単月100時間未満と複数月平均80時間以内という部分は、実労働時間をベースに通算して管理する必要があります。本業ですでに月30時間残業している人が、副業で月60時間働けば、通算の時間外は月90時間。単月では収まりますが、これが2か月続けば平均80時間を超えます。
つまり、副業を雇用契約で行う場合、「割増賃金さえ払えば無制限に働ける」わけではありません。上限規制という別の天井があり、そこに近づくほど副業先は採用に慎重になります。週40時間を大きく超えて働きたい人ほど、雇用契約という器そのものが窮屈になっていく構造です。
なお、健康管理の観点も無視できません。月80時間を超える時間外労働は、過労死ラインとして医学的にも問題視される水準です。法律の議論以前に、その働き方が何か月続けられるのかを冷静に見積もる必要があります。
業務委託なら労働時間は通算されない。ここが実質的な分岐点
ここからが、この記事でいちばん伝えたい部分です。
労働時間の通算が適用されるのは、労働基準法上の労働者として働く場合、つまり雇用契約に基づいて働く場合だけです。業務委託契約(請負・準委任)で仕事を受ける場合、あなたは労働者ではなく事業者として扱われるため、その作業時間は本業の労働時間と通算されません。
つまり、正社員として週40時間働いている人が、平日の夜や週末に業務委託で仕事を受けても、法定労働時間の枠の問題は原則として生じません。副業先が割増賃金を負担する必要もないので、「フルタイム勤務だから」という理由で断られることもありません。この差は、実務上きわめて大きい。
通算される働き方と、されない働き方
判断の目安を整理します。
| 副業の形態 | 労働時間の通算 | 割増賃金の問題 |
|---|---|---|
| アルバイト・パート(雇用契約) | される | 発生する |
| 派遣(雇用契約) | される | 発生する |
| 業務委託・請負(成果物納品) | されない | 発生しない |
| 準委任(作業時間で精算する形も含む) | されない | 発生しない |
| 個人事業としての受注全般 | されない | 発生しない |
ここで注意してほしいのは、契約書のタイトルではなく実態で判断される、という点です。「業務委託契約書」という名前でも、実態として発注者の指揮命令のもとで、時間や場所を拘束され、業務の進め方を細かく指示されているなら、労働者性が認められて雇用契約と評価される可能性があります。いわゆる偽装請負です。
偽装請負にならないための線引き
労働者性の判断では、おおむね次のような点が見られます。
仕事の依頼を断る自由があるか。断れないなら労働者性が強まります。業務の遂行方法について具体的な指揮命令を受けるか。手順を細かく指定されるなら労働者性が強まります。勤務時間や場所が拘束されるか。「毎日9時から18時まで、この席で作業すること」と決められていれば労働者性が強まります。代わりの人を立てられるか。本人でなければならないなら労働者性が強まります。報酬が時間ではなく成果に対して支払われているか。
副業として業務委託を選ぶなら、成果物や納品物の単位で契約する形が最も安全です。逆に、「時給いくらで、指定の時間にオンラインで待機して、指示された作業をする」という形は、名前が業務委託でも実態は雇用に近づきます。契約前に、稼働時間の指定がどこまで厳格か、作業の進め方に裁量があるかを確認してください。
※ 実態が雇用に近いのに業務委託とされているケースで、割増賃金や社会保険の扱いに疑義がある場合は、労働基準監督署または弁護士への相談をおすすめします。
私自身、法務の相談を受けるようになった初期に、この線引きを甘く見て失敗したことがあります。相談者に「業務委託なら通算されないので大丈夫です」とだけ伝えたところ、実際の契約は稼働場所も時間も細かく指定されており、後になって本業側から「これは実質的な二重就労で、就業規則の許可対象だ」と指摘されてしまった。契約の名前だけを見て安心してはいけない、実態を必ず一緒に確認する、というのはそのときに骨身にしみた教訓です。
管理モデルという選択肢もある
雇用契約で副業をどうしても続けたい場合、厚生労働省のガイドラインが示す「管理モデル」という簡便な方法もあります。これは、本業側の労働時間と副業側の労働時間の上限をあらかじめ枠として設定しておき、副業側は自社での労働時間について割増賃金を支払うことで、日々の相互確認を省略する仕組みです。
つまり、「本業は月45時間まで、副業は月30時間まで」といった枠を先に決めてしまい、その範囲内なら毎日の申告をしなくてよい、という運用です。両社が導入に同意する必要があるため、副業に理解のある企業同士でなければ成立しませんが、雇用型の副業を制度として認めている会社では実際に使われています。
ただし現実には、副業先がこの仕組みを理解して運用できる体制を持っていることは多くありません。個人が交渉して導入させるのは難易度が高い。だからこそ、実務上の現実解は業務委託への切り替えになります。
就業規則をどう読むか。確認すべき5つのポイント
法律の枠が整理できたら、次は自分の会社のルールです。ここを飛ばして副業を始めてしまい、後から懲戒の話になるケースは実際にあります。
副業そのものは、法律で禁止されているわけではありません。勤務時間外は本来労働者の自由な時間であり、判例上も、会社の業務に支障が出ない限り副業を一律に禁止することには合理性がないとされています。ただし、就業規則に定めがある以上、手続きは踏む必要があります。
確認するポイントは次のとおりです。
1つ目、副業が「禁止」なのか「許可制」なのか「届出制」なのか。近年は許可制または届出制が増えています。禁止と書かれていても、実態として黙認されている職場もありますが、書面上禁止されている以上、無許可で始めるリスクは自分が負うことになります。
2つ目、許可制なら申請書の提出先と必要な記載事項。多くの場合、副業先の名称、業務内容、想定される稼働時間、雇用契約か業務委託かを書かせます。ここで「業務委託である」ことを明記しておくと、労働時間管理の話が発生しないため会社側も承認しやすくなります。
3つ目、競業避止に関する条項。本業と同業種、同じ顧客層に対するサービス提供は、許可制でも認められないことが多い。ここは会社の正当な利益に関わるため、争っても勝ち目が薄い領域です。
4つ目、秘密保持に関する条項。本業で得た情報を副業に使わないことは絶対条件です。顧客リスト、営業ノウハウ、技術情報などは、退職後まで拘束されることもあります。
5つ目、健康管理・安全配慮に関する記載。総労働時間が一定を超える場合に会社が面談や制限を求めることがあります。副業許可の条件として「月20時間以内」といった上限を付けられるケースもあります。
申請にあたっては、稼働時間を控えめに、そして具体的に書くのがコツです。「週末に月10時間程度、Web記事の執筆を業務委託で受ける」という書き方であれば、会社としても本業への支障を判断しやすい。逆に「時間未定、内容未定」では承認しにくくなります。
社会保険・雇用保険・労災はどう扱われるか
金額に直結する話なので、ここも整理しておきます。
社会保険(健康保険・厚生年金)は、事業所ごとに加入要件を判定します。正社員として本業で加入していて、副業先でも加入要件を満たした場合は、二以上事業所勤務の届出を行い、両方の報酬を合算して標準報酬月額を決定し、保険料を各事業所で按分します。この届出は本人が日本年金機構に対して行うもので、期限は要件を満たした日から10日以内です(日本年金機構)。
副業先で加入要件を満たすのは、週の所定労働時間が正社員の4分の3以上の場合、または短時間労働者の適用要件(週20時間以上、月額賃金88,000円以上、2か月超の雇用見込み、学生でない、企業規模要件を満たす)をすべて満たす場合です。副業を週10時間程度に抑えるなら、この届出は発生しません。
業務委託の場合、報酬は給与ではないため社会保険の加入対象になりません。本業の社会保険だけで完結します。手続きが増えないという点でも、業務委託はシンプルです。
雇用保険は、原則として主たる賃金を受ける事業所1か所でのみ加入します。副業先で二重に加入することはありません。ただし65歳以上の人には、2つの事業所の労働時間を合算して加入できるマルチジョブホルダー制度があります。
労災保険は、雇用契約で働く場合はどちらの職場でも適用されます。2020年9月からは複数事業労働者について、給付基礎日額を両方の賃金を合算して算定する仕組みになりました。副業中のけがでも、本業の収入分を含めて補償が計算されるということです。一方、業務委託には労災保険が適用されません(特別加入制度に該当する業種を除く)。ここは業務委託のデメリットなので、民間の所得補償保険などで補う判断が必要になります。
税金と住民税。副業の形で申告方法が変わります
副業が給与(雇用契約)の場合、年末調整は主たる勤務先1か所でしか行えません。副業先の給与は年末調整されないため、給与収入が2か所以上あり、従たる給与の収入と他の所得の合計が20万円を超える場合は、確定申告が必要になります。
副業が業務委託の場合は、収入から必要経費を引いた所得が20万円を超えると確定申告が必要です。ここで重要なのは「収入」ではなく「所得」で判定される点です。年間30万円の報酬を得ても、通信費や機材費などの必要経費が12万円あれば所得は18万円となり、所得税の確定申告は不要になる計算です。ただし住民税は20万円以下でも申告が必要なので、自治体への申告は忘れないでください(国税庁)。
住民税については、確定申告書の「住民税に関する事項」で、給与以外の所得にかかる住民税の徴収方法として自分で納付(普通徴収)を選べます。これにより、副業分の住民税が本業の給与から天引きされる形を避けられます。ただし、副業が給与所得の場合は原則として特別徴収となり、普通徴収を選べないことが多い。自治体の運用によっても差があります。この点でも、業務委託のほうが本業に情報が伝わりにくい構造になっています。
経費として計上できる範囲は、業務との関連性で判断します。仕事専用のPCや周辺機器、業務用の通信費のうち事業使用分、書籍代、取材や打ち合わせの交通費などが典型例です。自宅の家賃や光熱費は、作業スペースの面積比や使用時間比で按分した分を家事按分として計上します。領収書は7年間の保存が必要なので、月ごとにまとめておく習慣をつけてください。
ケース別の判断。あなたはどのパターンか
ここまでの整理を、実際の状況に落とし込みます。
本業の所定労働時間が週40時間ちょうどで、収入を増やしたい場合。雇用契約の副業はほぼ全時間が割増対象になり、採用のハードルが高くなります。業務委託を前提に探すのが現実的です。
本業の所定労働時間が週37時間30分など40時間未満の場合。差分の2時間30分までは通常時給で働けます。週2時間程度の短時間アルバイトなら、副業先の負担なしで成立する可能性があります。ただし本業に残業が発生した週は超過するため、変動を許容できる副業先である必要があります。
本業に月30時間以上の残業がある場合。時間外の上限規制に近づいているため、雇用型の副業は選択肢としてかなり厳しくなります。健康面のリスクも高いので、業務委託であっても稼働時間は月10時間から20時間程度に抑える設計を推奨します。
就業規則が副業禁止の場合。まずは許可申請の可否を人事に確認してください。禁止の理由が「労働時間管理が煩雑だから」であれば、業務委託であれば通算の問題が生じないことを説明することで、認められる余地があります。
副業先が「本業の勤務証明を出してほしい」と求めてきた場合。これは適法な要求です。副業先は労働時間を通算して管理する義務があるため、他社での所定労働時間を把握する必要があります。拒否すると採用に至らないケースが多い。
市場データから見る、時間を切り売りしない副業の考え方
ここからは、フリーランス・在宅ワーク市場を20年運営してきた運営者の視点で、データを踏まえた観察を書きます。
労働時間の通算という制約が示しているのは、要するに「雇用契約で時間を売る限り、あなたの週40時間という枠は一つしかない」という単純な事実です。副業で収入を増やしたい人がこの枠にぶつかるのは必然で、そこを力技で突破しようとすると、割増賃金の負担、上限規制、健康リスクという三重の壁が立ち塞がります。
運営者として長く見てきた限りでは、ダブルワークで安定的に続けている人の多くは、どこかの時点で「時間単価の労働」から「成果に対する報酬」へと軸足を移しています。理由は単純で、時間を売る働き方は上限が物理的に決まっているのに対し、成果で受ける働き方はスキルの蓄積が単価に反映されるからです。同じ10時間でも、1年目と3年目では受け取る金額が変わります。
職種別の相場感を知っておくと、この判断がしやすくなります。たとえばソフトウェア開発は、業務委託での単価が明確に形成されている分野です。実務経験の年数とスキルセットによる単価レンジはソフトウェア作成者の年収・単価相場で職種横断のデータとして整理されています。文章を書く仕事も同様で、記事単価や文字単価の分布は著述家,記者,編集者の年収・単価相場にまとまっています。副業を始める前に、自分のスキルが市場でどの帯にいるのかを把握しておくと、安売りを避けられます。
具体的にどんな案件があるのかを知るには、職種ごとの仕事内容と求められるスキルを整理した資料が役に立ちます。AI活用のコンサルティングや業務改善支援は、事業会社での経験がそのまま強みになる領域で、AIコンサル・業務活用支援のお仕事に業務範囲と必要な知識がまとまっています。マーケティングやセキュリティの周辺領域を含めて広く見たい場合はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、開発案件の全体像を知りたい場合はアプリケーション開発のお仕事を参照すると、自分の経験がどこに接続するか見えてきます。
未経験から入る場合、資格が入口として機能することもあります。事務系の業務委託であれば文書作成の正確さが評価されるため、ビジネス文書検定のような基礎資格が実務の土台になります。ネットワーク周りの仕事を目指すならCCNA(シスコ技術者認定)が定番で、資格そのものより学習過程で得た知識が案件の会話を成立させてくれます。
もうひとつ、運営者として見てきた重要な観察があります。長く続く人ほど、単発の作業をこなすことより、「この人に任せると楽だ」と発注者に思わせる関係づくりに時間を使っています。納期の連絡が早い、修正の意図を確認してから手を動かす、成果物と一緒に次の提案を添える。こうした積み重ねが継続発注につながり、営業に使う時間がゼロになっていく。週末の限られた時間しか使えない会社員にとって、この「探さなくてよくなる状態」は決定的な差になります。
そして、中間マージンが乗らない直接取引の構造も無視できません。仲介手数料が引かれる仕組みでは、発注者が払った金額の一部が受け手に届く前に消えます。手数料0%で直接つながる形なら、同じ予算で依頼者はより多くを頼め、受け手は同じ仕事量で手取りが厚くなる。この双方が得をする構造は、金額の大小以上に、継続の可否を左右します。副業に使える時間が週5時間しかない人ほど、1時間あたりの手取りが厚いかどうかが続けられるかを決めます。
時間の設計についても、先人の工夫が参考になります。限られた時間で成果を出している人の一日の組み立ては在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開で具体的に紹介されており、本業を持つ人にも応用できます。細切れの時間で集中を作る方法は在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックに整理されています。実際の案件の探し方や、避けるべき求人の見分け方については在宅ワークの求人の探し方5選|初心者でも安心な方法と注意点を徹底解説が入口として使いやすい内容です。
最後に、法律の話に戻ります。労働時間の通算も、割増賃金も、上限規制も、もとをたどれば働く人の健康と生活を守るために作られたルールです。副業を阻む障害物のように見えますが、実際には「その働き方は無理をしていませんか」という設計上の警告でもあります。週40時間を超えて働くこと自体が目的化してしまうと、体を壊して本業まで失いかねない。契約の形を選び直すという発想は、収入を増やす手段であると同時に、自分の時間と健康を守る手段でもあります。法律はあなたの味方です。仕組みを知って、無理のない形を選んでください。
よくある質問
Q. 正社員として週40時間働いていますが、アルバイトの副業は違法になりますか?
働くこと自体は違法ではありません。ただし労働基準法第38条により労働時間は会社をまたいで通算されるため、副業先での労働はすべて法定時間外となり、25%以上の割増賃金が必要になります。負担するのは原則として後から契約した副業先です。そのため採用を断られるケースが多く、業務委託を選ぶほうが現実的です。
Q. 業務委託の副業なら、週40時間を超えても問題ありませんか?
業務委託は労働基準法上の労働者ではないため、作業時間は本業の労働時間と通算されません。割増賃金や上限規制の問題も生じません。ただし契約書の名前ではなく実態で判断されるため、時間や場所を厳しく拘束され指揮命令を受ける形だと雇用と評価される可能性があります。成果物単位の契約が安全です。
Q. 副業分の住民税を本業の会社に知られない方法はありますか?
確定申告書の住民税に関する事項で、給与以外の所得にかかる住民税の徴収方法として自分で納付(普通徴収)を選べば、副業分が本業の給与から天引きされません。ただしこれが使えるのは業務委託などの給与以外の所得です。副業がアルバイトの給与所得だと原則特別徴収となり、選択できないことが多い点に注意してください。
Q. 副業を始める前に就業規則で何を確認すべきですか?
確認すべきは5点です。副業が禁止か許可制か届出制か、申請時の必要記載事項、競業避止の範囲、秘密保持の条項、そして稼働時間の上限などの健康管理に関する条件です。許可制なら申請時に業務委託であることと想定稼働時間を具体的に書くと、労働時間管理の問題が生じないため承認されやすくなります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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