副業に開業届は必要?出すメリット・デメリットと判断基準を解説【2026年版】

久世 誠一郎
久世 誠一郎
副業に開業届は必要?出すメリット・デメリットと判断基準を解説【2026年版】

この記事のポイント

  • 副業で開業届を出すべきか迷っている人向けに
  • 提出のメリット・デメリット
  • 提出方法を税務の観点から実体験ベースで解説します

副業を始めたけど、開業届って出さないとダメなの? 出すとどうなるの? 会社にバレない?

こんな疑問を持っている会社員の方、かなり多いと思います。僕自身、副業でライティングを始めた当初、開業届を出すかどうかで3ヶ月悩みました。税務署に電話で聞いたり、税理士の知人に相談したり、ネットの情報を読み漁ったり。

結論から言うと、副業の収入が年間20万円を超える見込みがあるなら、開業届は出したほうがいいです。理由を順番に説明していきます。

開業届とは何か

開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」。個人が事業を始めたことを税務署に届け出るための書類です。

所得税法第229条で「事業を開始した日から1ヶ月以内に提出する」と定められていますが、実は提出しなくても罰則はありません。つまり法律上は義務ですが、出さなくても怒られることはないのが現状です。

じゃあ出さなくていいのかと言うと、そうではない。出すことで得られるメリットが大きいからです。

開業届を出す5つのメリット

メリット1: 青色申告ができるようになる

これが最大のメリットです。開業届を出すと、同時に「青色申告承認申請書」を提出できます。青色申告が使えると、最大65万円の所得控除が受けられます。

具体的にいくら節税になるか?

副業の年間所得が300万円の場合。

申告方法 課税所得 所得税 + 住民税(概算)
白色申告 300万円 50万円
青色申告(65万円控除) 235万円 37万円
差額 13万円

年間13万円の差は大きいですよね。副業の所得が増えれば増えるほど、この差は広がります。

メリット2: 赤字を3年間繰り越せる

青色申告なら、事業で赤字が出た場合に翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。

例えば、副業を始めた1年目に50万円の赤字(設備投資など)が出て、2年目に100万円の黒字が出た場合。繰越控除を使えば、2年目の課税所得は50万円で済みます。

メリット3: 屋号で銀行口座を開設できる

開業届に屋号(事業名)を記載すると、その屋号名義で銀行口座を開設できます。「山田太郎」ではなく「◯◯デザイン事務所 山田太郎」名義の口座が作れるので、取引先からの信頼性が上がります。

メリット4: 事業経費を適切に計上できる

開業届を出して「事業」として活動していれば、仕事に必要な支出を経費として計上できます。

経費にできるものの例

  • パソコン、周辺機器
  • ソフトウェア、クラウドサービスの利用料
  • 書籍、研修費
  • 通信費(事業使用分)
  • 自宅の家賃・光熱費(事業使用分を按分)

自宅の一部を仕事に使っている場合、面積や時間の割合に応じて家賃や光熱費の一部を経費にできます。これが地味に大きい。家賃10万円のうち30%を按分すれば、年間36万円が経費になります。

メリット5: 小規模企業共済に加入できる

開業届を出した個人事業主は、小規模企業共済に加入できます。掛金が全額所得控除になるため、節税しながら退職金の積立ができます。掛金は月1,000〜70,000円の範囲で自由に設定可能。

開業届を出すデメリット

メリットだけ書くとフェアじゃないので、デメリットも正直に書きます。

デメリット1: 失業保険を受けられなくなる可能性

会社を辞めた際、開業届を出していると「自営業者」と見なされ、失業保険(雇用保険の基本手当)を受給できなくなる可能性があります。

ただし、副業の規模が小さく、再就職の意思がある場合は受給できるケースもあります。心配な場合はハローワークに事前に確認してください。

デメリット2: 扶養から外れる可能性

配偶者の扶養に入っている場合、開業届を出すと扶養条件に影響する場合があります。特に社会保険の扶養(年間収入130万円未満)については、所得の計算方法が健康保険組合によって異なるので、事前に確認が必要です。

デメリット3: 帳簿付けの手間が増える

青色申告をするには、複式簿記での帳簿付けが必要です。ただし、会計ソフト(freeeマネーフォワード等)を使えば、ほぼ自動化できるので実際の手間はそこまで大きくありません。月額1,000〜2,000円程度のコストで済みます。

開業届を出すべきかの判断チャート

以下のフローで判断してみてください。

Q1: 副業の年間所得が20万円を超える見込みはある?

  • はい → Q2へ
  • いいえ → 今は不要(ただし超えそうになったら検討)

Q2: 青色申告の65万円控除を使いたい?

  • はい → 開業届を出す
  • 節税にこだわらない → Q3へ

Q3: 屋号が欲しい、経費をしっかり計上したい?

  • はい → 開業届を出す
  • いいえ → 白色申告でも問題ないが、将来的には出したほうがいい

大まかに言えば、2万円以上コンスタントに副業で稼いでいるなら、開業届を出すことを検討すべきです。

開業届の書き方と提出方法

開業届の入手方法

  1. 国税庁のWebサイトからPDFをダウンロードして印刷
  2. 税務署の窓口で用紙をもらう
  3. e-Taxでオンライン提出

記入する項目

項目 記入内容
納税地 自宅の住所
氏名・生年月日 本人情報
職業 「Webデザイナー」「ライター」等
屋号 任意。後から変更も可能
届出の区分 「開業」にチェック
開業日 事業を始めた日(過去の日付でもOK)
事業の概要 「Webサイトの企画・制作」等、具体的に
青色申告承認申請書の提出 「有」にチェック

提出先と期限

管轄の税務署に提出します。管轄は国税庁のサイトで住所から検索できます。

期限

  • 開業届: 開業日から1ヶ月以内
  • 青色申告承認申請書: 開業日から2ヶ月以内(1月15日以前に開業した場合はその年の3月15日まで)

期限を過ぎても提出はできますが、青色申告の適用が翌年からになってしまうので、早めに出しましょう。

会社にバレる? 副業の開業届と住民税の話

「開業届を出したら会社にバレるのでは?」という心配をする人が多いですが、開業届の提出自体が会社に通知されることはありません。

バレるパターンとして最も多いのは住民税です。副業の所得が増えると住民税が増額され、会社の経理担当が気づく可能性があります。

対策: 確定申告書の「住民税の徴収方法」欄で「自分で納付(普通徴収)」を選択する。これで副業分の住民税は自宅に届く納付書で自分で払うことになり、会社の給与からは天引きされません。

ただし、自治体によっては普通徴収に対応していない場合もあるので、お住まいの自治体に確認してください。

副業で使えるクラウドソーシングと手数料比較

開業届を出して本格的に副業を始めるなら、手数料は経費と同じくらい重要なコスト要因です。

年間100万円の副業収入がある場合の手数料比較。

プラットフォーム 手数料率 年間手数料 手取り
手数料20%のサイト 20% 200,000円 800,000円
手数料16.5%のサイト 16.5% 165,000円 835,000円
@SOHO 0% 0円 1,000,000円

@SOHO手数料0%なので、稼いだ分がそのまま手元に残ります。副業で少しでも手取りを増やしたい人にとって、プラットフォーム選びは開業届と同じくらい重要な判断です。

@SOHOのお仕事ガイドでは、職種別の業務内容や必要なスキルを詳しく解説しています。自分がどの職種で開業届を出すべきか迷っている人は、まず各職種の仕事内容を把握してから決めるのがおすすめです。

→ 職種別の仕事内容・スキル・将来性を見る

まとめ

副業に開業届が必要かどうか、結論をまとめます。

  • 法律上は義務だが、罰則はない
  • 年間所得20万円超の見込みがあるなら、出したほうが得
  • 青色申告で最大65万円の控除が使える
  • 赤字の繰越、経費計上、屋号口座などのメリットもある
  • 会社にバレるリスクは住民税の「普通徴収」で対策可能

迷っているなら出しておいたほうがいいです。出すこと自体にデメリットはほぼなく、青色申告の控除だけで年間数万〜十数万円の節税効果があります。「あのとき出しておけばよかった」と後悔するくらいなら、今すぐ行動したほうがいい。

開業届を出すベストタイミングはいつか

副業を始めた瞬間に開業届を出すべきか、ある程度稼げるようになってから出すべきか。これは多くの会社員副業ワーカーが悩むポイントです。

結論を先に言うと、「副業所得が月平均1〜2万円を安定して超えてきた時点」がベストタイミングです。理由は3つあります。

第一に、青色申告の特典は「開業届+青色申告承認申請書」の両方を期限内に出さないと受けられません。1月15日以前に開業した場合はその年の3月15日まで、それ以降に開業した場合は開業から2ヶ月以内が期限です。気づいたときに「もう1年待たないと青色申告できない」となるのが一番もったいないパターン。

第二に、開業日は「実際に事業を始めた日」を遡って記載できます。極端な話、3ヶ月前から副業を始めていても、開業日を3ヶ月前にして今日提出することが可能です。ただし青色申告承認申請書の「開業から2ヶ月以内」のルールには引っかかるので、遡るにしても2ヶ月以内に留めるのが現実的です。

第三に、開業届を出すこと自体には金銭的コストがゼロです。提出料も維持費もかかりません。「稼げるか分からないから様子見」という心理的ハードルは合理的ではないのです。

個人で事業を始めたときは、開業の日から1月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」を納税地の所轄税務署長に提出することになっています。 出典: www.nta.go.jp

国税庁の規定でも「事業を始めたとき」と書かれていますが、副業の場合「事業」と「単なる小遣い稼ぎ」の境界が曖昧です。一般的には継続性・反復性があり、対価を得ている活動なら「事業」と判断して問題ありません。

職種別に見る開業届の書き方の実例

開業届の「職業」欄と「事業の概要」欄は、書き方に迷う人が多いポイントです。@SOHOで募集されている職種別に、具体的な記載例を紹介します。

Webライター・編集者

  • 職業: 「文筆業」または「ライター業」
  • 事業の概要: 「Webメディア向け記事の企画・執筆、編集業務」

「ライター」だけだと税務署側で職業分類が曖昧になることがあるので、「文筆業」と書くと事業税の扱いが明確になります。文筆業は法定業種に含まれないため、原則として個人事業税(税率5%)が非課税になる職種です。年間所得が290万円を超える場合、この差は大きい。

Webデザイナー・コーダー

  • 職業: 「Webデザイン業」または「デザイン業」
  • 事業の概要: 「企業・個人向けWebサイトの企画・デザイン・コーディング」

デザイン業は法定業種に該当し個人事業税の対象(税率5%)です。所得290万円を超える分に課税されます。

プログラマー・エンジニア

  • 職業: 「ソフトウェア業」または「情報処理業」
  • 事業の概要: 「Webアプリケーション・業務システムの設計・開発」

請負での開発が中心なら「ソフトウェア業」、データ処理や運用代行が中心なら「情報処理業」が適切。両方とも個人事業税の対象です。

動画編集・映像制作

  • 職業: 「映像制作業」
  • 事業の概要: 「YouTube・企業PR動画等の編集・制作」

翻訳・通訳

  • 職業: 「翻訳業」
  • 事業の概要: 「英日翻訳、ビジネス文書・技術文書の翻訳業務」

翻訳業も文筆業と同様、法定業種に含まれず個人事業税が非課税になります。

職業欄は後から変更も可能ですが、最初から具体的に書いておくと取引先からの印象も良くなります。屋号も設定しておくと、請求書や名刺で使えて便利です。

開業届と同時に検討すべき公的制度の活用

開業届を出すと、個人事業主向けの公的制度が一気に使えるようになります。副業フェーズでも活用できるものをまとめます。

小規模企業共済

中小企業基盤整備機構が運営する、個人事業主のための退職金積立制度。掛金が月1,000〜70,000円の範囲で設定でき、全額が所得控除になります。

副業所得が年300万円の場合、月3万円(年36万円)を積み立てれば、所得税・住民税合わせて年7〜10万円の節税効果。20年積み立てれば720万円が、節税しながら退職金として戻ってきます。

小規模企業共済制度は、小規模企業の個人事業主または会社等の役員の方が事業をやめられたり退職された場合に、その後の生活の安定や事業の再建を図るための資金をあらかじめ準備しておく共済制度です。 出典: www.chusho.meti.go.jp

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)

取引先の倒産に備える共済制度で、掛金が全額経費になります。月5,000〜200,000円の範囲で設定可能。40ヶ月以上積み立てれば全額返戻されるため、実質的な「経費にできる貯金」として活用されています。

ただし2024年の税制改正で、解約後2年以内に再加入した場合は損金算入できなくなったので、解約タイミングには注意が必要です。

国民年金基金・iDeCo

会社員のうちは厚生年金に加入しているため国民年金基金は利用できませんが、iDeCo(個人型確定拠出年金)は会社員のまま加入できます。掛金は全額所得控除で、運用益も非課税。

会社員が副業をしているケースでは、iDeCoの月額上限は2万円(企業年金がない場合は2.3万円)。年間24万円の所得控除は、税率20%の人なら年4.8万円の節税効果になります。

事業用クレジットカードと事業用口座

開業届を出すと、屋号入りの事業用口座や事業用クレジットカードを作れます。プライベートと事業の出費を分けることで、確定申告時の帳簿付けが圧倒的に楽になります。会計ソフトと連携すれば、ほぼ自動で経費入力が完了するレベル。

副業初期から「事業用」を分離する習慣をつけておくと、後々の税務調査リスクも下げられます。

よくある質問

Q. 副業で開業届を出さないと罰則はありますか?

いいえ、所得税法上の提出期限(1ヶ月以内)はありますが、提出しなかったことによる直接的な罰則や罰金はありません。ただし、青色申告による最大65万円の控除を受けられなくなるため、経済的な不利益が生じる可能性があります。

Q. 会社員が開業届を出すと、副業が会社にバレますか?

開業届の提出そのもので会社に通知が行くことはありません。副業がバレる主な原因は、住民税の金額の変化です。確定申告時に住民税の徴収方法を「普通徴収(自分で納付)」に選択することで、会社への通知を避ける対策が可能になります。

Q. 副業の収入が少ないうちは開業届を出さない方がいいですか?

開業届を出さなくても罰則はありませんが、将来的に売上が大きくなる見込みがあるなら早めに出した方が有利です。青色申告の承認は申請した年の収入から適用されるため、出すのが遅れた年分は白色申告となります。早めに出しておくと、思わぬタイミングで売上が伸びたときの節税効果が最大化されます。

Q. 開業届を出すことによる最大のデメリットは何ですか?

失業保険の受給資格がなくなる(または制限される)点が大きな注意点です。すでに開業していると「就職する意思はあるが職に就けない状態」とみなされないため、退職後に失業手当を受け取りながら準備をしたい場合は、提出のタイミングを慎重に検討する必要があります。

Q. 会社員の副業として活動している場合でも、開業届を出して青色申告ができますか?

可能です。ただし、副業の所得が「事業所得」として認められる程度の継続性や規模感 を持っている必要があります。単発の小遣い稼ぎ(雑所得)とみなされる場合は、青色 申告の特別控除は受けられないため、自身のビジネスの性質を事前に確認しましょう。

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久世 誠一郎

この記事を書いた人

久世 誠一郎

元人材コンサル・中小企業支援歴25年

大手人材会社でコンサルティング部門を率いた後、中小企業の業務改善・外注戦略の支援に転身。発注者目線でのクラウドソーシング活用術を発信しています。

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