不景気に備えるフリーランスの対策|案件が減っても生き残る方法


この記事のポイント
- ✓フリーランスが不景気・景気後退に備える方法を解説
- ✓実際にリーマンショック・コロナ禍を経験した視点からアドバイスします
まず、安心してください。不景気は必ず来ますが、準備さえしていればフリーランスでも乗り越えられます。
私は2008年のリーマンショックを会社員として、2020年のコロナ禍をフリーランスとして経験しました。リーマンショック時はメーカー勤務で、部門統合とリストラの噂が飛び交う中を過ごしました。コロナ禍では、独立2年目のフリーランスとして案件が3分の1に減る経験をしています。
コロナ禍の2020年4月、月収が40万円から15万円に落ちたとき、一番後悔したのは「クライアントを分散させていなかったこと」でした。メインクライアント1社に売上の60%を依存していて、その1社が外注費をカットした瞬間に一気に収入が減った。生活防衛資金を18ヶ月分貯めていたおかげで焦って安い案件に飛びつかずに済みましたが、もし3ヶ月分しかなかったら精神的に持たなかったと思います。
今回は、43歳で独立した私の実体験を交えながら、不景気への具体的な備え方をお伝えします。 まさにこの通りで、景気が不安定な時に真っ先に切られるのが外注費です。だからこそ「切られても大丈夫な準備」をしておくことが大切なんです。
不景気がフリーランスに与える影響
景気が後退すると、企業はまず外注費を削減します。正社員の雇用を守るために、フリーランスへの発注を止めるのは企業にとって当然の判断です。
不景気時に起こること:
| 段階 | 影響 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 初期 | 新規案件が減る。既存案件は継続 | 1〜3ヶ月 |
| 中期 | 既存案件のリプレイス・縮小が始まる | 3〜6ヶ月 |
| 後期 | 単価交渉が厳しくなる。案件の奪い合い | 6ヶ月〜1年 |
| 回復期 | 徐々に案件が戻る。ただし単価は戻りにくい | 1〜2年 |
対策1: 生活防衛資金を確保する
フリーランスにとって最も重要な不景気対策は、十分な生活防衛資金を持っておくことです。
生活防衛資金の目安:
| 状況 | 必要月数 | 金額の目安(月30万円の場合) |
|---|---|---|
| 会社員 | 3〜6ヶ月分 | 90〜180万円 |
| フリーランス(最低限) | 6ヶ月分 | 180万円 |
| フリーランス(推奨) | 12ヶ月分 | 360万円 |
| 家族あり | 18ヶ月分 | 540万円 |
私の場合、住宅ローンと子ども2人の教育費があるため、常に18ヶ月分の生活費を確保するようにしています。
NG例: 「景気がいいから大丈夫」と生活防衛資金を投資に回してしまう。不景気で案件が減ったときに投資も含み損を抱え、二重苦になる。
OK例: 生活防衛資金は銀行の普通預金に置いておく。利回りはゼロに近いが、「必要なときにすぐ使える」ことが目的なので問題ない。投資は生活防衛資金とは別枠で行う。
対策2: 不況に強いスキルを持つ
すべての業界が等しく不景気の影響を受けるわけではありません。
不況に強い分野:
| 分野 | 理由 |
|---|---|
| IT保守・運用 | システムは不景気でも止められない |
| 経理・会計 | 不景気でも確定申告は必要 |
| 医療・介護関連 | 需要が景気に左右されにくい |
| コスト削減コンサル | 不景気ほど需要が増える |
| 公共事業・行政関連 | 景気対策で予算が増えることもある |
不況に弱い分野:
| 分野 | 理由 |
|---|---|
| 広告・マーケティング | 真っ先にカットされる |
| 新規事業開発 | 投資が凍結される |
| 贅沢品関連 | 消費が冷え込む |
@SOHOのお仕事ガイドでは、14大分野・99小分野の各職種について需要の安定性や将来性を解説しています。自分のスキルが不況に強いかどうか、一度確認してみることをお勧めします。
→ フリーランスの職種別ガイドを見る
自分の専門分野が不況に弱い場合は、隣接する「不況に強い分野」のスキルを身につけておくと安心です。
対策3: クライアントを分散させる
売上の50%以上を1社に依存している状態は非常に危険です。その1社が発注を止めた瞬間、売上が半分になります。
理想的なクライアント構成:
| クライアント数 | 1社あたりの売上比率 |
|---|---|
| 5社以上 | 各20%以下 |
| 最低でも3社 | 各33%以下 |
クライアントが少ない状態で不景気に突入すると、残った案件の単価交渉で不利になります。好景気のうちにクライアント数を増やしておきましょう。
フリーランスにとっての"セーフティネット戦略"。契約が終了すれば収入は途絶え、景気変動やクライアントの方針変更で案件が消えることも珍しくありません。 — 出典: フリーランスにとっての"セーフティネット戦略"(note)
対策4: 固定費を見直す
不景気への備えは「稼ぐ」だけでなく「使わない」ことも重要です。
見直すべき固定費:
| 項目 | チェックポイント |
|---|---|
| オフィス | 自宅作業に切り替えられないか |
| サブスクリプション | 使っていないツールの解約 |
| 保険 | 過剰な保険に入っていないか |
| 通信費 | 格安プランに変更できないか |
| 外注費 | 自分でできる作業はないか |
私はコロナ禍の初期に、月額3万円のコワーキングスペースを解約して自宅作業に切り替えました。年間36万円の固定費削減です。
対策5: 不景気を「チャンス」に変える
不景気は悪いことばかりではありません。
不景気だからこそできること:
- スキルアップの時間が取れる: 案件が減った分、新しいスキルの習得に時間を使える
- 競合が減る: 耐えきれずに廃業するフリーランスが出てくるため、景気回復後のパイが大きくなる
- 採用される側になれる: 不景気でも人手不足の企業はあり、フリーランス経験が評価されることもある
実際、コロナ禍で案件が減った時期に私はSEOライティングのスキルを身につけました。これが今の収入の柱の一つになっています。「暇な時間を投資に使えたか」が、景気回復後の収入格差に直結しています。
対策6: セーフティネットを知っておく
フリーランスが使えるセーフティネットは年々充実しています。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 小規模企業共済 | フリーランスの退職金制度。掛金は全額所得控除 |
| 国民年金基金 | 国民年金に上乗せできる |
| 経営セーフティ共済 | 取引先の倒産に備える共済。掛金は全額経費 |
| 就業不能保険 | 病気・ケガで働けなくなったときの保障 |
特に経営セーフティ共済は、取引先が倒産した場合に掛金の最大10倍まで無担保・無利子で融資を受けられます。月額5,000〜20万円の掛金で、いざというときの備えになります。
まとめ: 好景気のうちに備える
不景気は予測できません。「来てから考えよう」では遅い。好景気で案件が豊富なうちに、以下を準備しておきましょう。
- 生活防衛資金12ヶ月分以上
- クライアント5社以上に分散
- 不況に強いスキルの習得
- 固定費の最小化
- セーフティネットへの加入
私が皆さんに一番伝えたいのは、「準備さえすれば、40代でも50代でも、不景気は乗り越えられる」ということです。準備が9割。これは不景気対策に限らず、フリーランスの生き方そのものです。
不景気の予兆をいち早く察知する3つの指標
フリーランスが不景気に対応するうえで最も重要なのは、「来てから慌てる」のではなく「来る前に動き出す」ことです。経済指標は専門家でなくても無料で確認できるものが多く、半年〜1年先の景気動向をある程度読み取ることができます。
私が独立以来チェックしているのは次の3指標です。
1. 景気動向指数(CI・DI)
内閣府が毎月公表している景気動向指数は、生産・雇用・消費など複数の経済指標を統合した数値です。先行指数が3ヶ月連続で下落した場合、半年後に景気後退局面に入る可能性が高いとされています。
景気動向指数は、生産、雇用など様々な経済活動での重要かつ景気に敏感に反応する指標の動きを統合することによって、景気の現状把握及び将来予測に資するために作成された指標である。 出典: esri.cao.go.jp
2. 日銀短観(DI)
日本銀行が四半期に一度発表する企業景況感調査です。特に「業況判断DI」が大企業・中小企業ともにマイナスに転じた場合、その業界からの外注は確実に減ります。私はコロナ前の2019年12月の日銀短観で大企業製造業DIが0まで下落したのを見て、製造業向けの案件比率を意図的に下げていました。
3. 求人倍率の推移
厚生労働省が公表する有効求人倍率も重要な先行指標です。1.0を割り込むと、企業の採用意欲が下がっている証拠で、フリーランスへの発注も減少傾向に入ります。逆に1.5以上で推移しているうちは新規開拓のチャンスです。
これらの指標は、いずれも公的機関の公式サイトで月次・四半期ごとに無料で確認できます。月初の30分をチェックに使うだけで、半年先の身の振り方が見えてきます。
案件が減ってからやってはいけない3つのNG行動
不景気で案件が減ったとき、焦って間違った行動を取ってしまうフリーランスを多く見てきました。私自身もコロナ禍で同じ過ちを犯しかけたことがあります。
NG行動1: 単価ダンピングで案件を取りに行く
「仕事がないよりはマシ」と相場の半額で受注すると、業界全体の単価相場を下げてしまうだけでなく、自分の精神も疲弊します。さらに厄介なのは、一度下げた単価は景気回復後もなかなか戻せないことです。
代わりに取るべき行動は、現クライアントへの追加提案です。新規開拓のコストは既存顧客の5〜25倍と言われており、不景気時こそ既存顧客深耕が最も効率的な売上維持策になります。
NG行動2: 金融商品で一発逆転を狙う
収入が減ると「投資で取り戻したい」という心理が働きますが、不景気時の投資判断は冷静さを欠きやすく、損失を拡大させがちです。生活防衛資金を取り崩して投資に回すのは絶対に避けるべきです。
NG行動3: 単発の高単価案件に飛びつく
不景気時に出てくる「相場の2〜3倍」の案件は、たいてい何か理由があります。納期が異常に短い、要件が曖昧、後払い・成果報酬型などのリスクが隠れていることが多いです。私の知人は2020年に「相場の3倍」案件を受けたものの、結局支払われずに半年分の労力を失いました。
正しい行動の優先順位
- 既存クライアントへの追加提案・継続交渉
- 過去の取引先(休眠顧客)への声かけ
- 紹介ネットワーク経由での新規開拓
- クラウドソーシングなど即金性のある案件
- 最後の手段として広告経由の新規開拓
順序を守ることで、単価を維持したまま売上を再構築できます。
不景気時に活用できる公的支援制度
「フリーランスは公的支援の対象外」と思い込んでいる方が多いですが、実は2020年のコロナ禍以降、フリーランス向けの支援制度は大幅に拡充されています。
持続化給付金・事業復活支援金型の制度
経済産業省・中小企業庁は、大規模な経済ショック時にフリーランス・個人事業主向けの給付金制度を発動することがあります。2020年の持続化給付金では個人事業主に最大100万円、2022年の事業復活支援金では最大50万円が支給されました。次の不景気でも同様の制度が発動される可能性は高く、申請要件を事前に把握しておくと初動が早くなります。
中小企業庁では、中小企業・小規模事業者の経営課題に応じた支援策を実施しています。事業環境の変化に対応するための各種補助金、給付金、融資制度などを整備しています。 出典: chusho.meti.go.jp
日本政策金融公庫のセーフティネット貸付
民間銀行がフリーランスへの融資に消極的な中、日本政策金融公庫は不景気時にこそ積極的に融資を行います。「セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)」は、売上が前年同期比で5%以上減少した事業者を対象に、最大4,800万円・運転資金は15年以内の返済期間で借入が可能です。
私は2020年5月に同制度を活用し、運転資金として300万円を無担保・低利で借りました。返済据置期間も2年取れたため、案件が回復するまでのキャッシュフローを安定化できました。
国民健康保険料・国民年金の減免制度
収入が大幅に減少した場合、自治体に申請することで国民健康保険料や国民年金保険料の減免・猶予が受けられます。コロナ特例では、前年比で30%以上の収入減少が見込まれる場合に申請可能でした。今後の不景気でも類似の措置が取られる可能性が高いため、自分の自治体の窓口を把握しておきましょう。
小規模企業共済の貸付制度
すでに小規模企業共済に加入している場合、掛金の範囲内で「一般貸付け」を低利で利用できます。最大2,000万円まで、年利1.5%(2026年時点)で借りられるため、銀行融資が下りない不景気時の資金繰り手段として有効です。
これらの制度は、いずれも申請から実行まで1〜3ヶ月かかります。不景気が来てから情報収集を始めるのではなく、好景気のうちに「使える制度のリスト」を手元に作っておくことが最大の防御策になります。
不景気を乗り越えたフリーランスの共通点
最後に、リーマンショックとコロナ禍の2回の不景気を乗り越えてきた周囲のフリーランス仲間に共通する3つの特徴を紹介します。
特徴1: 月次の財務管理を徹底している
毎月の売上・経費・利益を必ず月初に確認している人は、不景気の予兆を早く察知できます。会計ソフトに丸投げするのではなく、自分で売上の内訳(クライアント別・案件別)を3ヶ月移動平均で見ることが重要です。私は毎月1日にExcelで「クライアント別売上推移シート」を更新し、特定クライアントの売上が3ヶ月連続で下がっていないかをチェックしています。
特徴2: 「3つの収入源」を持っている
不景気を乗り越えたフリーランスの多くは、以下のような複数の収入源を持っています。
| 収入源 | 性質 | 比率の目安 |
|---|---|---|
| ストック型(保守・運用・顧問契約) | 安定・低単価 | 30〜40% |
| フロー型(案件ごとの受託) | 不安定・高単価 | 40〜50% |
| 自社プロダクト型(情報商材・コンテンツ販売・アプリ) | 不安定・低コスト | 10〜20% |
ストック型の比率が30%を超えていれば、フロー型案件が半減しても固定費は賄えるレベルになります。
特徴3: 業界の外に「弱いつながり」を持っている
社会学者マーク・グラノヴェッターの「弱い紐帯の強さ」理論にもあるように、不景気時に新しい仕事をもたらしてくれるのは、頻繁に会う親しい仲間ではなく、たまにしか会わない異業種の知人であることが多いです。私自身、コロナ禍で新しく入ってきた案件の70%は、年に1〜2回しか連絡を取らない知人経由でした。
業界内の勉強会だけでなく、異業種交流会・地域コミュニティ・趣味のサークルなど、複数の弱いネットワークを意図的に持つことが、不景気時の新規案件獲得につながります。
不景気は必ず来ます。しかし、来る前に準備した人だけが、不景気を「ピンチ」ではなく「次の成長機会」として活用できるのです。
よくある質問
Q. 生活防衛資金は具体的にいくらくらい用意すればいいですか?
一般的に、フリーランスの生活防衛資金は「最低でも生活費の半年〜1年分」が目安とされています。会社員と違い失業保険がないため、案件が途絶えても焦らず次の仕事を探せるだけの猶予期間が必要です。月々の生活費が20万円なら、120万〜240万円をすぐに引き出せる普通預金などで確保しておくことをおすすめします。
Q. 「不況に強いスキル」とは具体的にどのようなものですか?
企業の「コスト削減」や「売上直結」に貢献できるスキルが不況に強い傾向があります。例えば、業務効率化ツール(RPAやSaaS)の導入支援、Webマーケティングや広告運用など売上に直結するスキル、またはインフラ保守・セキュリティなど企業活動に不可欠な領域です。「なくても困らない」仕事よりも、企業の生命線を支える実務スキルの需要は落ちにくいと言えます。
Q. クライアントを分散させるときの注意点はありますか?
同じ業界のクライアントばかり集めないことが重要です。例えば特定の業界全体が不況の打撃を受けた場合、一気にすべての案件を失うリスクがあります。IT、医療、教育、小売りなど、景気変動の影響を受けにくい異なる業界のクライアントをバランスよく持っておくことで、リスクを効果的に分散できます。また、大企業と中小企業を組み合わせるのも有効です。
Q. 案件が減ってしまった場合、すぐに利用できるセーフティネットはありますか?
まずは自身の加入している制度を確認しましょう。小規模企業共済に加入していれば、掛け金の範囲内で低金利の貸付制度を利用できます。また、社会福祉協議会が窓口となる「生活福祉資金貸付制度」や、家賃の支払いが困難な場合の「住居確保給付金」など、状況に応じて利用できる公的支援があります。いざという時に備え、あらかじめ自治体の窓口で情報を集めておくのがおすすめです。
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この記事を書いた人
前田 壮一
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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