フリーランスの事業計画書の書き方|融資・補助金申請で使えるテンプレート


この記事のポイント
- ✓フリーランスが融資や補助金申請で使える事業計画書の書き方を解説
- ✓金融機関が見るポイント
- ✓具体的なテンプレートと記入例を経営コンサルの視点から紹介します
「事業計画書を書いてください」と言われて、すぐに書ける方は少ないと思います。私がコンサルティングしている中小企業の経営者でも、事業計画書に苦手意識を持っている方は多い。フリーランスとなれば、なおさらでしょう。
ただ、事業計画書は融資や補助金の申請だけでなく、自分の事業を客観的に見直すための優れたツールです。年間50社以上の経営支援をしていますが、事業計画を作成したフリーランスの方は、そうでない方と比べて明らかに事業の安定度が違います。 おっしゃる通りです。年間の収支計画があるだけで営業を始めるタイミングが明確になる。計画なしに走るのと、地図を持って走るのでは到達地点がまったく違います。
事業計画書が必要になる場面
フリーランスが事業計画書を求められるのは、主に以下のケースです。
| 場面 | 提出先 | 重視されるポイント |
|---|---|---|
| 創業融資 | 日本政策金融公庫 | 事業の実現可能性、返済能力 |
| 補助金申請 | 各省庁・自治体 | 革新性、社会的意義 |
| 銀行融資 | 地方銀行・信用金庫 | 収益性、安定性 |
| オフィス契約 | 不動産会社 | 事業の継続性 |
事業計画書に書くべき7つの項目
1. 事業概要
自分の事業を3行で説明できるようにしましょう。金融機関の担当者は何十件もの申請書を読むため、冒頭で「何をやっている人か」が伝わらないと、その先を読んでもらえません。
記入例:
Webデザイン・コーディングを専門とするフリーランスとして活動。中小企業のコーポレートサイト制作を中心に、月平均4件の案件を受注。クラウドソーシングプラットフォームと直接取引を組み合わせて安定した受注を実現している。
2. 経歴・スキル
「なぜこの事業をやれるのか」の根拠となる部分です。関連する職務経歴、保有資格、実績を記載します。
3. 市場環境と競合分析
フリーランス市場の動向と、自分のポジションを明確にします。
記入例:
クラウドソーシング市場は2025年に約5,000億円規模に成長。特に中小企業のDX推進に伴い、Web制作の外注需要は増加傾向にある。大手制作会社との差別化として、小規模案件への柔軟な対応と低コストを強みとする。
4. サービス内容と料金体系
提供するサービスの具体的な内容と料金を記載します。
| サービス | 料金 | 想定期間 |
|---|---|---|
| コーポレートサイト制作 | 30〜80万円 | 1〜2ヶ月 |
| LP制作 | 15〜30万円 | 2〜4週間 |
| サイト保守・運用 | 月額3〜5万円 | 継続 |
5. 収支計画(3年分)
金融機関が最も重視する部分です。現実的な数字で作成することが大切です。
コンサルで支援したプログラマーのソウタさん(28歳)の失敗例をお伝えします。独立1年目で日本政策金融公庫に創業融資を申し込んだ際、3年目の売上を5,000万円と記載していました。1年目の実績が300万円なのに。当然、融資担当者から「根拠を教えてください」と聞かれ��しどろもどろ。融資は不承認。ソウタさんは相当落ち込んでいましたが、翌年に現実的な数字に修正して再申請し、150万円の融資を受けることができました。「あの否認があったから計画を真剣に考えるようになった」と今は笑っています。
売上計画の例:
| 項目 | 1年目 | 2年目 | 3年目 |
|---|---|---|---|
| 月間受注件数 | 3件 | 4件 | 5件 |
| 平均単価 | 30万円 | 35万円 | 40万円 |
| 月間売上 | 90万円 | 140万円 | 200万円 |
| 年間売上 | 1,080万円 | 1,680万円 | 2,400万円 |
経費計画の例:
| 経費項目 | 月額 | 年額 |
|---|---|---|
| 家賃(按分) | 30,000円 | 360,000円 |
| 通信費 | 10,000円 | 120,000円 |
| ツール・サブスク | 15,000円 | 180,000円 |
| 外注費 | 50,000円 | 600,000円 |
| その他 | 15,000円 | 180,000円 |
| 合計 | 120,000円 | 1,440,000円 |
6. 資金計画
融資の場合は「いくら借りて、何に使い、どう返すか」を明確にします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 必要資金 | 300万円 |
| 自己資金 | 100万円 |
| 借入希望額 | 200万円 |
| 使途 | PC・ソフトウェア80万円、運転資金120万円 |
| 返済計画 | 月額35,000円×60ヶ月 |
7. 将来のビジョン
事業をどう発展させていくかの中長期的な展望を記載します。
金融機関が見ている3つのポイント
私がコンサルとして融資面談に同席した経験から、金融機関の担当者が特に注目しているのは以下の3点です。
- 数字の根拠があるか
「年間売上1,000万円を目指します」だけでは弱い。「現在の月平均受注件数が3件で、単価30万円。既存クライアントの継続率が80%あるため、新規を月1件獲得すれば達成可能」のように、根拠を示す必要があります。
- リスクへの対処を考えているか
「案件が減ったらどうするか」「体調を崩したらどうするか」といったリスクへの対策が書かれていると、審査担当者の印象が良くなります。
- 返済の原資は何か
借入金の返済は売上ではなく、経費を差し引いた利益から行われます。利益が返済額を十分に上回っていることを示しましょう。
事業計画書でよくある失敗
NG例: 売上予測が毎年2倍ずつ増加し、3年目で1億円を突破する計画書。根拠がないため、金融機関の信用を失う。
OK例: 1年目の実績をベースに年20〜30%の成長率で計画。「既存クライアント3社の継続と、新規月1件獲得」のように具体的な施策を併記。
売上予測が楽観的すぎる: 年20〜30%の成長が現実的なラインです。
経費を少なく見積もりすぎる: 実際にフリーランスとして活動すると、想定外の出費が必ず発生します。経費には10〜15%の余裕を持たせておきましょう。
競合との差別化が曖昧: 「高品質なサービスを提供します」は差別化になりません。「○○業界に特化している」「納品後3ヶ月の修正保証つき」のように、具体的に書くことが重要です。
この気持ち、よくわかります。「いつか作ろう」と思いながら後回しにしてしまう。ただ、事業計画書は融資のためだけではなく、自分の事業の「健康診断」です。年に一度でも作っておくと、事業の方向性がぶれにくくなります。
テンプレートの入手先
事業計画書のテンプレートは以下から入手できます。
- 日本政策金融公庫: 「創業計画書」テンプレートをWebサイトからダウンロード
- 中小企業基盤整備機構: J-Net21で業種別テンプレートを提供
- 各自治体の創業支援窓口: 無料の記入指導も受けられる
事業計画書は事業者自身で作成する必要がある。外部に丸投げした計画書は中身を理解していないため、面談で詰められると答えられなくなる。 — 出典: 事業再構築補助金の事業計画書作成のポイント(補助金コンシェルジュ)
@SOHOのお仕事ガイドでは、フリーランスの職種別に求められるスキルや市場の特徴を紹介しています。事業計画書の「市場環境」パートを書く際の参考データとして活用してみてください。
→ フリーランスの職種別ガイドを見る
創業融資で通る事業計画書の具体的な作り込み方
日本政策金融公庫の創業融資は、フリーランスにとって最も利用しやすい資金調達手段です。私がコンサルしているクライアントの中でも、フリーランス1年目で200〜500万円程度の融資を受けている方が多くいます。ただし、書き方一つで結果が大きく変わるのが現実です。
まず押さえておきたいのが、自己資金の重要性です。日本政策金融公庫の新創業融資制度では、創業資金総額の10分の1以上の自己資金が要件とされていましたが、2024年4月の制度改正で「新規開業資金」に統合され、自己資金要件は撤廃されました。ただし実務上、自己資金が多いほど審査は通りやすくなります。融資希望額の3分の1程度の自己資金があると、審査担当者の心証は格段に良くなる印象です。
創業前または創業後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方 出典: jfc.go.jp
自己資金として認められるのは、コツコツ貯めた預金、退職金、配偶者からの援助(贈与契約書があるもの)などです。注意したいのが「見せ金」の扱いで、融資の直前に通帳に大きな金額が振り込まれていると、出所を必ず聞かれます。タンス預金を慌てて入金した場合、それを証明する手段がなく自己資金として認められないケースもあります。最低でも6ヶ月前から計画的に通帳へ入金しておくのが鉄則です。
業種経験も大きな評価ポイントになります。Webデザイナーとして独立するなら、過去にWeb制作会社で3年以上の勤務経験があると説得力が増します。「未経験から飛び込みます」という計画書は、よほど具体的な準備(スクール通学、副業実績、資格取得など)がない限り厳しい評価になります。コンサルで支援したリョウタさん(32歳)は、本業の傍ら2年間副業でWeb制作を続け、月15万円の副業収入実績を計画書に添付したことで、初回満額の300万円融資を獲得しました。
面談対策も計画書と同じくらい重要です。融資担当者は計画書を読み込んで面談に臨むため、書いた数字の根拠を全て自分の言葉で説明できる状態にしておく必要があります。「税理士に作ってもらいました」が一番ダメな回答です。事業者本人が自分の言葉で語れない計画書は、ほぼ確実に否決されます。
補助金申請で採択される事業計画書の書き分け
融資と補助金では、評価される観点が根本的に異なります。融資は「返せるか」、補助金は「社会的意義があるか」「事業として革新性があるか」が見られます。同じ計画書を使い回すと、補助金の方は採択されにくくなります。
フリーランスが活用しやすい補助金として、小規模事業者持続化補助金が代表的です。中小企業庁が所管し、商工会議所・商工会の経営指導員のサポートを受けて申請する制度で、上限50万円(特別枠で最大250万円)の補助が受けられます。販路開拓のための広告費、Webサイト制作費、展示会出展費などが対象となります。
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者及び一定要件を満たす特定非営利活動法人が経営計画を作成して取り組む販路開拓等の取組や、その取組と併せて行う業務効率化の取組を支援するため、その経費の一部を補助する制度です。 出典: chusho.meti.go.jp
補助金の事業計画書で必ず書き込むべきは「補助金を使わなければできない取組」という観点です。「補助金がなくてもやる予定だった」と読める計画書は、補助金の必要性が認められず採択されません。「既存の自己資金では小規模なLP制作にとどまるが、本補助金により本格的なECサイト構築と広告運用が可能となり、売上を2倍に拡大できる」のように、補助金の有無で事業展開がどう変わるかを明確に書き分ける必要があります。
加点項目を取り切ることも採択率を上げるコツです。小規模事業者持続化補助金では、賃金引上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業枠など複数の特別枠があり、要件を満たせば補助上限額が引き上げられます。フリーランス独立3年以内なら創業枠(上限200万円)の対象になる可能性が高いので、商工会議所の経営指導員に相談しながら最適な枠を選びましょう。
採択後の手続きも見落とせません。補助金は原則として「事業実施→領収書提出→入金」の後払い方式です。一時的に自己資金で立て替える必要があるため、補助金額と同等の運転資金を確保しておかないと、採択されても実行できないという事態になります。実際、コンサルで支援したフリーランスの方で「100万円採択されたが手元資金が足りず辞退」というケースを2回見ています。
事業計画書をPDCAサイクルに組み込む運用方法
事業計画書は提出して終わりではなく、独立後の経営判断のベースとして活用することで真価を発揮します。私のクライアントには、四半期に1回計画と実績を照らし合わせる「月次レビュー」を推奨しています。
具体的な運用としては、まず年間計画を月別に分解します。「年間売上1,200万円」という目標を「月100万円」に落とし込み、さらに「月4件×単価25万円」のように受注ベースに分解する。これを毎月の実績と比較することで、計画とのズレが早期に発見できます。
ズレが3ヶ月続いた場合は計画の修正タイミングです。コンサルで支援したライターのアヤノさん(34歳)は、独立半年で計画売上を30%下回る状態が続きました。原因を分析すると、想定していた単価3万円の案件より、5,000円の小口案件ばかりが集まっていることが判明。計画書の単価設定を見直し、ターゲットを中小企業の広報担当者に絞った営業に切り替えたところ、9ヶ月目には計画を上回る売上に回復しました。
事業計画書のPDCAを回す上で役立つのが、よろず支援拠点の無料相談です。中小企業庁が各都道府県に設置している経営相談窓口で、フリーランスも無料で利用できます。
よろず支援拠点では、中小企業・小規模事業者の皆様の経営上のあらゆるお悩みのご相談に対応する経営相談所です。ご相談は何度でも無料です。 出典: chusho.meti.go.jp
私もコーディネーターとして年間100件以上の相談を受けていますが、事業計画書を持参してくれるフリーランスは全体の2割程度です。逆に言えば、計画書を持って具体的な相談に来る方は、相談の質も高く、解決までのスピードも早い。「売上が伸びない」という抽象的な悩みより、「計画では月4件受注のはずが2件に留まっている。原因は何か」と具体的に聞ける方が、的確なアドバイスを得られます。
確定申告のタイミングも見直しの絶好の機会です。前年の実績数字が揃う2〜3月に、来年度の計画書を更新する習慣をつけましょう。国税庁の確定申告書等作成コーナーで青色申告決算書を作成すれば、売上・経費の実績がそのまま計画書のベースデータになります。
青色申告の特典のうち、青色申告特別控除については、不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいる青色申告者が、これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則により記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付して提出している場合には、原則としてこれらの所得を通じて最高55万円を控除することとされています。 出典: nta.go.jp
毎年計画書を更新し続けることで、自分の事業の成長軌道が可視化されます。3年分の計画書を並べて見比べたとき、想定通りに伸びている部分とそうでない部分が明確になり、次の打ち手が自然と見えてくるはずです。
よくある質問
Q. 開業届を出していないフリーランスでも補助金は申請できますか?
原則として申請できません。国や自治体の事業者向け補助金は、税務署に「開業届」を提出し、事業として成立していることが大前提となります。まだ開業届を出していない場合は、まずは税務署で手続きを行うところから始めましょう。
Q. フリーランスでもビジネスローンの審査に通りますか?
はい、通ります。個人事業主専用のビジネスローンが多く登場しており、確定申告の実績があれば十分に可能です。最近では開業届を出して間もない方向けのプランも増えています。
Q. 申請書の作成を専門家(行政書士やコンサルタント)に依頼すべきですか?
申請する補助金の規模によります。小規模事業者持続化補助金(最大50万円)であれば、商工会議所の無料サポートを活用しながら自力で書くことをお勧めします。専門家に依頼すると着手金で5〜10万円、成功報酬で受給額の10〜20%を取られるため、手元に残る金額が少なくなってしまいます。ただし、数百万〜数千万円規模のものづくり補助金などであれば、プロの支援を受ける価値は十分にあります。
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この記事を書いた人
久世 誠一郎
元人材コンサル・中小企業支援歴25年
大手人材会社でコンサルティング部門を率いた後、中小企業の業務改善・外注戦略の支援に転身。発注者目線でのクラウドソーシング活用術を発信しています。
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