フリーランスの帳簿の付け方|初心者でもわかる記帳のコツと具体例


この記事のポイント
- ✓フリーランス初心者向けに帳簿の付け方を解説
- ✓青色申告に必要な帳簿の種類
- ✓会計ソフトの使い方まで
フリーランスになると避けて通れないのが「帳簿付け」です。確定申告のためには日々の取引を記録しておく必要がありますが、簿記の経験がないと「何を、どうやって記録すればいいのか」がわからない。
私も独立したての頃、仕訳帳を目の前にして固まった経験があります。「借方」「貸方」の意味すらわからなかった。でも会計ソフトを使い始めてからは、そういった知識がなくても帳簿を付けられるようになりました。
この記事では、フリーランスが帳簿を付けるための基礎知識と、実際の仕訳例をまとめます。
フリーランスに必要な帳簿の種類
青色申告(65万円控除)の場合
65万円控除を受けるには、複式簿記での記帳が必要です。必要な帳簿は以下の通りです。
| 帳簿の種類 | 内容 | 保存期間 |
|---|---|---|
| 仕訳帳 | すべての取引を日付順に記録 | 7年 |
| 総勘定元帳 | 勘定科目ごとの記録 | 7年 |
| 現金出納帳 | 現金の出入りを記録 | 7年 |
| 売掛帳 | 売掛金の管理 | 7年 |
| 買掛帳 | 買掛金の管理 | 7年 |
| 固定資産台帳 | 固定資産の管理 | 7年 |
「こんなにあるの?」と思うかもしれませんが、会計ソフトを使えば仕訳を入力するだけで全ての帳簿が自動生成されます。手書きで全部作る必要はありません。
白色申告の場合
白色申告では単式簿記(おこづかい帳のような形式)でOKです。ただし、特別控除はなし。青色申告との差は年間65万円の控除額です。少し手間をかけて青色申告にする方が、長い目で見れば確実にお得です。
フリーランスが使う勘定科目一覧
売上に関する科目
| 勘定科目 | 使うケース |
|---|---|
| 売上高 | クライアントからの報酬 |
| 雑収入 | アフィリエイト収入、セミナー収入など |
経費に関する主な科目
| 勘定科目 | 具体例 | フリーランスの目安 |
|---|---|---|
| 通信費 | ネット回線、スマホ代 | 月5,000〜15,000円 |
| 旅費交通費 | 電車代、タクシー代、ガソリン代 | 月3,000〜20,000円 |
| 消耗品費 | 文具、USBメモリ、10万円未満の備品 | 随時 |
| 新聞図書費 | 書籍、技術書、有料ニュースサイト | 月1,000〜5,000円 |
| 地代家賃 | 自宅家賃の事業按分 | 月10,000〜50,000円 |
| 水道光熱費 | 電気代の事業按分 | 月1,000〜5,000円 |
| 外注費 | 他のフリーランスへの発注 | 案件による |
| 減価償却費 | 10万円以上のPC、カメラ等 | 年間で按分 |
| 支払手数料 | 銀行振込手数料 | 月数百〜1,000円 |
| 租税公課 | 個人事業税、印紙税 | 年間で計上 |
| 研修費 | セミナー参加費、オンライン講座 | 随時 |
| 広告宣伝費 | 名刺、ポートフォリオサイト運営費 | 随時 |
| 接待交際費 | クライアントとの飲食(事業目的) | 月5,000〜20,000円 |
仕訳の具体例(フリーランスあるある)
例1: クライアントから報酬が振り込まれた
10万円の案件が完了し、源泉徴収10,210円を差し引いた89,790円が銀行口座に振り込まれた場合。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 89,790円 | 売上高 | 100,000円 |
| 事業主貸 | 10,210円 | — | — |
※源泉徴収税は「事業主貸」で処理し、確定申告時に精算します。
例2: 新しいノートPCを購入した(25万円)
10万円以上30万円未満の備品は、青色申告なら「少額減価償却資産」として一括経費にできます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 消耗品費(または減価償却費) | 250,000円 | 普通預金 | 250,000円 |
※青色申告の「少額減価償却資産の特例」を利用。年間300万円が上限です。
例3: 自宅の家賃を按分して経費にした
月額10万円の家賃で、作業部屋が全体の25%の場合。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 地代家賃 | 25,000円 | 事業主借 | 25,000円 |
按分の根拠(面積比率など)を書類として残しておくことが重要です。税務調査で質問されたときに説明できるようにしておきましょう。
例4: クレジットカードでAdobe CCを年払いした
年額28,776円をクレジットカードで支払った場合。
カード利用時(発生主義):
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 通信費(またはソフトウェア) | 28,776円 | 未払金 | 28,776円 |
カード引落日:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未払金 | 28,776円 | 普通預金 | 28,776円 |
例5: クライアントとの打ち合わせでカフェ代を払った
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 会議費 | 1,200円 | 現金 | 1,200円 |
1人で作業するためのカフェ利用は経費にしにくいですが、クライアントとの打ち合わせなら「会議費」として計上できます。レシートの裏に「○○社 △△さんとの打ち合わせ」と日付・相手を書いておくのがコツです。
帳簿を付けるタイミングとコツ
週1回まとめて記帳する
毎日付けるのが理想ですが、現実的には週に1回まとめて記帳するフリーランスが多いです。日曜日の夜に30分、という習慣を作ると続きやすくなります。
レシート・領収書の管理
- 受け取ったらすぐにスマホで撮影(会計ソフトのアプリが便利)
- 月ごとに封筒に入れて保管
- 保存期間は7年間
事業用口座を分ける
プライベートの口座と事業用の口座を分けておくと、記帳が格段に楽になります。事業の入出金がすべて1つの口座に集約されるため、抜け漏れが減ります。
クレジットカードも分ける
同様に、事業用のクレジットカードを1枚用意すると、経費の管理が簡単になります。会計ソフトと連携すれば、利用明細が自動で取り込まれます。
会計ソフトの活用
正直なところ、2026年の今、手書きで帳簿を付ける理由はほぼありません。会計ソフトを使えば、仕訳の入力だけで必要な帳簿がすべて自動生成されます。
| ソフト | 月額 | 強み |
|---|---|---|
| freee | 1,480円〜 | 簿記知識不要。チャットサポート充実 |
| マネーフォワード | 1,280円〜 | 銀行・カード連携が強力 |
| やよいの青色申告 | 0円〜(初年度無料プランあり) | 老舗の安心感。操作が直感的 |
どのソフトも銀行口座やクレジットカードと連携でき、取引データを自動で取り込んでくれます。取り込まれたデータを確認して勘定科目を選ぶだけ。これだけで帳簿が完成します。
@SOHOの教育訓練ガイドでは、簿記やFPなどの経理関連スキルを学べる講座も紹介しています。教育訓練給付金の対象講座なら、受講費用の20〜70%が国から支給されます。帳簿付けの基礎をしっかり学びたい方は検討してみてください。
まとめ
フリーランスの帳簿付けは、会計ソフトを使えば思ったほど難しくありません。週1回の記帳習慣を作り、レシートを溜めないこと。これだけで確定申告の時期に慌てずに済みます。
青色申告65万円控除の恩恵を受けるためにも、きちんと帳簿を付ける習慣を今のうちに身につけておきましょう。
帳簿付けでフリーランスがやりがちな失敗例
会計ソフトを使えば帳簿付けは格段に楽になりますが、それでも入力ミスや勘違いによる失敗は少なくありません。私自身も独立3年目までは毎年のように同じミスを繰り返し、税理士の友人に呆れられた経験があります。ここでは、フリーランスが陥りやすい帳簿付けの失敗パターンと、その対策を具体的に紹介します。
失敗1: 事業用とプライベートの混在記帳
最も多いのが、事業用口座とプライベート口座の混在です。たとえば事業用クレジットカードで家族の食事代を払ってしまい、後で「これは経費じゃないから削除しなきゃ」と慌てるパターン。逆に、プライベートカードで仕事の備品を買ってしまい、計上漏れになるケースもあります。
対策は、購入の瞬間に「これは事業?プライベート?」を判断し、必ず該当する口座・カードを使うこと。判断に迷う支出(自宅兼事務所の電気代など)は、いったん事業用で支払い、後から按分計算で調整する方が記帳ミスは減ります。
失敗2: 源泉徴収税の処理忘れ
源泉徴収される業種(ライター、デザイナー、コンサルタント等)の場合、報酬の振込額と請求額が違うため、仕訳でつまずく人が多いです。先述の通り、源泉徴収分は「事業主貸」で処理しますが、これを忘れると売上が振込額(実際に入金された額)で記録されてしまい、確定申告時に過少申告になります。
国税庁の公式情報でも、源泉徴収された所得税の取り扱いは明確に定められています。
報酬・料金などの所得税及び復興特別所得税を源泉徴収する義務のある個人や法人を源泉徴収義務者といい、源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月の10日までに国に納めなければならないこととされています。 出典: www.nta.go.jp
請求書に「源泉徴収税額」を明記しておくと、後から仕訳するときに迷いません。
失敗3: 消費税の課税事業者判定ミス
年間売上が1,000万円を超えた年の翌々年から、消費税の課税事業者になります。この時期を勘違いして、初年度から消費税を計上してしまったり、逆に課税事業者になっているのに「免税のまま」と思い込んで申告漏れになるケースもあります。インボイス制度導入後は特に複雑化しているため、売上が増えてきたら早めに税理士へ相談する方が安全です。
業種別・フリーランスの帳簿付けの注意点
帳簿付けの基本は同じでも、業種によって特に注意すべきポイントが異なります。@SOHOで多く活動しているフリーランスの業種別に、押さえておきたいポイントを整理します。
Webライター・編集者
ライター業は経費が比較的シンプルですが、取材費の処理に注意が必要です。取材のための交通費、宿泊費、書籍代などは原則として経費になりますが、プライベート旅行のついでに取材した場合は按分が必要です。また、リサーチのために購入した書籍は「新聞図書費」、有料ニュースサイトの購読料は「通信費」または「研修費」で処理します。
Webデザイナー・エンジニア
最も悩ましいのが、ソフトウェアのサブスクリプション費用の科目です。Adobe Creative Cloud、Figma、各種クラウドサービスなどを「通信費」「ソフトウェア使用料」「支払手数料」のどれにするか、人によって判断が分かれます。重要なのは、一度決めた科目を一貫して使い続けること。年度ごとに変えると、決算書の比較分析ができなくなります。
また、10万円以上のPCやモニターは原則として固定資産扱いになり、減価償却が必要です。耐用年数は4年が一般的(サーバー用パソコンは5年)で、毎年4分の1ずつ経費計上していきます。
コンサルタント・士業
クライアントとの会食費が多くなる業種では、「会議費」と「接待交際費」の使い分けが重要です。原則として、1人あたり5,000円以下の打ち合わせ会食は会議費、それを超えると接待交際費という運用が一般的です。
中小企業庁の資料でも、適切な経費区分の重要性が指摘されています。
中小企業・小規模事業者にとって、会計の整備と適切な記帳は、自社の経営状況を把握するための基本であり、金融機関や取引先からの信頼を得るためにも不可欠なものとなっています。 出典: www.chusho.meti.go.jp
動画クリエイター・カメラマン
機材費が高額になりやすい業種です。10万円以上のカメラ、レンズ、照明機材などは減価償却資産になりますが、青色申告の「少額減価償却資産の特例」を使えば30万円未満まで一括経費化できます。ただし、年間合計300万円までという上限があるため、複数の機材を購入した年は注意が必要です。
税務調査で困らない帳簿の保管方法
帳簿付けで意外と見落とされがちなのが、書類の保管方法です。税務調査は突然来るわけではなく、事前通知があるのが一般的ですが、いざ来たときに書類が出てこないと修正申告や追徴課税のリスクが高まります。
紙の書類の整理術
レシート・領収書は月別に封筒へ入れて保管するのが基本ですが、私のおすすめは「月別×科目別」の二段階管理です。たとえば「2026年5月_交通費」「2026年5月_消耗品費」のように科目ごとに分けておくと、税務調査で「この経費の根拠は?」と聞かれたときに即座に取り出せます。
電子帳簿保存法への対応
2024年1月から電子帳簿保存法が完全義務化され、電子取引(メール添付の請求書、ネット通販の領収書など)はデータでの保存が必要になりました。紙に印刷して保管するだけでは認められません。
電子取引を行った場合には、その電子取引の取引情報に係る電磁的記録を一定の要件の下、保存しなければなりません。 出典: www.nta.go.jp
具体的には、以下の要件を満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 真実性の確保 | タイムスタンプ付与、または改ざん防止規程の整備 |
| 可視性の確保 | 取引年月日・金額・取引先で検索できる状態 |
| 保存期間 | 7年間(赤字繰越時は10年間) |
会計ソフトの多くは電子帳簿保存法に対応した機能を備えているため、ソフト経由で取り込まれたデータはそのまま保管できます。Amazonやネット通販で購入したものの領収書PDFは、必ずソフトにアップロードしておきましょう。
バックアップは二重化が鉄則
帳簿データは、クラウド会計ソフト上だけでなく、定期的にCSVやPDFでローカルにバックアップしておくことをおすすめします。会計ソフトのサービス障害や、自分のアカウントトラブルでデータにアクセスできなくなった事例も実際にあります。月末に1回、決算書と総勘定元帳をPDFでダウンロードして外付けHDDに保存する習慣を作ると、いざというときに困りません。
よくある質問
Q. 税理士に記帳代行を依頼する場合、自分で会計ソフトを契約する必要はありますか?
税理士事務所側でデータ管理するケースと、クライアント自身がソフト契約して税理士に閲覧権限を付与するケースがあります。将来的に自力運用へ戻す可能性を考えると、後者の構成が柔軟です。
Q. 無料プランだけで確定申告を完了できますか?
freeeのスターターやマネーフォワードの無料プランは、機能制限があり、青色申告決算書の作成が不可または制限付きです。有料プラン(年11,000〜15,000円)で完全対応になります。
Q. 会計ソフトを途中で乗り換えることは可能ですか?
可能です。前ソフトのデータをCSV・仕訳帳形式でエクスポートし、新ソフトにインポートする手順になります。ただし、期中での乗り換えは仕訳の整合性確認が必要なため、年度末または期首のタイミングでの乗り換えを推奨します。
Q. 同業者(フリーランス仲間)との飲み会は経費になりますか?
「情報交換会」としての実態があれば交際費として認められます。ただし、ただの愚痴の言い合いや友人としての飲み会はNGです。「〇〇業界の最新動向について情報交換し、今後の協業について協議した」という明確なビジネス目的が必要です。
Q. 税務調査が来やすいフリーランスの特徴はありますか?
売上が急激に伸びている、経費の割合が同業他社と比べて極端に高い、毎年赤字申告を繰り返している、といった事業者は、AIによるスクリーニングで異常値として抽出されやすく、調査対象になりやすい傾向があります。
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この記事を書いた人
織田 莉子
FP2級・フリーランス経理サポーター
会計事務所で10年間の実務経験を経て独立。フリーランスの確定申告・節税・資金管理を専門に、お金にまつわる記事を執筆しています。
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