展示会やイベントで流す音楽の著作権処理|JASRACへの申請が要る場面 2026


この記事のポイント
- ✓イベント 音楽 著作権処理の手続きを
- ✓JASRAC・NexToneへの申請方法から無許諾利用が許されるケース
- ✓代行サービスの選び方まで実務目線で解説します
展示会や社内イベント、地域のお祭りでBGMや演奏用の楽曲を使いたいとき、著作権処理をどう進めればいいか迷う担当者は多いはずです。結論から言うと、営利・非営利を問わず「不特定多数が聴く場」で市販音源や演奏を使う場合は、原則としてJASRACかNexToneへの使用申請が必要になります。この記事では、イベント運営の実務担当者が最初につまずきやすい申請手続きの流れと、無許諾で使えるケースの境界線、代行サービスの選び方までを整理します。
イベント音楽の著作権処理が注目される背景
イベント運営の現場では、ここ数年で著作権処理への意識が急速に高まっています。理由は大きく2つあります。1つは、企業の社内イベントや展示会がSNSでライブ配信されるケースが増え、会場内だけの利用にとどまらず「配信」という別の権利処理が絡む場面が増えたこと。もう1つは、著作権侵害の摘発事例がニュースで報じられるようになり、無許諾利用のリスクが可視化されたことです。
JASRACが公表している演奏権等の使用料規定を見ても、コンサートやイベントでの演奏に関する申請件数は増加傾向にあります。特にオンライン配信を伴うハイブリッド型イベントでは、会場内演奏の権利処理とインターネット配信の権利処理が別建てで必要になるため、担当者が両方を把握していないと申請漏れが起きやすい構造になっています。
社内イベントを行う際、進行のなかでBGMを使用することがあります。しかし音楽には著作権があるため、イベントで自由に曲を使うのは問題ないのでしょうか。 出典: mice-platform.com
この問いに対する答えはシンプルではありません。イベントの性質、会場、参加者数、配信の有無によって必要な手続きが変わるためです。次の章から、それぞれのケースに応じた処理方法を具体的に見ていきます。
著作権処理の全体像:JASRACとNexToneの役割
音楽の著作権処理を理解するうえで、まず押さえておきたいのが権利の構造です。
音楽には、創作した人の権利として「著作権」が存在します。その他にもアーティストやレコード製作者の「著作隣接権」が、音楽配信やCDなどには含まれています。市販の音源をイベントなどで利用する場合には、「著作者(作詞・作曲者)」「実演家(アーティスト)」「レコード製作者」の権利が関係します。 出典: mice-platform.com
実務上は、これらすべての権利者に個別交渉するのは現実的ではありません。そこでJASRAC(日本音楽著作権協会)とNexToneという著作権等管理事業者が、多くの作詞家・作曲家から著作権の管理を委託され、一括で使用許諾と徴収を行っています。イベント主催者は、原則としてこの2団体のどちらかに使用料を支払えば、管理下にある楽曲の演奏・上映・配信について許諾を得たことになります。
一方、著作隣接権(実演家・レコード製作者の権利)については、市販音源をそのまま再生する場合に別途「日本レコード協会」などへの手続きが必要になるケースもあります。CDやサブスクの音源をそのまま流すのか、生演奏やDJプレイなのかによって、確認すべき窓口が変わる点は覚えておく必要があります。
イベント音楽の著作権処理の方法
具体的な申請の流れは、イベントの形態によって異なります。ここでは代表的な3パターンを整理します。
方法1:会場内演奏(BGM・生演奏)の申請
コンサートやライブ、展示会のオープニングで生演奏をする場合、JASRACの「演奏会等」向けの利用区分で申請します。手順は次の通りです。
- JASRACの公式サイトまたは窓口で「演奏する楽曲」「会場」「日時」「入場者数(想定)」を届け出る
- 使用料規定に基づいた金額の見積もりを受け取る
- イベント開催前、または開催後の指定期日までに使用料を支払う
- 領収書・許諾番号を保管する
使用料はホールの定員や入場料の有無によって変動し、数千円から数万円程度が相場です。無料イベントでも徴収対象になる点に注意してください。
方法2:BGM再生のみの申請
会場でCDやストリーミング音源をスピーカーから流すだけの場合も、演奏権の対象になります。近年はJASRACの窓口サイトからオンライン申請できる仕組みが整備され、以前より手続きの負担は下がっています。展示会場のように複数日にわたって流し続ける場合は「包括利用許諾契約」のような月極・年間契約を検討すると、都度申請より事務負担が軽くなります。
方法3:配信を伴うイベントの申請
会場内の演奏に加えて、YouTubeやZoomなどでライブ配信・アーカイブ配信を行う場合は、演奏権とは別に「インタラクティブ配信」の許諾が必要です。これは会場内利用とは異なる区分での申請になるため、担当者が「会場の申請だけで済む」と誤解しているケースが実務上非常に多く見られます。配信プラットフォーム側が包括契約を結んでいる場合(YouTubeなど大手動画配信サービスの一部)もありますが、主催者側の責任で確認しておくのが安全です。
許諾を得ずに音楽を利用できるケースと注意点
すべてのイベントで申請が必要というわけではありません。著作権法には「非営利・無料・無報酬」の3条件をすべて満たす上演等について、権利者の許諾なく利用できる例外規定(著作権法38条)があります。
具体的には、次のすべてに当てはまる場合が対象です。
- 営利を目的としていない(入場料を徴収しない)
- 出演者に対して報酬が支払われていない
- 観客から料金を一切徴収していない
例えば、学校の文化祭や地域の無料お祭りで、ボランティアの演奏者が無報酬で演奏し、入場料も取らない場合はこの例外に該当する可能性があります。ただし、企業の展示会や社内イベントは多くの場合「営利活動の一環」とみなされるため、この例外が適用されないケースがほとんどです。
社内イベントは、営利目的のイベントであるため、音楽を使用する際には著作権料が発生します。万が一、申請をせずに無断使用してしまうと著作権の侵害となり、罰則が課せられる可能性もあるため注意しなければいけません。 出典: mice-platform.com
注意すべきポイントとして、3条件の判定は「イベント単位」ではなく「利用場面単位」で見られる点が挙げられます。無料の地域イベントであっても、企業が協賛して自社ブースでBGMを流し、来場者に商品を販促している場合は、そのブース部分だけ営利性ありと判断されることがあります。境界線が曖昧なときは、自己判断せずJASRACの相談窓口に確認するのが実務上の鉄則です。
著作権処理を怠った場合のリスクと罰則
無申請でイベント音楽を利用した場合、権利者側から使用料の請求を受けるだけでなく、悪質性が高いと判断されれば著作権法違反として刑事罰の対象になる可能性があります。著作権侵害は10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性がある重い犯罪です(法人の場合は両罰規定でさらに高額な罰金が科されることもあります)。
もっとも、多くのケースはいきなり刑事告訴に至るわけではなく、まず権利者団体から利用実態のヒアリングと使用料の追徴請求が来る流れが一般的です。それでも、企業イベントで無断利用が発覚すれば、取引先や来場者の前で信頼を損なうダメージは金額以上に大きいと考えるべきです。展示会やカンファレンスを繰り返し主催する企業ほど、事前の権利処理をルーティン化しておくメリットは大きいといえます。
イベント音楽著作権処理のメリット・デメリット
正規の手続きを踏むことには、コストだけでなく明確な利点があります。一方で負担も存在するため、両面をフェアに見ておきましょう。
メリット
- 権利侵害のリスクをゼロに近づけられ、法的トラブルを回避できる
- 許諾番号・領収書という「対外的な証跡」が残り、取引先やスポンサーへの説明責任を果たせる
- 包括契約を結べば、複数回・複数会場のイベントでも都度申請の手間を省ける
デメリット
- 楽曲数・会場規模に応じて使用料が発生し、イベント予算に組み込む必要がある
- 申請から許諾までにタイムラグがあり、直前の選曲変更がしづらくなる
- 配信を伴う場合は演奏権とは別区分の申請が必要になり、手続きが複雑化する
正直なところ、「事前申請の面倒さ」を理由に処理を後回しにする担当者は今でも一定数いるという印象を受けます。ただ、展示会や周年イベントのように何度も同じ形式のイベントを開催する企業であれば、初回にきちんと手続きフローを整備しておいたほうが、長期的には工数もコストも抑えられる傾向が見られます。
著作権処理の代行サービス・専門家の選び方
自社に著作権処理の知見がない場合、イベント制作会社や著作権処理の代行を行う専門事業者に依頼するのも有効な選択肢です。選ぶ際のコツは次の3点です。
選び方のコツ1:JASRAC・NexTone双方の実務経験があるか
管理団体は1つではないため、どちらの窓口も扱った経験がある代行者を選ぶと、楽曲の管理団体を跨いだ複雑なケースでも対応してもらいやすくなります。
選び方のコツ2:配信案件の実績があるか
ハイブリッド開催が一般化した今、会場内演奏だけでなく配信の権利処理も含めて相談できる相手かどうかは重要な判断基準です。過去の対応実績を具体的に聞いておくと安心です。
選び方のコツ3:見積もりの内訳が明確か
「著作権処理費一式」とだけ書かれた見積もりではなく、演奏権・配信権・実演家の権利のどこに何円かかっているかを分解して提示してくれる事業者を選ぶと、後から追加請求されるトラブルを避けやすくなります。
こうした専門実務は、イベント制作・映像編集のスキルを持つ人材が担うケースも増えています。実際、結婚式・イベント・記念動画のお仕事では、撮影・編集に加えて使用楽曲の権利確認まで一貫して担当する案件が紹介されており、音楽まわりの実務知識がある人材の需要がうかがえます。また音声編集・音楽レッスンのお仕事のように、音源のミックスや権利処理の下調べを含む業務委託案件も存在し、イベント運営会社が外部の専門人材に権利処理サポートを委託する動きも見られます。
成功事例に学ぶ実務のポイント
実務上「成功している」イベント主催者に共通するのは、選曲の段階からJASRACの検索データベースで管理状況を確認し、申請書類のテンプレートを社内で使い回している点です。逆に申請が後手に回るケースの多くは、選曲決定から開催日までの期間が短く、許諾取得のリードタイムを見込んでいなかったことが原因になっています。
筆者が編集業務で複数の展示会レポートを取材した際、主催企業の担当者から「音楽の権利処理は開催の1〜2か月前には着手しないと、当日に間に合わないことがある」という話を聞いたことがあります。実際、配信を伴う大型イベントほど関係者間の確認事項が増え、想定より時間がかかる場面を何度か目にしました。スケジュールに余裕を持たせておくことは、地味ですが最も効果的なリスク管理といえます。
独自データ考察:イベント運営を支えるフリーランス人材の役割
イベント音楽の著作権処理は、法務・総務部門だけの仕事ではなくなりつつあります。展示会やカンファレンスの企画運営を外部委託する企業が増えるなか、イベントディレクションやAV(音響・映像)まわりを担当するフリーランス人材が、権利処理の窓口対応まで巻き取るケースが実務上増えている印象です。
20年この市場を見てきた立場から言えば、単発の作業を請け負うだけの人材と、長く継続発注される人材の違いは「面倒な周辺業務まで拾えるかどうか」に表れます。音楽選定や機材手配だけでなく、著作権申請の書類作成や進捗管理まで巻き取れる人材は、イベント主催企業にとって「この人に任せると安心」という評価につながりやすく、単発の案件が継続的な業務委託関係に発展しやすい傾向があります。
中間マージンが乗らない直接取引の場合、同じ予算の中で依頼企業はより多くの業務範囲をその人材に任せられ、受け手側も手取りが厚くなります。手数料を引かれない分だけ、権利処理の実務経験を積む時間や専門知識への投資に予算を回せるという構造は、双方にとって合理的です。手数料0%で直接発注できる環境は、こうした専門性の高い周辺業務を担う人材にとって、報酬の実質価値を高める要因になり得ます。
イベント運営を軸にキャリアを広げる場合、デザイン・動画・音楽レッスンのお仕事のように隣接領域のスキルを組み合わせて案件を獲得している人材も少なくありません。映像制作・音響・著作権実務を横断的に扱える人材は、展示会シーズンに需要が集中する業界特性とも相性がよく、複数の主催企業から並行して依頼を受けやすい立場を築きやすいといえます。
一方で、こうした実務系の仕事は単価の可視化がしづらいという課題もあります。ソフトウェア作成者の年収・単価相場や著述家,記者,編集者の年収・単価相場のような職種別データベースと比べ、イベント運営・著作権実務のような複合スキル職は相場が体系化されにくく、個々の交渉力に依存しがちです。だからこそ、権利処理の知識という「専門性の裏付け」を持つことが、価格交渉の材料として機能する場面が増えていると感じます。
また、経営全体の視点から権利処理を含む業務フローを整備したい企業にとっては、中小企業診断士のような経営全般の知見を持つ専門家に相談し、イベント運営の外部委託設計そのものを見直す動きも見られます。異業種の知見(例えば医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)のような対人サービス業の事務処理ノウハウ)が、イベント運営の書類管理の効率化に応用されるケースもあり、著作権処理という一見ニッチなテーマも、実は幅広い業務改善の文脈とつながっています。
福祉・介護分野でもデジタル化や補助金活用の動きが進んでおり、介護・福祉事業所のDX化2026|IT導入補助金で介護記録を完全デジタル化や介護タクシー開業ガイド2026|助成金と補助金で開業費用を 1/3 にする方法のように、施設のイベント(利用者向けの音楽レクリエーション等)でも著作権処理の知識が求められる場面は今後増えていくと考えられます。送迎バスの安全装置設置補助金を扱う送迎バス安全装置の設置補助金2026|介護施設の義務化対応と申請手順のように、施設運営に関わる制度対応と同様、音楽利用のルールも「知らなかった」では済まされない領域になりつつあります。
イベント音楽の著作権処理は、一見すると専門的で敷居が高く見えますが、申請の型さえ押さえれば実務上のハードルはそれほど高くありません。開催形態(会場内のみか配信ありか)を最初に整理し、リードタイムに余裕を持って管理団体に申請する。この基本を徹底することが、トラブルのないイベント運営の土台になります。
なお、音楽・音響制作向けの著作権譲渡契約書テンプレート(無料ダウンロード)も用意しています。納品物の権利まわりをこれ1枚で明確にできます。
よくある質問
Q. イベントで音楽を使う場合、必ずJASRACに申請しないといけませんか?
非営利・無料・無報酬の3条件をすべて満たす場合は例外的に許諾不要です。ただし企業の展示会や社内イベントの多くは営利性ありと判断されるため、原則としてJASRACかNexToneへの申請が必要になります。
Q. イベント音楽の著作権処理にかかる費用はどのくらいですか?
会場の定員や入場料の有無で変動しますが、数千円から数万円程度が相場です。配信を伴う場合は演奏権とは別に配信権の使用料も発生するため、事前に見積もりを取ることをおすすめします。
Q. BGMを流すだけでも申請は必要ですか?
必要です。CDやストリーミング音源をスピーカーで再生するだけでも演奏権の対象になります。複数日にわたって流す展示会などは、包括利用許諾契約を検討すると事務負担を減らせます。
Q. 著作権処理はいつまでに済ませればいいですか?
開催の1〜2か月前には着手するのが実務上安全です。特に配信を伴うイベントは関係者間の確認事項が多く、想定より時間がかかることがあるため、選曲決定後すぐに申請準備を始めることをおすすめします。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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