中小企業のDX推進にフリーランスを活用|低コストでデジタル化する方法

井上 拓真
井上 拓真
中小企業のDX推進にフリーランスを活用|低コストでデジタル化する方法

この記事のポイント

  • 中小企業がフリーランスを活用してDXを推進する方法を解説
  • SIerに依頼すると高額になるDX施策を
  • 低コストで実現する具体的なステップと費用感を紹介

結論から言うと、中小企業のDXにSIerは要りません。

僕がCTO時代に外注戦略を担当していた頃、ある製造業の社長から相談を受けたことがあります。「DXやりたいけど、ベンダーの見積もりが800万円で諦めた」と。

中身を聞いてみたら、やりたいのは「紙の注文書をデジタル化」と「顧客リストの一元管理」。SIerに「DX推進」というキーワードで相談すると、最低でも数百万円の見積もりが出てくる。大規模なシステム刷新なら数千万円。従業員50人以下の中小企業にとって、この金額は現実的じゃないですよね。

結局その社長の案件は、僕が紹介したkintone専門のフリーランスのソウタが120万円で全部解決しました。SIerの7分の1のコスト。しかも導入まで2ヶ月。ソウタ曰く「中小企業のDXなんて、大体kintone+Notionで8割は片付く」。乱暴に聞こえるかもしれないけど、僕もこの意見にはほぼ同意です。

中小企業に本当に必要なのは「DX」じゃない

まず「DX」という言葉に惑わされないでください。中小企業に必要なのは大規模なシステム投資じゃなくて、日常業務のデジタル化です。

3つの段階を混同しないこと

段階 内容 費用感 期間
第1段階:デジタイゼーション 紙の業務をデジタルに置き換え 月5〜15万円 1〜3ヶ月
第2段階:デジタライゼーション 業務プロセスの自動化 月15〜30万円 3〜6ヶ月
第3段階:DX ビジネスモデルの変革 月30万円〜 6ヶ月〜

中小企業の約7割はまだ第1段階にも達していません。Excelの顧客リスト、紙の申請書、FAXの受発注。ここをデジタル化するだけで業務効率は劇的に変わります。いきなり「DX」を掲げなくていい。

まさにこの通りで、DXの問題は「ツールがない」ことじゃなくて「推進できる人がいない」こと。正社員として採用するほどの業務量じゃなくても、月10〜30万円でDX人材にスポットで入ってもらう。これが中小企業にとって最も合理的な選択肢だと考えています。

SIerとフリーランス、コストの差はこれだけ出る

同じDX施策をSIerとフリーランスに依頼した場合の費用比較です。僕がコンサルしている企業の実績値も含めて整理しました。

DX施策 SIerの見積もり フリーランスの見積もり
顧客管理のクラウド化 300〜500万円 50〜100万円
受発注のオンライン化 500〜1,000万円 80〜200万円
社内ワークフロー構築 200〜400万円 30〜80万円
データ分析基盤の構築 300〜800万円 50〜150万円

なぜここまで差が出るか。SIerは「要件定義→基本設計→詳細設計→開発→テスト→導入」の工程ごとに担当者が変わり、それぞれに工数がかかるからです。フリーランスなら1〜2名で一気通貫。中間工数が圧縮される分、コストが下がります。

中小企業はさまざまな課題が原因でDXへの取り組みが遅れています。少しでも進めるためにデジタル化からはじめましょう。 — 出典: 中小企業のDX推進完全ガイド(セールスフォース・ジャパン)

セールスフォースのガイドでも指摘されていますが、いきなり「DX」を目指すんじゃなくて、まずは目の前の業務のデジタル化から。僕がコンサルの現場で毎回言っていることと同じです。

僕が支援した企業の実例4つ

事例1:kintoneで顧客管理(月額10万円・2ヶ月)

製造業の会社で、営業担当5名がそれぞれ個別にExcelで顧客を管理していました。情報が分散して、ダブルアプローチや対応漏れが頻発。

kintone専門のフリーランスに月額10万円で依頼。2ヶ月で顧客情報の一元管理が実現して、営業の生産性が30%向上しました。ちなみにこの会社、最初にSIerに見積もりを取ったら350万円と言われて断っていたそうです。

事例2:RPAで経理業務を自動化(月額15万円・3ヶ月)

毎月の請求書処理に40時間かかっていた小売業。UiPathの導入を外注して、請求書のデータ入力を自動化。処理時間が8時間に短縮。32時間の工数削減は人件費換算で月8万円相当。2ヶ月で投資回収できた案件です。

事例3:Notionでナレッジ集約(月額5万円・1ヶ月)

業務マニュアルがWord文書で散在して、最新版がどれか誰もわからない状態。Notionに全マニュアルを集約して検索可能にした結果、新入社員のオンボーディング期間が1ヶ月→2週間に短縮。月額5万円×1ヶ月。たった5万円の投資です。

事例4:Shopify PlusでBtoB受注をオンライン化(月額20万円・4ヶ月)

FAXと電話で受注していた卸売業。Shopify Plusでオンライン受注の仕組みを構築。導入後6ヶ月で受注の40%がオンライン経由に移行して、受注処理の人件費が年間200万円削減。これはフリーランスのEC専門家に月20万円で4ヶ月依頼した案件で、投資対効果が最も高かった事例です。

DX人材をどこで見つけるか

まずスキルセットを整理する

DX施策 必要なスキル フリーランスの時給目安
SaaS導入支援 kintone、Salesforce等 3,000〜5,000円
RPA構築 UiPath、Power Automate 4,000〜6,000円
データ分析 SQL、Python、BI 4,000〜8,000円
Web/アプリ開発 React、Node.js等 5,000〜10,000円
ITコンサルティング 業務分析、要件定義 5,000〜15,000円

探し方のNG/OK

NG例: 「DXやりたいんですけど、誰に頼めばいいですか?」と知り合いに聞き回る

これだと「たまたま見つけた人」に依頼することになり、スキルのミスマッチが起きやすい。僕のコンサル先でもこのパターンで失敗した企業を何社も見ています。

OK例: @SOHOに「DX支援:kintoneで顧客管理を構築できる方を募集。月10時間程度、リモート可」と具体的な案件を掲載する

必要なスキルと業務内容を明記すると、該当スキルを持つフリーランスから応募が来ます。@SOHOなら掲載手数料が無料なので、気軽に募集をかけられます。

上流の戦略策定から入れるフリーランスも増えています。「何をデジタル化すべきか」の整理から手伝ってもらえるので、自社にDXの知見がなくても大丈夫です。

教育訓練給付金で社内育成もアリ

フリーランスへの外注と並行して、社内にDXスキルを持つ人材を育てる選択肢もあります。

教育訓練給付金制度を使えば、受講費用の最大70%(上限56万円)が国から支給される専門実践教育訓練の対象講座があります。データサイエンスやプログラミングの講座が多数対象になっている。

教育訓練給付金の対象講座を探す

失敗しないための3原則

原則1:全社改革より1部門から

「全社DX」を掲げると、現場の抵抗にあって確実に頓挫します。僕が見てきた限り、成功パターンはいつも同じ。まず1部門のデジタル化に成功して、その成果を社内に見せる。成功体験が他部門への展開を加速させます。

原則2:SaaSを使い倒してからカスタム開発

カスタム開発の前に、既存のSaaS(kintone、Notion、freee等)で対応できないか検討してください。SaaSなら月額数千〜数万円で済む。カスタム開発は最後の手段です。

原則3:経営者がコミットする

DXは現場任せでは進みません。これ、何十社もコンサルしてきてほぼ例外なく言えることです。経営者自身が「なぜやるのか」を明確にして、プロジェクトにコミットしている会社だけが、DXに成功しています。

よくある質問

Q. SIerに依頼するのとフリーランスに依頼するのでは、費用は具体的にどれくらい変わりますか?

依頼内容にもよりますが、フリーランスに依頼した場合、SIerの半額から3分の1程度の費用に抑えられることが多いです。SIerの見積もりには営業費や管理費、多重下請けによる中間マージンが含まれますが、フリーランスは実働分のコストのみとなるためです。ただし、大規模なシステム開発はチーム体制のSIerが向いている場合もあります。

Q. 自社にITの知見がない場合、どのように優秀なフリーランスを見極めればよいでしょうか?

過去の実績やポートフォリオを確認することはもちろん、「専門用語を使わずに分かりやすく説明してくれるか」が重要な判断基準になります。最初は要件定義の壁打ちや小規模なツール導入など、小さな業務をテスト的に依頼し、コミュニケーションの円滑さや仕事の進め方を確認してから本格的なプロジェクトを任せるのがおすすめです。

Q. フリーランスに業務を依頼して、途中で音信不通になったりするリスクはありませんか?

リスクはゼロではありませんが、身元確認がされているクラウドソーシングサイトやエージェント経由で探すことで大幅に減らせます。また、業務を細かく区切ってマイルストーンごとに納品・支払いを行う契約にする、定期的なオンラインミーティングを設けるといった進捗管理の工夫をすることで、トラブルを未然に防ぐことができます。

Q. DX推進はフリーランスに「丸投げ」しても大丈夫でしょうか?社内育成とどちらが良いですか?

フリーランスへの丸投げは失敗の原因になります。自社の業務フローを最も理解しているのは社内の人間なので、目的の共有や要件定義は二人三脚で行う必要があります。理想的なのは、まずフリーランスの力を借りて即効性のある業務効率化を進めつつ、並行して教育訓練給付金などを活用して社内人材を育成し、最終的に自走できる体制を作ることです。

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井上 拓真

この記事を書いた人

井上 拓真

元スタートアップCTO・技術顧問

スタートアップでCTOとして技術組織を30名に拡大した経験を持つ。現在は複数社の技術顧問として、外注戦略やエンジニア採用のコンサルティングを行っています。

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