「振込手数料は受注者負担」は続けてよいか|代金からの控除と減額禁止 2026


この記事のポイント
- ✓振込手数料を受注者負担にして代金から差し引く慣習が
- ✓取適法・フリーランス新法でどこまで許されるかを解説
- ✓減額に該当する境界線と
「振込手数料は受注者負担でお願いします」。契約書にそう一文入っているだけで、毎月の入金額が数百円ずつ目減りしていく。積み重なれば年間で結構な金額になるのに、慣習として当たり前に受け入れてしまっている人は多い。振込手数料の受注者負担と、それを代金から一律で差し引く「減額」は、実は法律上まったく別の話だ。この記事では、取適法とフリーランス新法という2つのルールを軸に、どこまでが合法でどこからが違法なのかを整理する。
振込手数料をめぐる今の空気感
アパレル業界のEC運営代行をしていると、月ごとに複数のブランドから振込を受ける。ある取引先は振込手数料をきっちり150円だけ差し引いてくる。別の取引先は一律880円を「振込手数料」の名目で差し引いてくる。同じ「振込手数料負担」という条項なのに、実際に引かれる金額はまったく違う。これはたまたま起きている個体差ではなく、法律の理解度の差がそのまま金額差になって現れている典型例だ。
2024年11月に施行されたフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)で、フリーランスに業務委託をする事業者には代金の減額禁止という義務が明確に課された。さらに2026年1月には、従来の下請代金支払遅延等防止法が「中小受託取引適正化法(取適法)」に名称と内容を改めて施行され、規制の網が中小企業間の取引にも広がっている。振込手数料の扱いは、この2つの法律に共通して監視対象になっているテーマだ。
背景には、物価上昇と人件費高騰の中で、下請け・受託側が対等な交渉力を持てないまま不利な条件を飲まされ続けてきた構造がある。公正取引委員会や中小企業庁は、実態調査を通じて「振込手数料の過大な差し引き」を代金減額の典型パターンの一つとして名指しするようになった。フリーランスや小規模事業者にとって、この論点を知っているかどうかで、年間の手取り額に無視できない差が出る時代になっている。
取適法とフリーランス新法、何が違うのか
まず整理しておきたいのは、この2つの法律の対象範囲の違いだ。フリーランス新法は、従業員を雇わずに業務委託を受ける個人事業主(特定受託事業者)を保護する法律で、発注側は法人・個人を問わず幅広く対象になる。一方の取適法は、旧下請法の後継として、資本金基準に基づく中小企業間の委託取引を対象にしている。
どちらの法律も、代金の支払いに関して共通する禁止事項を定めている。受領拒否、支払遅延、代金減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、報復措置といった、いわゆる「7つの禁止行為」だ。振込手数料の一律差し引きは、この中の「代金減額」に該当するかどうかが焦点になる。
重要なのは、フリーランス新法も取適法も、契約書に「振込手数料は受注者負担とする」と明記してあること自体は禁止していない点だ。禁止されているのは、実費を超える金額を一律で差し引く行為、あるいは受注者との十分な協議なく一方的に差し引く行為である。この「実費」というキーワードが、合法と違法の分かれ目になる。
「合意があるから大丈夫」は2026年からは通用しない
これまで実務の現場では、「契約書に受注者負担と書いてあり、双方が合意しているなら問題ない」という認識が広く共有されていた。しかし2026年1月の取適法施行以降、この認識は明確に否定されている。
たとえ契約書に振込手数料の受注者負担が明記されていても、また当事者間で合意があったとしても、委託代金から振込手数料を差し引いて支払う行為は「代金の減額」に該当し、取適法第5条第1項第3号違反と判断されます。 出典: k-ksk.com
つまり「合意していたから」「契約書に書いてあるから」という理屈は、取適法の下ではもはや免罪符にならない。差し引く金額が、実際に金融機関に支払う手数料の実費を超えている場合、それは合意の有無にかかわらず違反として扱われる。
これは発注側にとってかなり大きな認識転換を迫るルール変更だ。従来の契約書ひな形をそのまま使い続けていると、知らないうちに違反状態に陥っているケースが今後増えるだろう。逆に受注者側からすれば、これまで「契約で決まっていることだから」と諦めていた振込手数料の一律控除に対して、法的な根拠を持って是正を求められる立場になったということでもある。
どこからが「違法な減額」になるのか
振込手数料の差し引きが違法な減額に該当するかどうかを判断する基準は、突き詰めると「実際にかかった手数料の実費を超えているかどうか」の一点に集約される。
もし、実際にかかった銀行の振込手数料が「150円(ネットバンキング利用など)」だった場合、差額の「350円」は、手数料の名目を借りた不当な減額とみなされるからです。差し引いて良いのは、あくまで「銀行に支払う実費分」のみです。 出典: biz.moneyforward.com
たとえば、契約書には「振込手数料500円を差し引く」と書いてあるのに、発注者がネットバンキングを使って振込むと実際の手数料は150円しかかからない、というケースは珍しくない。窓口振込を基準にした古い金額感覚のまま契約書のひな形を使い回していると、差額の350円は名目上「振込手数料」であっても、実態は不当な代金減額とみなされる。
さらに問題視されやすいのが、「事務手数料」「振込諸経費」といった名目で、銀行の振込手数料とは別に一定額を追加で差し引くパターンだ。
契約書に「振込手数料は受注者負担とする」とあっても、一律で「事務手数料 500円」や「振込手数料 800円」を差し引いている場合は違反のリスクがあります。 出典: biz.moneyforward.com
こうした一律固定額の差し引きは、振込方法や金融機関によって実費が変動するという事実と矛盾している。実費が変わらないはずがないのに、常に同じ金額を差し引いているという時点で、実費に基づかない運用だと推定されやすい。取引が振込回数の多い継続契約であるほど、この差額は積み重なって無視できない金額になる。
受注者負担が認められる条件とは
ここまで読むと「振込手数料を受注者に負担させること自体が全面禁止なのでは」と誤解しそうになるが、それは正確ではない。振込手数料の受注者負担は、条件付きで今も認められている。
条件を整理すると、次の3点に集約される。1つ目は、差し引く金額が実際にかかる振込手数料の実費と一致していること。2つ目は、その負担条件についてあらかじめ受注者と十分に協議し、契約書や発注書に明記していること。3つ目は、受注者が実質的に拒否できない一方的な押し付けになっていないこと。
実務的に最も安全なのは、振込方法をネットバンキングに統一し、実際の手数料をそのまま差し引く運用にすることだ。振込先の金融機関によって手数料が変わる場合は、それも含めて実費ベースで計算する。これなら「実費を超えて差し引いている」と指摘されるリスクは大きく下がる。
一方で、複数の取引先を横断して見ていると、振込手数料の話がそもそも契約書に一切書かれていないまま、慣習的に差し引かれているケースにも遭遇する。この場合は合意すら成立していない可能性が高く、より違反性が強い状態だと考えたほうがいい。契約書がない、あるいは曖昧な状態での差し引きは、まず是正の対象になる。
自分の取引がどちらの法律の対象になるか見分ける
フリーランス新法と取適法のどちらが適用されるかは、発注者側の資本金や従業員数によって決まる。フリーランス新法は、発注者が法人か個人事業主かを問わず、従業員を使用せずに業務委託を行う相手(特定受託事業者)との取引すべてが対象になる。つまり、発注者の規模にかかわらず、受注者が個人事業主であれば基本的にこの法律が適用される。
取適法は、旧下請法の枠組みを引き継ぎ、発注者と受注者の資本金の差に基づいて適用対象が決まる。製造委託・修理委託の場合は資本金3億円超の発注者と3億円以下(個人を含む)の受注者、情報成果物作成・役務提供委託の場合は資本金5千万円超の発注者と5千万円以下の受注者という組み合わせが典型的な対象範囲になる。
自分の取引がどちらに該当するかわからない場合は、まず発注者の資本金を確認するのが早い。中小企業庁のウェブサイトには適用対象を判定するための資料が公開されており、迷った場合はそちらで確認するのが確実だ。どちらの法律が適用される場合でも、振込手数料の実費超過差し引きが代金減額に該当するという結論は変わらない。
違反した場合の罰則とリスク
取適法・フリーランス新法に違反した場合、発注事業者にはどのようなリスクがあるのか。まず行政上の措置として、公正取引委員会や中小企業庁からの指導・助言、勧告が行われる。勧告に従わない、あるいは違反が悪質だと判断されると、事業者名が公表される場合がある。
事業者名の公表は、単なる行政処分にとどまらない実害を伴う。取引先や求職者から見て「代金を不当に減額する会社」というレッテルは、企業ブランドに直接ダメージを与える。特にBtoBの受発注が中心の業界では、こうした情報は業界内で速く広まる傾向がある。
さらに、減額分の返還を求められるケースもある。違法に差し引かれた振込手数料の累計額は、1件あたりは数百円でも、月次で継続している取引であれば年間で数万円規模になることも珍しくない。複数の受注者に対して同様の運用をしていた場合、返還額はさらに膨らむ。行政処分のリスクだけでなく、金銭的な原状回復コストも見込んでおく必要がある。
発注事業者が今すぐ行うべき実務対応
発注側の立場でリスクを減らすには、まず既存の契約書・発注書のひな形を総点検することから始めるべきだ。「振込手数料は受注者負担とする」という条項が入っている場合、その金額が実費ベースで運用されているかを確認する。固定額を一律で差し引いている運用が見つかったら、実費計算に切り替える、あるいは発注者負担に切り替えるかの判断が必要になる。
もっとも確実にリスクをゼロにする方法は、振込手数料を発注者負担に切り替えることだ。受注者側からすれば、代金から一切差し引かれずに満額が振り込まれるため、トラブルの芽そのものがなくなる。振込手数料は1件あたり数百円程度であることが多く、取引件数が極端に多くない限り、発注者側の負担増は限定的だ。コンプライアンスコストとして考えれば、むしろ安い投資と言える。
契約書の見直しと並行して、経理担当者や発注担当者への周知も欠かせない。法律が変わったことを知らないまま、旧来の運用を続けている現場は少なくない。振込手数料の扱いについて社内マニュアルを更新し、なぜこの運用に変えるのかという背景まで含めて共有しておくと、担当者が変わっても運用がぶれにくくなる。
受注者側が差し引かれていた場合の対応
受注者側の視点でも、知っておくべき対応策がある。まず、振込明細と契約書を突き合わせて、実際に差し引かれている金額が実費と一致しているかを確認する。ネットバンキング振込であれば手数料は数百円程度が相場であり、それを大きく上回る金額が継続的に差し引かれているなら、実費超過の疑いがある。
差し引かれた金額の記録は、月ごとに残しておくことをおすすめしたい。振込明細のスクリーンショットや、請求額と入金額の差分を表計算ソフトで管理しておくだけでも、後で交渉や相談をする際の根拠資料になる。私自身、EC運営代行の初期に振込差額に気づかず数か月放置してしまい、後から明細を遡って確認するのに苦労した経験がある。差額に気づいた時点でこまめに記録を残しておけば、余計な手間を減らせる。
差し引きに疑問を感じたら、まずは発注元に直接、実費との差額について確認してみるのが現実的な第一歩だ。それでも改善されない、あるいは説明が曖昧なままなら、中小企業庁や都道府県の下請かけこみ寺、公正取引委員会の相談窓口といった公的な相談先を利用する選択肢がある。フリーランス新法・取適法のどちらも匿名での相談・通報を受け付ける体制を整えているため、直接の交渉が難しい場合でも動ける手段は残されている。
振込手数料の相場感を知っておく
差し引かれている金額が妥当かどうかを判断するには、そもそも振込手数料の相場を知っておく必要がある。銀行振込の手数料は、同一銀行内の振込か、他行宛の振込かで大きく変わる。同一銀行の同一支店宛であれば無料になる場合もあり、他行宛でも3万円未満の少額振込であれば、ネットバンキング利用で150円から300円程度に収まることが多い。
2021年に全国銀行資金決済ネットワーク(全銀システム)の銀行間手数料が引き下げられて以降、多くの金融機関がネットバンキング経由の振込手数料を値下げしている。窓口や現金振込を基準にした古い料金表のまま「振込手数料800円」と契約書に固定額で書かれている場合、実態との乖離はますます大きくなっている。発注者がどの振込方法を使っているかによって実費は変わるため、受注者側は「自分宛の振込にどの経路が使われているか」を一度確認しておくと、差額の有無を判断しやすい。
窓口振込を続けている企業であれば、ネットバンキングに切り替えるだけで手数料そのものを引き下げられる。振込手数料を受注者負担にしている場合でも、発注者側がネットバンキングに切り替えれば実費が下がり、受注者の手取りも自然と増える。振込手数料の負担者を誰にするかという議論の前に、そもそも振込方法を見直すだけで解決できる部分は意外と大きい。
振込手数料以外にも潜む「隠れた減額」パターン
振込手数料の差し引きは、代金減額の中でもわかりやすい事例の一つに過ぎない。実務では、これ以外にも似たような構造の「隠れた減額」がいくつも存在する。たとえば、契約時に説明のなかった「システム利用料」を差し引くケース、検収時に一方的な値引きを求めるケース、消費税分をきちんと上乗せしないケースなどだ。
これらに共通しているのは、いずれも受注者が声を上げにくい立場を利用して、実費や合意内容を超えた金額を差し引いている点にある。振込手数料の問題を入り口に、契約書全体を見直す機会にするのがおすすめだ。特に継続的な取引をしている相手とは、年に一度は契約条件を確認し合う習慣をつけておくと、こうした差額の積み重ねに気づきやすくなる。
インボイス制度が始まって以降は、消費税の扱いをめぐる混乱も増えている。適格請求書発行事業者かどうかによって、発注者側が仕入税額控除を受けられる金額が変わるため、そこを理由に「経過措置分の税額を代金から差し引く」といった処理をしてくる発注者も出てきた。こうした税務上の調整と、振込手数料の実費差し引きは法的な性質が異なる。混同したまま「税金の話だから仕方ない」と受け入れてしまうと、正当な代金減額の是正を求める機会を逃してしまう。契約書に記載のない差し引きは、名目が何であれ、まず内容を確認する癖をつけておきたい。
契約前後でできるチェックリスト
実務でトラブルを避けるには、契約前と契約後の2つのタイミングでチェックポイントを分けて考えるとわかりやすい。契約前の段階では、振込手数料の負担者が明記されているか、明記されている場合はその金額が固定額か実費ベースかを確認する。固定額で書かれている場合は、その金額の根拠を発注者に尋ねてみるとよい。合理的な説明ができない発注者は、そもそも振込手数料の運用について深く検討していない可能性が高い。
契約後の段階では、毎回の入金額と請求額の差分を記録し、差額が振込手数料の相場と一致しているかを定期的に確認する。差額が一定額のまま何か月も変わらない場合、それは実費に基づかない固定額差し引きである可能性が高い。逆に、差額が振込先や振込方法によって変動している場合は、実費ベースで運用されている可能性が高く、違反リスクは低いと判断できる。
独自データから見えるフリーランス取引の実態
在宅ワーク・業務委託の求人を横断して見ていると、振込手数料の扱いは職種によってかなり温度差があることがわかる。エンジニア・開発系の案件は契約書が整備されている割合が高く、ソフトウェア作成者の年収・単価相場のように単価水準が可視化されている分野ほど、振込条件も明文化されている傾向がある。一方で、ライティングや編集のように少額・多件数の取引が中心になりやすい著述家,記者,編集者の年収・単価相場の領域では、振込手数料の扱いが曖昧なまま慣習で処理されているケースが目立つ。
AI関連の業務でも同様の傾向が見える。AIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、アプリケーション開発のお仕事といった専門性の高い分野は単価交渉力が強く、振込条件も受注者側から提示しやすい。専門性が高いほど、代金や振込条件の交渉で対等な立場に立ちやすいという構造は、業界を問わず共通している実感だ。
経営・法務まわりの専門知識を持つ人材の需要も伸びている。中小企業診断士のような資格を持つ人が、取適法対応のコンサルティング業務を副業として請け負う動きも出てきている。取適法の理解が浅い中小企業は今後も一定数存在し続けるため、この分野の相談ニーズはしばらく増える方向にあるだろう。
長くこの市場を見てきた立場から言えば、振込手数料の一律差し引きに疑問を持たず受け入れ続けている受注者ほど、他の条件面でも不利な立場に置かれやすい傾向がある。逆に、細かい差額であっても「なぜこの金額なのか」を確認する姿勢を持っている受注者は、単価交渉や納期交渉でも対等な関係を築けている印象が強い。振込手数料の問題は、金額の大小以上に「対等な取引relationshipを築けているかどうか」のバロメーターとして機能している。
中間マージンが乗らない直接取引の場合、同じ予算でも依頼する側はより多くの作業を依頼でき、受け手はより厚い手取りを得られるという構造がある。手数料0%を掲げる業務委託マッチングサービスが増えているのも、この「双方が得をする」構造を実現しやすいからだ。振込手数料のような小さな差し引きに敏感になることは、こうした直接取引の恩恵を最大限に受け取るための第一歩でもある。
福祉・介護分野のように補助金・助成金制度が絡む業務委託でも、代金の扱いをめぐるルールは年々厳格化している。介護・福祉事業所のDX化2026|IT導入補助金で介護記録を完全デジタル化や送迎バス安全装置の設置補助金2026|介護施設の義務化対応と申請手順、介護タクシー開業ガイド2026|助成金と補助金で開業費用を1/3にする方法といった行政手続き系の業務を受託する際も、代金の支払条件を事前に細かく確認しておく姿勢は共通して役立つ。
振込手数料という一見小さな論点は、実は取引全体の健全性を映す鏡のようなものだ。契約書の細部まで目を通し、実費と乖離した差し引きがないかを定期的にチェックする習慣を持つことが、フリーランス・受託事業者としての防御力を底上げする。
発注者・受注者双方にとっての長期的なメリット
振込手数料の問題を単なる「数百円の損得」として片付けてしまうと、この論点の本質を見誤る。実費を超える差し引きを放置している発注者は、他の取引条件でも受注者に不利な運用を続けている可能性が高い。逆に、振込手数料を実費ベースで正確に運用し、必要であれば発注者負担に切り替えている企業は、支払い条件全体について誠実な姿勢を持っていることが多い。振込明細は、その企業が取引相手をどう扱っているかを映す小さな指標になる。
受注者側にとっても、振込手数料の差額を放置しないことには意味がある。年間で数千円から1万円程度の差額であっても、複数の取引先と継続的に取引していれば、その合計額は決して小さくない。差額に気づいて是正を求めることは、単に手取りを増やすだけでなく、発注者との関係を「言われたことをただ受け入れる下請け」から「対等な交渉ができる取引先」へと変えていく第一歩にもなる。
法律が整備されても、現場での運用が変わるまでにはタイムラグがある。契約書のひな形を更新していない発注者、旧来の慣習をそのまま引き継いでいる経理担当者は、今後もしばらく存在し続けるだろう。だからこそ、受注者側が振込手数料の仕組みを正しく理解し、必要な場面で声を上げられる状態にしておくことが、これからのフリーランス・業務委託取引において重要な自衛策になる。
よくある質問
Q. 振込手数料を受注者負担にすること自体は違法ですか?
条項として明記すること自体は違法ではありません。ただし差し引く金額が実際の振込手数料の実費を超える場合、その超過分は取適法・フリーランス新法上の「代金減額」に該当し違反となります。
Q. 契約書に「合意の上で受注者負担」と書いてあれば問題ないですか?
2026年1月施行の取適法以降、合意があっても実費を超える差し引きは違反と判断されます。合意の有無ではなく、実費と一致しているかどうかが判断基準です。
Q. 振込手数料を差し引かれ続けていた場合、どこに相談すればよいですか?
中小企業庁や都道府県の下請かけこみ寺、公正取引委員会の相談窓口が利用できます。フリーランス新法・取適法とも匿名相談を受け付けており、直接交渉が難しい場合でも活用できます。
Q. 発注者側が今すぐできる対策は何ですか?
既存の契約書・発注書のひな形を点検し、固定額差し引きになっている場合は実費計算に切り替えるか、振込手数料を発注者負担に変更するのが最も確実な対策です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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