個人事業主の青色申告の帳簿の付け方|白色との違い・家事按分・決算整理【2026年版】


この記事のポイント
- ✓個人事業主が避けて通れない帳簿の付け方を
- ✓2026年の最新税制に基づき5ステップで徹底解説
- ✓青色申告・白色申告の違いから
青色申告と白色申告、帳簿の義務はどう違うのか
個人事業主が確定申告の方式を選ぶとき、多くの人は「青色申告のほうが節税になる」という情報だけを知って手続きを進めます。しかし実際に事業を始めてから直面するのは、日々の帳簿づけという地味で継続的な作業です。青色申告と白色申告では、法律上求められる帳簿の水準がまったく異なります。ここでは、両者の違いを軸にしながら、青色申告(特に65万円控除)を選んだ人が実務でどう記帳し、どう決算整理を行うかを具体的に解説します。
白色申告でも2014年以降、記帳と帳簿等の保存が義務化されていますが、求められるのは単式簿記(家計簿のような収入・支出の記録)で足ります。一方、青色申告で最大控除額を狙う場合は複式簿記による記帳が前提になります。
| 項目 | 白色申告 | 青色申告(10万円控除) | 青色申告(55万円/65万円控除) |
|---|---|---|---|
| 記帳方式 | 単式簿記(簡易な帳簿) | 単式簿記でも可 | 複式簿記が必須 |
| 必要な帳簿 | 法定帳簿(簡易) | 現金出納帳など簡易帳簿 | 仕訳帳・総勘定元帳を含む正規の簿記 |
| 貸借対照表の添付 | 不要 | 不要 | 必要 |
| 特別控除額 | なし | 10万円 | 55万円(要件満たせば+10万円で65万円) |
| e-Taxまたは電子帳簿保存 | 不要 | 不要 | 65万円控除の場合は要件 |
この表からわかる通り、白色申告と青色申告10万円控除は「記帳のハードルはそれほど変わらない」というのが実情です。差が大きく出るのは、55万円・65万円控除を狙うケースで、ここで初めて「正規の簿記の原則」による複式簿記が要求されます。姉妹記事(初心者向けセットアップ編)では口座分離や会計ソフトの選び方を扱っていますが、本記事ではこの複式簿記の中身そのものに踏み込みます。
65万円・55万円・10万円控除、それぞれで求められる記帳水準
青色申告特別控除には3段階あり、記帳水準の要件が段階的に上がります。
- 10万円控除: 単式簿記(簡易帳簿)でも適用可能。事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかがある人が対象。
- 55万円控除: 複式簿記による記帳、仕訳帳・総勘定元帳の作成、貸借対照表と損益計算書を含む青色申告決算書の提出が要件。
- 65万円控除: 55万円控除の要件に加えて、e-Taxによる電子申告、または優良な電子帳簿保存(電子帳簿保存法の要件を満たした電子帳簿の保存)のいずれかを満たす必要があります。
つまり「複式簿記で記帳する」こと自体は55万円控除の時点で必須であり、65万円控除との差分は記帳方法ではなく提出・保存方法(電子化)にあります。この構造を誤解して「65万円控除だから複式簿記が必要で、55万円なら簡易でよい」と考えている人が少なくありませんが、正しくは55万円の時点で複式簿記が前提になります。
要件を満たせなかった場合にどうなるかも押さえておく必要があります。複式簿記で記帳していても電子申告等の要件を満たさなければ控除額は55万円にとどまり、そもそも複式簿記の要件(仕訳帳・総勘定元帳の作成、貸借対照表の添付)を満たさなければ控除額は10万円まで下がります。控除額は記帳の質に対する直接的な対価と考えると理解しやすいでしょう。
複式簿記の具体的な記帳例(仕訳)
複式簿記は「一つの取引を借方(左)と貸方(右)に分けて記録する」方式です。ここでは個人事業主によくある取引を仕訳例で示します。勘定科目の呼び方は会計ソフトによって多少異なりますが、考え方は共通です。
例1: 売上をクレジットカード決済で受け取った場合
売上代金がすぐに口座に入金されず、決済代行会社を経由するケースです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金(クレジット) | 110,000円 | 売上高 | 110,000円 |
後日、決済手数料を差し引いた金額が入金された時点で、以下のように処理します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 事業用預金 | 106,700円 | 売掛金(クレジット) | 110,000円 |
| 支払手数料 | 3,300円 |
例2: 経費を現金で支払った場合
打ち合わせのための交通費を現金で支払った場合です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 1,200円 | 現金 | 1,200円 |
例3: 経費を事業用口座から支払った場合
インターネット回線の利用料を事業用口座から引き落とした場合です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 通信費 | 6,000円 | 事業用預金 | 6,000円 |
例4: 家事按分が必要な経費を計上する場合
自宅兼事務所の家賃を事業用口座から支払い、事業割合が40%の場合です。全額をいったん経費計上し、決算時に按分するか、支払い時点で按分するかは運用次第ですが、支払い時点で按分する例を示します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 地代家賃 | 40,000円 | 事業用預金 | 100,000円 |
| 事業主貸 | 60,000円 |
「事業主貸」は、事業のお金がプライベートの支出に使われたことを示す勘定科目です。個人事業主の会計特有の科目なので、初めて記帳する人は必ず押さえておく必要があります。
例5: 固定資産を購入した場合
10万円以上のパソコンを現金購入した場合です(30万円未満であれば少額減価償却資産の特例により一括経費計上できる場合がありますが、ここでは通常の固定資産計上の例を示します)。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 工具器具備品 | 250,000円 | 現金 | 250,000円 |
主要な勘定科目一覧と使い分け
個人事業主の記帳でよく使う勘定科目を、収益・費用・資産・負債・資本(事業主勘定)に分けて整理します。
収益
- 売上高: 本業の売上
- 雑収入: 本業以外の収入(還付加算金、補助金など)
費用でよく使う科目
- 仕入高: 商品や材料の仕入れ(製造業・小売業など)
- 外注費: 業務委託・外注先への支払い
- 旅費交通費: 電車代、タクシー代、出張時の宿泊費
- 通信費: 電話代、インターネット回線、郵送費
- 水道光熱費: 電気・ガス・水道(家事按分対象になりやすい)
- 地代家賃: 事務所・自宅兼事務所の家賃(家事按分対象)
- 消耗品費: 10万円未満の備品、事務用品
- 減価償却費: 固定資産の取得価額を耐用年数で按分した費用
- 支払手数料: 決済手数料、振込手数料
- 接待交際費: 取引先との会食など
資産・負債・事業主勘定
- 現金: 手元現金
- 事業用預金: 事業用口座の残高
- 売掛金: 未回収の売上代金
- 買掛金: 未払いの仕入代金
- 事業主貸: 事業の資金からプライベート用途に支出した金額
- 事業主借: プライベートの資金を事業に投入した金額
- 元入金: 個人事業の資本金に相当する勘定(年に一度、決算整理で更新)
これらの科目は、姉妹記事で扱っている「そもそも複式簿記を選ぶかどうか」という導入段階の話とは別に、実際に複式簿記を選んだ後に必ず向き合う実務そのものです。科目を毎回統一して使うことが、後の総勘定元帳・決算書作成の精度を左右します。
家事按分の考え方と具体的な計算例
自宅を事務所と兼用している場合、家賃・光熱費・通信費などは全額を事業経費にはできず、事業で使用している割合だけを経費として計上します。これを家事按分と呼びます。
按分の基準として一般的に用いられるのは、床面積割合、使用時間割合、契約容量割合などです。事業の実態に即して合理的な基準を選び、その基準を継続して使うことが重要です。
家賃の按分計算例
自宅の総床面積が60平米、そのうち事務所として使用しているスペースが15平米の場合。
- 事業按分割合: 15平米 ÷ 60平米 = 25%
- 月額家賃10万円の場合の経費計上額: 10万円 × 25% = 25,000円
通信費の按分計算例
自宅兼事務所のインターネット回線を、業務時間の割合で按分する場合。
- 1日の業務時間: 8時間、生活時間: 16時間と仮定
- 事業按分割合: 8時間 ÷ 24時間 ≒ 33%
- 月額通信費8,000円の場合の経費計上額: 8,000円 × 33% ≒ 2,640円
電気代の按分計算例
床面積割合を基準にする場合。
- 事業按分割合: 25%(上記の家賃と同じ基準を使用)
- 月額電気代15,000円の場合の経費計上額: 15,000円 × 25% = 3,750円
按分割合の妥当性は税務調査で確認されることがあるため、算定根拠(床面積の図面、業務時間の記録など)を残しておくことが望ましい対応です。按分の基準や割合について迷う場合は、税理士や所轄税務署に確認してください。
青色申告で作成が必要な帳簿と決算書との関係
55万円・65万円控除を受けるためには、以下の帳簿(正規の簿記の原則に基づく帳簿)を作成・保存する必要があります。
- 仕訳帳: すべての取引を日付順に借方・貸方で記録した帳簿
- 総勘定元帳: 仕訳帳の内容を勘定科目ごとに転記して集計した帳簿
- 現金出納帳: 現金の入出金を記録した補助簿
- 預金出納帳: 事業用口座の入出金を記録した補助簿
- 売掛帳・買掛帳: 売掛金・買掛金の発生と回収・支払いを管理する補助簿
- 固定資産台帳: 固定資産の取得・減価償却の状況を管理する帳簿
これらの帳簿は、それぞれ独立して作成するものではなく、日々の仕訳帳への記帳が総勘定元帳に転記され、その集計結果が最終的に青色申告決算書の損益計算書・貸借対照表に反映されるという一連の流れの中にあります。会計ソフトを使えば、仕訳を入力するだけで総勘定元帳や決算書の該当項目まで自動的に反映される仕組みになっていますが、その裏側でどのような転記が行われているかを理解しておくと、数字のズレが生じたときの原因追跡がしやすくなります。
保存期間についても押さえておく必要があります。仕訳帳・総勘定元帳などの帳簿類は原則7年間、請求書や領収書などの証憑書類も原則7年間(一部の書類は5年間)の保存が求められます。
期末の決算整理(減価償却・棚卸・未払費用)
日々の記帳を終えた後、決算にあたって年に一度行う調整作業が決算整理です。主な項目は以下の通りです。
減価償却
固定資産台帳に登録した資産について、耐用年数に応じた減価償却費を計算し、仕訳を起こします。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 50,000円 | 工具器具備品 | 50,000円 |
定額法・定率法など償却方法によって計算式が異なるため、資産の種類ごとに適用可能な方法を確認する必要があります。
棚卸(在庫の評価)
商品や材料を扱う事業の場合、期末時点で残っている在庫を棚卸して仕入高から控除します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 期末商品棚卸高(資産) | 80,000円 | 仕入高 | 80,000円 |
未払費用・未収収益の計上
発生主義に基づき、期末時点でまだ支払っていない費用や、まだ受け取っていない収益を計上します。例えば12月分の通信費が翌年1月に引き落とされる場合です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 通信費 | 6,000円 | 未払費用 | 6,000円 |
事業主勘定の整理(元入金の更新)
期中に発生した「事業主貸」「事業主借」の残高を、期末に元入金へ振り替えて整理します。これは個人事業主特有の処理で、翌期の元入金の額を確定させる意味を持ちます。
これらの決算整理は、複式簿記による正規の帳簿を前提にした処理であり、単式簿記(白色申告や10万円控除)では基本的に求められません。この点が、55万円・65万円控除を選ぶことの実務的な負荷の核心部分です。
e-Tax・電子申告と65万円控除の要件
55万円控除の要件をすべて満たした上で、さらに以下のいずれかを満たすと控除額が65万円になります。
- e-Taxによる申告(電子申告): 確定申告書と青色申告決算書をe-Tax経由で提出する
- 優良な電子帳簿の保存: 電子帳簿保存法に定める要件を満たした形で、仕訳帳・総勘定元帳などを電子データのまま保存する
実務上は、会計ソフトで記帳し、そのままe-Taxで申告するルートを選ぶ事業者が大半です。マイナンバーカードとICカードリーダー、またはスマートフォンによる読み取りで本人確認を行い、確定申告書等作成コーナーや会計ソフトのe-Tax連携機能を使って送信します。
注意したいのは、複式簿記で記帳していても、e-Taxでの申告や優良な電子帳簿保存のいずれも行わなかった場合は控除額が55万円にとどまる点です。逆に言えば、記帳の労力自体は55万円控除と65万円控除でほぼ変わらないため、申告方法さえ電子化すれば追加の負担なく10万円分の控除を上乗せできることになります。要件の詳細や個別の事情による適用可否については、税理士や所轄税務署に確認することをお勧めします。
まとめ
青色申告の帳簿実務は、白色申告との違いを理解するところから始まります。10万円控除であれば単式簿記でも足りますが、55万円・65万円控除を狙うのであれば複式簿記による仕訳帳・総勘定元帳の作成、貸借対照表を含む青色申告決算書の提出が必須です。65万円控除と55万円控除の差は記帳方法ではなくe-Taxや電子帳簿保存といった申告・保存方法にある点も、誤解しやすいポイントとして押さえておく必要があります。
実務の中心となるのは、売上・経費・固定資産・家事按分といった日々の取引を勘定科目ごとに正しく仕訳し、期末に減価償却や棚卸、未払費用の計上といった決算整理を行う一連の作業です。特に家事按分は、床面積割合や使用時間割合など合理的な基準を継続して使うことが求められ、按分根拠の記録を残しておくことも重要です。複式簿記の記帳は最初こそ負担に感じられますが、仕訳のパターンを一度理解してしまえば、日々の処理は型に沿って進められるようになります。個別の判断に迷う場面では、税理士や所轄税務署への確認を通じて、自分の事業に合った正確な処理を積み重ねていくことが、青色申告のメリットを最大限に活かす近道になります。
よくある質問
Q. エクセルで帳簿を付けても問題ありませんか?
形式上は問題ありませんが、2024年からの改正電子帳簿保存法に対応するためには、ファイルの上書き履歴が残る仕組みや、検索要件を満たすファイル名の管理など、非常に煩雑なルールを守る必要があります。法対応の観点からは、自動的にこれらの要件を満たしてくれるクラウド会計ソフトの利用を強く推奨します。
Q. 領収書を紛失してしまったのですが、経費にできませんか?
原則として領収書やレシートが必要ですが、どうしても紛失した場合は「出金伝票」を作成し、支払先、日付、金額、内容を詳しく記録することで代用できる場合があります。ただし、頻繁に行うと税務署からの信頼を損なうため、電子保存等を活用して紛失を防ぐ仕組みを作りましょう。
Q. 自宅のネット代は全額経費にできますか?
全額は難しいのが一般的です。仕事で使っている時間とプライベートで使っている時間の比率を算出し、その割合に応じて計上する「家事按分」が必要です。例えば、1日のうち8時間を仕事に使っているのであれば、33%程度を経費とするのが妥当なラインとなります。
Q. 白色申告なら帳簿を付けなくても良いというのは本当ですか?
いいえ、2014年以降、白色申告であってもすべての事業者に帳簿の作成と保存が義務付けられています。どうせ帳簿を付けるのであれば、最大65万円の控除が受けられる「青色申告」を選択する方が、節税メリットが非常に大きく賢明な選択と言えます。
Q. 副業で始めたばかりですが、初年度から帳簿は必要ですか?
はい、必要です。副業であっても事業所得や雑所得が発生する場合、帳簿の作成と保存の義務があります。特に青色申告の特典を受けたい場合は、開業届と同時に青色申告承認申請書を提出し、複式簿記での記帳を始める必要があります。
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監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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