会社に所属しながら個人事業主になる手順|副業時の税金と3つの注意点【2026年版】

前田 壮一
前田 壮一
会社に所属しながら個人事業主になる手順|副業時の税金と3つの注意点【2026年版】

この記事のポイント

  • 会社員として安定した給与を受け取りながら
  • 自分のスキルで稼ぐ「個人事業主」を兼ねる働き方が当たり前の時代になりました
  • 副業解禁が進む2026年

会社員として安定した給与を受け取りながら、自分のスキルで稼ぐ「個人事業主」を兼ねる働き方が当たり前の時代になりました。副業解禁が進む2026年、単なる「アルバイト」ではなく「事業」として取り組むことで、税務上の大きなメリットを享受できる人が増えています。しかし、正しい手順を踏まなければ、会社に思わぬ形でバレたり、税負担が逆に増えてしまったりするリスクもゼロではありません。本記事では、現役のフリーランスエンジニアの視点から、会社員が個人事業主を掛け持ちするための具体的な手順と、絶対に外せない税務・実務のポイントを徹底的に解説します。

2026年、会社員が個人事業主を兼ねる「ハイブリッド型」が急増している背景

現在、日本の労働市場では「副業・兼業」が完全に市民権を得ています。厚生労働省が公表しているガイドラインの改定以降、大手企業の 50% 以上が副業を容認または推奨しており、2026年時点では、単なるお小遣い稼ぎではなく、将来の独立を見据えて「開業届」を出す会社員が激増しました。

この背景には、終身雇用制度の事実上の崩壊と、インフレによる実質賃金の伸び悩みがあります。給与という一本の柱に頼るリスクを回避するため、個人の看板で仕事を受ける仕組みを作ることは、現代のビジネスパーソンにとって最も合理的な生存戦略といえるでしょう。

特にデジタルスキルを持つ層にとって、会社員としての看板を活かしつつ、個人としてプロジェクトに参画することは、スキルの向上と収入の増加を同時に達成できる効率的な手段です。

副業・兼業については、企業がこれを禁止又は制限できるのは、労務提供上の支障がある場合、業務秘密が漏洩する場合、競業により企業の利益を害する場合、企業の名誉や信用を損なう場合といった合理的な理由がある場合に限られる。 出典: mhlw.go.jp

このように、公的機関も「原則容認」の立場を強めており、会社員が個人事業主になるハードルはかつてないほど低くなっています。

会社員×個人事業主のメリット:節税と社会保険の「二重取り」

会社員が個人事業主になる最大の魅力は、税金と社会保険の仕組みを「掛け持ち」できる点にあります。これはいわば、会社員としての「安定」と個人事業主としての「自由(節税枠)」のいいとこ取りです。

まず大きなメリットとして挙げられるのが、社会保険料の負担増がないことです。日本の社会保険制度では、会社員としての給与に対して保険料が算出されますが、副業による「事業所得」に対しては、原則として健康保険や厚生年金保険料が追加でかかりません(※ただし、副業先でも社会保険に加入する条件を満たす場合は除く)。

つまり、本業の給与が 30万円 で、副業の事業所得が 50万円 あったとしても、社会保険料は 30万円 の給与分だけで済むのです。これがパートやアルバイトの給与所得だと、合計額で保険料が算出されたり、加入義務が生じたりする場合があるため、事業所得という形態は非常に有利です。

給与所得と事業所得の損益通算による所得税の還付

次に、所得税の還付です。個人事業主として活動し、事業が赤字になった場合、その赤字を会社員の給与所得から差し引く「損益通算」が可能です。

例えば、副業の立ち上げ時期に PC の購入代金や広告費で 100万円 の経費がかかり、売上が 20万円 だったとします。この場合、 80万円 の赤字になりますが、これを本業の年収から差し引くことで、源泉徴収された税金が戻ってきます。

もちろん、事業実態がないのに無理やり赤字を作ることは認められませんが、正当な事業として活動している限り、初期投資の負担を税還付で補えるのは強力なメリットです。

青色申告特別控除による所得の圧縮

また、個人事業主として「青色申告」を選択すれば、最大 65万円 の特別控除を受けることができます。これは、実際に現金が出ていかないにもかかわらず、利益から 65万円 を差し引いて税金を計算できる制度です。

会社員の給与所得控除に加え、この青色申告控除を併用することで、実質的な非課税枠を大きく広げることが可能です。所得税率が 20% の人の場合、これだけで住民税と合わせて年間 20万円 程度の節税効果が見込めます。

実務者が教える個人事業主への最短ステップ

「個人事業主になる」といっても、難しい手続きは必要ありません。基本的には書類を税務署に提出するだけで完了します。しかし、タイミングと書類の組み合わせが重要です。

まず、提出すべき書類は以下の 2種類 です。

  1. 個人事業の開業・廃業等届出書(通称:開業届)
  2. 所得税の青色申告承認申請書

開業届は、事業を開始してから 1ヶ月 以内に提出するのがルールです。そして、青色申告の恩恵を受けたい場合は、原則としてその年の 3月15日 まで(または開業から 2ヶ月 以内)に申請書を出す必要があります。この期限を逃すと、その年は白色申告しかできず、節税メリットが半減してしまいます。

屋号の決定と専用口座の開設

開業届を出す際には「屋号」を決めることができます。必須ではありませんが、クライアントからの信頼を得るためには、自分の氏名だけでなく屋号を持っておくのが無難です。

また、私が強くおすすめするのは、開業と同時に「事業用専用口座」を作ることです。会社員の給与振込口座と一緒にしてしまうと、生活費と事業経費の区別がつかなくなり、確定申告時に膨大な時間のロスが発生します。最近ではネット銀行を中心に、個人事業主向けの口座開設が数日で完了するサービスが増えています。

筆者の体験談:初めての青色申告で救われた「専用口座」の重要性

ここで私の実体験をお話しします。私が副業で Web 開発を始めた 1年目 、「とりあえず稼いでから考えよう」と、個人のメイン口座ですべての入出金を管理していました。

結果、確定申告の時期になって絶望しました。コンビニの支払いが昼食代(経費外)なのか、打ち合わせ用の資料代(経費)なのか、数ヶ月前の記憶を辿る作業に 3日間 費やしたのです。 2年目 から専用口座とクレジットカードを完全に分けたところ、会計ソフトと同期するだけで帳簿がほぼ自動で完成するようになりました。この「最初の手間」を惜しまないことが、継続のコツです。

【要注意】副業個人事業主が直面する3つの壁と解決策

メリットが多い「会社員兼個人事業主」ですが、注意すべき落とし穴が 3つ あります。これを知らずに始めると、会社とのトラブルや予期せぬ出費に繋がります。

特に「会社にバレたくない」という切実な悩みを持つ方は、住民税の仕組みを正しく理解しておく必要があります。

1. 会社への副業バレを防ぐ住民税の「普通徴収」

会社に副業がバレる最大の原因は、確定申告後の「住民税」です。通常、住民税は給与から天引き(特別徴収)されますが、副業で所得が増えると、その分住民税の額も上がります。会社の給与担当者が「この人の年収に対して住民税が高すぎる」と気づくことでバレるケースがほとんどです。

これを防ぐには、確定申告書の第二表にある「住民税に関する事項」で、給与以外の所得に対する住民税の徴収方法を「自分で納付(普通徴収)」にチェックを入れる必要があります。

これにより、副業分の住民税納付書が自宅に届くようになり、会社の給与天引き分には反映されません。ただし、自治体によっては給与所得との合算を優先する場合があるため、念のためお住まいの市区町村の税務窓口に電話で「副業分を普通徴収にできるか」を確認しておくのが最も確実です。

2. 失業保険の受給制限に関するリスク管理

盲点になりがちなのが、会社を辞めた時の「失業保険」です。開業届を出して個人事業主になっていると、例え売上がゼロであっても「就職している状態」とみなされ、会社を退職した際に失業手当を受け取れない可能性があります。

もし近いうちに退職を考えており、失業手当を頼りにしている場合は、開業届を出すタイミングを慎重に検討すべきです。再就職手当の対象になるケースもありますが、受給要件は非常に厳格です。

3. 社会保険の被扶養者から外れる基準の確認

あなたがもし、家族の扶養に入りながら短時間の派遣や契約社員として働き、個人事業を始める場合はさらに注意が必要です。

通常、扶養の範囲内とされる年収 130万円 の壁ですが、健康保険組合によっては「個人事業主になった時点で、収入に関わらず扶養から外れる」という独自ルールを設けていることがあります。開業前に、家族が加入している健康保険組合の規約を必ずチェックしてください。

所得税の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた全ての所得の金額とそれに対する所得税等の額を計算し、申告期限までに確定申告書を提出する手続です。 出典: biz.moneyforward.com

2026年版・副業個人事業主に必須の「インボイス制度」と「電子帳簿保存法」対応

2026年の現在、個人事業主として避けて通れないのが「インボイス制度」と「電子帳簿保存法」への対応です。

インボイス制度については、副業であっても BtoB(対企業)の仕事を受ける場合、適格請求書発行事業者の登録を求められる場面が増えています。登録すると売上が 1,000万円 以下でも消費税の納税義務が生じるため、自身の利益率と取引先との関係を天秤にかけて判断する必要があります。

また、電子帳簿保存法により、メールや Web サイトからダウンロードした領収書データは、紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま一定のルール(検索機能の確保など)で保存することが義務化されています。

「副業だから適当でいい」という言い訳は通用しません。クラウド型の会計ソフトを利用すれば、これらの法対応もスムーズに行えます。月額 1,000円〜2,000円 程度のコストはかかりますが、ミスのリスクと作業時間を考えれば、必要経費と割り切るべきでしょう。

賢く稼ぐための収支管理と確定申告の自動化

個人事業主として成功し続けるためには、本業のパフォーマンスを落とさずに副業を回す「効率化」が不可欠です。そのためには、アナログな管理を一切排除することをおすすめします。

具体的には、以下の 3つ を連携させてください。

  1. 事業用銀行口座
  2. 事業用クレジットカード
  3. クラウド会計ソフト(マネーフォワード、freee、弥生など)

これらを連携させれば、日々の経費精算はスマホで数回タップするだけで終わります。経費にできるか迷うグレーゾーンのもの、例えば自宅の家賃や光熱費の一部(家事按分)なども、一度設定してしまえば自動で計算してくれます。

所得税の仕組みについて詳しく知りたい方は、国税庁の公式サイトで最新の税率表や控除額を確認しておくと良いでしょう。

所得税のしくみ(国税庁公式)

個人事業主として最初の一歩を踏み出すためのチェックリスト

最後に、これから会社に所属しながら個人事業主を目指す方が、今日から取り組むべきアクションをまとめました。

  1. 就業規則の確認: 副業が禁止されていないか、許可制かを確認する
  2. 事業計画(小規模でOK)の策定: 何で稼ぐのか、初期投資はいくらかを算出する
  3. 専用口座・カードの用意: 既存のものと分けるための新規契約を行う
  4. 開業届の作成: オンライン作成サービスを利用すれば 10分 程度で作成可能です
  5. クラウド会計ソフトの導入: 最初の 1件 の売上が発生する前に設定を済ませる

「いつか独立したい」と考えているなら、会社員の身分があるうちに個人事業主として「稼ぐ練習」をしておくのは、リスクが極めて低い投資です。失敗しても給与がありますし、成功すればそのまま独立への滑走路になります。

まずは 1円 を自分の力で稼ぎ、それを正しく申告する。そのプロセスこそが、あなたを本当の意味での「ビジネスパーソン」へと引き上げてくれるはずです。

まとめ

会社員として働きながら個人事業主を兼ねる働き方は、節税メリットを享受しつつキャリアの幅を広げる有効な選択肢ですが、成功には正しい税務知識とリスク管理が欠かせません。開業にあたっては損益通算や青色申告の利点を最大限に活かす準備を整えるとともに、住民税の徴収方法や社会保険の扶養基準といった会社員特有の注意点を確実に押さえておく必要があります。2026年現在はインボイス制度や電子帳簿保存法への適切な対応も不可欠となるため、管理ツールの導入など事務作業の効率化も並行して進めるのが賢明です。まずは自身の環境におけるリスクとリターンを正しく把握した上で、チェックリストを参考に「事業」としての第一歩を具体的に踏み出してみてください。

よくある質問

Q. 会社に内緒で個人事業主になれますか?

可能です。確定申告時に住民税の納付方法を「普通徴収(自分で納付)」に選択することで、副業分の所得に対する住民税額が会社に通知されるのを防ぐことができます。ただし、会社の就業規則で副業や兼業がどのように規定されているかは、トラブル防止のため事前に必ず確認しておきましょう。

Q. 開業届を出すタイミングに決まりはありますか?収入が少なくても出すべきですか?

原則として事業開始から1ヶ月以内の提出が推奨されています。売上の多寡にかかわらず提出は可能で、特に「青色申告」による最大65万円の所得控除などの税務メリットを享受したい場合は、早めに提出して「青色申告承認申請書」を併せて出しておくのが得策です。

Q. 本業の会社を退職することになった場合、失業保険は受け取れますか?

個人事業主として開業届を提出している場合、原則として「失業状態」とはみなされないため、失業保険(基本手当)を受給できない可能性が非常に高いです。退職後に失業保険の受給を検討している場合は、開業届を出すタイミングや、状況に応じた廃業届の提出について慎重に検討する必要があります。

Q. 副業の事業所得が増えると、会社の社会保険料も高くなりますか?

会社員として社会保険(健康保険・厚生年金)に加入している場合、副業の事業所得がいくら増えても、会社で給与から天引きされる社会保険料の額は変わりません。社会保険料はあくまで会社から支払われる「給与額」に基づいて算出されるため、副業収入は算定根拠に含まれないからです。

Q. 副業の個人事業主でも「インボイス制度」への対応は必要ですか?

取引先が一般消費者のみ(BtoC)の場合や、取引先から登録を求められない場合は、必ずしも登録(課税事業者への転換)は必須ではありません。しかし、取引先が法人の場合、インボイス登録がないと取引先側で仕入税額控除ができなくなるため、今後の受注や単価交渉に影響する可能性がある点は理解しておく必要があります。

前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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