扱える範囲を明記できるかで、AI・セキュリティ支援の案件の取り方は決まる


この記事のポイント
- ✓AI・セキュリティ支援の案件の取り方は
- ✓扱える範囲を書けるかどうかで決まります
- ✓対象・深さ・成果物・責任の4軸で範囲を定義する方法
先日、AI導入の支援を始めたばかりという方から相談を受けました。「提案は何本も出しているのに、まったく通らない」と。提案文を見せていただいたところ、原因はすぐに分かりました。「AI活用とセキュリティ全般をご支援します」としか書かれていなかったんです。
結論から言うと、AI・セキュリティ支援の案件の取り方を決めているのは、スキルの高さではありません。扱える範囲を、具体的な言葉で書けるかどうかです。これ、知らない人が本当に多い。
なぜかというと、発注する側は「何ができるか」より「何をどこまでやってくれるか」を知りたいからです。範囲が読めない相手には、社内の説明がつきません。逆に言えば、範囲さえ明確なら、実績が少なくても発注の判断はできます。今日はその範囲の書き方を、契約実務の視点から具体的にお話しします。
「セキュリティ支援ができます」では、なぜ選ばれないのか
発注側の立場になって考えてみましょう。社内でAIツールの利用が広がり、情報漏洩のリスクが不安になってきた。誰かに相談したいけれど、社内には詳しい人がいない。そこで外部に依頼しようとします。
このとき担当者が上司に説明しなければならないのは、次の3つです。誰に、いくらで、何を頼むのか。そして最後の「何を」が書けないと、稟議が通りません。
「セキュリティ全般を支援していただきます」という説明で、決裁が下りると思いますか。下りません。上司は必ず「具体的に何を納品してもらうの」と聞きます。
つまり、範囲を明記するというのは、あなた自身のためではなく、発注担当者が社内を通すための材料を渡す行為なんです。ここを理解しているかどうかで、提案の書き方がまるで変わります。
そしてもうひとつ。AI関連の支援では、扱える範囲が曖昧なまま進むと、権利や責任の問題に直結します。
権利侵害を防ぐためには、たとえば文章コンテンツを外部に発信する場合、AIが生成した原稿を人間が詳細に検証し、必要に応じて大幅な修正を加えることが重要です。また、より安全なアプローチとして、AIには文章の骨組みや構成のみを作成させ、実際の執筆作業は人間が担当する手法も有効です。 出典: lac.co.jp
ここに書かれている「骨組みだけをAIに作らせ、執筆は人間が担当する」という切り分け。これは作業手順の話であると同時に、責任範囲の話でもあります。どこまでをAIに任せ、どこからを人間が担保するのか。この線を引けるかどうかが、そのまま契約の範囲設計になります。
範囲を作る4つの軸
では、どう書けばいいのか。範囲は4つの軸に分解すると、驚くほど書きやすくなります。
軸1 対象 何を見るのか
まず、扱う対象を名指しします。「セキュリティ」ではなく、「生成AIツールの社内利用に関する規程」「クラウドストレージのアクセス権限設定」「従業員向けの情報取り扱い研修の教材」というレベルまで下ろします。
対象を絞ると仕事が減ると思われがちですが、実際は逆です。絞ったほうが問い合わせは増えます。担当者は自分の課題と一致するものを探しているので、広い言葉では引っかからないんですね。
軸2 深さ どこまで判断するのか
同じ対象でも、深さで仕事の重さが変わります。3段階で考えると整理しやすい。
第1段階は、調査と整理です。公開されている資料や指針を集め、依頼主の状況に合わせて並べる。判断は依頼主が行います。
第2段階は、案の作成です。規程やチェックリストのたたき台を作り、選択肢と根拠を示す。最終判断はやはり依頼主です。
第3段階は、判断そのものへの関与です。「この設定で問題ありません」と言い切る領域。ここは責任の重さがまったく違います。
副業や小規模で始める場合、第1段階と第2段階を範囲とし、第3段階は明確に外すのが現実的です。そして、外すことを恥じる必要はまったくありません。むしろ、外していると明記できる人のほうが、実務を分かっていると評価されます。
軸3 成果物 何を納品するのか
これがいちばん抜けやすい軸です。「支援します」で終わらせず、納品物を名詞で書きます。
規程のドラフト1本、チェックリスト1式、研修用スライド1回分、調査レポート1本。この形にすると、発注側は金額と比較できるようになります。比較できるものにしか、値段は付きません。
修正の回数も、この軸に含めておきます。「初稿提出後、修正は2回まで」と書いておくだけで、あとの認識のずれがほとんど消えます。
軸4 責任 何を保証しないのか
法務の視点からいちばん重要なのが、この軸です。そして、いちばん書かれていない軸でもあります。
AI・セキュリティ支援で保証できないものは、はっきり存在します。事故が起きないことは保証できません。生成AIの出力が完全に正確であることも保証できません。法令解釈の最終的な適法性についても、行政書士や弁護士といった有資格者の領域に踏み込む部分は、その旨を明記して専門家へつなぐ必要があります。
「保証しないことを書いたら仕事が来なくなるのでは」と心配される方がいます。でも実際には、書かないまま受けて、あとで「事故が起きたのはあなたの責任だ」と言われるほうがはるかに深刻です。※このあたりの線引きで迷う場合は、契約の段階で弁護士に相談してください。
「できません」を書ける人が、結果的に選ばれる
範囲を明記するというのは、できることを並べる作業ではありません。できないことの輪郭を描く作業です。
たとえばAIの導入支援では、こういう線引きができます。
社内向けガイドラインの構成案を作ることはできる。ただし、そのガイドラインが自社の業種特有の規制に適合しているかどうかの最終確認は、依頼主側または専門家が行う。
生成AIが出力した文章の事実確認と修正を担うことはできる。ただし、出力に第三者の著作物が含まれていないことを完全に保証することはできない。
この2つを提案文に書くと、驚くほど話が早く進みます。相手が知りたかったのは、まさにその境界だからです。
ガイドライン作成そのものについても、参照すべき土台は公開されています。
実際のガイドライン作成においては、経済産業省と総務省が共同策定したAI事業者ガイドライン※4や、日本ディープランニング協会が提供する生成AI利用指針※5などが、実用的な参考資料として活用できます。 出典: lac.co.jp
つまり、ゼロから独自の理論を作る必要はないということです。公的機関や業界団体が出している指針を土台にし、依頼主の状況に合わせて具体化する。この立ち位置を提案文に書けば、「何を根拠に作るのか」という発注側の不安に先回りできます。制度や指針は改定されますので、参照する際は2026年時点の最新版を確認したうえで、版数を明記しておくと安心です。原典は経済産業省や総務省のサイトで公開されていますので、経済産業省や総務省の情報を直接あたる習慣をつけておきましょう。
提案文に、範囲をどう落とし込むか
4つの軸を、実際の文章にします。型を示します。
「ご相談いただいた件について、次の範囲でご支援できます。対象は、生成AIツールの社内利用に関する取り扱い規程です。作業は、公開されている指針を踏まえた構成案の作成と、条文レベルのドラフト作成までを担当します。納品物は、規程ドラフト1本と、参照した指針の一覧表1式です。修正は初稿提出後2回まで対応いたします。なお、貴社の業種に固有の規制への適合可否については最終判断を行いませんので、その部分は貴社の法務ご担当者または顧問の専門家にご確認いただく前提でお進めできればと思います」。
長く感じるかもしれませんが、この分量が必要です。というより、この分量を書ける人が少ないから、書くだけで差が付きます。
ここに1行足すと、さらに強くなります。「上記に含まれないご相談についても、内容を伺ったうえで対応可否をお返しします」。
範囲を狭く切ると、その外側の相談が来なくなるのを心配される方がいますが、この一文があれば大丈夫です。窓口は開けたまま、責任だけを切っている形になります。
曖昧な表現を、書き換えてみる
自分の提案文を見直すとき、次の表現が入っていたら要注意です。よく見かける3つを、書き換え例と一緒に挙げます。
「セキュリティ対策のご支援」。これは対象も深さも成果物も入っていません。書き換えるなら、「生成AIツール利用時の情報取り扱いルールについて、社内向け規程のドラフトを作成します」。
「必要に応じて柔軟に対応します」。柔軟という言葉は、発注側からは無制限と読まれます。書き換えるなら、「初稿提出後、内容の修正は2回まで対応します。3回目以降は別途お見積もりとさせてください」。柔軟さを消すのではなく、柔軟の範囲を数えられる形にするわけです。
「幅広くお手伝いできます」。幅広いという表現は、担当者が上司に説明できない言葉の代表格です。書き換えるなら、対応できる領域を3つまで箇条書きで並べ、それ以外は都度相談と書く。3つに絞るのがコツで、5つ以上並べると今度は焦点がぼやけます。
この3つを書き換えるだけで、提案文の印象はまったく変わります。文章力の問題ではなく、情報の粒度の問題なので、誰でもすぐに直せます。
自分の範囲を棚卸しする手順
とはいえ、いきなり範囲を書けと言われても手が止まりますよね。順番があります。
まず、これまでに実際に手を動かしたことを、動詞で書き出します。「調べた」「表にまとめた」「規程の文案を書いた」「他部署に説明した」。役職や肩書きではなく、動作で書くのがポイントです。
次に、それぞれについて「誰の判断で終わったか」を書き添えます。自分が最終判断をしたのか、上司や依頼主が判断したのか。ここで、先ほどの深さの軸が自然に決まります。
そして、それぞれの作業で「何が残ったか」を書きます。文書が残ったのか、口頭の助言で終わったのか。残ったものが、そのまま成果物の候補になります。
最後に、やったことがない領域を正直に別の列に分けます。この列が、責任の軸で外す部分の材料になります。
この4段階を紙に書き出すと、自分の範囲が1枚で見えるようになります。私が相談を受けるときも、まずこの棚卸しから始めていただくことが多いです。提案文の書き方を教えるより、こちらのほうが早く形になります。
取引条件の明示は、法律上の求めでもある
範囲を書くことには、営業上の意味だけでなく、法制度上の背景もあります。
2024年11月に施行された、いわゆるフリーランス保護新法では、発注事業者が業務委託をする際に、業務の内容や報酬の額、支払期日などの取引条件を書面または電磁的方法で明示することが求められています。報酬の支払期日についても、発注事業者が給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で定めることとされています。
つまり、「業務の内容」は本来、発注側が書くべきものとして制度上も位置づけられているということです。※制度の詳細や個別の適用については2026年時点の公表資料をご確認のうえ、判断に迷う場合は公的窓口や弁護士にご相談ください。法令の原文や関連情報はe-Govや公正取引委員会で確認できます。
ここで実務的に大事なのは、発注側が書く内容と、あなたが提案文で書いた範囲を一致させることです。
よくあるのが、提案では「規程ドラフト1本」と書いたのに、届いた発注書には「AI利用に関するコンサルティング一式」とだけ書かれている、というケース。この状態で進めると、あとから範囲の解釈が割れます。
こういうときは、遠慮なく確認してください。「発注書の業務内容欄について、ご提案時の範囲に合わせて『生成AI利用規程ドラフトの作成(修正2回まで)』と記載いただくことは可能でしょうか」。これは細かい要求ではなく、双方を守る手続きです。
法律はあなたの味方ですが、味方になってもらうには、何を約束したのかが記録に残っていないといけません。
範囲を書いた提案を、どう見積もりにつなげるか
範囲が決まると、次は金額です。ここでも順番があります。
やってはいけないのが、先に総額を出すことです。「一式30万円」と書くと、相手は高いか安いかしか判断できません。そして、どこを削れば安くなるのかが見えないので、交渉が「全体をもう少し」という形になり、あなたが一方的に譲る展開になります。
正しいのは、成果物ごとに分けて出すことです。規程ドラフトの作成でいくら、参照指針の一覧表でいくら、説明会の資料でいくら。分けて出すと、相手は「今回は規程だけお願いして、資料は次期にします」という判断ができるようになります。
これ、値切られているように見えて、実際は違います。範囲が縮んだぶん、あなたの作業も減っているからです。総額で受けて範囲だけ増える、という最悪の形を避けられます。
見積書に書いておきたい項目も挙げておきます。成果物の名称と数量、修正対応の回数、納品の形式、着手から納品までの期間、そして「本見積もりに含まれない事項」。最後の項目が特に大事で、ここに書いたことは、あとから追加費用の根拠になります。
もう1点。有効期限を入れてください。「本見積もりの有効期限は発行日から30日とします」。期限がないと、半年後に「あのときの金額で」と言われることがあります。制度も相場も動きますので、期限を切っておくのは自然な実務です。
交渉で押し返されたときの、返し方
「予算がもう少し厳しくて」と言われる場面は必ず来ます。ここで金額だけを下げるのは、いちばん避けたい対応です。
返し方は決まっています。「ご予算に合わせる形でしたら、範囲を調整させてください。修正対応を2回から1回にする、または参照指針の一覧表を今回の納品物から外す、といった形でしたらご希望の金額に近づけられます」。
金額を下げるのではなく、範囲を縮める。この対応ができると、相手にも「この人の金額には根拠がある」と伝わります。そして次回以降、無理な値下げを求められなくなります。
範囲を書くことの効果は、実はここでいちばん大きく出ます。範囲が言語化されていない提案は、削る場所がないので、金額だけを削られるしかないんです。
範囲が決まると、なぜ案件が取りやすくなるのか
ここまで書いてきたことを、発注側の視点でもう一度整理します。
範囲が明記された提案を受け取った担当者は、3つのことが同時にできるようになります。金額の妥当性を判断できる。社内の稟議書に貼り付けられる。そして、他社の見積もりと比較できる。
比較されるのは怖いと思われるかもしれません。でも、比較の土俵に乗らない提案は、そもそも検討されずに終わります。土俵に乗ることのほうが、はるかに重要です。
さらに、範囲が明確な提案には副次的な効果があります。担当者が「この範囲でこの金額なら、来期はこちらもお願いしたい」と考えられるようになる。範囲が見えるということは、次の発注の設計もできるということなんですね。
一度の受注より、二度目の相談を生む。これが、範囲を書くことの本当の効果です。
実際、AIを絡めた支援では、発注側の期待が漠然としていることが多く、この整理が価値そのものになります。
現代のセキュリティ環境では、日々膨大な数のアラートが生成されますが、その多くが実際の脅威ではない偽警報である場合も少なくありません。AIシステムは、大量アラートを高速で分析し、真の脅威と誤検知を区別できます。セキュリティ担当者は本当に重要な案件に集中できるようになり、業務負荷の大幅な軽減が実現されます。 出典: lac.co.jp
AIによって何が自動化でき、何が人間の判断として残るのか。この境目を言語化して示すこと自体が、支援業務の中身になります。逆に言えば、境目を語れない人は、AI領域の支援では選ばれにくくなっていきます。
範囲外の相談が来たときの、受注前の作法
提案の範囲を狭く切ると、当然、その外側の相談が来ます。ここでの対応が、次の案件につながるかどうかを分けます。
やってはいけないのは、その場の勢いで「できます」と答えることです。相談された嬉しさで受けてしまい、あとで手に負えないと気づく。この流れ、本当によく見ます。
正しい順番はこうです。まず内容を聞く。次に持ち帰る。そのうえで、対応できる部分と、できない部分に分けて返す。
「お話を伺った範囲では、AとBは当方で対応可能です。Cについては、有資格者の判断が必要な領域になりますので、当方では承れません。必要でしたら、その部分だけ切り出してご相談先を探される形が確実かと思います」。
断ることを恐れる必要はありません。私の実務でも、案件を丸ごと受けようとして範囲を膨らませた結果、途中で止まってしまう例を何度も見てきました。逆に、最初にきっぱり切り分けた案件のほうが、結果的に長く続いています。
応募の段階から、範囲を武器にする
範囲の明記は、契約直前だけの話ではありません。案件を探す段階から効いてきます。
募集要項を読むとき、多くの人は「自分にできそうか」で判断します。そうではなく、「この募集は範囲が書けているか」で見てください。
業務内容が具体的な名詞で書かれている募集は、発注側が自分の課題を整理できている証拠です。こういう案件は、着手後の認識のずれが少なく、報酬の話も進めやすい。
反対に、「AI活用全般」「セキュリティ関連業務」としか書かれていない募集は、発注側もまだ何を頼みたいか固まっていない可能性があります。この場合、いきなり応募するより、「どの部分からお手伝いするのが有効か、いくつか案をお出しできます」と提案する形のほうが通ります。相手が言語化できていない範囲を、こちらが言語化して差し出すわけです。
これ、実は最も競争が少ない入り方です。多くの応募者は募集文に書かれた条件に自分を合わせようとしますが、書かれていない案件では合わせる先がありません。そこで整理して見せられる人は、それだけで抜けます。
初めて応募する分野なら、いきなり広い範囲を提案せず、最初の1本を小さく切るのが確実です。「まずは現状整理と論点の一覧作成という形で、1本お受けできればと思います」。小さく始めて範囲を守り切るほうが、大きく受けて途中で崩れるより、次につながります。
単価の判断と、知識の裏付けをどう用意するか
範囲が決まると、金額を決められるようになります。時間ではなく成果物で切れるからです。
とはいえ、相場観がないと妥当な金額が出せません。基準としては、公的統計をもとにした職種別のデータを見ておくとぶれません。技術寄りの成果物ならソフトウェア作成者の年収・単価相場、規程や研修資料など文書の作成が中心なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場が近い水準になります。自分の成果物がどちらの性質かを見てから金額を組み立てると、根拠を持って提示できます。
範囲を語るための知識の裏付けも要ります。生成AIの仕組みとリスクを一通り体系的に押さえたいなら生成AIパスポートが入口として機能しますし、集計や自動化まで範囲に含めたいならPython3エンジニア認定基礎試験で基礎を固めておくと、できることの線を具体的に引けるようになります。
案件そのものの中身を把握しておくことも、範囲設計の前提になります。業務内容が整理されているAIコンサル・業務活用支援のお仕事を読んでおくと、募集要項に書かれた言葉が何を指しているのかが読み取れます。開発が絡む範囲まで受けたい場合はAIチャットボット・アプリ開発のお仕事、生成系のツールを扱うなら画像生成AI(Stable Diffusion等)のお仕事も確認しておくと、対応可能な領域の輪郭がはっきりします。
実務の進め方から学びたい方は、手順が段階的に整理されたAI やり方の決定版!初心者が仕事・副業で成果を出す5ステップが参考になります。仕事としての組み立て方ならAI ChatGPTで稼ぐ!副業・仕事効率化の具体的手順と注意点、資格から実務へつないだ例を知りたいならAI資格G検定を活かした副業で未来を掴む!斎藤翔平が語る成功の秘訣も合わせてどうぞ。
在宅ワーク市場から見えるデータ考察
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から、案件の取り方について観察していることを書きます。
継続的に依頼を得ている人と、そうでない人の差は、提案の巧みさではありませんでした。差が出ていたのは、断った経験の量です。
運営者として見てきた限りでは、長く続く人ほど「それは私の範囲外です」と言った回数が多い。一見すると仕事を減らしているように見えますが、実際には逆で、範囲外を断ることで範囲内の質が保たれ、その質が次の依頼を呼んでいます。
発注側から見ても同じです。何でも引き受ける相手より、線を引く相手のほうが安心して任せられる。線が引かれているということは、その内側については責任を持つという意思表示だからです。
もうひとつ、額面と手取りの話をしておきます。同じ20万円の契約でも、仲介手数料が差し引かれる経路と、依頼主と直接つながる経路では、手元に残る金額が変わります。手数料0%で直接つながる形は、発注側から見れば同じ予算でより多くを頼めるということであり、受け手から見れば同じ働きで手取りが厚くなるということです。どちらかが損をして片方が得をする構造ではありません。
そして、範囲を明記する話と直接取引の話は、実はつながっています。間に人が入ると、範囲の説明が伝言になり、必ずどこかで薄まる。あなたが書いた4つの軸が、そのまま発注担当者に届く形のほうが、範囲は守られやすいんです。
範囲を書くのは面倒な作業です。でも、一度作れば使い回せます。最初の1本を丁寧に作ることが、案件の取り方を変える最短の道だと考えています。
よくある質問
Q. AI・セキュリティ支援の提案文には、何を書けば範囲が伝わりますか?
対象、深さ、成果物、責任の4つの軸で書きます。扱う対象を具体名まで下ろし、調査までか案の作成までかを示し、納品物を名詞で書き、保証しない部分を明記します。この4点がそろうと、発注担当者が社内で稟議を通せる材料になります。
Q. 「できません」と書くと、案件が減りませんか?
実務上は逆に働くことが多いです。境界が示されている提案のほうが発注側は判断しやすく、範囲外の相談も別途伺うと一文添えておけば窓口は閉じません。曖昧なまま受けて後から範囲を争うほうが、損失は大きくなります。
Q. 発注書の業務内容が提案の範囲とずれていたら、どうすればよいですか?
着手前に修正を依頼してください。2024年11月施行のフリーランス保護新法でも、業務の内容や報酬額、支払期日などの取引条件を明示することが求められています。提案時の文言に合わせて記載してもらうのは、双方を守る正当な手続きです。
Q. 範囲外の相談が来たとき、その場で断るべきですか?
その場で答えず、いったん持ち帰ってから、対応できる部分とできない部分に分けて返すのが確実です。有資格者の判断が必要な領域は明確に外し、必要なら相談先を探す形を提案します。即答での安請け合いが、後のトラブルの主な入口になります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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