フリーランスの国民年金は免除できる?猶予制度の活用法

藤本 拓也
藤本 拓也
フリーランスの国民年金は免除できる?猶予制度の活用法

この記事のポイント

  • フリーランスが国民年金の保険料免除・猶予制度を利用する方法を解説
  • 全額免除・一部免除の条件
  • 免除期間中の年金受給額への影響

フリーランスになると、これまで会社が半分負担してくれていた厚生年金から、自分で全額負担する国民年金へ切り替わります。毎月発生する保険料は約17,000円、年間で約20万円という金額は、独立直後で収入が不安定なフリーランスにとって非常に大きな負担となりがちです。

しかし、収入が少ないからといって「払えないから未納のまま放置」をするのは、将来の自分を危険にさらす行為です。日本には、所得が一定以下の人向けに保険料の免除や猶予を受けられる制度が整っています。この制度を正しく理解し、賢く活用することが、フリーランスとして長く安定して働くための第一歩となります。ここでは、フリーランスが知っておくべき国民年金免除制度の全容と、将来に備えるための戦略を詳しく解説します。

国民年金の免除・猶予制度の種類と所得基準

国民年金には、経済的な理由で支払いが困難な場合に利用できる「保険料免除制度」と「納付猶予制度」があります。これらは単なる支払い延期ではなく、将来の年金受給資格を維持するためのセーフティネットです。

制度 対象者(目安:単身者) 保険料負担 年金への反映(受給額)
全額免除 前年所得57万円以下 0円 1/2
3/4免除 前年所得93万円以下 約4,250円/月 5/8
半額免除 前年所得141万円以下 約8,500円/月 3/4
1/4免除 前年所得189万円以下 約12,750円/月 7/8
納付猶予 50歳未満で所得基準該当 0円 0(追納しない場合)

※上記は所得基準の一例であり、扶養親族の人数などによって判定基準額は変動します。特に、確定申告で経費を計上した後の所得で判断されるため、まずはご自身の「所得」がいくらになるのかを正しく計算することが重要です。

免除と未納の決定的な違い

「どうせ年金なんて将来もらえないし」と考えて未納のまま放置していると、取り返しのつかない不利益を被るリスクがあります。免除と未納では、法的にも保障内容の面でも大きな差があるのです。

項目 免除 未納(放置)
年金受給資格期間 カウントされる カウントされない
老齢年金の受給額 一部反映される 反映されない
障害年金の受給 受給可能 原則として不可
遺族年金の受給 受給可能 原則として不可

最も恐ろしいのは、突然の病気や怪我で障害を負った際に受け取れる「障害年金」です。未納期間があると、いざというときに申請すらできず、無保険状態となってしまいます。一方で、免除申請さえ済ませておけば、万が一の際も国民年金の保障枠内に留まることができます。将来の安心のためにも、まずは申請を行うことが大前提です。

免除申請の具体的な手順と必要書類

免除申請は複雑そうに見えますが、必要な準備を整えれば郵送でも手続き可能です。

1. 必要書類を揃える

以下の書類を用意します。

  • 国民年金保険料免除・猶予申請書(日本年金機構のHPからダウンロード可能)
  • 基礎年金番号がわかるもの(年金手帳またはマイナンバーカード)
  • 前年の所得を証明する書類(確定申告書の控え、または源泉徴収票など)

2. 申請を行う

お住まいの市区町村役場の国民年金窓口、またはお近くの年金事務所へ提出します。窓口に行く時間がない場合は、管轄の年金事務所への郵送が推奨されます。

3. 申請時期のルール

免除申請は毎年7月に、その年の7月から翌年6月分までの期間について行います。また、申請し忘れていた場合でも、過去2年1ヶ月前まで遡って申請が可能です。現在未納の期間がある方は、すぐにでも役所へ相談し、遡って免除申請を行うことを強くおすすめします。

フリーランスが免除を受けやすいタイミング

フリーランスは、特定のタイミングで非常に有利な条件で免除を受けることができます。

独立直後の「退職特例」

会社を退職してフリーランスになった直後は、前年の所得にかかわらず、退職した事実だけで免除申請ができる「退職特例」が適用されます。これにより、会社員時代に高収入だったとしても、退職後の期間は保険料を抑えることが可能です。この手続きには、雇用保険の離職票や退職証明書が必要となるため、退職時に必ず入手しておきましょう。

収入が落ち込んだ年

国民年金は基本的に前年の所得で判定されます。独立直後や大きな投資を行った年など、確定申告上の所得が低くなった場合は、翌年度の保険料免除枠が拡大します。ご自身の確定申告後の所得が免除基準内に収まっているか、毎年チェックすることが大切です。

追納で年金額を復活させる戦略

免除を受けた期間は、そのままでは将来の年金受給額が減少してしまいます。しかし、これは「追納制度」を利用することで解消可能です。

  • 10年以内であれば追納可能: 免除を受けた期間の保険料を、後からまとめて支払うことができます。
  • 3年以上前は加算金あり: 3年を超えると加算金が上乗せされるため、余裕ができた段階で早めに支払うのが最も経済的です。
  • 節税とのバランス: iDeCo(個人型確定拠出年金)と追納を比較した場合、追納は全額所得控除の対象となり、非常に高い節税効果が見込めます。収入が安定してきたら、まずは追納で期間を埋め、次にiDeCoで積立を行うという順序がフリーランスの鉄則です。

資産運用のヒント:国民年金の付加年金

国民年金には、月額わずか400円を上乗せして支払うだけで、将来の年金受給額が劇的に増える「付加年金」という制度があります。

  • 増額計算: 「200円 × 付加保険料を納付した月数」が毎年加算されます。
  • 利回りの高さ: 2年以上受給すれば支払った額の元が取れるという、極めて投資効率の高い制度です。

ただし、国民年金基金に加入している場合は併用ができない点に注意が必要です。まずは付加年金を検討し、それでも余裕があればiDeCoへと広げていくのが、フリーランスにとって最も効率的な老後資金の積み立て方法です。

学生納付特例制度から続く「人生の年金履歴」を点検する

フリーランスとして独立した方の中には、20歳から学生納付特例制度を使ったまま追納していない期間がある人も多い。学生時代の特例期間は将来の年金受給資格期間にはカウントされるが、追納しなければ年金額には反映されない。これを放置していると、最終的な老齢基礎年金が満額(年間約81万円)から年間10〜20万円減るケースが珍しくない。

学生納付特例制度を受けた期間は、年金の受給資格期間としてカウントされますが、追納をしない場合、将来の老齢基礎年金額には反映されません。10年以内であれば、後から追納することができます。 出典: nenkin.go.jp(日本年金機構)

フリーランス独立を機に、自分の年金履歴を一度総点検することを強く勧める。具体的な手順は4ステップ。第一に「ねんきんネット」に登録(マイナポータル経由が便利)。第二に過去の納付履歴・免除履歴・特例履歴を全期間ダウンロード。第三に未納期間と特例期間を一覧化。第四に追納可能期間(直近10年以内)について、追納するかiDeCoに回すかの判断を行う。

判断基準は「節税メリット」と「機会費用」の比較。たとえば学生時代の月額保険料が15,000円(2年間で36万円)を一括追納すると、その年の所得税・住民税で約11万円(税率30%想定)節税できる。同時に将来の老齢基礎年金が年間約4万円(40年加入の1/20)上乗せされる。65歳から85歳まで20年受給すれば年金額は累計80万円増える計算。投資効率としては悪くない。

ただし、追納に充てる資金がない場合は無理せず、毎月の社会保険料控除を活用したiDeCoや小規模企業共済を優先する判断もアリ。これは個人の収入水準・将来計画・税率レンジによって最適解が変わるため、独立3年目以降に税理士・FPと一緒に5年スパンの年金戦略を立てるのが理想だ。

障害年金・遺族年金の知識でフリーランスの「リスクヘッジ」を完成させる

国民年金の真価は、老後の生活費を支える「老齢年金」だけではない。むしろフリーランスにとって死活的に重要なのが「障害年金」と「遺族年金」の2つだ。これらは現役世代に予期せぬ不幸が起きた時に、本人と家族の生活を支える命綱になる。

第一の障害年金。病気・怪我で障害状態になった時に支給される年金で、国民年金加入者には「障害基礎年金」が支給される。1級なら年額約101万円(2024年度)、2級なら年額約81万円が、原則として一生涯支給される。ただし支給を受けるには、初診日の前々月までの期間において、保険料納付済期間と免除期間を合わせて全体の3分の2以上、または直近1年間に未納がないことが要件となる。

障害基礎年金の受給要件として、初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの被保険者期間の3分の2以上の期間が保険料納付済期間と保険料免除期間で満たされていることが必要です。 出典: nenkin.go.jp

未納期間が1ヶ月でも要件に引っかかると、障害状態になっても1円も受給できないという最悪の事態が起きる。これが「未納より免除申請」を強く勧める最大の理由だ。免除や納付猶予の申請を出していれば、たとえ実際の納付額が0円でも、保険料納付要件を満たすことができる。

第二の遺族年金。フリーランスが亡くなった時に、配偶者・子どもに支給される年金で、国民年金加入者には「遺族基礎年金」が支給される。受給対象は「子のある配偶者」または「子」で、子が18歳到達後最初の3月31日まで受給できる。年額は約81万円(配偶者基礎額)+ 子の加算(第1子・第2子は各約23万円、第3子以降は各約8万円)。子ども2人いる夫婦なら、年額127万円が遺族基礎年金として支給される計算になる。

ただし、遺族基礎年金は「子のある配偶者」または「子」が対象なので、独身で子のないフリーランスが亡くなった場合は、原則として遺族年金が支給されない。この場合は別途、生命保険や所得補償保険でリスクヘッジする必要がある。フリーランスの生命保険・医療保険・所得補償保険は、月額数千円〜2万円程度で加入でき、年金制度の隙間を埋める役割を担う。

加えて、第1号被保険者特有の制度として「寡婦年金」「死亡一時金」がある。寡婦年金は、夫が老齢基礎年金の受給資格期間を満たす前に亡くなった場合、妻が60〜65歳まで支給される年金。死亡一時金は、保険料を3年以上納めた人が老齢基礎年金を受給する前に亡くなった場合、遺族に12〜32万円が支給される一時金。これらも国民年金未納だと受給できなくなる。

国民年金「第3号被保険者」と「任意加入」の戦略的活用

最後に、国民年金の知られざる活用テクニックを2つ紹介する。これらをうまく使うと、家族全体の年金コストを大きく圧縮できる。

第一の戦略が「第3号被保険者」制度の活用。会社員(第2号被保険者)に扶養される配偶者は「第3号被保険者」となり、国民年金保険料の支払いが原則として不要になる。フリーランスのカップルであっても、配偶者が会社員である場合や、自分の年間所得が130万円(180万円。年齢・障害状態による)未満なら、配偶者の扶養に入って第3号被保険者になることが可能。

第3号被保険者は、第2号被保険者(会社員・公務員)に扶養されている配偶者で、20歳以上60歳未満の方が該当します。第3号被保険者は、自分自身で国民年金保険料を納める必要はありません。 出典: nenkin.go.jp

夫婦の働き方を戦略的に設計する場合、片方が会社員として安定収入と社会保険(健保・厚年)を確保し、もう片方がフリーランスとして第3号被保険者になりつつ、所得を130万円未満に抑える「フリーランス×会社員ハイブリッド世帯」は、社会保険料負担を最小化する一つの選択肢になる。ただし、年間所得130万円のラインを超えると一気に社会保険料負担が増えるため、所得管理を細心の注意で行う必要がある。

第二の戦略が「任意加入」制度の活用。60歳到達時点で国民年金の納付期間が40年(480ヶ月)に満たない方は、60〜65歳まで任意加入することで、納付月数を増やして将来の年金額を満額に近づけることができる。たとえば学生時代に3年間納付しなかった方は、60〜63歳の3年間任意加入することで、その分の年金額を補える。

60歳までに老齢基礎年金の受給資格期間(10年)を満たしていない方や、65歳までの間に納付月数を増やして満額に近づけたい方は、60歳から65歳になるまで国民年金に任意加入することができます。 出典: nenkin.go.jp

任意加入は、付加年金との併用も可能。月額400円の付加保険料を上乗せ納付すれば、200円×納付月数の付加年金が将来一生涯加算される。任意加入5年で60ヶ月、付加年金分で年額12,000円が一生涯増える。フリーランスの中には、若い頃の納付不足を任意加入と付加年金で挽回する方も多い。

これらの制度を「自分には関係ない」と思わず、独立フリーランスとして長期的な年金戦略の選択肢として頭に入れておくこと。20代〜30代の今すぐ使う制度ではないが、50代後半に差し掛かった時に「あの時知っておけば良かった」と後悔しないために、若いうちから年金制度の全体像を学んでおく価値は十分にある。

よくある質問

Q. 免除を申請すると、将来の受給額はどれくらい減りますか?

平成21年4月以降の全額免除期間については、将来受け取る老齢基礎年金の額が、保険料を全額納めた場合の2分の1として計算されます。例えば、免除期間が1年間ある場合、満額の年金額から見ると「半年分」が減るイメージです。これを防ぐには追納が必要です。

Q. 家族と同居している場合、親の所得が高くても免除されますか?

「保険料免除制度」は世帯主の所得も審査対象となるため、同居している親の所得が高い場合は承認されにくいです。ただし、50歳未満であれば「納付猶予制度」を利用できます。こちらは世帯主の所得は問わず、本人と配偶者の所得のみで審査されます。

Q. 過去に未納だった期間も、今から免除申請できますか?

免除の申請は、申請時点から2年1ヶ月前まで遡って行うことができます。これを「遡及(そきゅう)申請」と呼びます。未納のまま放置していた過去分がある方は、今からでも窓口で相談する価値があります。

Q. 免除期間中も付加年金に加入できますか?

残念ながら、保険料の免除(一部免除を含む)や納付猶予を受けている期間は、付加保険料(月額400円)を納めることはできません。また、国民年金基金への加入も制限されます。

Q. 申請してから結果が出るまでどれくらいかかりますか?

通常、申請から承認・却下の通知が届くまで、おおむね2ヶ月から3ヶ月程度かかります。その間は振込用紙が届くことがありますが、結果が出るまでは大切に保管しておいてください。

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藤本 拓也

この記事を書いた人

藤本 拓也

フリーランスWebマーケター

大手広告代理店でWebマーケティングを10年間担当した後、フリーランスに転身。SEO・SNS・広告運用を得意とし、大阪から東京の案件もリモートで対応。マーケティング・営業系の記事を執筆しています。

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